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◆プロローグ◆


◆『はじまり』


 年末。しんしんと雪が降りしきる指先かじかむこの施設。
 大変気持ち的には下がってしまうような厳しい環境下だが、町を行く人々の表情はとても明るかった。
 なぜなら、こんな寒い冬の季節だからこそ、年末のお祭りは盛大で、派手で、とても盛り上がるからだ。
 そんな数週間後に控えた年末年始の祭りに備えて町は大露わである。
 せっかくの祭、それを楽しみきるためにも仕事を残すわけにはいかない。
 ただ、そんな慌ただしい街に、今年は例年には見ない客が入ってきているようだ。
 白いローブを着こんだ集団、長い旅だったのだろう、荷物は膨大。馬は疲れ切り、ローブの人々はひどく大人しかった。
 その人々はまとまって宿を取り。その町に何日か滞在するのだという。

 この時は、この集団があんな悲劇を生みだすことになるとはだれも想像していなかった。

 異文化交流の恐ろしさをこのディナリウムの人間たちは、まだ理解していなかったのである。

◆『クリスマスとはよい文化?』


 その行商の白いローブたちは大きな十字架を掲げている。
 彼らは北東から流れてきた民族らしかったが言葉はかろうじて通用した。
 不思議ななまり言葉と、珍しい行商の品。
 彼らは一躍町中の注目を集めたと言える。
 彼ら民族の呼び名はうまく訳すことができなかったのだが、大きな十字架からとってセイントクロスという名が呼称として広まり始めた。
 ただ、彼らが広めたのは、彼らの製品や呼称だけではない。
 彼らの呼称と合わせて広まったのはクリスマスという文化。
 そう、クリスマス。
 十二月二十四日は彼らからすると祝うべき文化日らしかった。

 ツリーを飾り付け。ケーキを食べる。
 家族や大切な人と過ごす、雪が降るとありがたい日。なんだそうだ。

 その文化に人々は飛びついた。
 この年末まで仕事に封殺されるだけの人々はお祝いをしたがった。
 街並みは一挙に華やかになる、セイントクロスの皆さんから買ったクリスマスの飾りつけで町はキラキラととっても素敵に。
 皆さんのスレイブは特に気に入ったようでテンションが少しだけ普段より高くなる。

 皆さんご存知だろうか、クリスマスには大切な人にプレゼントを贈るらしい。

 その噂をどこからか聞きつけてスレイブ達はわくわくしている。
 そのわくわくをどう扱うのか、どう思うのかは皆さんの自由でしょう。
 クリスマスをもちろん無視することも可能。けれど。
 スレイブ達のキラキラした瞳に、何か形に残る何かをあげたいと思うならば、町に繰り出して大切なひと時を過ごした方がいいのかもしれない。
 だって、それが聖夜なのだから。

 今回はそんな、聖夜の夜に楽しく過ごすお話しと。
 少しきな臭い、後に続くお話を用意されているのでぜひ参加してみてほしい。

◆『ええじゃないか』


 ディナリウムの酒蔵は世界一である。魔石由来のエネルギーにて、あれをこうしてああした飲物はスレイブに対して滋養強壮の効果がある。
 そんな風に、年始で初めて売り出されるはずだった。新商品『神水』は今や公然とばらまかれ、あちらこちらでスレイブ達が舐めるわ、飲むわ、浴びるわ、飲むわの大騒ぎ。
 このお酒の効果を説明しよう。
 スレイブの脳機能の一部に働きかけ、理性の一部を機能させ無くしてしまう、つまり。
 人間でいう酒に酔うという状態になってしまうのだ。
 結果、ディナリウム今年の新年はすごいことになっている。
 先ずは毎年年始は賑わう広場。ここでは大量のスレイブが酔いつぶれている。
 そう、年末に流出した神水がどこからかスレイブ達の手に渡ったためだ。
 それどこか、もっと欲しいとスレイブ達が暴れて酒蔵が暴かれてしまった。
 てんやわんやの大騒ぎである。
 一応、ディナリウム側が対処してくれて、酒蔵には厳重な警戒が敷かれたが、腹水は盆に返らず、飲まれた神水を胃の中から叩きだすことはできない。
 この事態の責任は誰にあるのか。
 そうあたりを見渡すとスレイブ達と一緒に酒を飲み盛り上がるセイントクロスのみなさんたち。
 彼らは君たちの反応を見るとあるものは逃げ出して。あるものは開き直った。
 そのセイントクロスの族長らしき者が言うには。
 スレイブ達の酩酊状態を中和する薬もとってきたそうだが。
 自分たちの酒のみ勝負に勝たなければ、渡せない様だ。
 皆さんは今回ハイテンションで手が付けられないスレイブ達と、このセイントクロスのみなさんたち同時に相手どらなければならない。

 新年早々とんでもない事件に巻き込まれてしまったものだと。
 頭を抱えることになった。


◆各選択肢リザルトノベル◆