プロローグ
ディナリウムにある、とある市場。
そこには今、見慣れない一団が居た。
白い衣を身に着けた彼らは、ディナリウムではない他所の国からやって来たセイントクロスという集団だ。
彼らは、世界有数の大国であるディナリウムにクリスマスを伝えることで、それが世界中に広まってくれないかと思いやって来ているのだ。
「どうぞ。お気軽に見て、手に取って下さい」
彼らが広げているのは、赤を基調とした服装だ。要所要所を、ふわふわのファーで彩られている。
他にも、幾つもの商品が。
ディナリウムにやって来たセイントクロスは、幾つかの集団に分かれ活動していたが、今ここに来ているのは行商人の一団だ。
クリスマスに関わる商品を広めることで、自分達の文化を伝えようとしているのだ。
「珍しい、異国の品物です。どうぞ、プレゼントに如何でしょうか?」
売り出される商品は、お菓子もあれば、かわいい服もあり。
他にも、ディナリウムでは冒険者の活動が活発という事で、クリスマスにちなんだ武器や防具まで売られていた。
珍しいそれらに、大勢のお客が集まっている。
その中には、ディナリウム政府の人間も。
彼らは、クリスマスを広めに来たセイントクロスの動向を平和裏に調査するために来ていたのだ。
すると、行商をしていたセイントクロスの1人、ふくよかな女性が調査員に声を掛ける。
「別に私達は、何もしませんよ。ただ、クリスマスを知って貰いたいだけです」
これに調査員がギョッとした顔になると、ふくよかな女性はくすくす笑いながら言った。
「目つきが違いますもの。気にして頂けるのは嬉しいですけれど、今は商売をやっていますから。お客さまとしてなら、歓迎しますよ」
これに調査員はバツの悪い顔になると、その場を後にした。
そのあとすぐ、ギルドを介してアナタ達にディナリウムから依頼が跳び込んできました。
内容は、異国から来たセイントクロス達が行商している商品を買って来て欲しいとの事でした。
そのための費用は、ディナリウムが出すとの事です。
最終的には、購入した商品はディナリウムに引き渡すことになりますが、それまでは購入した商品を使ってみたり着てみたりして感想を聞かせて欲しいとの事でした。
それも、調査情報として欲しいとの事です。
お買い物を頼まれたこの依頼、アナタ達ならばどうしますか?
解説
状況説明
クリスマスを広めるためにやって来たセイントクロスから商品を購入して下さい。
購入場所
ディナリウムの、とある市場。
お菓子や干した果物といった食べ物を売っている屋台や、ちょっとした小物を売っている露天商などがゆったりと商売をしています。
人気はそこそこ。それなりにお客さんが市場を巡っています。
セイントクロスが売り出している商品
サンタドレス・サンタスーツ
サンタコスの衣装です。女性用がサンタドレス、男性用がサンタスーツです。
サンタドレスは、要所要所をふわふわのファーで彩られ着込むと温かいです。
サンタスーツは、動き易く温かいです。
クリスマスブーツ
サンタの足をかたどった、お菓子入れです。
お菓子を入れると、綺麗にラッピングしてくれます。
キャンディケインロッド
キャンディを象った魔法の杖。甘い匂いがする。
他にも、クリスマスにちなんだ商品でしたらあり得ますので、プランにてお書き下さればリザルトで出ます。
ただし、極端に無理のあるものは難しくなります。
PCの取り得る行動
1 サンタドレス・サンタスーツを着て、市場を見て回る。
スレイブとデート系でも良いでしょうし、楽しくお買いものでも大丈夫です。
着替えは、セイントクロスが商品を乗せてきた馬車の中で、外から見られずに行えます。
2 クリスマスブーツに入れるお菓子を市場で探す
スレイブと一緒に見て回りながら探して下さい。
お菓子だけでなく、小物を入れてプレゼントにするなど可能です。
クリスマスブーツに入れたものをセイントクロスの行商人の元に持って行くと綺麗にラッピングしてくれます。
スレイブに、あるいは離れた家族にプレゼント。
他にも、なにかあればお好きな書き込み下さい。
1、2以外でも、クリスマスにちなんだ商品をセイントクロスから買うプランを書いて頂ければ、後は市場を巡ったりするのは自由になります。
なお、クリスマスブーツ以外の、サンタドレス・サンタスーツ、キャンディケインロッドは、購入後はディナリウムに渡すことになります。
以上です。
それではご参加をお待ちしております。
ゲームマスターより
おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
今回のエピソードは、大規模作戦に関連した事前連動のクリスマスエピソードです。
買い物がてら、スレイブとデートをするもよし、スレイブと一緒に買い物をして家族や他の誰かのプレゼントを買うもよし。のんびりとした日常系のエピソードになっています。
興味を持って頂けましたら幸いです。
【陽光】クリスマスにお買いもの エピソード情報
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担当 |
春夏秋冬 GM
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相談期間 |
5 日
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ジャンル |
日常
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タイプ |
ショート
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出発日 |
2017/12/30
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難易度 |
簡単
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報酬 |
少し
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公開日 |
2018/1/9 0 |
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最近セイントクロス絡みの依頼受けクリスマスに懐疑的 そんな僕を クリスマスに罪はありませんよ 正しく知る為にもこの依頼受けてみましょう ルゥに諭されやってきた
なんだよこのダサ…モゴモゴ サンタコスに着替えて彼がそんな事を言うから口を塞ぐ だめですよ、あなたアンチ脳になってます ほらあちらで甘い物食べて落ち着きましょう?
ツリー型の焼菓子とホットドリンクで一息 私は好きですよ?この情熱的な赤いドレス 温かいですし(キャンディケインロッド振りつつ ルゥには派手な色だが悪くは無い 楽しそうな彼女見て僕も気持ち切り替える事にした 悪かったね、もう大丈夫だよ
ちゃんと調査デートする
楽しいなら定着するんじゃないかな そう報告に添える
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いつもの年より酔い対処の薬の注文入ると思ったらこんな事になっていたのか 個人的な情報収集も兼ね依頼を引き受けた
見て回る 店員にはクリスマスについて謂れや趣旨、特に飲酒の習慣に関して詳しく尋ねたい シルキィ:私はマスターの情報収集の横で買う物を選んでよっと
途中からサンタコスで回る 贈物の風習に倣い 近所の子供達への贈物にしようとブーツに詰めるお菓子を見て回った 詰めたらラッピング
食べ物も色々食べてみた 甘味はシルキィが見た目相応な反応になるのが微笑ましい
報告は 俺は聞いた事感じた事を話す シルキィ「牛を放ったら面白い事になりそうだと思いました というのは冗談ですけど 赤い色が溢れるのは元気になっていいなって思いました
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目的 クリスマスブーツに入れる小物を買う
行動 調査…という名目ですから、いろんな商品を買ってみましょう あら…!このラッピングとても素敵ですわね!どうやってやったのかまた数点買いますので、見せて下さいませんか! ふむふむ…なるほど、何となくはやり方を理解しましたわ…ところで、その包装紙は買えるのでしょうか?
さて、再度お買い物再開ですわね! 質問の意味は…聞かないで下さいませ! 色々興味深いものも多いですから、一緒に見ていきましょう!
これだけ取り置きで…よろしくお願いいたします さて、買ったものはディナトリウムに渡しに行きましょうか 渡し終わったら、また店に戻りますわよ
店の外で少しお待ちくださいませ はい…どうぞ
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参加者一覧
リザルト
○クリスマスに買い物依頼
ディナリウムの、とある市場。
年末という事もあり、寒さにも拘らず賑わっている。
その一角で商売をしているのは、白い衣に身を包んだ集団。
セイントクロスと呼ばれる彼らは、自分達の文化であるクリスマスを普及するために、世界有数の大国であるディナリウムで商売をしていた。
そんな彼らを探るべく、買い物をして欲しいと頼まれた冒険者たちは、それぞれスレイブと一緒に買い物を楽しんでした。
○クリスマスプレゼントは家まで待って
「クリスマスなんてもの、調べる意味なんてない気がするな」
お客で賑わうディナリウムの市場。
そこにいるセイントクロスの調査に来た【コーディアス】は、どこか懐疑的に口にした。
ある意味、それも仕方がない。
なにしろ少し前に、酒蔵から酒と神水と呼ばれるアイテムを強奪したセイントクロスを拘束する依頼を受けていたからだ。
スレイブを酔わせる神水のせいで、彼のスレイブである【ルゥラーン】も酔っぱらってしまい、ちょっとした騒動に巻き込まれている。
それから日は大して経っておらず、厄介事の記憶は強く残っていた。
「ディナリウムはクリスマスを広めたいみたいだけど、巧くいくとも思えないね」
ため息をつくように言うコーディアスに、寄り添うようにして一緒に歩くルゥラーンが返す。
「クリスマスに罪はありませんよ。正しく知る為にもこの依頼を成功させましょう」
なだめるように言うルゥラーンに、肩をすくめるようにして返し、セイントクロスの元に。
以前の依頼で、酒でバカ騒ぎするセイントクロス達を見ているので思わず身構えるが、そこで主に取り仕切っていたのは1人のふくよかな女性。
「いらっしゃいませ」
穏やかな対応に、どこか肩すかしを食らった気持ちになりながら、キャンディケインロッドとサンタドレス、そしてサンタスーツを試着する事に。
外からは見えない荷台馬車の中に入り着替える。
着替え終わり、まだどこか釈然としないコーディアスは、ついつい愚痴をこぼすように言う。
「なんだよこのダサ――」
「だめですよ、あなたアンチ脳になってます」
そっと人差し指をコーディアスの唇に当て、ルゥラーンは言った。
「そんなことだと、幸せが逃げちゃいますよ。依頼ですけど、折角一緒に買い物に来たんです。楽しみましょう」
一緒に買い物が出来る喜びを表情に浮かべながら、続けて言う。
「それに、私は好きですよ? この情熱的な赤いドレス。温かいですし」
鮮やかでありながら濃すぎない、やわらかな赤を基調としたサンタドレスは、ルゥラーンに良く似合っている。
そしてどこか遊ぶように、くるりと手にしたキャンディケインロッドを回す。
楽しげなルゥラーンに、コーディアスは毒気を抜かれたように今までの後ろ向きな気持ちが消えていく。
「悪かったね、もう大丈夫だよ」
コーディアスの言葉に、ルゥラーンは柔らかな笑みを浮かべ言った。
「甘い物でも食べましょう」
ルゥラーンに誘われて馬車の外に出ると、ふくよかなセイントクロスの女性が、トレイに乗せた飲み物を勧めてきた。
「グリューワインです。赤ワインにオレンジに林檎と、砂糖にスパイスを加えて温めたものです。身体が温まりますよ」
これにコーディアスは苦笑するように言った。
「お酒、好きなんですか?」
すると、ふくよかな女性は言った。
「身体が温まりますから。寒い場所だと、どうしても必要になって来るんです」
そこまで言うと、軽くため息をつくように呟く。
「限度はありますけどね。族長たち、無茶をしてないと良いんですけど」
そして、心配事を振り払うように、明るい声で続けて言った。
「お酒がお好きでないなら、ホワイトグロッグはどうですか? リンゴジュースに砂糖と生姜を入れて、ハーブで風味付けしたものです。こちらも体が温まりますよ」
コーディアスとルゥラーンは苦笑するように見詰めあい、勧められたホットドリンクを手に設置されたテーブル席に。
そこで出されたツリー型の焼き菓子を楽しみ一息つくと、再びお買いもの。
「ブーツに菓子、どういう事だ?」
疑問に思いながらコーディアスは、クリスマスブーツを手にするルゥラーンの期待するような表情に、苦笑するように言った。
「ほら、ルゥ。欲しい物入れていいよ。入るだけ買ってあげるから」
「本当ですか!?」
ルゥラーンは喜びに声を上げ、やる気を見せる。
細い物や四角いお菓子を、パズルのように合わせて入れていく。
「まだ入ります」
「や、やるな……!」
奮闘するルゥラーンに、邪魔をしないよう少し離れる。
そんな彼女を見ながら、コーディアスは思う。
(お菓子がプレゼントってのも、味気ないな)
そこに、ふくよかな女性が近付き小声で言った。
「クリスマスブーツを買って頂いたお客さまには、割引セールをしています」
「良いのありますか?」
「どうぞ、見て下さい」
そしてしばらく経って、ルゥラーンは一杯のお菓子が入ったクリスマスブーツをコーディアスに渡す。
コーディアスは綺麗にラッピングして貰い、ルゥラーンに手渡す。
「はい、いつもお世話になってるお礼。メリークリスマスだっけ?」
これにルゥラーンは、温かな笑みを浮かべ返した。
「メリークリスマス。あなたの為のお菓子でもあるんですよ? 一緒に頂きましょうね」
ルゥラーンの言葉に、ほんの少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべるコーディアス。
意味深な笑みに不思議に思うも、市場巡りを提案されそちらに意識が向く。
2人で一緒に巡りながらコーディアスは言った。
「よくわかんないけどクリスマスって楽しんだもの勝ち! て事なのかな」
「そうかもしれませんね」
ルゥラーンは穏やかに返しながら、2人一緒の市場巡りを楽しんだ。
そして、ルゥラーンとの市場巡りを楽しんだコーディアスは、報告書に所感を添えた。
「楽しいなら定着するんじゃないかな」
ディナリウムは報告書を受け取り、しっかり今後の方針に組み込む事にした。
そうして依頼は終わり、家に帰ると、ルゥラーンに嬉しい驚きが。
クリスマスブーツに乗せられていた知らない小箱。
中には、星とヒイラギのペンダントが。
(私がお菓子選びに夢中な間、彼はこれを……もう!)
胸が熱くなるルゥラーンだった。
そうしてクリスマスにお買い物をしたのは、他の冒険者たちも同様だった。
○赤を着込んでお買いもの
「今日は気になるものがあればなんでも買ってやろう」
微笑を浮かべながら言う【クロスト・ウォルフ】に、彼のスレイブである【シルキィ】は笑いながら返す。
「にひっ。あなたの懐は痛まないもんねー」
「うぬ……」
返す言葉を探すクロストに、シルキィは先導するように前を歩き、続けて言った。
「ほら、早く行こう」
肩をすくめるように苦笑しながら、クロストはシルキィの後をついていき、セイントクロスの元に。
「いらっしゃいませ」
穏やかな声で、ふくよかな女性に声を掛けられる。
セイントクロスのお店を取り仕切っているようだった。
「珍しいものが多いですね。ディナリウムの外から来られたんですか?」
早速、情報収取とばかりに、クロストは言葉を返す。
「外の文化や風習に興味があるんです。良かったら、教えて貰えませんか?」
これに、ふくよかな女性は快く頷き話をする。
その間に、シルキィは並べられた商品を見て回る。
「あ、この服、面白いかも?」
サンタドレスとサンタスーツを手に取って、大きさや手触りを確認している。
一方、クロストはクリスマスの由来や、セイントクロスのお酒事情を聞き出していた。
「なるほど。元々は、冬至のお祭りだったんですか」
「ええ。そこに、私たちの間で伝わる聖人の伝説が混ざり合い、今のクリスマスが出来たんです」
「聖人、ですか?」
「はい。皆の罪を背負って殉教されたと言われる聖人や、冬の貧しい時期に子供達に贈り物をした聖人。彼らを称え、私達も皆に贈り物をしよう。そんな日なんですよ」
「贈り物は良いですね。中には、お酒もあるんですか?」
「ええ。みんな好きですから。寒い時期に体を温めるために、よく飲むんです。ただ、好き過ぎて暴走する人も出るというかほどほどにして欲しいというか……」
微妙に苦労人みたいなことを言う、ふくよかな女性。
そうして情報収集が終わった頃に、サンタドレスに着替えたシルキィがやって来る。
「いいんじゃないか? 赤はお前に良く似合うと思う」
クロストに褒められて、喜ぶシルキィ。
「えへへ。ありがと」
そして、楽しそうな笑みを浮かべ続けて言った。
「はい。これあなたの」
サンタスーツを渡されて、あまりの赤の多さにクロストは狼狽する。
「これを、着るのか……」
「仕事でしょ。ほら、着替えはあっちだよ」
シルキィに促され、仕事という事もあって渋々クロストは着込んでみる。
「……恥かしいぞ。これ」
「似合うかはともかく、元気になる色ね。みんなで着れば怖くない!」
シルキィの明るい声に、クロストは笑みを浮かべ返す。
「そうだな。確かに元気になりそうだ」
そして2人は、お買いもの。
サンタブーツを勧められ、クロストは子供達への贈物にしようとお菓子を詰めていく。
そのお菓子の味見をシルキィに頼む。
「これ、美味しい」
顔をほころばせ、用意されていたテーブル席に座りながら、お菓子を食べていく。
お酒に漬けたドライフルーツやナッツ類をふんだんに使ったケーキ菓子のシュトーレンに、家の形をした焼き菓子も。
魔女の家を意味するヘクセンハウスは、チョコやクリームで飾られて、食べるのが惜しくなるほど。
他にも、甘く煮込んだ栗を入れたカップケーキのパネトーネといった色々なお菓子を、サービスで出されたホットドリンクと一緒に楽しんでいた。
「美味しいよ。一緒に食べよう」
屈託なく子供のような、見た目相応の反応を見せるシルキィに、クロストは微笑ましくなる。
一緒に食べると、そのあとにクリスマスブーツのラッピングをして貰いに行く。
そこで見かけたのは、リース型の腕輪。
自腹で買って、シルキィにプレゼント。
「クリスマスは贈り物をする日なんだそうだ。贈物の相手に該当するのはお前だなって思って。これはギルドに提出しなくていいから。いつもありがとう」
シルキィは、ラッピングされた腕輪を取り出し、はにかむように笑顔を浮かべる。
「ありがとう」
腕輪をクロストの前で付けてみせ、喜ぶシルキィだった。
そして依頼を終え、報告書を。
クロストは、聞き出したクリスマスの謂れや、セイントクロス達のお酒事情を書き込み。
そしてシルキィは、楽しかった思い出を語るように書き込んだ。
「牛を放ったら面白い事になりそうだと思いました。というのは冗談ですけど、赤い色が溢れるのは元気になっていいなって思いました」
その報告書を受け、色彩による人への影響を、真剣に考えるディナリウムであった。
そうしてスレイブに贈り物をするのは、他の冒険者も同様だった。
○感謝の気持ちを込めてメリークリスマス
「賑やかですわね」
弾んだ声で【アンネッラ・エレーヒャ】は、自らのスレイブである【トゥルー】に言った。
「ええ。活気があって、良いことね」
いつもの癖で頬に手を当てながら、トゥルーは穏やかな声で返す。
「調べなきゃいけないセイントクロスのお店も、随分と人が多いみたいよ」
「そうですわね。きっと、良い商品が沢山あるんですわ」
「そう思うわ。お客さん、みんな笑顔だもの」
「楽しそうで良いですわね」
「貴女も、そうかしら?」
問い掛けるトゥルーに、アンネッラは笑顔で返す。
「もちろんですわ。お仕事なのが残念ですけれど、折角ですから、一緒にお買い物を楽しみましょう」
「ええ。そうね」
微笑ましげにトゥルーは見詰めながら、アンネッラに寄り添ってセイントクロスのお店に。
「いらっしゃいませ」
ふくよかな女性に迎え入れられ、アンネッラとトゥルーは品物を見て回る。
「この服、温かそうですわね」
「手触りも良いから、着心地も良さそうね」
2人はサンタドレスを手に取り、次いでキャンディケインロッドを見てみる。
「メイジ向きの武器ね」
「そうですわね。でも、かわいすぎて戦いの場に持って行くと、ほのぼのとしちゃいそうですわ」
つるりとした触り心地のキャンディケインロッドは、色鮮やかで可愛らしく、武器というよりは装飾品のようだ。
それらを見て回りながら、ディナリウムへ提出するために購入する。
他にもないかと見て回っていると、クリスマスブーツを勧められる。
「この中に、プレゼントを入れるんですわね」
アンネッラは、自分では気づかれないつもりで、そっとトゥルーを見詰める。
(素敵なプレゼント、見つけますわ)
いつもお世話になっているトゥルーへのプレゼント。
アンネッラが今回の依頼を受ける気になったのは、それが一番の理由だ。
だから気合を入れて心弾ませながら、色々と商品を見て回る。
アクセサリーに、ちょっとした小物。他にも木彫りの人形に、お菓子も。
それぞれクリスマスブーツに入れて、ひとまずお会計。
「あら……! このラッピングとても素敵ですわね! どうやってやったのか、また数点買いますので、見せて下さいませんか!」
ラッピングに使われているのは、素朴な色合いの包装用紙。他にも、薄い布が使われている。
包装用紙は、ものによっては花や木々といった植物が彩られ、薄い布は、華やかなパッチワークや刺繍をされている物が。
寒い冬に、春や夏の草花を懐かしみ、冬のさなかに、女性たちが実益と趣味を兼ねて作ったものらしい。
そうして飾られたラッピングは、とても綺麗で贈り物を包むにはふさわしい。
ラッピングの仕方を学び、自分で贈り物を包みたくなったアンネッラは、トゥルーにすまなそうに言った。
「ごめんなさい。もう少し掛かりそうですから、しばらく1人で見て回って下さいますか」
自分がプレゼントをしようとしていることがバレないように気を付けて、驚かせて喜ばせようとしている。
そんなアンネッラにトゥルーは苦笑するように頷き、しばらく1人で見て回る。
そこに、店に来た時に出迎えたふくよかな女性が近付き言った。
「沢山お買い上げ頂きましたから、おまけで1つ差し上げます」
「いいのかしら?」
トゥルーの問い掛けに、ふくよかな女性は茶目っ気のある笑みを浮かべ返した。
「クリスマスにはプレゼントが付き物なんです。もちろん貰うのも、贈るのも。どうせなら、どちらも楽しまれてみませんか?」
これにトゥルーは、小さく笑みを浮かべ返した。
「どうせなら手作りできる物が良いのだけれど、あるかしら?」
これに、ふくよかな女性は頷いた。
そしてしばらく経って、アンネッラはラッピングを学び終わる。
「ふむふむ……なるほど、何となくはやり方を理解しましたわ……ところで、その包装紙は買えるのでしょうか?」
素朴な色合いに木々が描かれた包装紙を手に入れると、トゥルーと買い物を再開する。
「さて、再度お買い物再開ですわね!」
途中、トゥルーに気に入ったものは無いか聞き、問い返されると誤魔化すように返す。
「質問の意味は……聞かないで下さいませ! 色々興味深いものも多いですから、一緒に見ていきましょう!」
途中、植物の意匠がされた木彫りのオルゴールを見つけ、手に取る。
見た目に一目ぼれだった上に、聞こえてくる音楽が懐かしい故郷で聞いた童謡。
「これだけ取り置きで……よろしくお願いいたします」
必要な買い物を終わらせて、購入品はディナリウムに提出。
依頼を完遂し、市場に戻る。
「店の外で少しお待ちくださいませ」
待つことしばし。綺麗にラッピングされた贈り物を渡す。
「はい……どうぞ」
トゥルーは嬉しそうに受け取って、言葉を返す。
「ありがとう。嬉しいわ。だから、嬉しい気持ちをおすそ分けさせてね」
そう言って手の平に収まるサイズの、花と木で出来た可愛らしくも華やかな装飾用の輪飾りを渡す。
「クリスマスリースと言うそうよ。新しい年が幸せでありますように願って贈るものらしいわ」
はにかむように笑顔を浮かべ、アンネッラは受け取る。
「ありがとうですわ。とても嬉しいですわね」
「良かった。貴女に贈り物をして貰えて嬉しかったから、その気持ちを少しでも返したかったの。喜んで貰えたなら、私も嬉しいわ」
2人はお互いの贈り物を手にしながら、笑顔を浮かべる。
そしてセイントクロスの店で教えて貰った、祝福の言葉を口にする。
「メリークリスマス、ですわね」
「ええ。メリークリスマス、ね」
はらはらと、雪が舞い降りる中、けれど2人の心の中は温い。
仲良く家路に向かう2人だった。
こうして冒険者たちの依頼は完遂を見せる。
それぞれディナリウムに商品を引渡し、その上でスレイブと仲を深めた依頼であった。
依頼結果