プロローグ
「いったたたた……」
「マスター、大丈夫ですか?」
ある冒険者が怪我をして、部屋の中でスレイブから介抱を受けている。
彼は、ディナリウムからディヘナへ取引に向かう商人の護衛をした帰りである。無事に依頼をこなしたのはよかったが、帰路で凶暴化した獣に襲われたのだ。
スレイブの助けもあって何とか獣は倒したものの、手足に怪我を負ってしまった。医者に診せたところ、三日程度、家で大人しくしていなければならないらしい。
「マスター、お薬持って来ました。今、包帯を取り換えてあげますから、ちょっと体起こしてください」
「あーうん……」
スレイブはたどたどしい手つきながらも冒険者の傷口に薬を丁寧に塗り、包帯を巻いた。
ついでに、風呂に入れないでいた冒険者の体を固く絞ったタオルで拭いてくれた。そしてパジャマを着せ替えてくれる。
「あ、それから、ご飯はもう食べていいって事でしたが、何かリクエストはありますか? マスターの好物、なんでも作りますよ?」
素直な性格のスレイブはかいがいしく冒険者の世話を焼いている。
「あーそうだな……何かあったかくて、食べやすいもの……」
「はい、分かりました」
そう言って、スレイブは部屋を出て行った。
何となく惜しい気持ちがする冒険者。
(もうちょっと構って欲しいなあ)
体の汗を拭いてくれたり、優しく手当をしてもらったり……。そんなことされたら、もっと甘えたくなってしまう。それは、彼だけだろうか?
解説
怪我をした冒険者。あなたのスレイブはどんなふうに介抱するでしょう?
シチュエーションは必ずしもこうでなくても構いません。
※一緒に料理をしていて冒険者が手を切った。
※武術訓練をしていて転んだ。
※依頼の途中で獣に襲われて怪我、宿屋で介抱を受けている。
※etc、etc
冒険者がどんなタイミングで怪我をして、スレイブがどんな反応を示すかは千差万別だと思います。
その時、場所、状況などを明記したプランを書いてください。
※字数めいっぱいだと嬉しいです!
※参照して欲しいエピソードがある場合はそのタイトルを記入してください!
ゲームマスターより
どんなに弱った時もスレイブはあなたと一緒!
素敵なプランをお待ちします!
弱った時には君がいる エピソード情報
|
担当 |
森静流 GM
|
相談期間 |
8 日
|
ジャンル |
日常
|
タイプ |
ショート
|
出発日 |
2017/12/14
|
難易度 |
とても簡単
|
報酬 |
なし
|
公開日 |
2017/12/24 |
|
|
経緯 昼過ぎスノーフォレスト到着 転んで頭打ち 診療所に運ばれ脳震盪と診断 宿で今日は安静にしなければいけなくなった
宿 ベッドに寝かされ僕はぶーぶー抗議 ル「はいはい1日の辛抱ですよ(動じず
ル「何か食べて落ち着きましょう? 煮込まれたスープが来た 温かいけどもっとがっつりしたもの食べたいよ、トド肉ステーキとか ル「咀嚼が頭に響くといけませんので特別に用意して頂きました、はいあーん むっつり応える(旨いけどさ
夕方 いつの間にか眠り 起きたら笑顔が迎える ずっと付添ってたのか? 頬に手を添えたら彼女が満足気に笑みを深めた
談話室へ 窓の外は夕映えの雪景色が綺麗だ 「明日は一番に滑り止めの効いた冬靴を買いに行こう ル「それが良いですね
|
|
|
是呂( 零鈴 )
|
ケモモ | ナイト | 35 歳 | 男性
|
|
|
最近冒険者となり戦闘も経験が浅いので訓練場で武術訓練を受ける事にした マテリアルチェインまで済ませナイトとして盾での攻撃の受け方、いなし方等を訓練 零鈴のナビについて行けず(息が合わない)訓練相手に派手に打ち込まれてしまった
同化を解きションボリな零鈴 ごめんなさいマスター、うまくサポートできなくて
気にするな、僕の体力の問題もある それに最初からそううまくはいかないさ(頭ポン
家に帰って 上着を脱いだ僕に零鈴が悲鳴を上げる マスター!腫れてるじゃないですかー
いや、大した事ないよ(ヘラ
笑ってる場合じゃありません! 待ってて下さい
零鈴が用意したのは 雪!? 外から持ってきたのか? 袋に詰めたそれを患部に当ててくれる
|
|
参加者一覧
|
是呂( 零鈴 )
|
ケモモ | ナイト | 35 歳 | 男性
|
リザルト
●コーディアス(ルゥラーン)編
コーディアスとそのスレイブのルゥラーンはスノーフォレストへと小旅行の途中である。
乗合馬車を乗り継いでの旅であった。
窓の外の見渡す限りの雪原を楽しみながら、二人はここまでやってきた。
昼過ぎ、二人はやっとスノーフォレストへと到着した。
雪を覚悟していたが、空は蒼く澄み渡った快晴で、二人の心まで素晴らしく晴れ渡っていた。
馬車の駅を降りると、二人は荷物を抱えて早速、観光を始めようと張り切った。
スノーフォレストはディナリウムの最も北にある大都市で、巨大な氷河の上に作られた町である。年間8mほどずつ氷河は移動しており、このままでは80年ほどで、谷底へ町が落ちる計算になるが、住民は全く気にしていない。総人口は2万人ほどだが、冬の間は遊牧民が越冬するために集まってくるため5万人ほどになる--。
ということは、コーディアスは聞いていたのだが、来るのは勿論、初めてだった。
彼の目的は氷河の氷で作ったかき氷を美味しくいただくことである。かき氷のトッピングも道中あれこれと考えて来たのだった。
「ひゃっほー! かき氷食うぞー!!」
テンション高く、コーディアスは初めての氷河の町を歩き出した。そして。
スッッッテーーーーーーンン!!
荷物を持ったまま、コーディアスは真後ろに転倒した。
まるで芸人のような素晴らしい転び方であった。狙ってもこうはいくまいという感じであった。
旅行中なので大荷物を持っていた事もあった。反動が来ていた。
コーディアスは頭から氷の地面に打ち付けてしまった。
「コーディ! コーディ、大丈夫ですか!!」
当然、ルゥラーンが荷物を置いてコーディアスの元に駆け寄ってきた。
「コーディ! コーディ……」
悲痛な表情で彼の顔をのぞきこむルゥラーン。
しかし最早、コーディアスには彼女の声は聞こえていなかった。
「平気だよ。天気も良くて観光日和だ……」
コーディアスはそのまま気絶した。
気がついた時、コーディアスは宿のベッドに寝かされていた。
彼の知らないうちにルゥラーンがスノーフォレストの診療所に運んでくれて、医者が脳震盪と診断したらしい。
宿で今日一日は安静にしなければならないという事だった。
「なんでだよ。せっかくここまで来たのに。スノーフォレストって吹雪いたりするんだろう。天気の良い今日こそ観光したいじゃないか!」
コーディアスはベッドから出してくれないルゥラーンにぶうぶうと文句を言った。
「はいはい、一日の辛抱ですよ」
しかし、ルゥラーンの方は全く動じていなかった。
(せっかくの旅行を僕のへまでダメにしたくないよ。ずっと休みがなかったのに……。ルゥだって楽しみにしていたはずだよ)
コーディアスが文句を言うのはそういう心情があったからかもしれなかった。
そんな彼を見て、ルゥラーンは苦笑した。
「何か食べて落ち着きましょう?」
そう言ってルゥラーンは立ち上がると宿の奥の方へ消えて行った。
やがて、ルゥラーンは煮込んだスープを持ってコーディアスの前に現れた。
ぐずぐずになるまで柔らかく肉や野菜を煮込んだポトフであった。
コーディアスは促されるままに食べてみた。あつあつ。
「あったかいけどもっとがっつりしたものを食べたいよ。トド肉のステーキとか」
そう言ってコーディアスはスプーンを置いてしまう。
最早四歳年上のスレイブに対しスネスネモード。
「咀嚼が頭に響くといけませんので、特別に用意していただきました。はい、あーん」
そう言ってルゥラーンは自分がスプーンでポトフをすくって食べさせてくれようとした。
スネてむっつりしながらもコーディアスは口を開けて応える。
(旨いけどさ……)
あつあつ、はふはふと食べながらコーディアスは無言であった。
「美味しくないですか? ……あ、もしかしたら、味がしない? 頭を打った拍子に味覚がおかしくなったとか……風邪を引いたかも……」
ルゥラーンはコーディアスの額に手を当てて熱をはかったりし始めた。
「コーディ、他にどこか痛いところはありませんか? 寒くないですか?」
(やけに心配するなあ……)
コーディアスはちょっと呆れてしまった。
それから気がついた。
(そっか、僕になんかあればスレイブの彼女もまずいんだった。しょうがない今は大人しくしとくか……)
コーディアスはほっと息をついた。
「いいよ、貸して。自分で食べられるよ」
コーディアスはルゥラーンの器とスプーンに手を伸ばした。
「僕は大丈夫だから。そんなに心配しないで」
「コーディ――」
ルゥラーンは優しく笑った。
「たまには私に、あなたを甘やかさせてください。コーディはしっかりしてるから」
夕方になった。
コーディアスはいつの間にか眠っていたらしい。
目が覚めると、ルゥラーンの笑顔が彼の事をのぞき込んでいた。
「……ずっと付き添ってたのか?」
コーディアスは彼女の笑顔の頬に手を添えた。
ルゥラーンは満足そうに笑みを深めた。
(君はこんな時凄く心強いね。ありがとう……側に居てくれて。いっぱい楽しもうな)
コーディアスは内心、そう思ったが、彼は滅多にそんなことを口に出来る人間ではなかった。
ただルゥラーンの頬を軽く撫でた。
「ねえ、ちょっと喉が渇いちゃったよ」
「はい、今何か飲み物をお持ちしますね」
「ありがとう」
ルゥラーンの頬をしんみりと撫でてしまった事が恥ずかしくて、そうやって彼女を部屋から出してしまうツンデレの彼であった。
その後、二人は談話室に移動した。
窓の外には見事な夕映えが沈む白銀の雪景色。
他の土地では決して見られない光景である。
「明日は一番に滑り止めの効いた冬靴を買いに行こう」
コーディアスはそう言い出した。
「それが良いですね」
ルゥラーンはすぐに賛成をした。
動けるようになったコーディアスを見て、ルゥラーンは胸をなで下ろしていた。
(無事でよかった……特にお顔)
ルゥラーンはコーディアスの女性に負けない美しさを大事に思っていたのだった。ダンサーである彼の商売道具でもあるのだから。
(あなたとの時間は何でも楽しいです、コーディ)
とんだトラブルに見舞われたが、ルゥラーンはコーディアスのすねながら甘える部分を見る事が出来て、楽しかったし半分ぐらいは喜んでいた。
「そういえば、さっきのポトフは君が作ったの、ルゥ」
「ええ……。宿屋の主人に頼んで、厨房を貸して貰ったのです」
「ふうん。いくらか上達したんじゃない?」
「いえ……。厨房の女性に少し味付けを手伝ってもらって……」
「そうだったんだ!」
コーディアスは笑った。ルゥラーンは少し気まずそうに顔を赤らめた。
「夕飯は何にしましょう。トド肉のステーキはまだ早いと思いますが」
「大丈夫だよ……。でも、君が気にするなら、少し気をつけてみようか」
コーディアスは、あくまで自分の事を心配してくれるスレイブの存在に優しく微笑みかけた。
彼女は、自分の事もあってだろうが、やはり心からコーディアスの事を心配し、愛情を注いでくれているのだと、伝わってきていたのである。
「あたたかくて柔らかい、消化のいいものがいいと思います。あまり食べ過ぎないように……」
「宿の人に聞いて見よう。この土地の伝統のスープなんてあると嬉しいね」
そんな会話をしながら二人は素晴らしく美しい雪景色を見守った。
金赤の滲む、清らかな純白の稜線。二人が初めて見る事の出来た光景であった。
楽しいおしゃべりを繰り返しながら、二人は新しい思い出を作るための計画を建てていった。
●是呂(零鈴)編
是呂とそのスレイブの零鈴は武術の訓練をしている。
是呂は最近冒険者となり、戦闘も経験が浅いので、訓練場で武術をすることにしたのだ。
マテリアルチェインまで済ませて、是呂はナイトとして場内に立つ。
丸眼鏡をつけたもっさり系オッサン兎の是呂だが、彼だってやるときはやらなきゃならないのだ。
相手もやはりナイトの装備をつけた教官であった。
「行くぞ!」
教官は掛け声を上げるが早いか、武器を抜いて斬りかかってきた。
「マスター、右に注意をっ!」
スレイブの零鈴がナビを始める。
彼女は元は金持ちの特注品だ。性能はかなり高いはずと思っていた。
「右、右、左……上っ!!」
零鈴は的確にナビゲートしてくれる。それに合わせて是呂は盾を動かし剣を動かし、なんとか攻撃を受け止め、いなそうとする。
「マスター、左斜め上っ!!」
しかし、息が合わない。反応が送れる。
そこに凄い勢いで教官の剣が突っ込んで来た。
激痛。
峰打ちであるが、是呂はその場に崩れ落ちてしまった。
同化を解くと、零鈴はしょんぼりとうなだれていた。
垂れ耳だけでなく、眉まで八の字に垂れている。
「ごめんなさいマスター、うまくサポートできなくて……」
同化中の零鈴は感情的な発言はしない。
日常的な口調とのギャップに是呂は戸惑った事もある。
だが、一度経験しているので、一応耐性はあった。
「気にするな、僕の体力の問題もある。それに最初からそう、うまくはいかないさ」
是呂は零鈴の桃色がかった金色の頭にポンと手を置いた。
それから二人はそろって帰宅した。
汗をかいて汚れていたので、是呂は上着を脱ぎ捨てた。
オッサンなので若い娘の前で脱ぐ事にも羞恥心はない。それに相手はスレイブだと思って気を許していた。
途端に零鈴が悲鳴を上げた。
オッサンの是呂はぎょっとした。
まさか、セクハラだったか……!?
「マスター! 貼れているじゃないですか……!!」
「いや、大したことないよ」
是呂はへらりと笑った。
「笑ってる場合じゃありません! 待っててください!」
零鈴はそのまま部屋を飛び出して行ってしまった。
是呂はキョトンとして零鈴を待った。
そして零鈴が用意したのは--。
「雪!?」
もう冬である。
零鈴は外で積もっていた雪の塊をバケツに入れてたっぷりと持って来たのであた。
「外から持って来たのか!?」
零鈴はテキパキと布袋に雪を詰めると、それを熱を持って痛む患部に当ててくれた。
零鈴はキッと是呂を睨みあげている。
どうやら是呂の様子をうかがっているらしい。だが怒っているようにも見えてどぎまぎする。
「き、気持ちいいよ」
是呂はやや上ずった声でそう言った。
すると零鈴はぱっと笑顔になった。なんだか空気まで華やいだようだ。
そして目にじわじわと涙をためていった。
「ごめんなさい、マスター」
コロコロ変わる表情に是呂はびっくりしてしまう。
(何やら忙しい娘だ……)
とりあえず、頭を撫でてやった。
「ありがとう、零鈴」
是呂には声をかけるだけで精一杯である。
すると零鈴は涙目のまま、にっこりと笑ってくれた。
(なんだかむずがゆい……)
嬉しくない訳ではないんだが、もういい年である是呂には、零鈴の反応は瑞々しすぎる。
何しろ、是呂は零鈴の倍以上の年齢なのだから。
(戦闘もだが、これに慣れる日も来るのかな……)
是呂は思わずため息をついてしまった。
(まあなんとかやっていこう。出来ない訳はないさ)
そう思って、零鈴の髪を撫で続けると、機嫌をなおしたのか泣きやんだ。
しかし、雪が解けてしまうか、あるいは痛みが完全に引くまで、是呂は半裸の状態である。下だけでも着ればいいかもしれないが、そうしたら溶けた雪で濡れてしまう。
脱ぎかけの状態で十七歳の女の子と自室の中、じっとしているのも、これまたなんだかむずむずしてくる。
そういや二人で下着姿で劇場に立っていた事もあったか。
あのときも零鈴はにこにこしていて全く平気だった……。
是呂はそのことも思いだして、またため息をついてしまった。
依頼で寸劇をすると言った時、零鈴は、オシャレなマスターを見てみたいと言い出して、なんと人前で逆野球拳をやったのだ。
恐らく、是呂への愛情や忠誠心が高かったからやったことなのだろうが……。
キャミソールにパンツのカッコで舞台に立って、パンツ一丁の是呂とじゃんけん。
そして自分ばかりどんどん勝っていって、自分の好きな服をひょいひょいと是呂に着せて大喜び。
「マスターカッコイー!」
スレイブにかっこいいと言われれば是呂だって嬉しいが、そのたびにキャミソールのままぴょんぴょん跳ねるから気が気じゃ無い。
(コラ! 大人しくしなさい!)
そう怒鳴りたくてもそうはいかない状況。
そしてやっとのことで是呂が勝って、青の素敵なイブニングドレスを選んでやれば、
「マスタ-、着るの手伝ってくれます?」
本当に着方が分からなかったのか、着せて欲しくて甘えたのかいまいち分からない。女の子の服の着せ方なんて分からなかったがなんとか着せた。
「折角です! ダンスしましょう! マスター!」
そう言って、すっぽんぽんから自由自在に着せつけた格好で二人で踊ったのだった。
黒のタキシードと青のドレスで。
「これが、私の色なんですね」
楽しそうに笑っていた零鈴。
お互いを振り回すように踊ったダンス。
もちろん、そんなのは、お互い初めての経験であった。
(そんな想いをしてもなあ……)
じんじん痛んでいた患部に押しつけられた冷たい雪。
それがじんわり溶けていくのを感じながら、半裸の格好で是呂は思う。
(女の子の前で裸でいるのは、恥ずかしいもんだなあ……)
零鈴は今は機嫌がいいのでニコニコしている。
「マスター、痛いところは他にないかな。私が冷やしてあげるよ」
「そうかい? でも、打って痛んでいるところは他にないな……」
「冷やした後は、湿布を貼ってあげるね」
「うん。そうしてもらうよ。ありがとう」
そこで零鈴はちょっと首を傾げた。
「マスターが打ったところは脇腹だけど……。ご飯、食べられそう? 胃の上とかじゃないから、大丈夫なのかな」
「う~ん、食べるのは大丈夫だと思うよ?」
やはりスレイブで、零鈴は人間の食べる事に関する知識がないらしい。
「そうなんだね」
そこでどう思ったのか、零鈴は是呂の裸の腹の上を撫でた。
「なっ!?」
零鈴は不思議そうな顔をして是呂の臍の上をなでなでしている。
「れ、零鈴、何をするんだ」
女の子の掌の感触を感じながら是呂は声を震わせた。
「え? ……ああ。お腹、大丈夫なんだなと思って……?」
是呂に言われた途端に、零鈴も意識してしまったらしく、顔を真っ赤にして手を引っ込めた。
是呂はいたたまれずに空いている手で自分の腹を隠してしまった。
「ま、マスター! お腹、気持ち良かったよ。なんだかふにっとしてふかふか……」
「え、そ、そう!? それは、褒めてるんだけど褒めてないっていうかええとそのっ」
35歳の男のお腹がふにっとふかふか。
それは多分、褒めていない。
だが、零鈴は褒めているつもりで言っているらしい。
そのズレを感じたのか、零鈴もますます慌ててしまう。
「わ、私は、きっと私は是呂さんとこに来る子だったんだよ! だから是呂さんのどこ触ったって大丈夫!!」
「そ、それはどうなんだろう……」
是呂は腹を押さえたままうなだれる。
なんだかとことん、零鈴に振り回されているような気がした。
(息が合わない……やっていけるんだろうか……)
そんな一抹の不安を抱える是呂であった。
息が合わないと本人は思っている。だが、見ようによってはとてもよいコンビに思える二人であった。
依頼結果