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  リザルト

● 誰が正義で誰が悪か

 上空からドームのように降りしきる光、それは硬質な膜となって周囲を覆う。
 それと同時に広場中央に現れる巨大な影、あれはどこから現れたのだろうか、そしてこれから何が始まるというのだろうか。
 不穏な空気がその場を満たす。
「お前たちは誰一人として生きて返さない、我らが計画遂行の癌となるようであれば、先の対戦の功労者たるお前たちとて容赦はしない。さぁ死ぬがいい」
 その言葉におびき出されたと誰もが気が付く。
 だがそんな中『ジャンヌ=オーレリア』は余裕の表情を崩さなかった。
「舐めるなよ!」
 ジャンヌは高らかに宣言する。
「我らディナリウム聖騎士団、第三部隊はこれよりアルゴー、そして巨人を排除する為に尽力する! 我はアルゴーと対峙する! 我が断罪の剣にて皆と共に戦おう!!」
 ジャンヌの声に武器を掲げ応じるのは同じ【ディナリウム騎士団】の団員達。
 苦楽を共にし、切磋琢磨し合った国の盾たちが今は共にいる、であればこんなに心強い戦場他に存在するだろうか。
「さあっ!! 突撃ーっ!! 」
 その戦闘を走るジャンヌにつき従うのは『ダルク=オーレリア』 。
「さてと……僕は結界を解くのを手伝うとしようか… 姐さん達が戦いやすいようにも」
 しかし二人を追い抜いて一番槍を担うのは『バキィ=レッヘラ』。
「さてと…なかなか面白そうじゃねぇか……アルゴーだっけか……。俺が戦陣きって突っ込んでその首ぶっとってやるよぉ!!」
「戦闘部隊はバキィに続いて。ダルクは私たちの背中を預けます」
「まかせてくれ、姐さん」
 次いでディナリウム騎士団の面々は各々が役目を演じるために散開。
 それを防ぐためにアルゴーは巨人を差し向けた。
 バキィは両サイドから迫る巨人に対して速度を緩めない。
 代わりに巨人の動きを封じたのは『シュバルツ・グレーデン』そして『コーラル・ビレーヌ』。
「さてと……この老骨、皆の平和が為に一肌脱ごうではないか! 行け小僧」
「ん……コーラル、みんなのためにがんばってたたかうよー!!」
「恩に着るぜ」
 各々が武装により巨人の一撃を受け止めると左右から風圧が襲う、それをものともせずにバキィは加速した。
「ねね、巨人ちゃん、コーラルとあそぼー!!」
 そうコーラルは巨人をいなして身軽に飛び回る。
 そんなコーラルを追う巨人を横目で眺めるとシュバルツは思った。
「巨人……あれは元はスレイブか……せめてもの供養として楽しき戦にしようではないかっ!!」
 シュバルツは一瞬後退、コーラルを肩に乗せ、伸び上がるとコーラルは高く飛ぶ。
 そのままコーラルは巨人の肩に張り付いて一撃みまった。
「ふふっ……皆様血気盛んで御機嫌ですね」 
 そう穏やかな微笑をうかべるのは『アニャンハル』
「私はそうですね……どうしましょうか……では。こうしましょうか」
 そうアニャンハルはその手の武装を地面すれすれまで下げて回転切りを、巨人の足元向けて放つ。その攻撃に巨人は足をとられ、コーラルごと転んだ。
「うわわ! なにするの!」
 大地を揺らしながら倒れる巨人と巻き込まれるコーラル。
「あらあら、ごめんなさい」
 そうアニャンハルは穏やかな笑みを湛えて告げた。
 そんな一同を応援するのが『ピグニマン=レーカラン』その鮮やかな技術にて奏でられる音は、戦場の癒しとなって味方を鼓舞する。
「ん~ほんとーはパレードがよかったけどおしごとならしかたないなー……」
「そうぶつくさ言わないで」
 ダルクはピグニマンはにそう声をかけつつ、結界に手を触れた、スレイブと共に解析に入る、結界の表面に亀裂のようなものが走った。
「くっ。手ごわい……」
「がんばれ~」
 ピグニマンの奏でる音楽が響き渡る、しかし、これほど素晴らしい音楽もこの結界があれば外には届かないのだ。
 一刻も早く状況を打開しなければならない。
 何より、アルゴーという男は不吉。
 真っ向からやりあわない方が良い気がして、ダルクの手は震えるのだった。
「姐さん。みんな、無事でいてくれ」
 そうダルクは自分の作業に没頭するべく目を閉じた。


● 神の手の実力とは

 アルゴーはその巨躯に見合わないスピードで石畳をかけると、沈み込むように屈伸。
 次の瞬間力を蓄えられたばねのように跳躍しバキィと激突、吹き飛ばした。
「なに?」
 ローブを脱ぎ去ると硬質な鎧に身を包んだ鋼のような体がうかがえる。
 アルゴーはほくそ笑むと自信を包囲する全員に告げた。
「俺は、あの優男のようには行かんぞ」
 告げるとアルゴーは狭い空間をナイフのようなもので切り裂いた。袋のように空間の口がひろがって中から現れたのは、何人もの人が抱えて持つような黒い柱のようなものを、それを振るって、群がる冒険者たちを吹き飛ばした。
「へぇ、大きい得物だね」
 そんなアルゴーの背後で声が聞えた。『クロカ=雪羅』が立っていてその手にはアルゴーの武装と比べても見劣りしない巨大な体験が握られている。
「面白い」
 アルゴーはあえてその大剣を吹き飛ばすつもりで柱を振るう。
 硬質な音が広場に響いて衝撃波があたりに散る。
「やるではないか、だが」
 アルゴーはこの柱を抱えるように振るっている、であれば、背面につきでた部分にもいくらか長さはあるわけだ。
 であれば、背後から迫る敵もこれで対応することができる。
『ジーン・ズァエール』は回転させられた柱に頭部を打ち付け吹き飛ばされる。
「まだだ!」
 だがジーンは着地、血が目に入るのも構わず側面から回り込んで切りかかった。
 それを柱でガードするなら、クロカがフリーになる。
 二人は一瞬のうちにアイコンタクト。
 クロカが渾身の一撃を叩きつけると、アルゴーはそれを盾のように前に突き出して攻撃を防ぐ。
 その隙を狙ってジーンは回り込む。
 その手の刃にてアルゴーの柱を弾きあげるも、アルゴーはその勢いを利用して柱を回転。
 石畳を巻き上げながら迫るそれをジーンは刃の腹で受け止めた。
 こんな戦いは長く持たない、そう愛剣が抗議の声を上げるのが聞える。
「追撃来ます!」
『ルーツ・オリンジ』はジーンへそう声をかけるとあわててジーンは飛びすさる。円を描くような柱の攻撃その射程から逃れようとしたが難しかった。
 ジーンは弾かれ吹き飛ばされて結界の壁に叩きつけられる。
 代わりに参戦したのは『ミクシーナ』そして『ナイトエッジ 』である。
「こんなお祭りの日にも、無粋な方達っているものなのですね」
 二本の剣を巧みに操って。正面と背後から同時に切りかかった。
 さすがに柱での対応は難しい、そう諦めたアルゴーは足を踏み鳴らすと。地面を切り裂いて大剣が眼前に射出される。それを空中で掴み取り、アルゴーはほくそ笑んだ。
「その程度で俺を倒すつもりか?」
 大剣による切り上げ。リーチが長いために片手剣より先に届く。
 それをナイトエッジは受け流すと。
 さらに一歩前に踏み込んだ。
「お前の目的が何なのかはいまいちわからない。 だが、俺が守ろうとしているものを傷つけようとしている事は確かだ……させねえよ。 俺たちの未来を傷つけようとするお前の好きにはさせない、手前はここで終われ!」
「できるか? はたして」
 アルゴーは無防備になったナイトエッジに蹴りを叩き込む。
 大剣を背負うように背後へ、ミクシーナの攻撃を防ぐと回転、ミクシーナの剣を弾く。
 そのまま後ろに一歩下がって裏拳を。立ち上がったナイトエッジを横っ面に吹き飛ばしてミクシーナには大剣での刺突をみまう。
 衝撃で吹き飛ばされるミクシーナ。それに一足で接近したアルゴーはその大剣を真上から叩きつけた。
 たまらずミクシーナは回避行動をとる、だが、あまりに急な動きで床に転がってしまう。
 先ほどまでいた場所を大剣が通過し、その刃は石畳を粉砕。
 濛々と煙を巻き上げた。
 その煙の向こうから振るわれたのは柱。その柱を切り下してミクシーナは叫んだ。
「今ですわ!」
 クロカが動く。
 スライディングで柱を潜り抜け、アルゴーと柱の間、僅かな隙間で体を起こす。
「アンタを殺すのはオレだよ――神のなんとか!」
 伸び上がるように一閃アルゴーの腹部から肩口にかけてバッサリ切りあげた。
「うぐ! この、異端者が!!」
 アルゴーは癇癪を起して柱を投げ捨てると、そのままクロカを抱きしめるように両腕でホールド、するとクロカの肺に。肋骨に、腕にものすごい圧力が加わった。
「その手を離して!」
『フランベルジュ』が両腕を何度も切りつける、しかしその拘束は緩まない。
『アザートゥルース 』はその隙にと背後からありったけの魔術を浴びせる。
 だがアルゴーはその装甲が爆ぜて、肌がむき出しになっても、その肌が焼けただれて血が噴き出しても拘束は緩めない。
 クロカは肺から逆流した血をこぼす。
 そんなアルゴーの肩を一瞬でよじ登り。その目に親指を突き立てたのが『フイ・フー 』である。
 さすがに目への攻撃は効いたのかアルゴーは呻き拘束を解く。
「おのれ! 許さんぞ!」
 そのままフイはアルゴーの注意をひきつけるように周囲を回った。
 その隙にナイトエッジ。バキィ。ナイトエッジ、ジャンヌらが一斉に攻撃。
 だがその太い柱をがむしゃらに振り回すアルゴーの前に全てはじかれてしまう。
 これだけの人数を相手にいまだ衰えぬ勢い、冒険者たちは忌々しげにその巨躯を眺めた。
「ここからは本気を出す、蹂躙劇の始まりだ!」
 そして戦いは激化する。


●巨人

 巨人はおぞましい姿をしていた。
 スレイブは基本少女の姿をとる魔法生物だ、ただその頭がおざなりに備え付けられ、首の下にはアルゴーよりも隆々とした体が括り付けられている。
 そのいたるところからコードが見え、急ごしらえであることが分かったが、胸の動力炉が唸りをあげると侮っていい相手ではないことが分かった。
『Simple』はその巨人と相対する、見上げるほどの巨体。だが恐れてはいられない。
 一瞬のうちにその姿を消して背後に回る。
 『アレス』が合わせて動いた。先ずは腕を……そう意識して相手の視界に回りつつ攻撃を待つ。その時である。
 その手、指先から何か瞬くものがほとばしった。
 光の柱のようなそれは、石畳を圧殺しながらアレスへと伸ばされ。それをアレスは間一髪のところでよけた。
 仲間たちはそれを好きだと判断。『蛇神 御影』が背後に回る。
 あの腕は危険だ、一瞬で理解した。であればその腕を破壊するのが通り。
 振り向きざまに放たれたレーザーを間一髪で回避。巨人の懐に潜り込んで、腕を弾きあげるように一撃放った。
 その瞬間御影の耳に聞こえたのはうめき声。
「そんな、これは……スレイブの鳴き声?」
 まだ僅かばかりに意識があるのだろうか、少女の声が怨嗟が、嘆きがその巨体の中からしみ出すように聞こえた。
 その声に後ろ髪を引かれる御影だったが攻撃を続行した。足に一撃、体勢を崩して腕、それも手首へとダメージを蓄積されている。
 続く巨人の反撃。
「クッ……」
 御影が歯噛みしたのは顔面すれすれをレーザーが通過したからではない。この巨体を作るためにどれだけの犠牲があったか想像してしまったためだ。
「すぐ解放してあげるからね」
 そうつぶやいて御影は巨人にさらに肉薄、張り付いてその攻撃を避け続ける。
 妨害に徹する構えだった。
 その御影のおかげで攻撃には余裕が出てきた。
 アレスは皮膚のつなぎ目、つぎはぎの体の接合部を狙って渾身の一撃をみまう。
 右手首が骨組みや筋繊維をばらつかせながら宙を舞う。
 これで戦闘力は半減。こちらは順調。そうアレスは他の巨人対応へ向かった冒険者たちを確認する。
『Guts』が巨人の拳を武装で受け止めているのが見えた。一撃は重く靴底を擦り減らしながら衝撃を殺して、伏せた顔を上げる。
 走り寄ってくる巨人。それに対してGutsは集中した。
 敵の一挙手一投足を見逃さない。
 そして仲間の動きも、Simpleが動いた。
 遠距離からの投石、それが巨人の目に突き刺さり視力と体のコントロールを失う。
 その拳が打ち出される瞬間に『Guts』は右へと回避。
 その足に攻撃を集中。バランスを崩した巨人に対して一撃みまう。
 その隙を『エルヴァイレント・フルテ』は見逃さなかった 。
 Gutsが切り崩した巨人に対してその大剣で斬撃を。切り伏せ切り上げ切り飛ばす。
 瞬間に三度の斬撃は巨人の皮膚を裂いて内部パーツを破壊した。しみだす赤い液体と金属パーツがばらばらと体からこぼれ、巨人は呻きをあげてその場にうずくまる。
 するとSimpleが瞬時に接近者、この隙に巨人の皮膚の継ぎ目、隙間を短剣の滑り込ませるようにさす。
 頑強に見えた上半身も皮がはがれて内部機構が目に見えるようになる。
 その体の中心に煌々と輝くコアが見えた。
 スレイブ全員に備わる動力炉、あれを破壊すれば。
 そんな巨人への対応はエルヴァイレントが素早かった。
 即座に巨人の背中に上り、その刃を巨人に突き刺す。
「やれやれ、せっかくの祭りの日にご苦労なことやねー」
 突き刺された刃は心臓部を確実にとらえ、そして悲鳴をあげながら巨人は停止した。


●防壁

 広場中央で人が舞う。アルゴーがその柱にて冒険者を巻き上げたのが『A』の目に見えた。
 焦りが浮かぶ、早くこの結界を解いてしまわなければ。『スターリー 』はそう作業の手を早めた。
 なるべく察知されないように、静かに静かに作業を進める。
「なんか地味だけど……メイジ”魔法少女”の魔力の使いどころってここだよね。 全力で回すからね!」
 そう相棒の『アインス』に宣言する、額の汗をぬぐってアインスと共に結界の中和作業を続けた。
「そうそう、アインスも魔力回して」
「……つらくなってきた」
「ごめん、もう少し頑張ってアインス」
 そんな『No.2152』は結界解体班と。敵の間に入って味方の支援をし続けている。
「結界を解けば、制限されている行動も取れるようになれます。あと少しです、頑張ってください!」
 No.2152はスターリーの隣に腰を下ろしスレイブと共に結界の中和作業に入る。
 その時だった。ついに結界に亀裂が走る。
 それを見て表情を輝かせるスターリー
「あとすこし!」
 魔力に特化させたその身を、全霊でみんなのために使いたい。
 総魔力管理など無視してありったけの魔力を最高速度で注いでいく。
「早く! 神の手の手下や巨人と戦ってるみんなが危ないから!」
 次いで『A 』がその拳を結界に叩きつけた。するとまるでガラス片のように結界が砕け。そして巨人たちの機能が停止する。
 その光景に対して何の感慨も浮かべないAをパートナーである『Α』は呆れた顔で見ていた。

「結界がとけたか!」

 その時アルゴーが吠えるように告げた。その周辺には冒険者たちが転がっていて、息をしているのも奇跡に思える光景を作り上げている。
「だとしても、逃げやしねぇよな! 最後の一人になるまで殺し合おうぜ!」
 ただその時である。
 アルゴーの表情が唐突に変わった。サディスティックに歪んだ笑みを、怒気で硬直させた。
「紋章が破壊されすぎた、だと? あの雑魚ども、まともに自分の仕事もできねぇのか」
 告げるとアルゴーは踵を返して背中を向ける。
「次に会った時は必ず殺す」
 そんな言葉を残して彼は空間に溶けるように消えてしまった。

執筆: 鳴海GM