確かに貴方は聞いていた。下水道などを使って、センテンタリの工作員が入り込んでいる、という情報を。
だからといって、まさかこんなにもあからさまな放火の場面に出くわす事になると、一体誰が想像しただろうか。
見つめあう不審者三人と貴方。
真っ黒な服を着た不審者三人の手には、棒状に丸めた新聞紙とライター。それに小枝の束。あとオイル。
「――ッ」
貴方は不審者達を止めようと、或いは仲間を呼ぼうと考え、口を開き。
「キャ――――?!」
しかし、それよりも先に不審者達に叫ばれて顔を顰めた。
「どどどどうするの?! どうすればいいの?!」
「そそそそんなこときかれてももも!」
「おおおおちつけ! だから、あの、おちつけ!!」
わたわたとその場で慌てふためく不審者達を見て、貴方は気づいてしまう。
――あ、こいつら馬鹿だ。
そう、貴方が見つけたセンテンタリの工作員達は馬鹿だった。今この瞬間にも「どうする? 逃げる? 戦う? 降参する?」「え、降参していいの?」「え、駄目だと思う」「え、そうなの?」「え?」「え?」なんて会話を交わしている。うん、馬鹿だ。
――よし、捕まえよう。
いかにお馬鹿でも放火しようとしている奴らなど許せる筈もない。
ただ、腐っても工作員。こちらが捕まえようとしたら何をするか解らない。お馬鹿ゆえに何をしでかすか解らない。
貴方は警戒しながら動き出す。
■工作員三人を捕まえてください
<状況>
・工作員達は町外れの菓子屋に火をつけようとしていた
・辺りは小さな店が多いが、どこもほぼ閉まっていて人はほとんどいない
・店沿いの道路は広くて多少暴れても何も問題ない
<工作員三人>
・持っている物はそれぞれ棒状に丸めた新聞紙とライター、小枝の束、オイル
・混乱すると喚いてうるさい
・お馬鹿
・全員体術が多少出来るけどお馬鹿
・話せば話すほど勝手に混乱してボロを出す系のお馬鹿
緊迫した雰囲気が漂う中、何故かここだけコメディ時空。
深く考えずに捕らえてください。
【創造の光】出火する前に エピソード情報 | |||||
---|---|---|---|---|---|
担当 | 青ネコ GM | 相談期間 | 6 日 | ||
ジャンル | --- | タイプ | EX | 出発日 | 2017/7/2 0 |
難易度 | 簡単 | 報酬 | 少し | 公開日 | 2017/7/12 |
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参加者一覧
ユア・ゴーイング( マイン ) | |
ケモモ | グラップラー | 16 歳 | 女性 |
日高陽( ルーヤ ) | |
ヒューマン | ナイト | 18 歳 | 男性 |
宿詠 秋葉( 雀 ) | |
ヒューマン | シャーマン | 20 歳 | 女性 |
海魔葉月( リレド ) | |
ヒューマン | メイジ | 17 歳 | 男性 |
コウユウ( ヒナ ) | |
ヒューマン | ナイト | 25 歳 | 男性 |
A( Α ) | |
デモニック | メイジ | 12 歳 | 女性 |
Guts( Puck ) | |
ケモモ | グラップラー | 20 歳 | 女性 |
アレン( クロエ ) | |
ヒューマン | メイジ | 17 歳 | 男性 |
リザルト
●冒険者 ハ 敵 ヲ 見ツケタ
目の前でわたわたしているセンテンタリの工作員達。
そんな彼らを見ていたら、冒険者達の中でも『海魔葉月』がある事に気付いてボソリと呟いた。
「……馬鹿っぽいし、仲間の振りしたら新聞紙とライターもらえないかな……?」
工作員達には聞こえない小さなその声に、しかし仲間達は即座に頷いて動き出す。
動き出したのは『ユア・ゴーイング』とスレイブの『マイン』、『日高陽』と『ルーヤ』、『宿詠 秋葉』と『雀』で、その場をそっと離れ、残ったのは葉月とそのスレイブ『リレド』、『コウユウ』と『ヒナ』、『Guts』と『Puck』、『A(エース)』と『Α(アルファ)』、『アレン』と『クロエ』となった。
混乱していた工作員達も流石に気付いてビクリと身を震わせるが、コウユウが一歩前に出てわざとらしい慌て声を出した。
「おおお落ち着けお前ら! まずは現状の確認をするんだ!」
●冒険者 ハ 敵 ヲ 見ツケタ → 話ス
言われた内容に工作員達は一瞬ポカンと口を開き首を傾げる。あれ? 敵じゃないの? と。
冒険者達は一瞬にして計画を組み上げていた。
二手に別れ、片方は口による交渉。その交渉が行われている隙に、もう片方は回りこんで確保拘束。
普通、こういった計画は綿密な相談の上に成り立つものだろうが、今回は問題ない。だって、相手、馬鹿だから。
どう交渉し、どのタイミングで動き出すか等、そんな事を決めて無くても多分なんとかなる。だって、相手、馬鹿だから!
そう信じての行動だったが、工作員達は……。
「げ、現状の確認……?」
「て、敵じゃない……?」
「敵じゃないんだ……」
「じゃあ、味方……?」
「なんだ味方か!」
「やったぜ!」
本当に馬鹿だった。
先程の慌てぶりは何だったのかと突っ込みたくなるほどはしゃぎ出す。冒険者達は若干彼らの頭に同情する。だがこれは好都合だ。
Gutsは馬鹿みたいな喧嘩をして分かり合ってボケてツッコんで……と考えていたが、喧嘩のふっかけ方もボケやツッコミも具体的にどうするかまで考えていなかったので無理だった。しかし、工作員達が勝手に味方と勘違いしてくれたなら、わざわざ喧嘩しなくてもいいだろう。
「そうだとも、間違いなく味方だ! そして味方だからこそ言わせてもらう! ただ単純に火をつけるだけで燃え広がるとでも思ってんのか?」
味方、という偽の情報を強調しつつ会話を繋げたのはアレン。
「え、駄目なの?」
「火をつければ燃えるでしょう?」
きょとんとする工作員達にアレンはなおも続ける。ビシッと指差して。
「馬鹿! 家屋、しかもこんな密集地帯にある家屋ってのは構造的にそう簡単に火事にならないように火がつきづらい場所と、
火が回ることを想定してない作りの甘い場所があってだな! そっちの甘い場所に油をまいてなおかつ空気が入りやすいようにして実際空気を送り込んでってやんなきゃ全然駄目なんだよ!」
「な、なんだってー?!」
「そ、そうだったのかー!」
「そうなんだよ!」
驚愕する馬鹿、じゃなくて工作員達。堂々と押し通すアレン。その後ろで「作りの甘い場所なんてあるの?」と小さく疑問の声をあげる冒険者達。
後にアレン氏曰く「建築方面の知識はないんだ、知る訳ないだろ。とりあえずそれっぽいこと言ってあいつらの気さえ引けりゃそれでいいんだよ」との事。つまり、すべてアドリブのデタラメである。
アドリブのデタラメだが、あまりにも堂々としすぎているので、工作員達どころか味方でさえも信じそうになったのだ。危ない危ない。
「じゃあ、手本を見せてやるから貸してみろ」
アレンは続けて言う。ライター類を没収できたら儲けもの、ぐらいの気持ちで
(まあいくら何でもそう簡単に引っかかるほど馬鹿では……ねえよな……?)
その予想は当たっていて、流石に工作員達でも躊躇った。
困り顔で「えぇ……?」「でも……」ともだもだしている工作員達に、実は……と切り出したのは葉月だ。
「ちょっと私達も放火したいんだけど……ライターと新聞紙忘れちゃって……少し貰っていいですかね?」
「忘れるものじゃないだろ?!」
驚く工作員達にA(エース)とΑ(アルファ)が説明をする。
本来ならセンテンタリから用意されてしかるべき武器、備品。それらを受け取りにいったら「あ、ごめん、お前らの分忘れてた」と言われてしまったんだと。「自分達で現地で調達してね」と言われてしまったんだと。こちらもアドリブのデタラメである。
「あー」
「たまにあるよねそういう事ー」
わかるわかるー、と頷く工作員達。そのままA(エース)は不自然にならないようセンテンタリでの愚痴を聞き出そうとするが、具体的にどう聞き出そうかまで思い浮かばず頷きあうだけになった。
だが、この流れで工作員達は完全に冒険者達を味方だと思いこんでいた。
「まぁそんなわけでライターをだな……」
もう一度アレンは催促してみる。もしかしたら、と思いながら。
「あ、はい」
「いいっすよ」
「そっちも大変ですね」
あっさり手渡された。物凄く馬鹿だった。
受け取ったライターを、アレンは放り投げた。
「え」
「え?」
「ええ?」
工作員達の視線が放物線を描くライターを追う。軽く投げられたライターはアレンの斜め後ろに控えていたクロエの手の中に落ちる。「物を投げない」と叱るクロエを見てから、もう一度、アレンへと視線を戻す。お前が火をつけるんじゃないの? と言いたげな目で、説明を求めて。
だが、待っていたのは。
「清々しいまでの馬鹿揃いだな」
そんなひどい感想。
「い、今ッス―――!!」
そこに、隠れ潜んでいた冒険者たちが飛び出してきた。
●冒険者 ハ 敵 ヲ 見ツケタ → 隠レル
話は少し遡る。
葉月の呟きで動き出した六人は、工作員たちの視線を外れた後、放火の目的でもあった菓子屋に潜もうとした、が。
「……開かない」
店は鍵がかかっていた。考えてみれば当たり前の状況である。
そして鍵がかかっていた事で改めて考えみたのだ。
窓や扉を壊すのは犯罪である。というか不法侵入も犯罪である。既に放火され中に人がいる、という状況ならばともかく、今の段階ではやってはいけない行為だった。
なので、冒険者達は貸家に潜むのは諦め、工作員達から死角になっている菓子屋の建物の陰に隠れることにした。
「すーちゃんこの戦いが終わったらあそこお菓子屋いっぱい菓子買ってあげるね」
「わーい!」
「だからしっかり働いてね」
「……はーい」
物陰に移動する間に交わされる秋葉と雀の小声で交わされる会話は可愛らしい。特に秋葉はこの状況を、あの相手を、殊更楽しんでいるようだった。
「こういった手合いは言葉で揺らしたり誘導させたりすると意外と御しやすいのですよね。さてさて、どうなりますか、ね」
物陰へ辿り着いた陽は、言いながら工作員達と残った仲間たちをそっと覗き見る。他の者も陽に続きそっと覗き見る。
少し離れているが、声は充分聞く事ができた。だからこそ聞こえてきた会話に頭を抱え、腹を抱え、口を押さえた。
だってこれはひどい。あまりにもひどすぎる。
『な、なんだってー?!』
『そ、そうだったのかー!』
『そうなんだよ!』
いや、わかっている。わかってはいるのだ。仲間はわざとデタラメをわざとらしく押し通してその場の空気を、工作員達を翻弄して困惑させているのだと。だがそれにしてもひどい。
聞こえてくる会話に誰もが察した。どうやら相手は近年まれにみる馬鹿集団だったようだ、と。
「はは、面白い人達だなぁ。この人達なら凶星の下でも元気に馬鹿やってそうだよね」
そう言って秋葉は工作員達にのろいをかけようとする。周りも止める気など起きない。むしろやってしまえ。
(気づきそうなら止めますが、馬鹿ですし気付かないですよね?)
はい、馬鹿です。気付きません。
このまま秋葉ののろいが発動する、という直前で、雀がしっかり働き秋葉に状況の変化を報告した。
「あ! ライター渡したよ!」
「あら、残念」
そう、今回は馬鹿過ぎた為に展開が早かった。
こうなってしまえば動きだした方が早い。
「相手の戦力は今一番落ちていると思います」
マインの言葉にユアはごくりと唾を飲み込み、そして叫ぶ。
「い、今ッス―――!!」
ユアの掛け声と同時に、潜んでいた冒険者達は一斉に飛び出した。
●冒険者 ノ 攻撃 ! 工作員 ハ 逃ゲラレナイ !
「と、とととと、投降してくださいぃい―――!! さ、さもなきゃ、ぶん殴るッスよ――――!! 死ぬほどい、痛いッスよ!!」
「ううううわぁぁああぁぁ?!」
物陰から飛び出てきた冒険者達に驚いた工作員達は、文字通り飛び上がり動転した。
「やややヤバいぜ! 逃げるぞお前ら! ほら、逃走経路の確認をするんだ!」
そこへ待ってましたとばかりにコウユウが慌て声で煽れば、工作員達は仲間だと信じている冒険者達を誘導し始めた。
「ここここっちだ! いいい急げ急げ!」
誘導先は飛び出してきた冒険者達とは正反対の方向。
その方向には特に誰も待ってはいない、何も置かれてはいない。どうやら逃走の為の乗り物も道具もそして武器も用意されてないらしく、ただ全力で走り去ろうと考えていたようだった。
誘導された冒険者達は、工作員達を追い越してから、振り返る。
「ん? え? んんん?!」
「何で止まって振り返るんだよ?!」
「ままま、まさ、まさか……?!」
困惑する工作員達に、コウユウがにやりと笑う。
「はーい、ご苦労さーん」
そして、冒険者たちは全員武器を構える。工作員達に向けて。
工作員達は、挟まれてしまった。
「え? 何? どういうこと?!」
「う、裏切り者ぉぉぉ!!」
「え、裏切られたの?!」
「嘘、裏切りやがったの?!」
涙目で睨み叫ぶ工作員達。裏切るも何も初めから仲間じゃない。何でたったあれだけのやり取りで素直に信じたのか。こいつら色々と大丈夫なのかな、と思ってしまった冒険者もいるとかいないとか。
「おいおい、顔が怖いぜアンタ。スマイルスマイルー。穏便にいこうじゃねぇか」
「裏切り者を前にして穏便になんて出来るか!」
コウユウの言葉に怒りのツッコミを入れる工作員。
「まあまあ、落ち着いてください。色々と誤解があります。初対面ですしまずは自己紹介から始めましょう」
その場の緊迫した空気をまとめるように発言提案したのは陽だ。
「ご、誤解?」
「はい。僕の名前は日高陽です。所属はデュオポリス、趣味は読書です。貴方がたのことも教えてほしいです」
武器は構えられたまま。それでも穏やかな口調と内容に、工作員達は本当に何か誤解があるのかもと考え、それぞれ名前を名乗った。
「俺はミザール。センテンタリの偉大な工作員だ!」
「僕はイワーザルです。センテンタリの知的な工作員です」
「おれはキカザルー。センテンタリの優秀な工作員だ」
何処か胸を張るように答える三人に、冒険者達は苦笑、失笑、唖然、呆然。様々な表情を見せたが、一つ確信した。
――こいつらは馬鹿な上に、何も知らない下っ端だ。
情報を聞きだす事は出来ないだろう。だってきっと情報を知らされていない。
ならば、捕らえるのみだ。
「なるほど、自己紹介ありがとうございます」
「照れるぜ」
「いやどうもどうも」
「もっと色々聞いてもいいんだぜ」
「センテンタリの名乗りもいただきましたので、捕まえさせてもらいます」
「うん、捕まえ……なんでぇぇぇぇ?!」
工作員の叫びと同時に冒険者たちが動き出す。
固く握った拳で殴りにいったのはユア。工作員ミザールは「ひぃぃぃぃぃ?!」と叫びながらギリギリのところで避けるが、全力で殴りに着ているユアには敵わない。三度目の打撃は見事顔にクリーンヒット。「ぽふぁ……ッ」と謎の音を口から漏らして倒れる。
「こここ来ないでぇぇぇぇ!!」
小枝の束をぶんぶん振り回すのは工作員イワーザル。振り回すたびに小枝が飛び散って、地味に近寄れない。
「ちょっと待った――!!」
響く声に振り返れば、そこには不思議な独特のポーズをとったコウユウがいた。
両腕を突き出すようにして交差させ、ちょっとクイッと腰を入れて、左足は横にスイッと伸ばして爪先だけで立つ。
問い、一体これは何のポーズだ。
答え、正直わかんねぇな。
「ちょっと待てよ……なぁ……待てと、言って、いるだろう……ッ」
「ひ、ひぃぃ……!」
無駄に思わせぶりな事を言いながら、地を震わすような擬音が聞こえてきそうな謎のポーズで威圧をかけるコウユウ。しかもジリジリと近づいていく。怖い。
工作員イワーザルが小枝の束を振り回すのもやめて、涙目でぷるぷる震え出す。これ弱いもの苛めになってませんかねぇ。
そこへ、ある意味救いの手を差し伸べたのは、葉月だ。
「降伏するならどんぶり料理一品くらいなら奢りますよー?」
その言葉にイワーザルはすがり付こうかと考えた。だがやめた。それは工作員としてのプライドとかそんなんじゃなくて、自分の首元。
工作員イワーザルの首筋には、木の棒がまるで剣の様に添えられていた。
それは葉月がいつの間にか見つけ出し拾っていた拾った木の棒。仲間達が取り囲んだり会話を続けたりしている間に、どうせならたいまつでも作ってぶん殴るかと考え、手ごろな木の棒を探し、うまいことすぐに見つける事ができたのだ。
ちなみにたいまつはすぐに火をつけられる状態じゃなかったのでやめた。あと危ないし。だってこれで殴るだけで充分武器になるし。
前からにじり寄る謎のポーズの人。すぐ傍には武器を首に突きつける人。
逃げられないと悟った工作員イワーザルがとった行動は。
「う、ふぇ……うぇあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
泣き崩れてへたり込む事だった。子供か。
「これは降伏したことになる、のかなぁ……?」
自分はイワーザルに奢らなければいけないのだろうか、別に本当に奢っても構わないが、等と葉月が考えていると、最後の一人の声が空気を震わせた。
「チクショ―――!」
捕まっていく二人を見てやぶれかぶれになった工作員キカザルーは、持っていたオイルを冒険者達にぶちまけようと腕を振り上げた。
ライターはもう取り上げている。火をつけられる不安はない。だからといって、発火の危険がまったく無いわけではない。
オイルを、かぶるわけには、いかない。
(えぇと、えぇとぉ……こういうときはぁ……)
一秒も無い時間でユアは考える。そして答えを出す。
キカザルーが腕を振り下ろす、その前に。
「と、ととにかく全身全霊で突撃ッス!!」
叫んで、拳を前に突き出したままキカザルーへ突っ込んだ。
「ぅぼぇふッ?!」
まともに鳩尾に拳を食らったキカザルーは、強制的に大きく息を吐き出した。息だよ。息だってば。変な音がしたけど実は出てない筈だ。多分。
そしてぐらりと揺れて、そのままぱったりと地面へ倒れこんだ。
結果、気絶している工作員二人に、子供のように泣きじゃくる工作員一人。そして、無傷元気な冒険者達。
圧倒的ではないか、冒険者達は!
そんな勝利だった。
●冒険者 ノ 冒険 ハ 続ク
工作員達は捕縛された。
三人はしかるべき組織へ渡され、しかるべき処罰を受けるだろう。正当な扱いを受けるように。コウユウが言いだし、皆それに納得した。この場で私刑を、というようなことを言い出す者は一人もいなかった。
「まぁ、コイツら悪いヤツじゃなさそうだしな」
右手は腰に、左手は口元を隠しながらの斜め立ちで、じーっと工作員イワーザルを見ながらコウユウが言った。
新たなる謎のポーズ。なおもかけられる威圧。「うぇぇぇぇぇ……!」と泣く工作員イワーザル。流石に仲間達がコウユウを止めた。何人かの冒険者達にいいように玩具にされた工作員達を、クロエはちょっとだけ同情した。ちなみに秋葉だけは止めずに楽しんでいた。
「うえぇぇぇぇぇ……」
「とりあえずなんとかなったな」
言いながらコウユウは明後日の方向を見ながら体を斜めに捻る。新たなる謎のポーズは別に工作員イワーザルの目の前で行われているわけではない。だが。工作員イワーザルの視界にバッチリ入る。わざとだ。
「なんとかなってないぃぃぃぃ……!」
工作員イワーザルの泣きながらの必死の訴えに、コウユウは振り返って笑顔を見せる。
「まぁまぁ、よく言うだろ? 終わり良ければ全て良し……」
「いいワケあるかー!」
「ひでぶっ!?」
コウユウの笑顔にフルスイングのビンタが叩き込まれた。やったのはヒナだ。
工作員達を捕まえる邪魔をしないように、ひたすらサポートに徹していたヒナだったが、流石にもう我慢の限界だった。ずっと右手がビンタを食らわせたくてうずいていたのだ。
「ウチのバカがご迷惑をお掛けしました」
見た目だけなら妹のようなヒナが言って、そのままぐったりしているコウユウを引きずりながら退場した。コウユウは無事だと信じたい。信じてる。冒険者達は若干遠い目をしながら二人が遠くなるのを見送っていた。一部、楽しそうに笑っている者もいた。
そして二人の影が遠く見えなくなった後、冒険者達は改めて顔を見合わせて苦笑する。
放火を未然に防げたその場は、穏やかな空気が広がりつつあった。
だが他の所ではまだ不穏な空気があるだろう。これですべてが終わったわけではない。平和が訪れたわけではない。
その事をわかっている冒険者たちだからこそ。
顔を見合わせた冒険者達は表情を引き締め、そして頷きあい、そのままそれぞれ歩き出す。走り出す。
次の場所へと向かって。
この場所を救う事ができた。その事実を胸に、別の場所を救うために、別の場所で楽しむ為に、別の場所で戦う為に。
冒険者達の冒険は、始まった。
依頼結果
成功
|
依頼相談掲示板
【創造の光】出火する前に 依頼相談掲示板 ( 23 ) | ||
---|---|---|
[ 23 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-07-08 17:11:15
|
||
[ 22 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-07-08 14:37:01
|
||
[ 21 ] Guts
ケモモ / グラップラー
2017-07-08 11:02:50
|
||
[ 20 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-06-29 11:21:54
|
||
[ 19 ] 日高陽
ヒューマン / ナイト
2017-06-29 08:38:04
|
||
[ 18 ] ユア・ゴーイング
ケモモ / グラップラー
2017-06-29 00:26:17
|
||
[ 17 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-06-28 19:05:09
|
||
[ 16 ] 日高陽
ヒューマン / ナイト
2017-06-28 08:28:41
|
||
[ 15 ] ユア・ゴーイング
ケモモ / グラップラー
2017-06-27 00:57:44
|
||
[ 14 ] ユア・ゴーイング
ケモモ / グラップラー
2017-06-27 00:57:44
|
||
[ 13 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-06-27 00:31:30
|
||
[ 12 ] 宿詠 秋葉
ヒューマン / シャーマン
2017-06-27 00:26:32
|
||
[ 11 ] ユア・ゴーイング
ケモモ / グラップラー
2017-06-26 14:41:02
|
||
[ 10 ] Guts
ケモモ / グラップラー
2017-06-26 13:00:25
|
||
[ 9 ] A
デモニック / メイジ
2017-06-26 12:23:34
|
||
[ 8 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-06-26 06:45:20
|
||
[ 7 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-06-26 05:51:48
|
||
[ 6 ] アレン
ヒューマン / メイジ
2017-06-26 00:23:00
|
||
[ 5 ] 日高陽
ヒューマン / ナイト
2017-06-25 22:51:20
|
||
[ 4 ] 海魔葉月
ヒューマン / メイジ
2017-06-25 22:23:39
|
||
[ 3 ] アレン
ヒューマン / メイジ
2017-06-25 22:03:49
|
||
[ 2 ] ユア・ゴーイング
ケモモ / グラップラー
2017-06-25 20:03:46
|
||
[ 1 ] ユア・ゴーイング
ケモモ / グラップラー
2017-06-25 19:58:59
|