リザルト |
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●ざわめく街並み 町の奥の方がひたすらに騒がしい。 その奇声が聞える奥の区画へ『是呂』は第六感から立ち入るまいと胸に誓っていた。 是呂は今日は自分がたてた屋台からは絶対に出ないと心に決め、甘酒を道行く人に振る舞った。立ち込める甘いにおいと優しい温もり。 それを求め沢山のお客さんが是呂のもとを訪れる。スレイブには少し神水を入れ。軽く体に回りあたたく、気持ちも温かくなるように調整する。 ほろ酔い気分というやつである。 その隣で『零鈴』は紅白団子を焼きながら道行く人を眺めていた。 たまに「こちらもいかがですか~」と声をあげながら、団子を頬張る人たちの笑顔を眺めてにっこり微笑んだ。 「どこかで騒動起きてるそうだが 新年は平和に過したいもんだ」 そうつぶやく主を見あげて、零鈴は相槌をうつ。 「ほーんと! 平和がいっちばーん!」 「今年もよろしく零鈴!」 「はーい! よろしくですマスター」 そして出店の商品が売り切れると二人は部隊の前へと移動する。 そこではちょうど『星野秀忠』によるライブが披露されていた。 まぁ、性格には野太い歓声を上げる男性たちには『ちえり』と呼ばれていたのだが。 何を隠そう彼は一子相伝の女装法で男の娘に変身。相棒とお揃いの衣装を着て、新年早々ラブリーを振りまいているのだった。 「ぴかーん★ちえりとみくりのライブ、いっくよー!」 「Its a showtime!」 そう告げた矢先その手に握られた円筒状の何かがさく裂する。 するとステージは煙幕に包まれ何も見えなくなった。 次の瞬間、星野秀忠は戻ってくる、ステージ上に男子としてそこに立っている。 彼は腕を振り喘げて観客を鼓舞した。 「さあ、未来を踊ろう!」 ぎらぎらとステージ上で熱を上げる秀忠それを『クロスト・ウォルフ』は観客席から眺めている。 買い込んだお団子や、甘酒を楽しみながら宴会芸と呼ぶには派手すぎるそれらを楽しんでいた。 そして秀忠が歓声と共に舞台から降りる時には拍手を送る。 そんなときクロストはふと彼女が気になって隣に視線を向けた。スレイブも同じことを考えていたのだろう。 二人の目が合うとゆったり笑みを交換する。 そしてクロストは席を立つと少女に手を差し出した。 「逸れない様に手を繋ごう」 告げると『シルキィ』はあわてだす。 「え 大丈夫だよ」 「いや駄目だ うっかり離れ過ぎたらどうするんだい。スレイブとはそういう所気をつけないとね。ほら」 そう半ば強引にとられら手に頬を染めながら少女は 「……仕方ないわね」 と告げた。 「今年もよろしくシルキィ」 「よろしくクロスト」 そう二人は祭り会場の向こうに溶けて行った。 そして次なる演目のために舞台に上がったのは『コーディアス』である。 相棒の『ルゥ』と一緒に煌びやかな衣装で壇上に登ると新年の舞する。 「新年明けたねおめでとうルゥ」 そう盛り上がる観客の声を聴きながらコーディアスは告げた。 「今年も楽しくやってこう。よろしく」 「はい よろしくお願いしますね」 ● 寝正月 そんないろいろな盛り上がりを見せる屋外だったが、それに対してわれ関せずを貫く人間ももちろんいた。 たとえば『Shades=Dawn』である。 Shadesはスレイブと共に寝正月を過ごしていた。 スレイブにはどこかいかないのかと尋ねられたこともあったがShadesはこう答える。 「……外は寒いし」 「え? 北の方の出でしょ?」 そうスレイブに問いかけられてもShadesは首をかしげてお茶を口に含む。 「いや、北の方の出だからこそ、寒い時期の危険性を、より把握している と言いますか。指先が悴めば、色々不器用になりますし」 寒空に放置されれば命の危険もあったとShadesは語る。 なのでShadesは年末までに買い込んで蓄えてあった食材等を、この長い正月休みの間に、台所にこもって。 煮たり焼いたり冷やしたり、年の瀬前に保存食に仕上げて……。 追加調理とかせずとも食べれる様、グータラ仕様にした上で食べやすくする。 このおかげで家から一歩も出ずに各々好きなことができるというわけだ。 たとえば本を読み漁ったり。 そして同じような休日を過ごす人間は他にもいる。 『ステファニー』は今日何回目の「 平和ねー」だか分からないくらいに、その言葉を連呼しつつスレイブの『クラリス』とお家で安全に酒盛りをしていた。 暖かい暖炉の前で長椅子に寝そべり、スレイブと並んで酒を呷る。 その優雅なひと時は外の喧騒があればこそ。お祭りの賑やかさを聴きながらのんびりするのもまた一興というものだ。 そう、眠気に負けてしまいそうで気持ちよぉくなっているステファニーだったが、クラリスに膝枕を要求すると体制を変えた。 クラリスの膝の上、頭を撫でられると眠りの淵にスッと誘われる。 だが、対してクラリスは外の喧騒が気になるらしい 「ステファニー? 外の様子を少し見てきましょうか?」 そう問いかけるクラリスだったが、ステファニーはそれに対して手をふらふらと振って反応を見せた。 「いいのですか? そうですか」 穏やかな午後の日差しを受けながら二人はそうして眠りにつくのだった。 |
執筆: 鳴海GM |