人気のない荒れた道を、武装した小規模の集団が走る。
その歩みは乱れることなく、精兵である事が見て取れた。
総数12名のその集団は、センテンタリ軍だ。
彼らの目的は、後方撹乱。自由の利く動きの速い分隊を遊撃部隊として運用し、戦況を有利に運ぼうとしていた。
その試みが成功すれば、少なくない被害が出るのは確実だ。
補給の襲撃や後方からの不意打ちが行われ、敵の本隊を食い止めるのが困難になる。
それは何としても防がなければならない。
幸いにして、後方で物見に動いていた部隊により、事前に察知することが出来たが、あまりにも手が足りない。
敵の予想進路は、幾つかに絞れたが、その全てを抑えるには余裕が無い。
そこで貴方達に協力要請がなされたのだ。
斥候役の兵2名ほどが貴方達に随伴し、予想進路の一つを探っていた所で、敵の分隊を先んじて発見できた。
発見した斥候達の話によれば、あと数分で貴方達が居る小高い丘の横にある道を通るとの事だった。
小高い丘は、樹や雑草のお蔭で、身体を伏せていれば、先んじて敵兵に発見される事は無いだろう。
巧く行けば、不意を突くことが出来る。
そこで、斥候の2人から提案が。
自分達が敵の正面に出て一端注意を引き付けるので、その隙を突いて不意打ちをしたらどうかと申し出てきた。
斥候役の2人は、貴方達に敵の情報を伝えるために走り続けていた事もあり疲労困憊ではあったが、動きの速さに特化するために装備が軽装である事もあり、最初に敵の注意を引いた後に逃げに徹すれば、捕まることは無いだろう。
この提案を受けた貴方達は、どう動きますか?
後方からの不意打ちをするならば、斥候役の2人が危険になるのも承知の上で、ギリギリまで斥候役の2人に敵を引き付けて貰う事も出来るでしょう。
そうではなく、横からの不意打ちを突く場合でも、突撃する時間をズラし、敵を混乱させる事も出来るでしょう。
もちろん、巧くやらなければ、敵に気付かれ思わぬ反撃を受けることも。
どう戦うのか? その工夫は、貴方達に委ねられました。
斥候役2人は、本隊を守る為ならば、貴方達のどんな提案でも受けるでしょう。
この状況、貴方達はどう動きますか?
このエピソードはグランドプロローグ「創造の日」の連動エピソードです。
イベントで起きた様々な大事件の陰で、隠された物語をエピソードにしています。
歴史の狭間、真実の隙間を埋める物語へ参加してみてください。
なお「創造の日」にて選んだ選択肢と関係ないお話でも参加可能です。
状況説明
敵は12名。撃退して下さい。生死は問いません。
敵に一定以上のダメージを与えると気絶相当の状態になり、戦闘不能になります。
戦闘不能になれば、敵は動けなくなりますので、そこから止めを刺す事も出来ますし、斥候役の2人が持って来ていた細い紐で、後ろ手にして親指同士を結ぶなどをして捕縛できます。
敵の動きとしては、貴方達が隠れることのできる小高い丘の横にある道を通ります。
丘から道には、数秒で降りることが出来ます。
敵は、格別に強い訳ではありませんが、訓練された兵です。
なので、不意を突かれたとしても混乱し続けることは無いですし、不利になったと判断すれば逃走する事にも迷いは見せません。
味方の斥候役2人ですが、すでに限界ギリギリまで働き続けてヘロヘロなので、敵の注意をいったん引くぐらいのことしかできません。
場合によっては、敵に捕まって殺されるとかも有り得ます。
ただし、最初に敵の注意を引く程度なら、確実に無傷でこなせるほど有能です。
成功条件
敵の撃退です。なので、全てを倒す事も、味方である斥候役2人の無事も含まれません。
ただし、あくまでも成功条件ですので、敵の全てを倒し斥候役2人の無事も確保する事も出来ます。
以上です。
それでは、皆さまのご活躍をお待ちしております。
はじめまして。春夏秋冬と申します。
そそらそらでもエピソードを出させて頂いていますが、こちらでもよろしくお願いします。
少しでも楽しんて頂けるように、判定にリザルトノベルに頑張ります。
【創造の光・歪】後方撹乱を防げ! エピソード情報 | |||||
---|---|---|---|---|---|
担当 | 春夏秋冬 GM | 相談期間 | 8 日 | ||
ジャンル | --- | タイプ | EX | 出発日 | 2017/7/12 |
難易度 | 普通 | 報酬 | 通常 | 公開日 | 2017/7/22 |
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参加者一覧
クロカ=雪羅( 雨月 ) | |
ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 |
神崎 紫紅( リゼ ) | |
ケモモ | ナイト | 17 歳 | 女性 |
ブラン( アリア ) | |
コロポックル | バード | 17 歳 | 男性 |
Erudelia Fluorite( lily ) | |
ドワーフ | シーフ | 19 歳 | 男性 |
エレクトリカ・レイナー( ブラスト ) | |
ドワーフ | メイド | 19 歳 | 女性 |
レイ・ヘルメス( アン・ヘルメス ) | |
ドワーフ | メイジ | 18 歳 | 男性 |
日高陽( ルーヤ ) | |
ヒューマン | ナイト | 18 歳 | 男性 |
ジャンヌ=オーレリア( コンドル ) | |
ヒューマン | ウォーリア | 19 歳 | 女性 |
リザルト
●戦闘開始
人気のない荒れた道を、武装した小規模の集団が走る。
彼らは後方撹乱を目的としたセンテンタリ軍だ。
その進行に乱れはなく、ペース配分を守りながら進んでいる。
独立した遊撃部隊としての後方撹乱を目的としているため、動きの邪魔になる武装は最小限にとどめ、補給なしでも現地調達で戦えるよう訓練されている。
それはつまり、放っておけば小さな村が襲われ、食糧や武器となる物が奪われる可能性も示していた。
あるいは、補給部隊などの焼き討ちなどで、少なくない死者が出るだろう。
無用な被害を出さないためにも、絶対に防がなくてはならない。
そのために、冒険者たちは立ち塞がった。
「隊長。前方に人が」
前方の索敵をしていたセンテンタリ軍の1人が、前を走る4人の集団に気付き申告する。
「駆け足。潰せ」
短く端的に隊長は命令する。すぐに反応し、速度を上げるセンテンタリ軍。
瞬く間に距離が縮まっていく。
(斥候が2人に、護衛が2人か?)
距離が縮まり、姿が良く見えたことで、隊長は素早く判断する。
前を走る2人は武装を最小限にとどめる軽装に対して、その後ろを走る2人は武装を固めている。
1人は騎士めいた姿のヒューマンの女性。もう1人は、片手剣と片手盾を手にしたケモモの女性だ。
(ナイトかウォーリアのような近接戦タイプか。こちらに弓でもあれば良かったが……近接戦も、やむを得んか)
遊撃部隊として邪魔になるため、かさばる上に矢が必要な弓を持って来れなかった事を悔やむが、すぐに意識を切り替え、近付く戦闘に意識を集中する。
後方から気付かれないよう可能な限り音を消して近付いていくセンテンタリ軍。
あと僅かに近づけば、一気に走り寄って攻撃できる。
だが、それが叶うことは無かった。
「センテンタリ軍だ!」
前を走っていた斥候の1人が、後ろを振り返り大声を上げる。
その声には切羽詰まった響きがあり、パニックに陥りそうなほど慌てているように聞こえた。
だからこそセンテンタリ軍は気付かない。これが、罠である事に。
気付かれたと思い、速度を上げるセンテンタリ軍。
その前に立ち塞がるように動いたのは、斥候の2人を守るような位置に就いていた『ジャンヌ=オーレリア』と『神崎紫紅』の2人だった。
「先に行け! 本陣にこの事を伝えろ!」
「私達が守ります! 貴方達は逃げて!」
ジャンヌと神崎の言葉を受けて、斥候2人は苦渋の表情を見せた後、
「すまない!」
悔いるような声で、一気にその場から走り出す。
慌てて追いかけようとするセンテンタリ軍。
だが、ジャンヌと神崎が道を塞ぐように立ちはだかる。
この時点で、センテンタリ軍の隊長は斥候2人を追うことを止めた。
「追うな。あの軽装では追い付けん。それよりも目の前の2人を殺して、進行ルートを変更する」
冷静に部下に告げ、部下も即座に従う。
「前衛3と3でそれぞれ当たれ。後衛も共に3と3でバックアップ。多少時間は掛かっても構わん。こちらの被害を0にするつもりで当たれ」
本命の後方撹乱のため、余計な消耗を嫌った隊長は、隊列を組んで多勢で押し潰そうとする。
けれど、ジャンヌは怯んだ様子も見せず。猛々しく声を上げた。
「ディナリウム聖騎士団第三部隊が隊長、ジャンヌ=オーレリアとは我の事。さあセンテンタリの賊共よ、かかって来るがいい!!」
真正面から撃ち砕くように、ジャンヌは名乗りを上げる。
彼女の傍に控えるのは、スレイブである『コンドル』
正々堂々と真正面から立ち向かおうとする主を援護するように、周囲を警戒しながらサポートに動こうとする。
戦いの意志を見せるのは神崎も同様で……。
「ここは通しません!」
逃げていった斥候達の後を追えないよう、その身を挺してでも守るというように、センテンタリ軍に立ち向かう。
その表情には戦う決意が見て取れたが、同時に僅かに消し切れない恐怖も滲む。
そんな彼女を支えるように、スレイブである『リゼ』が寄り添う。心配そうに見つめるリゼに……。
「大丈夫。戦うことは怖いけど、大勢の人が傷つく方が嫌だから。ここは戦うよ」
怖さを飲み込むような笑顔を浮かべ返した。
この時点で、狭い道をセンテンタリ軍は陣形を取り、前を塞ぐジャンヌと神崎に対して有利な形を取る。
これはジャンヌと神崎が前に出て注意を引いたからこその流れであり、あまりにも2人に対して有利を意識し過ぎた動きだった。
だからこそ、横合いからの奇襲は、この上もなく成功した。
「横ががら空きですよ!」
注意を引くためにわざと声を上げ、『エレクトリカ・レイナー』がスレイブである『ブラスト』と共に突貫する。
後衛に就いていたセンテンタリ軍の1人に、跳び込むように踏み込んだ。
奇襲を受けたセンテンタリ軍の1人が、雑に振ってきた片手剣を避け、脇腹にナックルの一撃を叩き込む。
ブラストのサポートを受け強化された一撃は、深々と減り込むように突き刺さった。
痛恨の一撃に、身体をかがめたセンテンタリ軍の1人に、エレクトリカは顔面が砕けるような勢いで連撃を放つ。
見ているだけで痛みが伝わるほどの損傷に、僅かではあるが周囲には動揺が走る。
それを押し広げるように、
「あいにくケダモノにかける情けは持ち合わせていません。覚悟して下さい」
冷たく言い放ち、更なる敵を求めていく。
その戦い方はヒット&ウェイ。多勢の中で囲まれないよう注意を払いながら、致死へと至る一撃を叩きこんでいく。
そんなエレクトリカへと向かう敵は、少なくはないが多すぎるという事も無い。
なぜなら他の冒険者たちも、すでに動いていたからだ。
「この程度ですか? こんなにも分かり易い奇襲に引っかかるなんて。センテンタリ軍の練度も、たかがしれてますね」
煽るように、敵の前衛に奇襲をかけた『日高陽』がセンテンタリ軍に言う。付き従うスレイブである『ルーヤ』は、油断なく周囲を警戒していた。
「どうしました? 練度も低い上に臆病者ですか? 来ないなら、こちらから行きますよ」
奇襲と同時に1人を斬りつけ、即座に囲まれないように動いていた日高は、決して止まることなく戦いを続ける。
ゆらりゆらりと、どこか雰囲気がつかめない動きで攻撃を防ぎながら切りかかっていった。
確実に傷を増やされる前衛のセンテンタリ軍。
多勢で押し潰そうとするが、すでに踏み込んで来ていたジャンヌと神崎の助勢もあり、一進一退を繰り広げる。
この時点で、センテンタリ軍の前衛はこう着状態。後衛はエレクトリカに翻弄されているとはいえ、余裕があった。
(逃げるか?)
センテンタリ軍の隊長は僅かに迷う。今のままでも押し切れる自信はあるが、本来の目的は後方撹乱。こんな所で余計な戦力を潰している場合ではない。
悩むのは一瞬。
(逃げる)
指揮者として、本来の目的を重視し、撤退命令を出そうとした。
だが、それは叶わない。
後方で援護に就いていた『レイ・ヘルメス』の一撃を受けたからだ。
「コードネームZEROの名の下に、増幅された魔の力を我が身に宿せ、凍て付く氷の刃を標的へ、チェックメイトだぜ!」
呪文詠唱を終らせ、スレイブである『アン・ヘルメス』のサポートにより強化された魔導書の一撃が放たれた。
氷のような冷たさを感じさせる漆黒のマジックショットが、敵の隊長の胸元に突き刺さる。
「ぐっ!」
まともに食らい、けれど倒れることなく憎悪の視線を向けるセンテンタリ軍の隊長。
その眼差しに、レイは愉しげに声を上げる。
「やっぱ人間相手の方がやりづらくて、その分愉しいよ。一筋縄じゃいかねぇ方が、俺燃えんだわ」
それにアンは応える。
「にぃ、私が盾となってあげるので任せやがれーなのです。チェックメイトなの」
言葉通り、レイの盾になるように前に立つと、センテンタリ軍の敵意を受け止める。
その状況にあって、レイは愉しげに、更なる詠唱を重ねていく。
一方、レイの攻撃を受けた敵の隊長は、痛みを無視して部下に命令を告げようとした。
それを止めたのは、『クロカ=雪羅』。スレイブである『雨月』を伴い、2段階目の奇襲を成功させる。
手にした両手剣を携え、一気に間合いを侵食する。
周囲を警戒していた敵の隊長だったが、勢い良く振り抜かれた一撃を避け切れない。
鎖骨を断ち切られるような一撃を食らう。
だが、それでも倒れず、憎々しげに声を上げる。
「邪魔を……するな!」
手にした剣を振るい、斬りつける。ここに来るまで走り続け、いま傷を受けたというのに、その振り込みはなおも鋭い。
しかし、その全てをクロカは避け切る。冷静に剣筋を見極めながら、
「邪魔をするな? それはお互いさまだろ。だって、皆にとってアンタらは邪魔なんだろ? ――じゃあ、潰さないとね?」
どこまでも冷静に、殺し合いの中であってさえ淡泊に振る舞いながら、敵の隊長が攻撃を放ち終えた瞬間、カウンターの一撃を叩きこんだ。
雨月のサポートにより強化された一撃は、断末魔の声を上げる余裕さえ与えず、一振りの元に命を断ち切った。
その瞬間、敵全体に動揺が走る。指揮者を失った彼らには、明らかな焦りが見えた。
それを更に押し広げるように、『ブラン』と『Erudelia Fluorite』が攻撃に加わる。
2人は、人数的に少なかった奇襲の第2段階目に加わっていた。
ブランは、スレイブである『アリア』のサポートを受け、手にした楽器を奏でる。
猛々しき戦雲のしらべが響き、冒険者たちの攻撃力と命中率を上昇させる。
それを嫌ったセンテンタリ軍が襲い掛かろうとするが、Erudeliaがスレイブである『lily』のサポートを受け強化された左右の片手剣を駆使し近づけさせない。
敵の注意を引きつけた上での2段構えの奇襲。
それは功を奏し、敵の隊長を早い段階で倒す成果を上げる。
この状態で、敵を逃さぬよう動きながら攻撃を重ねる冒険者たち。
それは狙い通り敵の逃走を防いでいた。
だが、同時にそれは、敵に逃げ道を与えないということでもある。
隊長を殺され敵意を増したセンテンタリ軍は、もはや命を捨てるような勢いで果敢に迫ってくる。
冒険者たちは奇襲による混乱を優位に生かしながらも、泥沼の殲滅戦が始まった。
●殲滅戦
ブランの戦雲のしらべが響き、味方の攻撃力と命中力が上がる中、冒険者たちは果敢に攻めていく。
縦横無尽に戦場を駆け回るのはエレクトリカ。
ヒット&ウェイを繰り返しながら敵を翻弄し、その動きに付いていこうとするあまり、孤立した敵を確実に仕留めていく。
バックステップで距離を取り、敵が前に踏み込んで来た瞬間、弾けるような勢いで拳撃の間合いに跳び込む。
虚を突かれ動きが止まった敵。その両腕を砕くような連撃を、コンビネーションで放つ。
痛みで顔を歪め、力なく両腕が下がった所で、みぞおちへのストレート。
更に身体が沈んだ所で、顎を砕くようなアッパーを叩きこんだ。
見ているだけで痛みが伝わってくるような連撃に、敵に僅かではあるが怯むような気配が滲む。そこに、
「どうしたんです? 臆病風に吹かれましたか? 来ないなら、こちらから行きますよ」
エレクトリカは挑発するように言いながら、再び敵へと向かって行く。
淡々と敵に対して攻撃を繰り返し、敵の戦意を削ぐために、あえて残酷で痛めつけるような止めを刺しながら戦っていった。
そうして敵に接していくのはクロカも同様だった。
両手剣を振るい、淡々と敵にダメージを与えていく。
その攻撃は冷静でありながら苛烈であり、敵の全てを潰し切ろうとするかのようだった。
敵もやられるままではなく、少なくない傷を与えてきたが、怯むことなく変わらぬペースで両手剣を振るい続けた。
それにより敵の後衛の勢いは、かなり落ちていく。
クロカが最初に止めを刺した隊長がやられ、指令役が居なくなった時点で不利になっている。
この場になってようやく、状況を本陣へと伝えるため、敵の1人が逃げ出そうとした。だが、
「逃げられると……思ってんのかよ?」
クロカが前に立ちふさがり、攻撃に集中する。
そこを横合いから、自由に動ける敵が襲い掛かってこようとするが、Erudeliaが間に入り食い止めた。
仲間のサポートを無駄にせず、一気に攻撃の密度を上げるクロカ。
連続して叩きこまれた剣撃を捌き切れず、逃げ出そうとした敵は斬り伏せられた。
敵を1人倒すと、即座に他の敵目掛けて、クロカは戦いを重ねていく。
そうした活躍により、敵の後衛はどんどん数を減らしていった。
それを更に広げたのは、レイ。魔導書を使った攻撃を叩き込む。
遠距離からの一方的な攻撃に、敵は止めるべく襲い掛かってくる。
そこに立ち塞がるのは、レイのスレイブであるアン。
「にぃの所には通さねーのです。耐久性とこの自慢の頭脳を持って、成敗してくれるわーです」
敵はどうにかアンを抜いてレイの元へと辿り着こうとするも、叶わず足止めを食らう。
そこへ追加で敵が一人向かおうとした。しかし、日高がそれを防ぐ。
横合いからシールドアタック。突撃する勢いも加え、片手盾を叩き込み動きを止めた。
「甘いですよ」
静かに挑発する日高に、敵は片手剣を連続で振り抜く。
それを日高は油断なく避けていった。
後衛であるレイから遠ざけるように誘導しながら、カウンターの迎撃も忘れない。
一撃必殺になるほど大振りではなく、確実に敵の勢いを削るような攻撃を重ね追い詰めていく。
そして脇腹への斬撃を一つ、喰らわせた所で横に跳ぶ。
レイの攻撃の邪魔に成らないよう、射線を開けるような動き。
その好機を、レイは逃さない。
「チェックメイト」
マジックショットが勢い良く叩き込まれた。
その一撃に耐えきれなかった敵は、その場に崩れ落ちる。死んではいないようだが、最早戦える状態ではない。
それを見極め、日高は敵の攻撃を受けているアンの元へ。
気付いた敵は、意識を日高へと向けるが、その隙にレイの一撃が叩き込まれた。
そこへ日高は踏み込む。片手盾を叩き付け動きが鈍った所で、止めの片手剣を急所に突き刺し仕留めた。
連携によって、敵の数は減っていく。
それは、最初に敵に立ちはだかった、ジャンヌと神崎も同様だった。
「どうした! センテンタリの賊共よ! お前達が倒すべき敵はここに居る! 恐れずかかって来るが良い!」
高らかに声を上げ、ジャンヌは正面から敵にぶつかっていく。
それは正々堂々を体現するかのように、真っ直ぐな戦い方。退くことなく前へ前へと踏み込んで、渾身の一撃を叩き込む。
だが、それだけに側面からの攻撃に弱い。敵の1人が引き付けるような戦い方をする中で、他の1人が連携の一撃を放とうとする。
しかし、神崎がそれを防ぐ。片手盾で一撃を防ぎ、牽制の片手剣で敵を遠ざける。
「すまない!」
「気にしないで下さい」
ジャンヌの礼に、神崎は笑顔で応える。
その笑顔は、戦いに恐怖を感じているからこそ。
怖いから常に笑顔を顔に貼り付けて、それで相手の人が怖がって逃げてくれたら良いと思いながら、それでも戦いに背は向けない。
戦いの恐怖より、誰かが傷付けられる方が怖くて嫌だから。
だからこそ、神崎は戦う。
そんな神崎の動きに合わせるように、ジャンヌも戦いを繰り広げていった。
突出しすぎることなく、時に神崎を守るように。振う一撃に迷いなく、けれど共に戦う相手への配慮を忘れず剣を振るっていった。
そうして戦っていく内に、敵の後衛の全てを叩き潰した仲間が援護に駈けつける。
ここにおいて勝負の趨勢は尽きた。
敵の注意を真正面から引きつけた上での、2段奇襲作戦。それは功を奏し、1人も逃がすことなく倒していく。
苛烈な戦いゆえに、冒険者たちも少なくない傷を負いながらも、ついには最後の1人を倒し切った。
その瞬間だった。冒険者たちの全てに、奇妙な感覚が流れる。
それはまるで、巨大な流れが僅かではあるが切り替わるような、そんな奇妙な感覚。
そして遥か遠い、場所ではない何かに繋がるような感覚だった。
同時に、今この時、ある筈もない『なにか』を幻視する。
それは遥か空を飛ぶ巨大な都市であり、周囲を飛び交う飛行物体の群れでもあった。
過去のどこにもない、そして現在の誰も知らない、そんな未知を、冒険者たちは垣間見る。
それは運命の流れを見るような、在り得ぬ筈の体験だった。
それが何なのか分からぬままに、誰にも気づかれず一つの歪みが消え失せる。
後方撹乱を目的としたセンテンタリ軍の分隊。
その目論見を潰し倒し切ったことで、この世界に残っていた小さな歪みはゆっくりと消えて行ったのだった。
そんな在り得ぬ体験をした冒険者たちは、その記憶を僅かに残しながらも、違和感を感じることなく今やるべき事を再開する。
切り変わった過去が、現実に塗り潰され現在となるかのように。いま在る事実だけが真実であるかのように、皆は当たり前のように受け入れていた。
歪んだ異常が消え去れば、後に残るのは日常だけ。
日常の中の常識に、皆は飲み込まれ生きていくのだった。
●戦い終わり
「この度の戦い、貴殿のお蔭で助かった。改めて礼を言わせて貰う」
「気にしないで下さい。私も、助けて貰いましたから」
敵の全てを倒し切り、生き残った敵は紐で完全に拘束し終わった中、ジャンヌと神崎は、ほっと一息つくような会話を重ねる。
敵を倒し切った後、これから移動するのに合わせ、皆は少しの時間ではあるが休憩を取っていた。
その間に、冒険者たちは思い思いに動いていた。
「なにも喋りそうにねぇな」
拘束した敵を軽く訊問していたレイは、僅かに残念そうに、けれどまだまだ遊べるゲームを見つけたとでもいうような愉しげな笑みを浮かべ、アンと話す。
そしてブランやErudeliaは、念の為に周囲を警戒していた。
他に視線を向ければ、
「戻ったら、手入れをした方が良いかもしれませんね」
エレクトリカは武器の確認を行い、
「異常は……ないみたいだね」
クロカは念のため、出発前に警戒で周囲を見て回っていたが、何も無かったので体を休めている。
そして日高は、倒した敵に黙とうを捧げていた。
(……この人達にも、家族は居たんだろうな……)
一人の兵士として戦った彼らを無下に扱いたくないからこその行いだった。
そうして思い思いに休憩の時間を費やし、逃げる演技をした斥候達も戻って来ると、拘束した敵を抱えその場を移動し始めた。
本来ならば、甚大な被害が出る筈だった後方撹乱を防いだ冒険者たちの活躍は、誰に知られる事は無くとも、きっと明るい未来を作っていく助けになっただろう。
そう思える、事件の顛末であった。
依頼結果
成功
|
依頼相談掲示板
【創造の光・歪】後方撹乱を防げ! 依頼相談掲示板 ( 20 ) | ||
---|---|---|
[ 20 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-08 21:10:17
|
||
[ 19 ] 日高陽
ヒューマン / ナイト
2017-07-08 13:00:32
|
||
[ 18 ] クロカ=雪羅
ヒューマン / ウォーリア
2017-07-08 12:36:19
|
||
[ 17 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-07 20:10:16
|
||
[ 16 ] エレクトリカ・レイナー
ドワーフ / メイド
2017-07-07 17:38:39
|
||
[ 15 ] 日高陽
ヒューマン / ナイト
2017-07-07 13:13:53
|
||
[ 14 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-07 08:33:25
|
||
[ 13 ] エレクトリカ・レイナー
ドワーフ / メイド
2017-07-07 00:28:50
|
||
[ 12 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-06 19:46:52
|
||
[ 11 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-06 19:43:25
|
||
[ 10 ] エレクトリカ・レイナー
ドワーフ / メイド
2017-07-06 12:11:09
|
||
[ 9 ] 神崎 紫紅
ケモモ / ナイト
2017-07-06 07:26:54
|
||
[ 8 ] クロカ=雪羅
ヒューマン / ウォーリア
2017-07-05 23:38:54
|
||
[ 7 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-05 23:35:31
|
||
[ 6 ] クロカ=雪羅
ヒューマン / ウォーリア
2017-07-05 20:48:01
|
||
[ 5 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-05 19:54:50
|
||
[ 4 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-05 19:50:48
|
||
[ 3 ] 日高陽
ヒューマン / ナイト
2017-07-05 19:23:53
|
||
[ 2 ] レイ・ヘルメス
ドワーフ / メイジ
2017-07-05 09:40:16
|
||
[ 1 ] クロカ=雪羅
ヒューマン / ウォーリア
2017-07-04 22:05:30
|