イヤラシイ依頼(埴輪 マスター) 【難易度:簡単】




プロローグ


 ――ギルドの入会時、冒険者は正義のため世の中のために活動すること誓う。

 正義のため世の中のためなら、冒険者はどんな依頼も厭わない……そう、厭わない……厭わないはずなのだが……中には、厭いたくなる依頼もないわけではなかった。

「……本当に、この依頼を受けるつもりですか?」
 冒険者ギルドの受付の女性はそう言うと、慌てて口元に手をやった。
「あ、いや、もちろん被害は深刻ですし、私…‥いや、ギルドとしては願ってもないことなんですが……その、相手が相手ですから……」

 ※※※

 受付の女性が口を濁した相手……その名を『ドーズ』という。

 ドーズは身長が30センチから80センチほど……頭が大きな二頭身の人間といった姿をしたモンスターで、顔は醜く、身につけているのは局部を隠すパンツぐらい。

 戦闘訓練を積んでいる者……冒険者にとっては取るに足らない相手だが、それでも相手がドーズだと分かった途端、依頼を断る冒険者が後を絶たないのは、その特筆すべき特徴である『美少女好き』にあった。――そう、有り体に言えば、スケベなのである。

 ドーズと対峙した女性はイヤラシイ攻撃――スカートめくりなど――にさらされる。それはもちろん、女性冒険者も同様で、たとえ男性冒険者であっても、美少女……スレイブを連れている以上、その攻撃を避けることはできない。

 やられる前にやればいい……そう意気込んでドーズに挑んだ屈強な男性冒険者が、自身のスレイブのあられもない姿に動揺し、その隙を突かれて重傷を負ったという事件が起きてからは、硬派な冒険者達がこぞってドーズ絡みの依頼を敬遠するようになり、冒険者ギルドは対応に頭を悩ませることになった。

 ドーズは大っぴらに女性を襲うようなことはなく、今回冒険者ギルドに討伐依頼が寄せられたのも、巷を騒がす下着泥棒の犯人がドーズだと判明したからで、人的被害が報告されていない以上、報酬の上乗せも難しく、ただ物好き……もとい、勇敢な冒険者が現れるのを待つばかりだったのだが、ついにその時が訪れたのであった。

 ※※※
 
 冒険者の決意が揺るぎないことを知ると、ギルドの受付の女性は肯いた。
「……それでは改めて、ドーズの討伐をお願い致します。そして、私のお気に入りだったクマちゃん印のパンツを……あ、いや、今のはオフレコでお願いしますっ!」

 ――ともあれ、冒険者はドーズが根城にしているという洞窟へと向かった。


解説


 本エピソードの目的はモンスター『ドーズ』の討伐です。戦闘系エピソードではありますが、危険度は低く……いや、ある意味ではとても危険なのでご注意ください。

 敵はボスである『ドーズ大王』と取り巻きのドーズ達です。ドーズ大王と取り巻きのドーズ達に戦闘力の差はありませんが、ドーズ大王の方がよりイヤラシイ攻撃をしかけてくることが予想されます。
 ドーズ大王は1体ですが、取り巻きのドーズ達は参加者の数によって変化し、たとえば参加者が4名の場合は、ドーズ大王1体とドーズ3体が相手となります。(1対1なら、冒険者が負けることはまずありません)

 アクションプランには誰をどう攻撃するかを記載してください。スキルを使いたい場合は、使用するスキル名の記載もお願いします。(スキルのセットもお忘れなく!)
 ジョブレゾナンスを使う場合には、ロイヤリティ(忠誠度)が必要です。また、スレイブは直接戦闘には参加できませんが、イヤラシイ攻撃の対象にはなります。

 デザイアプランには、プレイヤーキャラクター(以下PC)がイヤラシイことに対してどのように考えているかを記載してください。下着を見るだけで鼻血が出るとか、裸を見られても動じないといった反応から、ここまでなら耐えられる、いや、むしろこんな目に遭わせて欲しいという要望まで受け付けます。

 本エピソードは女性冒険者やスレイブがイヤラシイ目に遭うことが前提のため、それが許容できるプレイヤー(以下PL)のみ参加をお願い致します。
 
 とはいえ、イヤラシイ攻撃がどれほどイヤラシイかというのは難しいですが……服を脱がされたり、触られたりする可能性はあります。ただし、18禁にはなりませんので、ご安心ください。(残念がらないように!)

また、戦闘系エピソードなので、戦闘はPCのステータスなども参考にして進めさせて頂きます。戦闘の役割分担などは、『依頼相談掲示板』で事前に話し合ってください。


ゲームマスターより


 こんにちは、GMの埴輪です!

 本エピソードは戦闘系なのですが、戦う相手を間違えてしまったというか、何というか……私自身、どういった結果になるのか楽しみであり、また、不安でもあり……とにかく全力で頑張りたいと思いますので、PLの皆様におかれましては、どうか寛大な心を持ってご参加頂けると幸いです!

 ただイヤラシイだけでけではなく、戦闘など他の部分もちゃんと楽しめるようなものにしたいと考えておりますので、何卒よろしくお願い致します!




イヤラシイ依頼 エピソード情報
担当 埴輪 GM 相談期間 4 日
ジャンル 戦闘 タイプ ショート 出発日 2017/12/13
難易度 簡単 報酬 通常 公開日 2017/12/23

コーディアスルゥラーン
 デモニック | シャーマン | 23 歳 | 男性 
囮になる美少女が欲しいですね
とルゥが僕に女装を提案してきた
洞窟から誘き出す為です!と力説され必要性は疑問だが了承

ルゥが女装した僕を見てはしゃいでる
こんな長身じゃ騙されないだろ?
ル「大丈夫です!可愛いですよあなた(ほくほく

洞窟前
一応女の振り
「大人しくクマちゃん印のパンツ他、盗んだ下着返しなさーい(裏声

ていうかルゥがジョブレしてくれない
ル「あなたなら素でも戦えますから!
私は物陰から彼の雄姿(女装とあられもない姿も)楽しみます
まあ あらら うふふ♪

戦闘
フリーになってる敵優先で薙刀で攻撃「近づくな変態!
仲間と協力できたらいい
ジョブレ後は火界咒「煩悩ごと燃え尽きろ

戦後
被害下着回収して帰ろう
はっくしょい
ジーン・ズァエールルーツ・オリンジ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 
●心情
敵も然ることながらスレイブの裸見ただけ動揺して深手を負う冒険者にもげんなりだ
だが報酬はほぼ独占状態だ。さっさと倒して金に変えちまおう

●行動
コーディアスが洞窟内から奴らをおびき寄せるというので観察して奇襲に警戒する
飛び出してきたら戦闘開始だ

相手にするのはドーズ大王。他の雑魚には基本的に構わない
戦闘時はルーツを後ろに控えさせる。こうすればルーツを狙うドーズを俺が迎え撃つ形になる
他のドーズも来るだろうが、しばらくルーツに任せる

戦う際は【リミットブレイク】で威力を上げた斬撃で先制
追い打ちをかけるように【ダブルエッジ】による二連撃を叩き込んで倒す

大王を倒したら残ってるドーズも全滅させる

参加者一覧

コーディアスルゥラーン
 デモニック | シャーマン | 23 歳 | 男性 
ジーン・ズァエールルーツ・オリンジ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 


リザルト


 ドーズが根城にしているという洞窟を目指し、冒険者達は足を進めていた。
「……集まったのが二人とはね」
 サイドテールにまとめたピンクの髪をいじりつつ、『コーディアス』が呟く。ただ、無理もないだろうなとも思う。相手はドーズ……世にもイヤラシイモンスターなのだから。
「げんなりだな」
 そう応じたのは、コーディアスの隣を歩く『ジーン・ズァエール』だった。黒い髪と瞳を持つ若者で、腰にはディナリウム国軍が正式採用している片手剣【ファデルタ】を提げていた。
 コーディアスは髪をいじる手を止め、ジーンに顔を向ける。 
「ドーズのことかい? それとも、冒険者のことかい?」
「両方だ」
 ドーズもドーズだが、スレイブの裸を見ただけで動揺し、深手を負ってしまうなんて馬鹿馬鹿しい話だと、ジーンは思う。だが、お陰で報酬は山分け……さっさと倒して、金に換えちまおう。ただ、それにしても……と、ジーンはコーディアスに目を向けた。
「お前、その格好はなんのつもりだ?」
 ……顔合わせの時、ジーンはコーディアスを女顔だとは思ったが女だとは思わなかった。服装が男物だったからである。だが、今やその女顔は薄化粧で女そのもの、またその服装は、フリルやリボンがたくさんついたアイドル的衣装だった。わざとらしく広がっているスカートはめくってくれと言わんばかりで、デモニックの特徴である尻尾が見えているところからすると、どうやら尻尾用の穴も開けられているようだ。
「ああ……後ろ姿も完璧! まさに美少女です!」
 そう言ってはしゃいでいるのは、コーディアスのスレイブ『ルゥラーン』だ。
「今更だけど……こんな身長じゃ、騙されないだろ?」
 コーディアスは頭上に手をやりながら、振り返った。コーディアスの身長は176センチ……少女と言うには大き過ぎる。だが、コーディアスの後ろを歩くルゥラーンは、ぶんぶんと首を横に振った。緩いウェーブがかかった、青紫色の髪が揺れる。
「大丈夫です! 可愛いですよ、あなた! うふふ♪」
「騙す……そうか、洞窟の前でドーズ共を誘き出すとは聞いていたが、まさかお前自身がその役をやるとはな。だが、どうしてスレイブにやらせない?」
 ジーンにそう問われ、コーディアスはジーンに顔を向けた。
「僕は以前にもドーズを退治したことがあるんだけど……その時は、ルゥだとちょっと引きが悪かったんだよね」
「私はコーディと違って、美少女じゃありませから!」
 ジーンはルゥラーンにちらっと目をやった。穏やかで上品な笑みや、流れる曲線のような美しい体つきは、美少女ではなく美女と呼ぶべきものだろう。
「まぁ、最後はルゥもターゲットになったんだけど、誘き出すなら僕の方がいいって、ルゥが張り切っちゃってるもんだからさ。だけど……」
 コーディはジーンの後ろで影のように付き添っている、スレイブの『ルーツ・オリンジ』に目をやる。カフェオレ色の髪と瞳に、褐色の肌。身長150センチという小柄な身体に執事服という取り合わせのルーツは、視線に気付いてコーディに微笑みを返した。
「コーディアス様、何かご用ですか?」
「いや、君みたいな本物の美少女がいるなら、僕の出番はなかったなって」
「そんな、ボクが女装しても、コーディアス様のような美少女にはなれませんよ!」
 頭と手を振って恐縮するルーツを見て、コーディアスは首を傾げる。
「女装って……君はその、スレイブだろう?」
「はい! それがどうかしましたか?」
 どうしたも何も……と、コーディアスは言葉を詰まらせた。
 ――スレイブは女性しかいない。なぜそうなのかは大きな謎だったが、男性のスレイブが登場したという話は、コーディアスがダンサーとして働いている酒場――最新の情報が行き交う場所――でも聞いたことがなかった。つまり、考えられることは一つ。
 コーディアスはジーンの肩をちょんちょんと突き、その耳にそっと口を寄せた。
「……君のスレイブって、ちょっと変わってるね?」
「否定はしない」
 そんな二人の様子を見て、ルゥラーンは「まぁ! 恋人同士みたい!」と嬉しそうに声を上げ、ルーツはきょとんと小首を傾げていた。

 ※※※

 ――洞窟の前に辿り着いた。そもそも、なぜその洞窟がドーズの根城だと分かったかと言えば、入り口の前に女性物のパンツが落ちていることを、別の依頼で付近を訪れていた冒険者が発見し、冒険者ギルドに報告したからであった。
 ただ、その冒険者が男性だったこと、冒険者ギルドの受付が女性だったこと、さらに受付の女性が勘違いしたことにより、何とも馬鹿馬鹿しいトラブルが発生することになったのだが……それはまた、別の物語である。

「じゃあ、さっそく誘き出してみようかな」
 コーディアスは身を潜めていた茂みから一人離れ、洞窟の入り口前に立った。
「コーディ、声色も美少女っぽくですよ!」と、ルゥラーンが声援を送る。
「ルゥ、無茶振りするなって……」
 そう言いつつも、コーディアスは「あーあー、おとな、おとなしく……ん、違うな……あー、んー、んー」と発声練習。コーディアスはシャーマンなので、真言の発声なら自信はあるのだが……女性の発声となると話は別だ。
 それでも声の調子を整えたコーディは、洞窟の中に向かって声を上げた。
「おとなしくクマちゃん印のパンツと、他の下着も全部返しなさーい!」
 ――反応なし。コーディアスは何度が呼びかけ、やはり地声では駄目なのかと裏声まで駆使して呼びかけてみたが、ドーズが現れることはなかった。
 コーディアスは肩をすくめ、仲間達が隠れている茂みを振り返る。
「……僕じゃ駄目みたいだ。それとも、根城を変えたのかな?」
「コーディ、諦めちゃ駄目です! もっと呼びかけてください!」
「……ルゥは僕が女性の振りをしているのを見たいだけだろ?」
「うふふ」
「埒が明かないな。こうなったら正面から――」
「危険です! ここはボクに任せてください!」
 ジーンの言葉を遮って名乗り出たのは、ルーツだった。
「僕は男なので狙われませんし、小さいですから偵察にはもってこいです!」
「いや、君は……ジーン、何か言ってやってくれないか?」
 コーディアスは自信満々のルーツに眉をひそめ、ジーンに声をかけた。だが……。
「そうか、頑張れ」
 ジーンがおざなりにエールを送ると、ルーツは嬉しそうに肯いた。
「はい! 頑張ります!」
 ルーツは茂みを飛び出すと、コーディアスに頭を下げつつその脇を通り抜け、洞窟の中へと入っていた。コーディアスはその背を見送ってから、ジーンを振り返る。
「……いいのかい?」
「この方が手っ取り早いからな。それに……」
「それに?」
 コーディアスが促すと、ルーツは洞窟の入り口を見やった。
「あいつがそうしたいって言うなら、好きに――」
「きゃーっ!」
 ――洞窟からルーツの悲鳴が聞こえた。いち早く動き出したのはジーンで、茂みから飛び出すと、洞窟中へと走って行く。その後ろにコーディアス、ルゥラーンが続いた。

 ※※※

 ――薄暗い洞窟を抜けると、ぽっかりと開いた空間に出た。壁には松明が並び、高い天井に向かってうずたかく積み上げられた、下着の山を照らし出している。
 山にはパンツだけでなくブラジャー、ガードル、キャミソール、ビスチェ、ベビードールなどの下着類、そして水着までもが含まれており、被害の大きさを物語っていた。
 そんな下着の山を玉座代わりにして、二匹のドーズを従えているドーズ……ドーズ大王が鎮座していた。ドーズの基準から言うと大柄で、頭に被ったパンツが目を惹く。パンツにプリントされたクマが、大王の頭が大きいため、可哀想なぐらいに伸びきっていた。
「飛んで火にいる男の娘……か」
 大王はそう呟くと、コーディアスをじっと見つめた。コーディアスはそんな大王に構うことなく周囲を見渡したが……ルーツの姿はどこにも見えない。
「ルーツちゃんをどこへやったんだい?」
 コーディアスの問いに、大王はすっと指を壁に向けることで答えた。その先には【十八禁】と書かれた木の扉があり、その向こう側から……「いやー!」「こないでー」「やめってたらー!」「あ、あ、あ」「だめー!」……といった、ルーツの声が漏れている。
「美少女なのにスカートをはいていない……その罪を償って貰っているところだ」
「償いって、一体何を――」
「いいのか? 言ってしまっても? この奥でどんなイヤラシイことが行われているのか、本当に言ってしまっても? きっと後悔することになるぞ? 色々な意味で――」 
「知ったことか」
 ジーンは剣を抜き放ち、その切っ先を大王に向けた。大王はにやりと笑う。
「色事より戦いを臨むか……面白い、相手になってやる。では、男の娘の相手は私の配下に任せるとしよう。くれぐれも丁重に、優しく、イヤラシく頼むぞ」
「御意!」
 二匹のドーズは揃って応じると、コーディアスに向かって飛びかかっていった。それを横目に、ジーンは剣を構えて大王に突撃する。
「コーディアス! 雑魚の相手は任せたぞ!」 
 ――先手必勝。だが、先に攻撃をしかけたのは大王だった。その手には大振りの剣が握られており、それをカウンター気味に振るったのである。ジーンはとっさにそれを剣身で受け止めた……が、威力を打ち消し切れずに後退する。……こいつ、強い!
「私をただのドーズだとは思わぬことだ。大王だからな」
 大王はにやりと笑う。だが、笑ったのは大王だけではなかった。ジーンも笑みを浮かべながら、剣の柄を握り直す。報酬さえ貰えればと思っていたが、こんな強敵と戦うことができるなんてな……願ったり叶ったりだ。
「うおぉぉぉ!!」
 ジーンは雄叫びを上げ、猛然と大王に斬りかかる。大王がそれを剣身で受け止めると、パッと火花が散った。激しい剣戟の応酬……その最中、大王は視線を横に向けた。
「……見るが良い。素晴らしい光景が広がっておるぞ!」

 コーディアスは二匹のドーズを相手に、てんてこ舞いだった。普通のモンスターが相手なら、コーディアスは手にした薙刀【景光】でそれらを容易く切り捨てることができただろうが……相手はドーズである。身体を触られたり、スカートをめくられたり、どう対処していいものか、コーディアスは困り果てていた。
「いくらめくったって無駄だって、何重にもパニエが――」
「コーディ、スカートをめくられたんですから、もっと嫌がってください!」
 コーディアスの反応に、すかさず駄目出しをするルゥラーン……この悪乗りともいえるはしゃぎようもまた、コーディアスを悩ませていた。全く、ルゥっの奴……。
「嫌がるって、どんな感じだ?」
「それはもう、いやん! とか、 エッチ! とか、可愛い感じでお願いします!」
「……いやん! エッチ! もうらめぇ! ……こんな感じか?」 
「そうです! ほらほら、またきますよ! まぁ、あらら、うふふ♪」

「……素晴らしい光景だと思わないか? あれこそ男のロマン。男と男の真剣勝負など無粋の極み……さぁ、剣を収め、共にロマンを享受しようではないか!」
「断るっ!」
 大王の申し出を、ジーンはにべもなく断る。大王は溜息をつくと、「ふんっ!」と気合いを入れて剣を振るった。ジーンは地面を蹴って間合いを取り、その一撃をかわす。
「……ヒューマンにしてよくやったが、そろそろ決着を付けるとしよう」
「その言葉、そっくりお前に返すぜ!」
 ジーンは大王に斬りかかる。頭の中から全ての躊躇いを消し去った上で放つ、容赦のない一撃……いや、それは二撃だった。ダブルエッジ。だが、大王はそれすらも受け切り、会心の笑み。そして、攻撃の直後で無防備になったジーン目がけて剣を――。
 はらり。白い布が地面に落ちた。パンツの切れ端。大王は目を剥くと、剣を放り出して両手で禿げ上がった頭を撫で繰り回した。だが、そこにあるべきものはなく……。
「ぎゃぁぁぁ! 私の王冠がぁぁぁ!!!」
 断末魔の叫びを上げる大王。いや、王冠……もとい、パンツを失った今、それはただのドーズであった。もはや威厳の欠片もなく――最初からそんなものがあったのかはともかく――地面に座り込み、放心状態でパンツ、パンツと呟きを繰り返している。
 ……幕切れはあっけなかったが、悪くなかったぜ。ジーンは剣を一閃。ドーズは自分が切られたことにも気がつかなかったのか、そのままの姿勢で煙と化して消えた。
 
 一方、コーディアスは……まだドーズ二匹からイヤラシイ攻撃を受けていた。
「……なぁルゥ、もういいだろう? そろそろ、ジョブレしてくれないかな?」
「もうちょっとだけ……それに、あなたなら素でも――」
 次の瞬間、どこからともなく風が吹き、ルゥラーンのスカートがめくり上がった。それを目撃したコーディアスは、目をぱちくり。ルゥって、あんな凄いのを――。
「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」
 本日一番の絶叫が響き渡った。ルゥラーンはスカートを押さえ、その場にぺたんと座り込む。そこにドーズが一匹飛びかかったが、「近づくな変態!」とコーディアスは薙刀を振るってこれを撃退、ルゥラーンに駆け寄った。
「ルゥ、大丈夫かい?」
「……見ましたね?」
「え、ああ、うん、その……ごめん」
「コーディはいいんです。でも、あれも見たんですよね」
 ルゥラーンは震える指先を、ドーズに向けた。ドーズは悪びれた様子もない。
「多分……ああでも、ジーンには見えてなかったと思う」
「コーディ、ジョブレしましょう」
「え?」
「ジョブレゾナンスです」
 ……嫌な予感がする。コーディアスは笑顔を作り、ルゥラーンに語りかけた。
「大丈夫だよ。ジーンが大王を倒してくれたみたいだし、残りはあと一匹――」
「その一匹を確実に殺ってください!」
 ルゥラーンはコーディアスに抱きついた。その身が光に包まれ、力となってコーディアスに流れ込んでいく。コーディアスはその力に突き動かされて立ち上がり、ドーズを睨み付けると、両手を合わせて印を結び、真言を口にした。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ サラバビギナン ウンタラタ カンマン!」
 ――炎の大蛇が出現。その大きさは天井に届かんばかりで、それに見下ろされたドーズは蛇に睨まれた蛙……ただ、その末路はカエルよりも酷いことになりそうだった。
「煩悩ごと燃え尽きろ!」
  火界咒。炎の大蛇はドーズをぺろりと一口。だが、それだけでは収まらず、そこら中にその身を叩き付け始める。その衝撃で【十八禁】と書かれた木製の扉も砕け散り、その中から「マスター!」と声を上げ、一糸まとわぬ姿のルーツが飛び出してきた。
 コーディアスはルーツに顔を向けそうになったが、頭の中に「見ちゃダメです!」と声が響いたので思い止まり、ルーツに続いて飛び出してきたドーズの大軍に向かって、炎の大蛇をけしかける。炎の大蛇はドーズを飲み込みながら、壊れた扉の奥へと向かった。
「マスター! あいつらが僕の一張羅を、執事服を無理矢理脱がして、女の子向けの可愛い服を、スカートを着せようとしてきたんです! それに下着まで……僕は男なのに-!」
 ルーツはジーンに飛びつくと、自分が受けた数々の仕打ちを涙ながらに訴えた。
「分かった、分かった。とにかく、ここから出るぞ……焼け死ぬ前にな」
「へ? そういえば、何だか暑いですね……って、ああ、燃えてる! 燃えてます!」
 燃え盛る下着の山を指さすルーツを抱え上げ、ジーンは走り出す。その後にはコーディアスも続く……もはや炎の大蛇は制御不能、荒ぶる神そのものだった。
 
 ※※※

「……やりすぎだよ」
 コーディアスは少し焦げた髪をいじりなが呟いた。フリルやリボンもところどころ焼け焦げており、黒く煤で汚れている。まさか、こんなことになるなんて……。
「当然の報いです!」
 平然と言い放つルゥラーン。ジョブレゾナンスで同化していたため、ルゥラーンは焼け焦げることも煤で汚れることもなく、まるで何事もなかったかのようである。
「ルーツちゃんは大丈夫かな……いたっ!」
「はい、そこで顔を向けない!」
 ルゥラーンは振り返ろうとするコーディアスの頬を両手で挟み、元の向きに戻した。
「大丈夫ですよ。だって……」
 ルゥラーンはコーディアスの頬に手を添えたまま振り返る。その先では、ジーンが上着を脱いで、ルーツに着せているところだった。ルーツはしきりに恐縮しながらも、満面の笑みを浮かべている。その光景に、ルゥラーンも笑顔で肯くのだった。

 ※※※

 ――それからは、ちょっと大変だった。何しろ、炎の大蛇がドーズもろもとも盗まれた下着の数々を焼き尽くしてしまったのだから。
 洞窟の中を改めて調べようにも、煙が充満しているためすぐにどうにかできるようなものでもなく、ドーズを退治したという証拠がなければ、報酬を得ることもできない。
 だが、それは意外な形で解決することになった。ジーンの上着に白い布切れが張り付いていることにルーツが気付き、その布切れにはクマがプリントされていたのである。
 それを目にしたギルドの受付の女性は、クマのプリントを愛おしそうに指先でなぞった。
「はい、これは私の……いや、それはともかく、ちゃんと報酬をお渡ししますからご安心ください! 下着は残念でしたが……これで新しいものを買う決心がつきました! やっぱりはいてないとすーすーして……あ、いや、今のはオフレコでお願いしますっ!」



依頼結果

成功

MVP
 コーディアス
 デモニック / シャーマン

 ジーン・ズァエール
 ヒューマン / ウォーリア

依頼相談掲示板

[1] ソルト・ニャン 2017/12/06-00:00

やっほにゃ~ぁ
挨拶や相談は、ここでお願いにゃ~!
みんなふぁいとにゃにゃ~  
 

[5] コーディアス 2017/12/12-00:50

う、うん…
ドーズ誘き出す囮という名目で女装するつもりだよ。(男でも殺意剥きだしで出て来るだろうから本当に必要か?という一抹の疑問抱えつつ
洞窟から出て来るように声掛けるつもりだよ。
戦闘は1体1で大丈夫みたいだし、フリーになってる奴優先して攻撃仕掛けるよ。

プランは出してます。
お色気担当?になるかもしれない内容になりました。
今の内に謝っておきます、すいません。  
 

[4] ジーン・ズァエール 2017/12/11-17:01

よし、女枠が増えてより戦いやすくなったな(無慈悲

とはいえドーズは女なら見境なさそうだからそっちのスレイブも対策しておいたほうがいいかもな
うちのスレイブも「僕は男だから大丈夫です!」なんてフラグバリバリなセリフほざいてるが、どうせ狙われるだろうから対策は立てておくし

締切日も近いから一応行動方針を言っておく
狙うのは大王。実力が変わらないなら敵の頭を潰すに限るからな
スレイブも最低限は守るが、どっちかっていうと撃破優先で動く
スレイブのあられもない姿に動揺? なんだそれ?  
 

[3] コーディアス 2017/12/10-18:36

シャーマンのコーディアスとパートナーのルゥラーンです。
どうぞよろしく。

ん、圧倒的美少女不足?かな。
うちのスレイブは大人女性タイプなもんでね。
ジーンさんのスレイブにばかり負担を強いてしまう事になりかねないな。うーん。

ルゥラーン:
「コーディ、あなたが美少女コスプレをなされば良いのでは? 折角の女顔の生かし時ですよ(にっこり」

は? いやいや、え? あーうーん…?(その手もアリか?)
……もしかしたら女装野郎が混ざるかもしれない、よ…よろしく。  
 

[2] ジーン・ズァエール 2017/12/09-19:50

挨拶が遅れたな
ヒューマンでウォーリアのジーンだ。よろしくな