例えばこんな冬の一日(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】




プロローグ


 初冬。
 冒険者は寒いのに朝早くに目が覚めた。
 冒険者である彼は、ここのところ依頼が立て続けに入っていて、全然休めていなかった。依頼を一通りこなして報酬金が手に入った昨日、彼は家に帰ってくるなりベッドの直行して倒れるように眠ってしまったのである。
 そして、たった今までベッドの中でいびきをかいていたのだ。

「あ~、よく寝た……」
 思い切り気持ちのいい伸びをする彼。
「起きましたか? マスター。おはようございます。ご飯の準備が出来ていますよ」
 するとタイミングよく彼のスレイブが部屋に入ってきて笑顔を向けてきた。
「お、そうか。いくいく」
 彼は機嫌が良くそう言ってベッドから出、身繕いを整えるとスレイブについていった。

 麦の粥とお茶、それにいつもより一品多いソーセージで簡単な朝食をすませる。
「なあ」
 かいがいしく給仕をして、冒険者の面倒を見ているスレイブに声をかけた。
「今日はどこかに出かけないか。ここのところ、依頼続きでお前も疲れているだろう。リフレッシュに、どこにでも連れていってやるぞ」
「えっ……例えばどこに?」
「そうだなあ」
 そこまでは考えていなかった彼は天井を仰いだ。
「うーん……ディヘナの十字の通りで市場を見てくるか? 色々買い物が出来るし。あとボーモンまで出てゼヒト料理でも食べようか? この辺りじゃ塩漬けの魚しか食えないしな。なんだったら、スノーフォレストに行って氷河見るか? お前の好きな毛皮を買ってやるぞ」
「マスター、このディヘナからスノーフォレストまでどれぐらいかかると思っているんですか。一日じゃつきませんよ」
「小旅行してもいいじゃないか。今の時期なら遊牧民も集まってくるし、珍しいものが見られるかも」
「うーん……」
 スレイブはちょっと首を傾げた後、突然言った。
「それぐらいなら、私、ディナリウムの時計通りでカイナムが食べてみたいです」
「ぜ、贅沢モノっ……」
 そんな高級な店に入るんだったら、普段着という訳にはいきません。彼もスレイブも上等な衣装をそろえなければならないではありませんか。

「いいよ、お前が行きたいなら、連れていってやるよ。どこにでも。だけど後悔するなよ?」
 しかし言い出したのは彼ですから、引っ込みがつかずにそんなことを言います。
 スレイブはとても嬉しそう。
 高級料理のカイナムが食べられるからというよりも、冒険者のマスターが自分のことをどこにでも連れて行ってくれるというのを喜んでいるようです。

 さあ、今日から、スレイブとどこにお出かけしましょうか……。



解説


●完全個別エピソードになります。
●スレイブとお出かけしてください!

Aディナリウムの時計通りのお高い店でカイナム料理を食べる。
首都の上等な雰囲気のお店で元は宮廷料理のカイナムに舌鼓を打ちます。
カイナムは手の込んだ煮込み料理やふんだんに肉を使った料理、それに蒸留酒やシャンパンがつきます。

Bディヘナの十字の市場でショッピング
十字の交差した町の中心に立つ市場。
活気に溢れる商業の町ですからこの市場では大抵のものが揃うでしょう。
スレイブと楽しい買い物が見込めます。

Cボーモンの海辺の庶民的な店で新鮮な魚料理を食べる。
海に面したリゾート地ボーモン。
風光明媚な海辺の庶民的な店で、取れたての魚料理はいかがでしょう。
スレイブとのんびりすることが出来るでしょう。

Dスノーフォレストまで小旅行。氷河を見た後、遊牧民の毛皮などを見て回る。
氷河の上に作られた町に雪と氷を見物に。
今の時期には遊牧民が町に入ってきますので、珍しい毛皮や獣牙を見る事が出来ます。ちょっとした小旅行になりますね。

Eフリープラン。お客様の希望のプランを出来る限りかなえます。
5W1Hを明確に書いて下さい。出来る限りご希望に添えるリザルトを書き上げます。
(公序良俗は守ってください)

スレイブとお出かけして絆を深めましょう!

プランの頭にA~Eの記号を書き、冒険者とスレイブの行動を書いてください。
※字数めいっぱいだと嬉しいです!




ゲームマスターより


依頼の合間にどこかにお出かけしたくなるのは冒険者もスレイブも同じはず。
二人でたっぷり羽を伸ばしてください!



例えばこんな冬の一日 エピソード情報
担当 森静流 GM 相談期間 8 日
ジャンル 日常 タイプ ショート 出発日 2017/11/24
難易度 とても簡単 報酬 なし 公開日 2017/12/4

たくみクローバー
 ヒューマン | シーフ | 16 歳 | 女性 
●プラン
Cボーモンの海辺に行きます。
ドーズ退治でクロ(クローバー)に助けてもらったお礼にお出かけすることに


・たくみ
風光明媚な海辺をのんびり眺めます。
こういうの好きなんです。


・クロ心情
・・・風光明媚ってなあに?
海、どこまであるの?
コーディアスルゥラーン
 デモニック | シャーマン | 23 歳 | 男性 
E
「スノーフォレストで氷河のかき氷食べる」という目標で小旅行を決行した二人の道中の話を希望です

午前中
ディヘナのバザーで防寒着選び
ル「まさか冗談で言った『寒いからスノーフォレストで氷河のかき氷食べに行きたい』を実行するなんて」呆れた様でどこか楽し気な彼女
コ「どこだって連れてくって言ったのはこっちだし、それに酔狂で面白そうだ
ル「あなたへの冗談はもっと慎重にしないと
コ「実は行きたくない?
ル「まさか、酔狂で楽しそう♪

乗合馬車に乗り出発

馬車で移動中
昼食の弁当を食べながら風景楽しむ内うとうとして眠る
途中盗賊と遭遇しジョブレゾナンスし撃退

夕方
途中の町到着
宿を取り一泊
温泉楽しむ

翌朝元気はつらつ出発

参加者一覧

たくみクローバー
 ヒューマン | シーフ | 16 歳 | 女性 
コーディアスルゥラーン
 デモニック | シャーマン | 23 歳 | 男性 


リザルト


●コーディアス(ルゥラーン)編

「スノーフォレストで氷河のかき氷を食べよう」
 そう言い出したのは、意外にも、『コーディアス』のスレイブの『ルゥラーン』であった。
 とにかくそういう目標での小旅行を決意したのであった。

 午前中は二人はディヘナに向かい、十字になっている市場で防寒着を選ぶ事にした。
「まさか冗談で言った『寒いからスノーフォレストで氷河のかき氷食べに行きたい』を実行するなんて」
 分厚い毛皮の衣装を選びながら、呆れた様子のルゥラーン。だけどどこか楽しそうだ。
「どこだって連れてくって言ったのはこっちだし、それに酔狂で面白そうだ」
 コーディアスも、海豹の毛皮で出来たブーツを探しながらそう答える。
「あなたへの冗談はもっと慎重にしないと」
 ルゥラーンはたしなめた。
「実は行きたくない?」
「まさか、酔狂で楽しそう♪」
 思わず心配してしまったコーディアスに、ルゥラーンは笑顔を見せる。

 準備を整えた二人は乗合馬車に乗り込み、スノーフォレストへと向かった。
 景色はどんどん見た事のない雪原へと変わっていく。
「見てください、コーディ。こんなに真っ白が続くのを見るのは、私初めてです」
 珍しくルゥラーンがはしゃいだ声を立てて、透明な窓の方へと顔を寄せた。
「あ、銀狐の親子!」
「え、珍しいね」
 どこまでも続く雪原の中、轍の後のついた一本道を馬車は走っていく。その付近まで銀狐の家族が近づいてきていた。
 野生の大きな狐と子狐たちが走って行く様子を、コーディアスとルゥラーンは、窓に鼻をくっつけそうになりながら眺めた。
 自然と二人の顔も隣り合ってくっつきそうになっている。

「あ~、行っちゃったね……」
 銀狐の背中が見えなくなると、コーディアスは思わずため息をついた。
「ふふ。そうだコーディ、お弁当にしませんか」
 ルゥラーンは出発前に、二人のお弁当を作ってきていた。
「うん、そうしよう」
 コーディアスは頷きました。
 ルゥラーンが荷物のバスケットを開くと、中から二人分のサンドイッチが出て来た。野菜サンド、卵サンド、ハムサンド、それにルゥラーンが水筒に入れてきたコーヒーもある。
「うん……綺麗だし、味も上達してきてるかな」
 サンドイッチを頬張りながらコーディがルゥを褒めた。
 切り口が綺麗にそろっていて、鮮やかな彩り、見た目はプロが作ったようなサンドイッチだ。だが相変わらず味が薄いような気もする。とはいえ、せっかくの旅行中にそんな事を言う必要もない。
「どういたしまして」
 ルゥラーンはツンデレなコーディアスの気遣いに気がついているのかいないのか、穏やかに微笑んだ。
 お弁当を食べて満腹になったコーディアスとルゥラーンは、やがて馬車に揺られながら眠ってしまった。

 乗り合い馬車が動いていない。
 そのことに気がついて、コーディアスは目を覚ました。
 殺気を感じて窓の外を見ると、見知らぬ男達に馬車が囲まれている事が分かった。
「……コーディ」
 ルゥラーンも、目を覚ましていた。
「どうやら、盗賊と言ったところだね。ルゥ……」
 コーディアスが目配せをすると、ルゥラーンは小さく頷いた。
 その直後、乗り合い馬車のドアが物凄い音で蹴破られ、武装した男が乗り込んできて蛮声を上げた。
「全員、表へ出ろっ! そして金目の物を出すんだ!」
 馬車の中から次々に悲鳴を上げる。
「大人しくしろ、早く外へ出るんだ!」
 棍棒を振り回しながら男が叫ぶ。
 囲まれていては仕方なく、乗り合い馬車の客達は一人ずつ戸口から外に出て行った。コーディアスとルゥラーンも、一見、普通の客のふりをして外へ出た。
「金を寄越せ!」
 何人かの男達がそう怒鳴っている。一般人の客達は震えながら財布などを冷たい雪の上に落とし始めた。
 男達はそれを拾い集めていたが、中には若い娘に手を出して体を触ったりするような者もいた。コーディアスの顔が険しくなる。
「うん、お前も結構、いい顔をしているなあ……」
 一人の男が、ルゥラーンに近づいてきて、コーディアスが買ってやった上等な上着に汚い手で触った。ルゥラーンが嫌がって身を背けようとするがにやにや笑いながら彼女の顎を掴んで振り向かせようとする。

「ルゥ!」
「……はいっ!」
 そこでコーディアスはルゥとジョブレゾナンスを行った。
 薙刀「景光」を振り上げるとコーディアスはルゥに触れている手を叩き払った。
「人様の財を脅し取ろうなんざふてぇ野郎だ」
 颯爽とルゥを救い出すとコーディアスは赤い瞳を輝かせて叫ぶ。
「こちとら正々堂々稼いだ金でスレイブと氷河のかき氷食いに行くっつう愉快な旅の途中よ! 羨ましかったら人生見つめ直せ!」
「ぼ、冒険者か……」
 盗賊達が狼狽えるがもう遅い。
 呆気に取られる一般人達を庇いながらコーディアスは薙刀を振るって舞うように戦い始めた。
 ルゥも手早く援護に回る。
 数分後には、コーディアスは盗賊達を一様にのしてしまって、他の客を無事な状態で乗り合い馬車に乗せていた。

 ジョブレゾナンスを解除するコーディアスとルゥ。
「旅行中に済まなかったね」
 再出発した乗り合い馬車の中で、コーディアスはルゥに謝った。あんな汚い男に触られて、どんな思いをしただろう。
「こんな時の私ですから、それに愉快な思い出になりそうです ふふ」
 相変わらずルゥは上品に笑っている。
「強い……」
 コーディアスはそう呟くしかなかった。

 夕方になり、乗り合い馬車は途中の町に到着した。
 ディナリウムの最北端と言われている小さな集落の寄せ集まりである。
 ここから先は、遊牧民の定住地の村しかなくなるのだ。
 馬車の翌日の出発時刻を確かめて、コーディアスとルゥは馬車から降りると雪の降る寒い町を歩き、宿屋を探した。
 幸いにも、乗り合い馬車の停留所からそう離れていない場所に、温泉のついているそこそこ大きな旅館を見つける事が出来た。
 受付で支払いをすませた後、、コーディアスとルゥラーンは旅館の係とともに荷物を部屋に運び込んだ。
「なにぶん、狭い町の温泉ですんで……温泉は時間によって、女湯、男湯、混浴となっております」
 係は部屋の説明のおりにそう言った。
 二人は思わず顔を見合わせてしまった。

 まずは部屋で二人は軽い夕飯を取って休憩した。
 混浴の時間になると、二人は案内に従って温泉へと向かった。
 脱衣所で服を脱ぎ、湯煙の温泉の中に入っていく。源泉かけ流しの温泉は硫黄の匂いがしてとても風情があった。
 二人が入って行くと、ルゥラーンが中年の男性から注目を浴びてしまった。
 ルゥラーンはタオルで前を隠していたし中性的だったが、それでも若い女性であることは分かる。
 それを避けてコーディアスは奥へ進み、二人で仲良く湯につかった。
「変なのは気にせずにゆっくりしよう」
 コーディアスがそう声をかけると、ルゥラーンは「はい」と微笑んだ。
 暖かい湯船にゆっくりとつかって、二人は戦闘の疲れを癒やした。

 その後、二人が部屋に戻るとベッドが整えられていた。
「寒いので一緒に寝ましょう」
「いいよ」
 ルゥラーンがコーディアスのベッドの入ってくる。
 コーディアスは彼女と顔を寄せ合うようにして一緒に寝た。
「かき氷のシロップは考えた?」
「着いたら考えます。あなたの好きな味も教えて下さいね」
 そんな他愛ない会話を仲良くかわしているうちに、夜も更けて、二人はいつの間にか眠ってしまった。寒い夜のはずなのにとても暖かかった。

 翌朝、二人は元気はつらつで乗り合い馬車に乗り込んだ。
 スノーフォレストへ向けて出発!
 氷河のかき氷は、一体どんな味がするのだろう。

●たくみ(クローバー)編
 その日『たくみ』はスレイブの『クローバー』とボーモンの海辺に来ていた。

 午前中、たくみは部屋で本を読みながら床に寝そべっていた。
 何事もゆるい心構えでのんびりしている彼女は、一人でゆったり本を読む事も好きで、休日はよく床やソファに寝転がりながらだらだらと時間を過ごしていた。
 一方、対称的にテキパキと働いていたのがクローバーである。
 たくみの散らかした部屋をせっせと片付け、綺麗にホウキで掃いた後に、固く絞った雑巾で床を拭き始めた。
「ほらほら、どいて」
 そのために、床に寝ていたたくみは一旦ソファへ移動した。
 そのソファもクローバーが綺麗に掃除するために、また床の方に戻った。
 クローバーが一通り部屋を片付けている間、ずっとゆるやかな微笑みを浮かべながら本を読み続けているたくみ。
「頑張ってお掃除した!」
 どや!
 やがて、そんな笑顔でクローバーが汗を拭きながらたくみの前に立った。
 たくみはゆっくりと本から顔を上げた。
 そこに至って、ずっとクローバー一人だけ働かせていた事に気がつく。
「えらいね、クロ……」
 たくみはもぞもぞと床から起き上がった。
「お出かけする……?」
 こんなに頑張ってくれた輝くスレイブに何かお返しがしたい。
 そう思ったたくみはそう申し出た。
 ぱっとクローバーが花咲くような笑顔を見せる。
「たくみんがプラン考えてね!! 美味しいもの食べたいな!!」
 クローバーが身を乗り出してそう言う。
「ちょっと、待ってください……」
 たくみはのろのろと立ち上がった。
 自分から言い出した事だが、歩くのが辛いのだ。
 運動をすると一時間も経たずに疲労がたまって休んでしまう。
 だがそれもこれも頑張ってくれているクローバーのためだ。
「大丈夫? たくみん。本当にいいの?」
 そんなたくみの顔をクローバーが心配そうにのぞき込む。
「うん。ドーズ退治の時に、クロに助けてもらったお礼だから」
 たくみはそう言って、照れたように微笑んだ。

 そういう訳で二人はボーモンを訪れたのだった。
 季節は冬だったが、海辺のボーモンは小春日和でまだ暖かかった。
 キラキラ光る陽光を反射する深い群青色の海。
 緑色の島がいくつかその波間の間に浮かんでいる。
 空には真っ白な羽のカモメ。波間に銀の背びれを覗かせた小魚を咥えて飛んでいく。
 切り立った崖の上には絵のように美しい展望台。
 たくみとクローバーは、そんな海辺の砂浜を二人で連れだってのんびりと散歩した。
 たくみはこういうのが好きなのだ。
「本当に風光明媚で綺麗なところですね」
 たくみは風に向かって勢いよく伸びをしながらそう行った。
「……風光明媚ってなあに? 海、どこまであるの?」
 クローバーは初めて見る海に対して不思議そうな様子である。
「海はどこまでも続くのです。思ったより暖かくていいところ……」
 たくみは冬の青空に輝く太陽を掌に透かしながらそう言った。
「そうですね。たくみん! ご飯はどこで食べるんですか」
 たくみはクローバーに聞かれて、ちょっと考えた。
「来る途中に食堂があったからそこに行ってみましょう。きっと魚は獲れたてでおいしいはず」
 プランを決めるたたくみだったが、ボーモンの事はよく知らないので、通りがかりの食堂ぐらいしか分からない。

「こっちこっち!」
 はしゃいで坂道を走るクローバーを、たくみがなんとか追いかけていく。
 ついていくと、どこにでもあるような海辺の食堂。
 だが明るくて清潔な店内で居心地はよかった。
 たくみとクローバーは日当たりの良いテーブルを選んで腰掛けた。
 いかにも気のよさそうな食堂のおばちゃんが二人に注文を取りに来た。
「おすすめはなんですか?」
 たくみがそう尋ねると、おばちゃんは笑ってメニューを指差した。
「今の時期ならこの定食がおすすめだね」
「何味?」
 クローバーが不思議そうに言う。
「お魚なんだから魚味ですよ」
 たくみがおかしくてそう言ってしまった。
 しばらくして食堂のおばちゃんが持って来たのはボーモンで採れる旬の魚のフライの盛り合わせだった。
 ブリ、タラ、メヒカリ……様々な魚の切り身。こんがり上げたパン粉にくるまれて、香ばしい匂いを放っている。それに山盛りのサラダとスープ。
 二人は歓声を上げておすすめセットに飛びついた。
 新鮮な魚があまりに美味しくて、二人の頬が緩んでいく。
 もっちゃもっちゃと食べながら、たくみとクローバーは色々な話をした。

「クロ、ドーズと戦った時、守ってくれてありがとうございます」
 たくみはフォークを止めてそう言った。
「え……当然の事をしただけだし」
 そう言ってクローバーははにかんだように笑う。
 
 何しろ、ドーズは変態の子達であった。
 パンツ魔王なんてのがいた。
 二人で囮になった際には、大量のドーズが押しかけてきて「10点!」「10点!」と叫び、「愛でたい」「愛でるー!」と二人に殺到しかけてきたのだ。美少女だと言われたが、パンツかぶったオッサンに言われても全く嬉しくなかった。
 クローバーがたくみの手をぎゅっと握ってその場から逃げ出してくれたのである。
 その上、「スカートめくりは許す!」などといってたくみに襲いかかり、たくみはピンチだったのだ。
 その前に飛び出てたくみを庇いながらドーズを叱りつけたのはクローバーであった。
「尊い!」「漂白される!」とドーズ達はまた大騒ぎ。なんだったのだろう、あれは……。
 そんなドーズとパンツ魔王を倒したのは先日のこと。
「私が無事でいられるのはクロのおかげ。ありがとう」
 たくみは素直にクローバーにお礼を言った。
「い、いや、そんな……うん。スレイブの役目だからね!」
 クローバーは謙遜しつつも嬉しい事がありありと分かる。たくみはそんなクローバーにくすっと笑いかけた。

 だらだらと海辺の食堂でお昼を食べながら二人はさらに色々な事を振り返る。
「オーパーツの事件なんてあったよね」
 クローバーは懐かしそうに言った。
「うん、あのときは……まさか褒められるなんて思ってなかった」
 たくみは頷いた。
 雑貨屋の娘に生まれたたくみは器用で裁縫やハンディクラフトが得意である。
 オーパーツの事件では、小石に魔方陣を描く役割を持っていたのだが、その際に手先の器用さを存分に発揮し、依頼を成功に導いたのである。
 その際にも、クローバーはたくみの事を本当に褒めてくれた。
「たくみんはもっと自分に自信を持っていいよ! いつだって私がついているんだし!」
 どや! と胸を張って、恩着せがましいぐらいに力強く言うクローバーであった。
「ふふ……よろしくお願いします」
 たくみんは嬉しそうに笑っている。
 クローバーの方が年下なのだが、お姉さんのようで。たくみとクローバーは本当の姉妹のようだ。
「クロ、守ってくれてありがとう」
「えへへ」
 もっと言え、と言わんばかりに笑っているクローバーであった。

 その後、二人は食堂を出て、再び、海辺の方へ歩き出した。
 もう一度散歩してから、家に帰るのだ。
「綺麗な海でよかったです。お魚もとてもおいしかったし」
 たくみは満足そうにそう言った。
「クロに綺麗な海を見せる事が出来て、よかった……」
「また来たいね!」
 そんな他愛ない会話をしながら誰もいない砂浜を二人で歩いて行く。
「クロ、二人で色々なところを見て回りましょうね。クロとのお出かけは楽しいです」
「うんうん、私もたくみんと二人で楽しいよ!」
 そう言うと、顔を見合わせて笑った。
 仲良く海辺の散歩をした後に、二人の家に帰った。クローバーの楽しげな笑顔を見て、たくみはとても満足だった。




依頼結果

成功

依頼相談掲示板

[1] ソルト・ニャン 2017/11/13-00:00

やっほにゃ~ぁ
挨拶や相談は、ここでお願いにゃ~!
みんなふぁいとにゃにゃ~  
 

[2] コーディアス 2017/11/23-00:09

コーディアスとパートナーのルゥラーンです。
どうぞよろしく。