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  リザルト

● 煌びやかな波と群

 第二帝都ディヘナ。ディナリウムに迫る大きさのこの町全体で行われる式典。祭典は今までの歴史にないほどの大規模なお祭りとなる。
 長期間かけて準備され、煌びやかに飾られた町並みは、最近の重苦しい空気や戦争の疲れを癒してくれるだろう。
 これが文明の素晴らしさだと、魔石技術が示す未来だと皇帝が皆に示したことになる。
 そんな街並みを眺めながら『空屋』はパレードが行われている大通り目指して歩いていた。
「にしても、いたるところに出店が出ているんだな」
 そう空屋は相棒である『シロア』を引き連れ人ごみをかき分ける。
 中でもシロアの目に留まった出店には少し顔を出して、食料を買い込んでみたり。
 外の国から輸入された珍しい酒があればそれを嗜みながらすすむ。
 そんな中、何度か見た後ろ姿を見る。『ブラン』は両手いっぱいに出店の食べ物を買い込んで満足げな表情を見せていた。
「色々買いすぎちゃったね」
「どれも美味しそうなのがいけないのですわ」
 そうカメリアが目移りさせながら告げるとブランがからかって見せる。
「食欲旺盛だなぁ」
「そ、そんなことないですわ」
 そう恥ずかしがるブランはカメリアに微笑みかける。
「重たいですわ」
 そう屋台飯をこぼさないようにバランス感覚に気を使いながらカメリアはブランの真後ろについた。
「ゆっくりできる所で食べながら眺めよう」
 そんなブランはふと足を止める、パレードへ向けて流れていく人々の背中を見て、それに重なる影に胸を痛める。
「皆楽しそうに笑ってるね……」
 そうブランが奥歯を噛みしめるとカメリアが優しく隣に寄り添う。
「けど、街はまだ復興中で。 助けられなかった人の想いも背負って、俺達がこの町を復興させないと」
「ブラン、辛いんですの?」
 そう不安げな表情を向けるカメリア、そんな彼女の頭をクシャリと撫でるとブランは無理して笑った。
「大丈夫、冷めないうちに食べましょう」
 そう温かい食べものをブランに差し出す。
 様々な思いを抱えたパレードは佳境へ。


● パレード!

 先ず登場したのは神輿である。大人が何十人もかけて持ち上げる神輿は煌びやかでなおかつ雄大だ。その天辺には女性が鎮座していた。
 なんでも魔石を司り、この町を発展させる神であるという。
 あまりなじみのない光景だったがとりあえず楽しそうだったので『スヴェン・ラング』は担ぎ手に立候補した。
「辛そうだな、そのポジション私が変わろう」
 神輿の重量が一番かかる先端の部分に代わりに入り。神を運ぶその一歩一歩を踏みしめ進む。
「わー、お兄ちゃん頑張って!」
 そんなスヴェンに見物客の少女が声をかけると『ダフネ』が小さく笑った。
「おにいちゃん、ですって」
 少し恥ずかしいスヴェンだったが咳払いをしてすぐに真面目なモードへ。
「この儀式によって、人々へ光溢れる世に成らん事を……」
 そう祈りをささげながら神輿を回す。そんなスヴァンの真摯な姿を見てダフネは立ち止まり、その光景に見惚れた。
 誰もが彼を見て穏やかな笑みを浮かべている。
「美しい光だわ」
 ダフネがそうつぶやいた。
「ええ。きっと、光が……笑顔が溢れる日が来るわ」
 そんなスヴァンを見て『軸』も負けてはいられない。
「せっかくの祭りだしね」
 ただ女性の身には少し重たいようで見かねた『無花果』が手伝いに入る。
「ありがとう、無花果」
「師匠のためなら!」
 ただ優しいのは今日だけの様子。
「あまり疲れないでね、パレードが終わったら地獄の修行が待ってるから」
つまりは師弟関係のような二人。今日もシノビを目指した切磋琢磨は続くようだ。
 その後ろから続くのはブロントヴァイレスの模型である。
 実際に戦った者達ならわかるが、その迫力は健在で見物客を驚かせている。
 そんなブロントヴァイレスの模型を操り練り歩くのは『サークル=クロスロード』
祭りに混じって堂々と盛り上げながら、担いだブロントヴァイレス模型に仕込んだ隠し武器の使用機会を今か今かと待ち望んでいる。
 そんなパレードの進行方から逆走する形で少女が後方めがけて走り去っていった。
「なになに!? とっても楽しそー!! ウリュリュも楽しむ! 踊る!!」
その視線の先には松明を掲げた神官たちが、大仰な動作で歩みを進めていた。
 巫女たちがその左右で優雅な舞を舞っている。
『ウリュリュ ドレッドメア』巫女服に身を包み列に混じり、見よう見まねで踊り始めた。
「パレード! パレード! 楽しいパレード 。皆も踊ろ! 一緒に踊ろ!! わーいたーのしー!!」
 観客側から歓声が上がる。
『コーディアス』も負けてはいられない。
「さぁ。ここからが本番だよ」
「え? ちょっと」
『ルゥラーン』の手を取るとコーディアスはパレード中央に躍り出る。
 ルゥラーンは白が基調で情熱的な赤が入ったアクセサリ、コーディアスは黒を基調とした礼装で登場。
 コーディアスがルゥラーンの手を取ってリード、二人でくるくると舞い踊る。
 時に背中合わせてセクシーに、手を取ってターン。
 コーディアスのウィンクを合図にルゥラーンが空中で一回転したりした。
「いくよ はぁ!」
 そのままコーディアスはルゥラーンをキャッチするとウリュリュが盛大な拍手を送った。
 その拍手に手を振って答えると二人は休憩がてら出店街へと戻っていく。疲れたルゥラーンを労おうと異国の料理をかったが。
「はい、あーん」
「人が見ています、恥ずかしいです」
 そう断られてしまうのだった。


● 飽食は豊かさの現れ

 そんな大盛況のパレードを見ながら空屋は、買いすぎた食料を消費していた。
 そのほとんどがB級グルメ。異国から入ってきた珍しい食べ物だったのだが、シロアは文句も言わずに食べる。
 その隣に新しいお客さんが座った『京輪』である。
「意外と盛り上がっているのね」
 そう『ドゥーン・ナイシュターン』を隣に座らせると出店で買いこんできたお団子を頬張る。
「美味しい?」
 そう京輪が問いかけるとドューンはやや緊張した面持ちで頷く。
 知人から譲り受けたスレイブだったが、いまだ距離感をつかめずにいる。
 ただ、そう心配しなくても良いだろうと京輪は思った、だってこうしてついてきてくれるのだから。
 京輪は思い出す、祭りの最中はぐれそうになったドューンが自分の手をきゅっと握ったこと。
「次は何を食べたい?」
 そう問いかける京輪の表情は優しかった。
 そんな京輪食べる団子を見て、自分も食べたくなったのか『四季神楽・冬夜』は観客席を立った。
『櫻花』を連れ立って歩きながら独り言のようにつぶやいた。
「祭りかぁ……キョウに居た頃以来、だったかな」
 告げると団子屋から団子を受け取って櫻花を手招きする。
「ほら、櫻花もおいでよ。今日ぐらい、一緒に楽しもうじゃないか 欲しい食べ物とかあるかい?」
「えっと、困ります冬夜様……私は…… え、いえスレイブは食事を摂る必要はなくて……」
 そう櫻花は口元に手をあげて、体を縮めながら答えた。
「あ、そこの屋台とか美味そうじゃ無い? じゃああれを一緒に食べよう 1人より2人、さ」
「そこまで言うのでしたら……はい。僭越ながら、お相伴に与らせて頂きます……」
 そう団子を差し出す冬夜、その手から串を受け取るときに櫻花の手が少し触れた。

執筆: 鳴海GM