リザルト |
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●飲んだくれスレイブ 神水の樽がぱかーんっと開かれた瞬間に、花に吸い寄せられるミツバチのごとくスレイブが殺到した。 それを『羽奈瀬 カイ』は見ていることしかできなかった。 自身のスレイブもまたその魔力にやられ、いまやマタタビにやられた猫のようにゴロゴロと目の前に転がっている。 それに一つカイは溜息をつくと告げる。 「こちらの酒もいかがかな」 そう告げるとスレイブ達の視線が集まった。 「水のように飲みやすいお酒だ。お嬢さん達お付き合いしてくれるかな?」 そうあえて酒を振る舞おうとするカイである。 ただしこの酒はあくまでも水。それを飲ませている間に大人しくなってもらおうという算段である。 この事件の収拾には『アシュタール』もあたっていた。もともと騎馬戦参加予定ではあった。 なのでこの寒いのにアシュタールは白Tシャツに赤ブルマ姿でありネイカは黒のジャージのまま連れ出される。 連れ出された先は宴会会場。 ここで二人は理解した。 悪酔いしたスレイブ達にさらわれてしまったのだ。 だがこの際だからとアシュタールは神水を取り出し、飲ませようと考えた。 そのうち酔いつぶれて寝てしまうと考えたからだ。 その考えは正しいようで、徐々に会場は収まりを見せるが、スレイブにも個性があるのか、なかなか酔わないスレイブもいた。 その対応に追われているのが『ジーン・ズァエール』は自分のスレイブに対応する。 ジーンのスレイブであるルーツはいわゆる絡み酒タイプなのだろう。 若干回らなくなった呂律でひたすらに自分は男だけど女の子みたい扱ってと理不尽な要求をしている。 ああ、わかった。 そんな反応を返したとしても話がループするのだからたまらない。 よく回る口だ、うるさい口だ。そう思ったジーンは、ルーツの唇を自分の唇でふさぐことにした。 その状況を理解できないまま停止するルーツ。次の瞬間頭に血が上り顔を真っ赤にして、そして倒れてしまった。 ● スレイブの酔いにご用心 帝都宴会会場中央部。 そこでは新春冒険者だらけの騎馬大戦が勃発しようとしていた。 「……だあぁっ、何でこーなった!?」 『ゆう』は頭を抱えて、そう現状に対する理不尽を口にすることしかできない。 それに比べて『カイリ』はというと、極めて上機嫌である。 現認は言わずもがな。神水を口にし、悪酔いしてしまい。現在となってはべったりとゆうに抱き付いて離れない。 そんな中、カオスと、混沌を抱いたままに騎馬戦は開催され、てんやわんやのうちにスレイブ達の黄色い歓声がこだまする。 『たくみ』は早速、やる気まんまんの『クローバー』の近くに暖房を用意した。 次いでクローバーは騎馬戦に悪酔いしたスレイブ達を集めて冷たい水をかけて目を覚まさせる。そうしてクローバーはスレイブを暖房に誘導する。 その後クローバーを上に乗せて騎馬を作り騎馬戦に参加した。 たくみもそんなクローバーを追って騎馬戦に参加することになる。 戦場でまみえたクローバーはこう告げた。 「多少のケガはつきものだし、色んな事にチャレンジよ。たくみん!」 たくみはそれに対して言葉を返す。 「クロ、軽いですね」 そんな様子を目の当たりにしつつもゆうの手を放さないカイリ。 「私を見て」 カイリが潤んだ瞳でゆうを見あげる。 「見てんだろ!」 思わず突っ込むゆう。しかしその言葉に目を見開いてカイリは語気強く、ゆうに訴えた。 「違う……恋人を家族を演じる私じゃない、本当の私を見て!」 カイリの叫びにゆうは頭を押さえる、今度は本物の頭痛がゆうを襲う。 その言葉に何かが見えた。 「私はゆうが、す」 そのカイリの口をふさぐゆう。 「ダメ、だ 俺は皆を壊した……」 「でも私を助けた!」 「例え何万と助けようと、唯一人を幸せにできないなら」 その言葉でカイリは人目をはばからず泣きだしてしまった。 |
執筆: 鳴海GM |