● これは事件が起きる少し前の話。
急成長を遂げた帝都ディナリウム。
その発展は目覚ましく、新たな店や施設がポンポンと立つ。
特にディナリウム中心街の勢いはすさまじく、三か月で大通りに面したお店が撤退、入れ替わるなんてざらである。
そんな、いつまでも目新しさを失わない町の一角に君たちはいた。
隣にスレイブを引き連れて。
スレイブは尋ねるだろう。
今日はなぜこんなところに。
その言葉に君たちは答える。
今日は休日を一緒に過ごしたくて来たんだ。
そう君たちはスレイブに微笑みを返して歩き出すだろう。
羽を伸ばして新たな戦いに臨むための一日を。
近いうちに来る、絶望の日など知る由もなく。
● 中心街情報。
この町。ディナリウムで最近はやりのお店を紹介します。
そのお店をまわりつつ、スレイブとの一日を過ごす、スレイブとの関係を再認識する。というのはいかがでしょうか。
《食べ物系》
・家庭の味『マザースマイル』
パンで野菜やハムなどを挟んだサンドイッチ。鶏肉の揚げ物など、凝ってはいないが美味しい料理を沢山出してくれる。店主のおばさんと、娘さんの笑顔が素敵。
・異国系料理屋『イーペーコー』
本当は異国の文字で看板に店名が書かれている。この国の人間は誰も読めないくらいなじみがない文字。
要は現実世界の中華料理店。具材と米。なるものを混ぜて焼いたご飯や。薄い皮で肉を包んだ料理などいっぱい出てくる。
美味しいが値段もそれなり。
・一服所《サイレントトーカー》
店がビルとビルの隙間にある退廃的なお店。
全て立ち飲み、立ち食い食いであり。人が多く落ち着かない。
それでも少し休みたいときには品が出てくるのが早いので、重宝する。
茶色い香ばしいにおいのする飲物。コーヒーや。
鮮やかな紅が特徴的な紅茶なるものをだしてくれる。
《買い物系》
・ 日常雑貨『サンムーン』
食料品。紙、ペンと言った雑貨、ぬいぐるみや葉巻と言った嗜好品まで並ぶ大型商業施設。その気になればここで半日潰せる。
・武器ショップ『SSR』
探索者にとって必要な装備がだいたい置いてある老舗。
武器の防具の試着、試用ができる、その場にいる探索者と模擬戦闘もできるぞ。
・スイーツの都『ラブファクトリア』
女の子が好みそうなお菓子が沢山並んでいる。うさぎさんを模した砂糖菓子。ハートのチョコレート菓子等々。
料理体験もできて女の子には楽しい施設。
男性はここで女性へのプレゼントを買うのが流行り。
《娯楽系》
・BAR『ビジョン』
流行りの遊びをいち早く吸収することから人気のBAR。お酒も種類豊富である。
BARであるが朝から空いている。朝から酒盛りなどこの世界では普通である。
遊びとしては、銀玉を装填する空砲で的を打ち抜くゲームや。トランプゲームなどがある。
・情報屋『スローンズ』
本や、遠い国由来の巻物。加えてこの町や外国の情勢など、新しい物から危ないものまでこの情報屋に集まる。
あなたのスレイブの内緒情報も持ってるかも?
・スレイブショップ『エンペラー』
スレイブのボディーパーツ、武器、機能拡張用のデータ、チップなどを売ってもらえる。
最近はスレイブに一瞬で、知識をダウンロードできる、プロフェッショナルカード。という商品が人気らしい。
《デートスポット系》
・星見の塔。
この帝都でも指折りの高さの塔。天文学者が星を観測するための施設だが、外壁をぐるっと囲う螺旋階段は上っていいことになっている。
最上階まで上ることができれば、綺麗な夜空が見えることだろう。
降りるときはパラシュートを貸してくれるので下まで落下もできる。
・噴水庭園
水と華の都。
町の中心に作られたシンボル的存在。
一日中季節の花が咲き乱れていて、現在は春の花が満開である。
出店が立ち並び食料にも困らない。
キラキラと光る水しぶきが爽やかだが、そこら辺の水まき機が勝手に作動してずぶぬれになる可能性にだけ注意。
・第一帝邸
すでに帝一族は別の場所に引っ越して、すむものが無くなった帝のお屋敷を一般公開している。
宮殿と呼んで差し支えない風貌で。白い柱。白い壁。真っ白な石から削り出した宮殿は美しいの一言。
宿泊施設、休憩施設を兼ねていて、お部屋を貸してくれる。
いかがわしいことは禁止されていますけどね。
町に出てあれこれ。部屋にとどまっていちゃいちゃ。
どちらでも問いませんが。スレイブとの日常を演出するのがシナリオ目的です。
キャラクターを掴むには普段のキャラクターがどう過ごしているか想像するのが一番かなぁって思ったので。
ちなみに、表現が散ると薄くなる可能性が高いので、やりたいことを定めてそれを重点的にプレイイングに落とし込んでいただくことをお勧めします。
それではよろしくお願いします。
これは、カタストロフィー世界の大規模作戦が起こるかなり前のお話ですね。
なので、ブロントヴァイレスとか一切出てきませんし。本編に影響を与えることはできないと思います。
単純にスレイブとの関係をはっきりさせるためのお話ですね。楽しんでいただければ嬉しいです。
【創造の光】スレイブもたまには休みたい エピソード情報 | |||||
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担当 | 鳴海 GM | 相談期間 | 6 日 | ||
ジャンル | --- | タイプ | EX | 出発日 | 2017/7/2 0 |
難易度 | とても簡単 | 報酬 | なし | 公開日 | 2017/7/12 |
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参加者一覧
Shades=Dawn( tonalite=douceur ) | |
デモニック | メイジ | 32 歳 | 男性 |
太陽( 海 ) | |
コロポックル | クレリック | 16 歳 | 男性 |
クラーク( キィル ) | |
ヒューマン | シャーマン | 27 歳 | 女性 |
アスフール( パッセル ) | |
コロポックル | シーフ | 12 歳 | 男性 |
Vilhelm( Yvo ) | |
ケモモ | ナイト | 37 歳 | 男性 |
ゆう( カイリ ) | |
ケモモ | バード | 15 歳 | 男性 |
スヴェン・ラング( ダフネ ) | |
ヒューマン | ナイト | 26 歳 | 男性 |
カーライル・マッケンジー( シャーロット・マッケンジー ) | |
ヒューマン | メイジ | 35 歳 | 男性 |
リザルト
● 休日の過ごし方『ゆう』の場合
サイレントトーカーという休憩所が存在する。
要は単なる休憩所なのだが。使い勝手がいいらしく、長蛇の列となっていた。
そんな列に並ぶのをめんどくさがったゆうは、そっと列に入りこもうとしたが、その手を『カイリ』に叩かれた。
「痛ってぇな」
そうジトッとカイリを睨むゆう。
「ゆう、信じらんないっ!」
ジト目で睨み返すカイリ。
そんな険悪なムードの中。席が空き、奥の方へ通される二人、なんとなく煙たい場所だったが、妙に落ち着くのはなぜだろうか。
席に座ると真っ先にカイリがメニューを取った。さっきの不機嫌はどこへやら。治っている。
「紅茶二つとスコーンを頼めるかしら」
腹にたまるものを注文しようとした矢先、何の足しにもならないオサレなものを注文されてしまう。
ゆうはあわてて追加オーダーした。
「おま、勝手に注文すんな! って、こっちの牛肉のサンドもっ!」
乗り出した身を。椅子の上に収め直してため息をつくゆう、である。
「ったく、カイリが何考えてるのか、良く分からねぇんだよな」
「何か言った?」
「スレイブの立場を弁えろよっていったんだよ」
挑発的に告げるゆうだが、涼しい顔のカイリである。メニューを眺めながら片目をつぶって悪戯っぽくトドメのことばをくれる。
「例えばゆう、私が居なければまずは今日の晩ごはんからどうします?」
「……オレが悪かった」
そうゆうが頭を抱えている間に続々と料理が並べられるテーブル。カイリはそれをキラキラとした表情で胃袋に収めていくが。ゆうは渋い顔をしている。
(くそ、俺が料理とかできねぇのを知ってて……)
そんなゆうがおもむろに紅茶を口に運ぶ、その瞬間であった。
脳裏を何かの情景がよぎる。
(……オレは、この香りを知ってる?)
“お前は人を救わなければならない”
誰かの声が聞こえた。そして見知らぬ光景。
薫りをきっかけに、いつも頭に響く、誰かの言葉が浮かぶ
“お前は――から”
……何の記憶だよ、これ!
ゆうは頭を振って痛みに耐えるように抱える。カイリが何か話しかけているが声が全く聞こえない。
感覚が遠い。
「カイリ、お前は何を知って……」
数分後、机に突っ伏したゆうの分まで紅茶を楽しむと、彼を担いでカイリはお店を後にする。
その表情は髪に隠れ見えなかった。
● 休日の過ごし方『カーライル・マッケンジーの場合
「あ~ カーライル様! あれ! あれが食べたいです!」
「あの棒状のものは何ですか? すごくおいしそうです」
「鳥のエサですよ! 私小鳥さんと仲良くなりたいです」
さんさんと太陽照り付ける太陽光の元、普段白色光に照らされてばかりのカーライルは一つため息をついて空を見上げる。
じりじりと肌を焼くようなパワーを持つその惑星が今は妬ましい。
魔術の研究で忙しい彼にとってはあまり好ましいものではない。
ただ。
「カーライル様! こちらは涼しいですよ! 早く!」
そう手招きする『シャーロット』はむしろ研究所にいる時より元気で、気になるものと自分の間を足げく往復しては、カーライルの腕を引っ張ったり、抱き着いたりして喜怒哀楽を表現していた。
「わかってる、わかってるから。そんなに揺らすと昼食が崩れてしまうよ」
そうカーライルが苦笑いを浮かべてもなお、シャーロットは腕を取って離さない。
「だって! 二人だけでいられる時間なんてしばらくなかったでしょう? 嬉しくて」
そうカーライルを見あげて笑うシャーロット。
そんな彼女に連れられて噴水公園まで来た。
バスケットを揺らして。
くすくすと笑い声をあげて。
けれど一番うれしかったのはべたべたしても怒られないことだろうか。
普段仕事中。研究室にこもっている間はそっけなくされることが多いからだ。
だから最初外に出た時、やんわりと抱き着いて見せた時。拒まれないと知ったシャーロットは「えへへへ」と一人で勝手に笑ってた。
「まさか、公園に連れ出すだけでここまで喜ばれるとは……」
カーライルはマットを広げられるところを探すとバスケットを置いて、鳥と戯れるシャーロットを眺める。
やがて餌袋が空になったのかシャーロットがカーライルの元まで戻ると、カーライルはバスケットの中身を開いた。
「さぁ、君の大好きなサンドイッチ、やクッキーだぞ」
「ありがとうございます、カーライル様」
そう告げるとシャーロットはカーライルの膝の上に寝転んだ。
「おいおい、サンドイッチは?」
「えへへ、すこしこのままいたいんです。風が気持ちいい」
困ったものだ。そうカーライルは苦笑いをこぼし、シャーロットの言う風に神経を向けてみる。
確かに心地いい。研究所にいれば浴びることはにないものだ。
「春の花ですね。もう季節が巡っていたんですね」
そうシャーロットはため息交じりに告げる。こうして二人は季節を何度重ねることができるのだろうか。
「よし、明日からも頑張っていきましょう」
シャーロットと一緒にね、そう口に含んでカーライルは微笑んだ。
● 休日の過ごし方『アスフール』の場合
ちりりんとベルが鳴る。すると店の奥から恰幅のいい女性が二人に歩み寄った。
「あら、お客さんだね。二人かい? 席は窓際がいい? 奥でいいかい?」
「あ、えっと……」
「ゆっくりしたいので奥でお願いします」
パッセルが告げるとおばちゃんはするすると二人を奥のテーブルに案内した。
「よくこんな店知ってるね?」
「ふふん、俗世に疎いマスターのための情報収集はスレイブの務めだよ」
「でも、同じ道を三回くらい通ったね」
「休日は人が多くて道を間違えやすいんだもん!」
たまの休日、二人は家で目覚めるとボーっとしていたのだが、パッセルが突然。ご飯を食べに行こうと言い出してここまで来た。
アスフールとパッセルの休日。
と言っても、記憶喪失のアスフールは町に詳しくなければ娯楽や暇つぶしにも疎い。
そうなればパッセルが頑張って連れまわすしかないというもの。
なのでさっそくパッセルは巷で噂の『マザースマイル』にやってきた。
「で、次に行くお店がどこだっけ?」
「SSRだね」
そう指をたてながらパッセルはアスフールに説明した。端的に言えば武器屋だが、そこのところも忘却しているのだろうか。
「まさか、フォークの使い方も分からなかったりするの?」
そうパッセルが問いかける。
「そんなわけないよ! 突き刺して使うだけだし」
「正式なマナーとしてはそれで肉を切るんだよ?」
「うそ!」
驚くアスフール。
「嘘だよ」
そう微笑んで首をかしげるパッセル。
「だましたな!」
そう頬を膨らませるアスフールだったが、次いで料理がテーブルに並べられるとすぐさま笑顔を浮かべる。
「すごくおいしそう。パッセルが作ってくれる料理とはまた違うね」
「母親の味だからね」
「パッセルの味は?」
「保護者の味?」
「パッセルは私の保護者なの?」
「そうだよ! 知らなかったの?」
そう告げてパッセルはフォークで小麦粉を水で練り上げてひも状にしてゆでたもの、つまりパスタを口に運ぶ。
だがそれを見て不思議そうにするアスフールである。
「ああ、そうやって食べるんだ」
「え? パスタ知らなかったっけ?」
だったらと、フォークを置いてアスフールに向き直るパッセル。
「パスタの食べ方を説明しよう」
「うん、おねがいね。パッセル」
こうして本日も生徒アスフールの授業が始まったのだった。
● 休日の過ごし方『スヴェン・ラング』の場合
スヴェンは本来予定にない道を歩いていた。
「あら、約束をすっぽかされたのが不服?」
その隣で『ダフネ』が笑う
「いや、ただ持て余した暇の使いかたが分からない」
そう告げてあたりを見渡すと、ダフネがスヴェンの手を取った。
「なら、私にいい提案があるわ。任せて」
「任せろ……だと?」
そのまま手を引かれるままに歩いていくと、やがてたどり着いたのは噴水公園だった。
「のどかだな……それで、私に一体何をしろと言うんだ」
茫然と立ち尽くスヴェン。
「ここへ来た理由?ふふ、秘密よ」
そう呟いてダフネは舞うようにスヴェンを公園内部まで招いた。
噴水広場内部は色とりどりの花で溢れかえっていた。甘い蜜の香りが鼻腔をくすぐる。
「ねぇ、あの白くて小さな花が集まっている花の名前って分かるかしら?」
「それはアザレア。それは……珍しいな、アセビだ」
「アセビ、ね……なんだかあなたにぴったりよ」
「私に、ぴったり? それはどう言う……」
スヴェンは思う。アザレアの花言葉は恋の喜び。
そしてアセビの花言葉は……犠牲。
それを知っているのか、それとも。
そうすスヴェンが考え込んでいると、突如である。水まき機が作動した。
その水の範囲内から、知ってか知らずか逃れているダフネ。
水を全身に浴びたのはスヴェンだけであった。
「……はぁ」
「あら……水も滴るいい男よ、スヴェン」
その後二人は休める場所はないかと公園内を捜し歩いた。ベンチを見つけるとそこにすヴェンを座らせて、ダフネはハンカチですヴェンを拭こうとした。
その時である。スヴェンがダフネの手を取った。そして引き寄せる。
「……そろそろ、ここへやってきた理由を話さないのか」
そうスヴェンはダフネを引き寄せて言葉をかけた。
ダフネはそんなスヴェンの態度にも余裕を崩さない。
「たまには、こうやって何でもない一日を過ごす事も、大切よ」
どうだった? そう視線だけでダフネはスヴェンに問いかけると
「確かに……悪くはなかった 」
そうスヴェンは答え。ダフネのハンカチを身じろぎしつつ受け入れた。
● 休日の過ごし方『Shades=Dawn』の場合
雑貨屋『サンムーン』にはなんでもそろっているのである。
文具、家具、便利グッズ、寝具、シーツ、枕、ベッドの展示販売。
「く~」
「寝たらだめですからね」
そうShadesはベットに横たわる『tonalite=douceur』へ釘を刺した。
「あの寝具の寝心地をShadesのために確かめていたんですよ」
そういつもの明るい笑顔で接するtonalite。二人はそんなサンムーンに長らく調達できなかった日用品を買いに来た。仕事柄家に戻れない日が続いたり、休みが不定期だったりするので油断すると買い忘れる。貴重な休みは装備を整える日でもあるのだ。だが。
「いつの間にか籠の中がいっぱいなんですが」
「全てShadesのために必要なものでございます、あたしが言うのですから間違いございません」
全部自分の欲しいもののくせに。そうShadesは言いかけるがやめた。
楽しい気分に水を差す必要もないだろう。
二時間に及ぶ買い物の末、大きな袋四つ分の買い物袋をブラ下げることになったShades、会計を済ませるとtonaliteの示す道をついて歩く。
「いったいどこに向かっているんですか?」
「実はここにたどり着く前に気になるお店があったのでそこで昼食などいかがでしょうか」
そう提案するtonalite、彼女が指さす先には小さな喫茶店があった。
メニューも豊富そうである。
「どうでしょう?」
「いいんじゃないかな」
二人は喫茶店に入る、何でもコンセプトは果物だそうで。メニューのほとんどに果実が使われていた。
「このお店本当に偶然見つけたんですか?」
「ええ、もちろんでございます」
そう涼しい顔をしてtonaliteは告げる、それにしても、フルータリアンであるShadeの好みを理解して店を見つけたら覚えておくというのも、なかなか難しい気がするのだが。
「お勧めはアップルソテーのシナモン風味です」
「本当に偶然見つけたんですか? tonalite……」
その後いったん家に荷物を置いた二人、まだ日が高いので今度は『ラブファクトリア』に向かうことにした。
そこでチョコレート菓子の作成を体験しようと思ったのだが。そこで一悶着あって……。
っと、まぁこれは、また別のお話。
● 休日の過ごし方『クラーク』の場合
スローンズの薄汚い扉を押し開いて、黴臭い空気を肺からはじき出す。クラーク。
その手には情報の束が握られていて、ここ無しかご満悦である。
そんな雰囲気を察してかしらずか『キィル』が声をかける。
「で、今日のお役目はこれで完了か?」
「そうですわねぇ」
うーんと考え込みながらも街中に足を向けるクラーク。
「どこ行くんだよ?」
キィルが問いかけた。
「あら、目的なんて特にございませんわ」
「はぁ!? 普通目的があって歩くだろ!?」
「私、気まぐれですもの」
そうそっけなく返事を返してクラークはさらに歩みを速めた。
「私の性格は貴方がよく知る事じゃない」
「お前は異端者じゃなくて破綻者なんだよ!」
キィルが追い付きながらもそう告げる。
「性格的異端者に常識など無用でしてよ?」
そんなクラークを皮肉るようにキィルは大手を振って高らかに告げる。
「世の中じゃ。なんの役にも立たない異端者は弾かれるんだぜ」
「へぇ~ そうなんですの」
「何か1つくらい、大層なことでも成し遂げて貰いたいもんだね」
そう告げた矢先、クラークが歩みを止めて、その背に体をぶつけるキィル。
「そう言われますと何かやりたくなりますわね……」
「ん? サンムーン?」
見上げればサンムーンの看板が掲げられていた。日常雑貨屋である。
「……ああ、ここにいたしましょう」
なぜ? キィルがそう思うも、クラークは何も答えずさっさと買い物を済ませてしまう、キィルに買い与えられたのは白紙の本だった。
「ふふ、本を書くのです」
「なんでだよ!」
「私の素敵な冒険談。執筆推敲は貴方がおやりなさいませ」
ぐっと言葉を飲み込んで赤面するキィル
「あら? 言い出したのは貴方でしょう? 良いのかしら?」
そう確認しつつ、紙袋からさらにもう一つ何かを取り出した。
「貴方が書いて下さったら、貴方の好きな“彼女”がお喜びになりますのに……それと、はい」
「わ、可愛い縫いぐる! って何故?!」
キィルはその報酬に飛びついた。
「酬は前払いでございます。お気に召しまして?」
「恥ずか……?!」
「あら、貴方が可愛いものフェチなのを隠してたの……私が知らないとでも?」
「なんで知ってるんだよ!」
「ふふふ。さぁ、なんで知っているのかしらね?」
「お前は悪魔かよ! 」
そう慌てふためくキィルを見つめてクラークは笑った。
「まぁまぁ。可愛いこと」
そして踵を返し、歩き出しながら言う。
「私の武勇も、彼女の秘密も、貴方の恥ずかしい事も……ええ、執筆楽しみにしております」
「期待してましてよ? 私のパートナー様 」
● 休日の過ごし方『Vilhelm』の場合
『マザースマイル』では美味しい野菜のサンドイッチが有名である。
温かみある食卓に栄養バランスを考えた食事、なるほど人気になるのも頷ける。
そう『Yvo』は頷きながらサンドイッチを口に運ぶ。まぁYvoが口に運んでいるのは肉メインのサンドなのだが。
対して野菜をふんだんに挟んだサンドイッチ食べるVilhelm。
そんな軽食をもぐもぐしながら向かい合う二人。
Vilhelmのフェネックの尻尾が揺れるのをYvoは、死んだ魚の様な目でちらりと見ながら、淡々と告げた。
「ヴィルヘルムさんよぉ、俺ぁなんたってこんなおっさんと2人で外を歩かにゃぁならんのかね」
その言葉尻を捕らえるにどうやらYvoは無理やり連れだされたようだ。
「不満だったか?」
そうサンドイッチを飲み下しあっけらかんと問い返すVilhelmであった。
「不満だね……」
Vilhelmにはあえて言わないが、今日だけでもYvoを不機嫌にする出来事は山ほどあった。
Vilhelmがいれば待ち合わせに困らなかったり、人混みも背の高いVilhelmが居ると、通るのが楽になったり、Vilhelmといると。あのカップル素敵~など周囲に言われたり。
このマザースマイルに来るだけでイライラがマックスである。
「この小さいトマト可愛いな」
「小さくねぇ!」
がたりと立ち上がるYvo、だが自分の過剰反応が失敗だとわかると赤面して座った。
Yvoは自分自身『少々』小柄ではあるが、小さいとは思っていない。Vilhelmが大きいせいで小さく見えるのだ。あとはVilhelmと一緒にいると女と間違われる、それも嫌だった。
なので共に出かけようとはしていなかったのに……。
そうVilhelmを恨めしそうに見据えるYvo。
だが、いつもは穏やかな性格のVilhelmが珍しく一緒に外に出たいと我を通したのだ。そう言われると断ることもうまくできず、頷いてしまうYvo。
渋々ついて来たものの、苛立たし気にYvoは自分の長い髪をガシガシを掻き、Vilhelmが咀嚼し終わるのをまつ。
「この後はどうするんだ」
「噴水庭園まで行こうと思う」
また外に出るのか、そう思うと気分が重たいYvoだったが、その提案をまたしても断ることはできなかった。
● 休日の過ごし方『太陽』の場合
ラブファクトリア、そこは女性にとってのワンダーランド。
「太陽! クリームが、こんなに沢山。チョコレートも、全部使っていいの?」
「そうですよ」
「たべていいの?」
「いつもの三倍歯磨きするならね」
わーいっと無邪気に『海』はケーキの材料を取りに行った。
なんでも美味しいケーキを太陽に食べさせてあげたいらしい。
だけどスレイブである海はまだ幼く、結局太陽がほとんど創ることになったのだが。
「たのしいね! 太陽!」
そう腕の中で微笑む海を見て、連れてきてよかったと思った。
その後、海は市販されているチョコレート菓子をいくつも欲しがった。
「全部食べたい!」
「今作った、海のケーキのほうがおいしいと思いますよ」
「なんで?」
「愛情は最高の隠し味なんです」
「うーん、ちょっとよくわからないよ?」
きざなことを言ってしまい少し恥ずかしくなる太陽である。
そんな楽しい休日も終わりを告げようとしていた。
ラブファクトリアの帰り道。海が好きなレストランに行って美味しいものを沢山食べて。
それでも時間が余っている今日この頃。海がふと上空を見あげると。
その指の先に塔が見えた。星見の塔だ。
その星見の塔は上るのに一苦労するという。
「おなかごなしに、のぼるの~」
しかし元気をありあました海にとってあの高さは遅るるに足らないらしく。太陽の手を引いてぐいぐい上り始める海。
相当な高さを上りきって。太陽が汗をぬぐって一休みしていると。
「太陽! みて! みて!」
太陽が視線をあげるとそこには、地平線に沈んでいく太陽が見えた。
金色の光が地平線から溢れるように見え。藍色の空が覆いかぶさろうとしている。
「きれ~い」
海は階段から落ちそうなほどに身を乗り出していたので。恐ろしくなってその服を掴んだ。
海は振り返って罰が悪そうに笑う。
「あの星きれいなの」
「あれは、一等星ですね、名前は……」
「お星さまに名前があるの?」
「あるよ、今度覚えましょうか」
その言葉に海は笑顔で頷いた。
「今日はありがとう」
そう微笑む自分のスレイブ。その頭を撫でて太陽は笑う。
「また、遊びに来ましょうね」
こうして、それぞれの休日が終わりを告げようとしていた。
「そう言えば、これどうやって降りるんですか?」
「あれ」
海が指さす方向にはパラシュートが設置されていた。
約十分後、夜空を叫びながら降下していく二人組が確認されたのは言うまでもないことだった。
依頼結果
成功
|
依頼相談掲示板
【創造の光】スレイブもたまには休みたい 依頼相談掲示板 ( 6 ) | ||
---|---|---|
[ 6 ] スヴェン・ラング
ヒューマン / ナイト
2017-06-29 11:43:52
|
||
[ 5 ] クラーク
ヒューマン / シャーマン
2017-06-28 22:06:51
|
||
[ 4 ] アスフール
コロポックル / シーフ
2017-06-26 10:10:52
|
||
[ 3 ] Vilhelm
ケモモ / ナイト
2017-06-25 17:57:51
|
||
[ 2 ] 太陽
コロポックル / クレリック
2017-06-25 16:55:17
|
||
[ 1 ] ゆう
ケモモ / バード
2017-06-25 16:01:21
|
雑談 | ||
---|---|---|
| ||
[2] コーディアス 2017/09/21-12:16
|