プロローグ
● 時を止めた街
それはとある滅びた町。蛮族による進行で人世にして滅んだ町。
その町は昨日まで、数百人という人間が息をして、朝目覚め、談笑し、涙と喜びを分かち合って。冷たい冬に負けず生きていたという。
その街へ君たちがたどり着いた時、戦の炎も消え去って、街は灰色に染まっていた。
冷たい風が君たちの頬を撫でるだろう。
乾いた風には油と血の香りが混じっていた。
人の声が全く聞こえないはずなのに、耳に痛く悲鳴が響くのは幻聴でだろうか。
皆さんはこの町がなぜ滅びたのか、誰に滅ぼされたのか調査をする必要がある。
街を回るうちに皆さんは三つの事象に出会うだろう。
それへの対処によって今後、この町と同じ末路をディナリウムがたどるのかそうでないのかが決まると言えるだろう。
● 生き残り三人
・朽ちかけのスレイブ
四肢が粉々に砕かれたスレイブです。彼女の名前は『リセア』
リセアはこの町を救うために主と戦い続けたそうです。
青いジャケットの男が主人で、その主人はリセアに、ここで待っているように告げ姿を消したそうです。
リセアはあなた達に主人を連れてきてほしいと願います。
あなたがその依頼を受けるのか、蹴るのかはまかせますが、受けた場合は、お話はこう続きます。
ただ、彼女の言う青いジャケットの男らしき死体はこの町のどこを探しても存在しません。
逃げたのか、連れ去られたのか、生きているのか。それはまるでわかりませんが。
あなたには何かしらをリセアに伝える義務があるのです。
・壊れかけの少女
その少女は死体の山の中にひっそりとたたずんでいました。名前は『アリソン』
どうやら大人たちが彼女を隠すために山のように積み重なって偽装を施したようです。
そんなアリソンは両目から血を流していました。
彼女は恐怖で自分の目を潰してしまいました。そして皆が死んだ事実を否定して、この死体の山の中で息をひそめていたのです。
彼女はあなたに問いかけます。戦いは終わったのか。お父さんとお母さんはどこに言ったのか。
どんな答えを返してもいいのですが。アリソンは残念ながらあなたを責めるでしょう。
なぜ助けに来てくれなかったのか。
なぜお父さんたちが死ななければならなかったのか。
なぜ、なぜ。
あなたはこの少女を連れ帰ってもいいですし、ここで解釈してしまってもいいのです。
・ 呪われた街
この街の屋敷、一際大きな屋敷に赴くとそこには町長が生存しています。
彼は今にもこの街を捨てて逃げる途中でした。
あなた達の目の前で金庫の扉があいてその中から出てくるのです。
その金庫の中を見ると、文献がありそれを読むとこの惨事の原因がわかるのです。
この惨事は尊重による、無断魔石研究が災いして発生しました。
魔石の暴走によるストレンジャーの大量発生、街は外側から蛮族に食い破られたのではなく、実は内部の人間が魔石の影響でストレンジャーになり、破滅したのです。
全ての責任は町長にあります。
しかし、町長は罪を認めはしないでしょう。
この街には魔石研究が必要だった。それで栄えた街なのだから滅びても文句を言われる筋合いはない。そんな感じです。
皆さんは彼をどうするのでしょうか。
解説
目標 町の調査を完了させる。
町の調査を完了させるとはプロローグで触れられている三つの事象を見ることです、解決する必要はありません、そのまま帰ってしまってもいいです。
ただ、皆さんのPCはこの惨状を目の当たりにしてどういう反応をするのでしょうか。
それを想像してプレイイングに積み込む、人物を掘り下げるシナリオになれば幸いです。
● 潜伏兵について。
この町にまだ蛮族がとどまっています、数は少ないですので、対処は簡単でしょうが。彼らは死んだ人間から遺品を奪ったり、死体を食らっているので、あまり見たいものではないと思います。
敵の種別はストレンジャー。人が魔力によって魔物と変質してしまった者達です。
彼らはこの町の生き残りでしたが、この町を守るために戦い続け、そして魔物となり果ててしまったようです。
悲しい存在です、眠らせてあげてください。
武装は近距離用の剣のみ。遠距離職であれば一方的に倒せるかもしれませんが。攻撃力のみが高いので注意です。
人数は参加者の人数で上下しますが、最低でも二体出現します。
ゲームマスターより
今回は久しぶりにシリアスなお話です、もう発展することのない町に皆さんは何を思うのでしょうか。これは皆さんにも起こり得る話です。
氷る村 エピソード情報
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担当 |
鳴海 GM
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相談期間 |
5 日
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ジャンル |
シリアス
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タイプ |
ショート
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出発日 |
2017/12/3
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難易度 |
簡単
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報酬 |
ほんの少し
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公開日 |
2017/12/13 |
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・準備 簡単な治療道具と水筒、紺のリュックを持参 ・スキル ナンバウォーク(探索に使用 ポイズンニードル(戦闘に使用
・行動 探索、救助を目指します
・リセアの依頼 主が近くに居ないと動けないはず・・・質問したり、手がかりを調べます 主が見つからない時、できれば主を探すことを再度約束してスレイブがいた場所に書置きしたいです
・アリソンの治療 止血とか簡単な治療して、連れ帰って保護したいです クロがアリソンを慰める。 クロ(すぐに真実を話そうとするたくみをにらんで口止めする)
・罪を認めない町長 金庫の中の文献を確認。他の証拠を探す。無断魔石研究した証拠を紺のリュックに入れて持っていきます。安全なところで再度確認します
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一日で滅んだとかただ事じゃない 焦燥感に囚われ調査依頼を受けた
生存者には身分名乗り相手の名を聞いて何があったのか聞きたい
リセアの話で敵は町人と知れるので嫌な予感 ルゥが心配するのでジョブレゾナンス
アリソン 壮絶な体験に言葉が無いが彼女が壊れない様に問いに 「その答えを調べている」「一緒に答えを探さないか」と同行を促したい 僕のマフラーを貸し手を引いてあげたい
町長は怪しいので取りあえず捕まえる 文献読み彼の言い分に腹が立つ 滅んだら意味ないだろ 服の紐かベルトで彼を拘束 証人として連行したい 「その主張が通るのをせいぜい祈ってろ」
戦闘 生存者達が一緒なら彼らを守る位置で近づかせないよう戦闘 リセアの主人いるのか?
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参加者一覧
リザルト
プロローグ
「一日で滅んだとかただ事じゃない」
そう『コーディアス』は焦燥感に囚われ調査依頼を受けた。
その町に続く寂れた道を一行は無言で歩いた。『ナイトエッジ』も『シース』もただの一言も言葉を発さなかった。
その町への道は一本道で、急げば急ぐほどに町が遠ざかる感覚もあったのだが。
数時間歩いてみると、その町から逃げてきたのだという一家と出会うことができた。
コーディアスは身分を明かす。ディナリウム所属の冒険者である。
その言葉を受けてその家族が安堵に涙した表情、それをコーディアスは忘れることはないだろう。
生存者には名前と、そしてその町で何があったのかを聞いておきたかった。
そこで発覚したのが町を襲った不幸な事件とその情景であった。
第一章 奴隷
町までたどり着くと、その冷え切った風景に思わず『ルゥラーン』がコーディアスの袖を握った。
大丈夫。そうコーディアスは安心させるようにその手を握り返した。
周囲の安全をまず確認する冒険者たち。
『たくみ』は紺のリュックを背負い直すと、治療道具を片手に瓦礫まみれの道を闊歩する。
殺意も悲鳴もなく、静まり返った町に不思議と不気味さを感じる。
探索用にと持ってきたナンバウォーク。腰に忍ばせたポイズンニードルを何度も確認する。
すると、一行は開けた土地に出た。と言っても建物が破壊され開かれてしまっただけでここももとは家々が立ち並ぶにぎわいある町の一角だったのだろう。
そんな中『クローバー』がふと視線を逸らした。たくみはその視線を追おうとしてやめる。
足元に水気。にちゃりと粘液質な音が聞こえてたくみはすべてを察したのだ。
その時である。
「こっちだ!」
コーディアスが声をあげた。
その言葉にたくみとクローバーが急行する。しゃがみこんでいるルゥランの隣に座りこんで瓦礫の隙間を眺めるたくみ。
そこには瓦礫に打ち砕かれたのだろう。四肢がひしゃげ、唇は渇き切れたスレイブが倒れていた。
「まだ、息があるんだ」
告げるとコーディアスはその瞳にライトを当てる。
瞳孔が反応した。
しかし目は虚ろ、体力の限界を迎えていることは明白である。
「町は、どうなったの?」
その時かすれた声をスレイブは発した。
「町は……」
誰もが口をつぐむ、そんな中口を開いたのはルゥラーン。
「町は無事です、それより何があったんですか?」
その問いかけにリセアはゆっくりと口を不落。
リセアはこの町を救うために主と戦い続けたこと。
けれど主はリセアが負傷したのを見るとリセアをのこし、ここで待っているように告げ姿を消したこと。
彼は青いジャケットを纏っており、その主人を探してほしいという事。
「御願いです、最後は、最後はあの人と」
その言葉にたくみが、真っ先に思ったのは、スレイブは主が近くに居ないと動けないはず……という説明文。
「それはどれくらい前の出来事ですか?」
たくみはそう問いかける。
「わからない」
「そのあとに町に変わったことは?」
「わからない」
「マスター」
質問中にクローバーが不安げな声をかけてきた。
その瞳が憂いで歪み。泳ぐように左右に振られていることから動揺しているのが強く伝わってきた。
そんなクローバーにたくみは悲しそうな表情を返して、リセアにむきなおる。
「できれば主を探します、約束です」
告げるとリセアは小さく、よかったと微笑んで、眠るように目蓋を落した。
息はまだある。ただ、時間の問題だろうとその場にいる誰もが思った。
「スレイブは主人から10mも離れることができないはずです」
立ち上がりながらたくみは告げる。
「近くに手がかりがあるかもしれません。砕かれたスレイブの主の名前とか職業とかどこの人か知りたいです」
「いやな予感がする」
そうつぶやいたのはコーディアス。
そのコーディアスに訴えかけるようにルゥラーンが告げた。
「御願いです、離れないでください」
その言葉にコーディアスは頷いてジョブレゾナンス。そして一行は探索を続行する。
第二章 終末少女
その少女は死体の山の中にひっそりとたたずんでいた。名前は『アリソン』
その惨事を見た時にコーディアンはすべてを悟った。彼女を守るために大人たちは犠牲になったのだ。
そして少女はそのことを知らない。
「戦いは終わったの?」
一行がアリソンに手を差し伸べると、アリソンはその手を取って告げる。
「それはきっと」
そう何事かを告げようとしたクローバーの口をたくみは両手で覆った。
真実が彼女を救うとは限らないのだ。
「お父さんとお母さんはどこに行ったの?」
問いかけ続ける、その答えのわかりきっている問いに誰も答えを返せない。
「その答えを調べている」
「どこに行ったらわかるの?」
「一緒に答えを探さないか」
そうコーディアンは告げると一緒に来るように言った。コーディアンはマフラーを貸して少女の手を強く握った。
「ひざ、すりむいてる」
そうたくみは膝立ちになって消毒と止血を行う。
痛みを感じる理性は残っているようで、アリソンはひどく嫌がった。
「この子はどうするの? たくみん」
クローバーは問いかける。するとクローバーは一拍息を吸い込んでこう答えた。
「連れ帰って保護したいです」
その言葉を聞いてクローバーはアリソンの頭を撫でる。
世話焼き性のクローバーである、きっと仲良くできるだろう。
「いやよ、私は、ここにいる、お母さんとお父さんを探さなきゃ」
しかし少女は頑として譲らない。
「でも、お父さんとお母さんは……」
クローバーがそう口にしようとしたところでたくみはまたクローバーの口を覆った。
ただ、口を滑らせる可能性はある、そうたくみは目を光らせることにした。
「あまり、そのことについて話すのは……」
そうたくみは言葉を濁してクローバーに耳打ちする。
「でもね……」
クローバーは眉をひそめてたくみにつげる。
「ずっと隠してなんていられないよ」
「それは、わかっています。けど」
それは今じゃない、そう首を振るたくみ。
その言葉に頷いてクローバーはアリソンを抱きしめる。
「町の人が協力して助けてくれたのよ。ひとりじゃないから安心して?」
「本当に?」
「ほんとう、だよ。ここからにげればきっと、お父さんとお母さんに会えるよ」
告げるとアリソンはしぶしぶ頷いてクローバーの導きに従った。
クローバーはアリソンを見あげて告げる。
「たくみんは器用ね」
「クローバーは優しいですね」
代わりにたくみはクローバーにそう声をかけた。
「そんなことないよ、ひとりになるのがきっと怖いんだと思っただけ」
そして一行は町の最深部へと到着することになる。
この町で最も大きい建造物。
町の行政を司るこの場所に、おそらく真実があるのだと皆が思った。
第三章 真実。
この町の屋敷、一際大きな屋敷に赴くとそこには灯りが灯っていた。
書斎だろうか、揺らめく灯りはまるで何かを探すようにさまよう。
一行はその部屋の窓を見すえると武器の持ち手で窓ガラスを破壊して乗り込んだ。
「なんだ! お前たちは」
叫ぶ男の身なりはよく、この町を治める長であることが分かった。
彼は今にもこの街を捨てて逃げる途中のようだ。荷物がテーブルの上に置かれている。
そんな町長はあわてて大きな扉に歩み寄り、そのハンドルを回してロックをかける。
金庫だろうか。扉ほどの大きさがある鍵が音をたててかちゃりと留まると、男はその扉を背にして全員に告げた。
「私の財産が目当てか、残念だったな、お前たちにやるものはなにもない」
そう告げる町長を押しのけてたくみが前に出た。クローバーと即座にジョブレゾナンス。
その手に握る短剣に魔力を込める。
「こんな扉……」
静かな怒りを燃やすたくみ、そんな彼女の前で鋼鉄の扉など紙切れ同然である。
何度も振り下ろされた刃にて錠部分が破壊されると重たい音をたてて扉が開く。
「まて! 中にある物を見るな!」
そう叫ぶ町長はコーディアスの手で押さえられていた。
そんなコーディアスの頬を生ぬるい風が撫でる、金庫の向こうから沸き立つそれは、肌で触れてわかるほどに魔力を帯びていた。
中心には光り輝く石。間違いない魔石である、しかも高純度な。
「ひいい、逃げなくては、逃げなくては!」
もがく町長。その悲鳴を背景にたくみが資料を読み上げる。するとこの惨事の原因が知れた。
これは町長による、無断魔石研究が原因で発生した、大災害だったのだ。
「どういうことか、説明してくれますね?」
たくみがつげると観念したように町長は言葉をこぼす。
それはm魔石の暴走によるストレンジャーの大量発生から始まったこと。
街は外側から蛮族に食い破られたのではなく、実は内部の人間が魔石の影響でストレンジャーになり、崩壊したこと。
「だが、私は悪くない」
そう主張する町長……しかし。
その責任が町長にないわけが無かった。
コーディアスは拳を握りしめ、たくみは言葉を失った。
耳をふさいで蹲るアリソンの肩をそっとクローバーがもつ。
「この街には魔石研究が必要だった。それで栄えた街なのだから滅びても文句を言われる筋合いはない」
「滅んだら意味ないだろ!」
コーディアスは叫んだ。
町長の両腕を手近なロープでくくり、自由を奪うと、コーディアスにルゥラーンは問いかける。
「どうされるおつもりですか?」
「証人として連行したい」
「私は! 私は悪くない! 悪くないんだ!」
「その主張が通るのをせいぜい祈ってろ」
そうコーディアスは町長を蹴り飛ばすと、金庫の中味を手当たり次第に押収する。
その時、アリソンがうわ言のようにぽつりと、何事かを口にした。
「なんでこうなる前に助けてくれなかったの?」
その言葉にクローバーは思わず問いかける。
「全部、わかっちゃったの?」
アリソンの体がその時崩れ落ちた、少女はクローバーの袖に指をからめると、引っ張り込むように力をくわえる。
響くのは嗚咽と呪詛。
なぜお父さんたちが死ななければならなかったのか。
そう、アリソンは今の話で全てを理解してしまったのだ。
両親が戻ってこない。そんな事実。
なぜ、なぜ。
少女の口をつくのは理不尽に対する罵倒。
それに対してクローバーは何も言葉を返せなかった。
「証拠はちゃんと全部持っていくのよ、たくみん」
「わかってますよ」
そう物品を紺のリュックに入れ背負う。安全なところで再度確認するつもりだった。
ここはなんだかきな臭い、それにストレンジャーの存在も浮き彫りとなった、警戒しなくてはいけない。
そうたくみはあらためて、金庫の中の文献を確認。他の証拠を探す。無断魔石研究した証拠を全て集める。
その時だ。
「あなたが!」
その時アリソンが町長に襲い掛かった。その手に握られていたのはガラスの破片。
血が滴るほどに握りしめて。その切っ先を町長に向けようとしていた。
その前に立ちはだかったのがコーディアス、少女の腕をとってひねりガラスを捨てさせた。
「彼は証人として必要だ」
「証人ってなに? それは私のお父さんやお母さんを殺したより重要なこと? お父さんやお母さんを殺したことを許さないといけないことなの?」
アリソンは身をよじる、そのたびに血があたりに飛び散った。
それは彼女の血だった。
「違う、違うんだ。人はどんなことをしても個人で裁かれてはいけないんだ」
「わかんない! そんなことわかんないよ!」
「この町で起こった事を証言して欲しい」
コーディアスは告げる。
「皆の無念を生きてる君が伝えるんだ!」
その時だ。ゆらりと書斎の扉が開いた。
誰か生存者が……そう誰もが思っただろう。
そしてそれはある意味正しい。生きてはいる。
だがそれはもう動く屍と同義、心が死んでしまったストレンジャー。
ただただ生命を殺戮し尽くす番人が、そこにいた。
「たくみん……」
「ええ、見えていますよ」
クローバーがたくみに言葉をかける、それが見間違えであるという確証が欲しかった。
二人現れたストレンジャーのうち一人、それが纏っているのは青いジャケット。
「こうなってしまったならもう……」
「殺すしかない」
告げるとコーディアスとたくみはジョブレゾナンス。
武装を構えて敵を迎え撃つ、先に走ったのはたくみ。
その刃による奇襲を避けた青いジャケットのストレンジャー、その足を払って転ばせた。
その一瞬でコーディアスが取り出したのは藁人形。その人形を空中に放ると薙刀で切り捨てる。
すると、もう片方のストレンジャーが横なぎに吹き飛んだ。
本棚が砕けばらばらと本が堕ちる。
「こんな形で会いたくありませんでした」
たくみはそうつげると、ゆらり立ち上がった青いジャケットのストレンジャーに刃を突き立てる。鎖骨下から滑らせるように刃をいれて動脈を切り、鮮血に顔を濡らしながらも肋骨の隙間に刃を差し入れた。
対して本棚に突っ込んだもう一人のストレンジャー。
彼は体制を立て直すと、大ぶりの直剣を振りかざしコーディアスに迫る。
その斬撃は理性を失った瞳に反して緻密で的確にコーディアスの受けずらい場所をついてくる、速度も十分。まさに狂戦士だ。
だが、コーディアスもある程度の場数を踏んでいる。
対処できないわけではない。
コーディアスは薙刀のリーチを生かす。柄を回転させ、石突で剣を撃つとそのまま体を滑りこませて敵の懐へ。膝蹴りをいれて敵を吹き飛ばすと、薙刀を構え倒してからの刺突。
衝撃で体制を崩したストレンジャー。その隙をみてコーディアスは敵の腕を切りつけた。
ストレンジャーの握力が弱くなる。それを危険と察知したのか、ストレンジャーは空いた手でコーディアスへと殴り掛かる。
その振り回された腕に対して脇から刃をつきいれて筋繊維を切断。
抜き放たれた男の刃をコーディアスは止めた。
コーディアスは薙刀で刃を弾くと、返す一撃で腕を切り飛ばす。
「もう、だめなんですね」
その時、冷え切ったたくみの声が室内にこだました。
見ればたくみは青いジャケットのストレンジャー、その背後に回って首に刃を当てている。
理性が無いためそのことに恐怖を感じないのだろう。もがくストレンジャーの首に刃が当たっていく筋も血が流れていた。
青いジャケットに沁みついては、色を紫に変えていく。
「どうか、安らかに」
そう願いながらたくみは刃を返す。するとざくりと繊維を断つ音がしてストレンジャーの体から力が抜けた。
崩れ落ちる青いジャケットのストレンジャー、彼は何も口にすることなく静かに息を引き取った。
耳に痛いほどの静寂が戻ってくる。
悲劇しかないこの部屋で勝ち誇れる者は誰一人として存在しなかった。
エピローグ
コーディアスは再びリセアの元を訪れていた。
その手には血に濡れた青いジャケットがある。
それをリセアの肩にかけた。
リセアはすでに機能を停止していた。
原因はおそらくでしか今は語れない、それ故にリセアをディナリウムの工房に持ち込んだとして、元のリセアに戻るかは不明だった。
「こんなことが……」
たくみはそううつむきこの町の惨事を胸に刻みつける。
依頼結果
依頼相談掲示板
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[1] ソルト・ニャン 2017/11/20-00:00
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やっほにゃ~ぁ 挨拶や相談は、ここでお願いにゃ~! みんなふぁいとにゃにゃ~
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[6] たくみ 2017/12/02-18:34
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>コーディアスさん ありがとうございます!! 治療道具持参します。言い出したの私なので文献の回収しますね。
ん、治療と文献押収、疑問を少し書いて提出します。戦闘、ちょっとだけになりました。
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[5] コーディアス 2017/12/02-14:39
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プラン提出したよ。
僕は全部にそれなりに関わる欲張り行動になったから行動が薄いかも(汗) 文献の押収は僕は触れてないので、どなたか任せていいかな?
少女は保護、町長は連行、ダメ元でスレイブの彼女も連れ帰りたいってしてる。 主人失ってる可能性あるし、修復も可能か分らないけど。
問題あったらごめん。 時間無くて難しいかもだけど、皆とのすり合わせはできればしたいと思う。
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[4] ナイトエッジ 2017/12/02-12:38
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ウォーリアのナイトエッジ、ストレンジャーの対処と朽ちかけたスレイブの対応をしよう。
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[3] コーディアス 2017/12/02-00:21
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シャーマンのコーディアスとパートナーはルゥラーン。 どうぞよろしく。 なんかやりきれない依頼だな。
>たくみさん 治療道具はダメ元で持込み申請してもいいんじゃないかな。
アリソンと町長は連れ帰りたいね。貴重な証人になってもらいたい。 町長縛る縄とかは現地で調達は可能そうかな。
アリソンと町長がいる時にストレンジャーと戦闘になったら僕が2人の守りにつこうかと思う。 僕は中距離攻撃できるから。
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[2] たくみ 2017/11/29-13:30
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たくみです。よろしくおねがいします。
生き残った方々をこの町から助けたいです。 簡単な治療具を持っていけますか?
それと証拠の文献を町長に持ち出されないようにしたいですね。
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