パンツ魔王をやっつけよう(春夏秋冬 マスター) 【難易度:普通】




プロローグ


 それは、よく晴れた日のことだった。
「ふふふっ、ここまで来れば捕まらないだろう」
 人気のない森の中で、下着ドロがひとりごちていた。
 ディヘナで家屋に浸入してまで下着を盗んだこの男は、捕まるのを恐れ、離れた森にまで逃走していたのだ。

 なにしてんのこいつ? アホなの?

 といった状況だったが、本人はいたって本気である。
 残念なことに。
「さて、戦利品を確認せねば」
 そう言ってポケットから盗んできたパンツを出そうとする。
 お高そうなパンツだった。
 色々とレースが凝った感じに付けられていたり、肌触りも良さそうな品質の良いものが使われている。
 それを確かめようとポケットに手を突っ込むが、そこには何も無い。
「は? えっ、ちょ、どこいった!」
 慌てる下着ドロ。周囲を見渡せば、後ろに落ちているのに気付く。
 それを取ろうと手を伸ばせば、先を越された。
「へ?」
 子供よりも小さな手に、思わず間の抜けた声が上がる。
 小さな手の持ち主は、2頭身のパンツ一丁なオッサン姿な魔物だった。
 ドーズ。イロモノな魔物である。
 もう一度書こう。イロモノな魔物なのだ!
 1メートルにも満たない大きさのドーズは、さっと下着ドロが落したパンツを奪うと走って逃げ出す。
「ま、待て!」
 慌てて追いかけようとする下着ドロ。
 しかし追い付くよりも早く、ドーズは手にしたパンツを恭しく頭上に掲げ、王冠の如く頭から被った。
 その瞬間、ドーズから眩い後光がほとばしる!
「ふおおおおおっ!」
 奇声を上げながら、魔力を放出するドーズ。
 それは身体を覆うと、仮初めの肉体として結実した!
 などと書くと、カッコいい姿になったかのようだが、実際のところは2頭身のパンツ一丁な小っちゃいオッサンが、マッチョなパンツ一丁オッサンになっただけである。
 パンツを頭にかぶった状態で。
 かなりオカシな状況だったが、目の前でそんな物を見た下着ドロは驚いたあまり、その場から逃げ出そうとする。
 しかし、すでに遅かった。
 気が付けば、無数のドーズの群れに囲まれている。
「な、なんだ、お前ら!」
 下着ドロの問い掛けに、パンツを頭にかぶったドーズが応える。
「ふははははっ、怖いか、恐ろしいか人間よ!」
 パンツ被ってるくせに、威風堂々と高らかに言った。
「我らはドーズ! そして我は、貴様が献上したパンツを被ることにより、魔王と化した者。そう、パンツ魔王と呼ぶがいい!」
 あくまでも自己申告である。
 パンツを被ったぐらいで魔王になれれば苦労はいらない。
 なれたとしても被りたくはない。
 しかし周囲のドーズ達からは、羨望と尊敬の眼差しが向けられていた。
「パンツ! パンツ!」
「魔王! 魔王!」
 諸手を上げて歓声を上げるドーズ達。
 それをパンツ魔王は手を上げ、一端は黙らせると、ドーズ達に言った。
「聞け! そして応えよ! 美少女は?」
「愛でるもの!」
「男は?」
「死ね!」
「パンツは?」
「被るー!」
「よく分かっているではないか。では早速、我らが覇道のため、人の街に繰り出そうではないか!」
「オー!」
「だがその前に、愚かしくも我にパンツを献上したこの男に、礼をせねばならぬな」
「ひっ!」
 怯える下着ドロに、パンツ魔王は言った。
「礼と言っても菓子折りを渡す訳ではないぞ」
「分かっとるわ!」
 思わず突っ込む下着ドロ。
 ベタなボケとツッコミであった。
 そんなことはさておき、パンツ魔王の号令1つで、下着ドロの運命は決まった。
「下着が好きなようだから、我らの下着を存分に堪能させてやろう。押し付けるがいい! 中身付きで!」
「オーっ!」
「ひっ、止め、アーーーッ!」
 絶叫と共に、下着ドロはドーズの群れに埋もれたのだった。
 かくして、一つのしょぼい悪は滅びた。
 しかし、パンツ魔王とドーズ達が解き放たれる。
 具体的には、森から時折わらわら出て来て、若い女性を遠巻きに見つめたり、パンツを要求。
 あるいは、渾身の魔力を込めた魔法『スカートめくり』により、スカートを捲ったりと悪行を重ね始めていた。
 ぶっちゃけしょぼい。
 しかし放置するにはうっとうしすぎるという事で、ギルドから冒険者たちに討伐依頼が。
 巣になっている小さな森の場所は分かっているので、そこに居るドーズ達をどうにかしてくれという依頼です。
 美少女やパンツが好きなので、それを餌にすると良いかもしれないとの事でした。
 この依頼に、貴方達はどうしますか?


解説


詳細説明

小さな森に居るドーズ達を倒して下さい。
森の中に入って倒しても良いですし、スレイブや女性PCを餌に引き付けて倒すなど、色々とアリです。
多少雑なやり方や作戦でも、サクサク倒せます。

ドーズは、パンツ魔王を倒すまで、参加される人数に応じて湧いて出ます。
湧いて出る数は、頂いたプランのノリで変わってきます。

パンツ魔王を倒せば、全てが消え失せます。
パンツ魔王は、何か罠で引っ張り出すか、10体以上のドーズを倒すと出てきます。
最終的に、パンツ魔王を倒せば成功以上になります。

ドーズ

2頭身のパンツ一丁なオッサンのような魔物。
30cmから80cmまで大きさには個体差がある。
パンツを被ると後光が差してパンツ魔王に。
小っちゃいオッサンから、マッチョなオッサンに変わりました。
でも強さは変わらない。
しかし何故か、ドーズはパンツ魔王になった同族に従う習性がある。

美少女は愛でる、男は死ねが信条。

風でスカートをめくる魔法「スカートめくり」を全身全霊で使う。
全身全霊で使うので、個体によってはその場で力尽きる者も。

ドーズは個体ごとに、強さや能力は様々です。
今回のドーズは、スカートめくりは全個体が使えます。
そしてパンツ魔王は、ノリで強さが変化します。
具体的には、PC達の作戦や対応で、強くなったり弱くなったり。

その強さの全てを使って、スレイブや女性PCを愛でたりスカートをめくろうとしたりパンツをくれとか言ってきます。
しかし、おさわりはしません。紳士なので。

でも男には、死ね、が信条です。

倒すと、煙になって消えます。

以上です。
では、ご参加をお待ちしております。


ゲームマスターより


おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、Twitterで行われましたアンケートを参考にさせて頂き、エピソードを作らせて頂きました。
日常エピソードですと、ちょっとえっちなお話と、次点でコメディということで、その辺りを意識しています。

それでは少しでも楽しんで頂けるよう、判定にリザルトに頑張ります。



パンツ魔王をやっつけよう エピソード情報
担当 春夏秋冬 GM 相談期間 7 日
ジャンル コメディ タイプ ショート 出発日 2017/11/12
難易度 普通 報酬 通常 公開日 2017/11/22

たくみクローバー
 ヒューマン | シーフ | 16 歳 | 女性 
・心情
殺人は良くないです。捕まえましょうね。
思ったよりもドーズたちは足遅いのかも……?

……ひゃんっ!?
めくられると恥ずかしくなる。怒らない。


・クロ心情
どんな理由があったとしても、人に嫌がらせするなら、めっなんだからね

「あっ、だめっ!!」と止める。
めくると怒る。

・作戦
囮になって森の外まで誘き出して戦闘する。
コーディアスルゥラーン
 デモニック | シャーマン | 23 歳 | 男性 
けしからん奴らだ
女の子がスカート履かなくなったらどうするんだ

事前に
ドーズの巣までの道筋は覚えたい 地図あるかな
森の外での戦闘も考え通行人が無い様にギルドに注意喚起頼めるかな

作戦の流れはこうなればいいな、仲間と話しておきたい
巣の近くで女の子達が囮行動しドーズ誘き出し
開けた場所か、森の外に誘導
そこで戦闘したい

囮役にはルゥにもやってもらおう
僕はルゥが起動停止しない距離で隠れてる

十分掛ったらジョブレゾナンス
薙刀でドーズぶった斬る お前にくれてやるパンツはねぇ!

連携
囮してくれてたら攻撃役担うよ

対パンツ魔王
出てきたら優先的に攻撃
まず甲種言霊で防御下げたい
小咒で被ったパンツ燃やしてやる(元に戻らないかな
厄神シ・モベ
 デモニック | シャーマン | 16 歳 | 女性 
目標
ドーズとパンツ魔王の討伐。

心情
うち等がパンツ被ってたら強そうなるんかな?
流石にないなぁ・・・ないよね?

行動
ドーズの巣が見える開けた場所をあらかじめ森の木を気づかれないように用意、
もしくは見つけてパンツ魔王を倒すため誘い出して
ここで合流することを他の冒険者と話を合わせておく。
ドーズ達を父親に履いてもらった女性用下着を釣竿にぶら下げて
あらかじめ用意、もしくは見つけておいた開けた場所に誘い出す。

戦闘では甲種言霊中心でスキルを使用
近づかせない目的で薙刀を槍のように突いて牽制する
倒せそうなら倒しておく
ウィンドニュー
 デモニック | メイド | 14 歳 | 女性 
品性の欠片もない魔物ですねー。
まー、見られて減るものでもないですがー、キモいので駆除しましょうかー。
囮の人がひきつけたのを片っ端から叩いて行きましょうー。
ボスっぽいのも、シャ-マンの人が弱らせてくれたら、殴っときましょー。

スカートをめくる魔法を使うとかー、
なぜかスカートの中が見えない足技「絶対領域」と、どちらが上か試してみるですよー。




参加者一覧

たくみクローバー
 ヒューマン | シーフ | 16 歳 | 女性 
コーディアスルゥラーン
 デモニック | シャーマン | 23 歳 | 男性 
厄神シ・モベ
 デモニック | シャーマン | 16 歳 | 女性 
ウィンドニュー
 デモニック | メイド | 14 歳 | 女性 


リザルト


○まずは作戦会議
 ドーズが居る森に行く前に、まず冒険者たちは作戦を話し合っていた。
「私が囮になって、誘き寄せようと思います」
 ある意味危険な囮役を買って出た【たくみ】に、彼女のスレイブである【クローバー】は、僅かに心配そうな視線を向ける。
 けれど、普段は受容的で控えめな、たくみが自分から積極的に提案しているのだ。
 頑張る彼女を応援したくて、クローバーは心配な気持ちを飲み込んだ。
 代わりに、家で作って来たクッキーを振る舞う。
 いま冒険者たちが居るのは、今回はギルドからの依頼という事で、用意してくれた会議室だ。
 そこに用意された、円卓状の机を前に話し合っている冒険者たちに、クローバーはクッキーと共に紅茶を配膳しようとしていた。
「美味しい」
「そう? 良かった」
 はちみつを練り込んだナッツクッキーの美味しさに頬を緩めるたくみを見て、クローバーは笑みを浮かべ返し、皆にも配膳していく。
 クローバーの今日の服装は、お気に入りの紺のワンピース。
 それもあってか、メイドさんのようだ。
「手伝いますか?」
「今日の私は冒険者なので、メイド仕事はお休みなのですよー」
 クローバーの様子を見ていたスレイブの【ニュー】が、主である【ウィンド】に言う。
 放置すると何もしないでいる主を思って言っているニューに、ウィンドは少し考えたあと口を開いた。
「囮で引っ張り出してくれるなら、片っ端から叩いていきますよー。ボスっぽいのは、どうしますかー?」
 これに返したのは、シャーマンである【コーディアス】と【厄神 (ヤクジン)】だ。
「甲種言霊で防御を下げるよ。そこから集中して叩こう」
「そやね。いつどこから現れるか分からへんし、うちも甲種言霊を使えるよう待機しとくわ」
 そこまで2人が言うと、続けてコーディアスが提案した。
「囮役は多い方が良いだろうし、ルゥにもやって貰おうと思ってるんだ。ルゥ、頼めるかな?」
 コーディアスの言葉に、彼のスレイブである【ルゥラーン】は頷く。
 これにより囮役は2組になる。効率よくドーズを釣り出すには、ある程度離れた別々の場所から誘い出す必要があるが、その場合、冒険者たちの連携が巧く行くかの問題があった。
 この問題に提案をしたのは厄神だった。
「森の中で、落ち合える場所をあらかじめ決めておくのはどうやろ? 開けた場所がええけど、ないんやったら、木を切り倒して作っておくんやけど」
 これに、ギルドから森と周辺の地図を貰って来ていたコーディアスが返す。
「開けた場所なら、森のここが良いと思う。昔切り開いて畑を作っていた場所らしいんだけど、今でも平坦な場所らしいんだ。ただ雑草は生えてると思うから、それを刈り取っておく必要はあるとは思う」
「やったら、うち等で刈り取っとくわ」
「なら、僕も手伝うよ」
 厄神に、彼女のスレイブである【シ・モベ】が返す。
 これに厄神は、シ・モベの頭を撫でたくなるのを我慢して、笑顔で礼を返す。
「ありがと。やったら、その時ついでに、ちょっと試したい事があるから、手伝ってな」
「うん、手伝うね」
 一生懸命に意気込む、シ・モベだった。
 こうして作戦の概略は出来上がる。
 万が一、ドーズ達との戦闘が森の外に広がる可能性も考えて、コーディアスが当日森に通じる道の封鎖をギルドに頼み、不測の事態に対する対処も十分に取られている。
 かくして準備が整う中、冒険者達はドーズ討伐のために、森へと向かうのであった。

○イロモノ魔物を倒しに行こう
 当日。その日は良く晴れた快晴であった。
 絶好の行楽日和といった所ではあったが、いかんせん冒険者たちにとっては、ドーズ討伐という仕事の日である。
「とっとと駆除して帰りたいですねー」
「その為にも、お仕事がんばりましょ~」
 ドーズ達を誘い出し決戦の地となる、森の開けた一区画。
 そこでウィンドとニューは、刈り終えた草を戦闘の邪魔にならないよう、端の1か所に置いていた。
「囮役の人達が、そろそろ森に入る頃ですし、急ぎましょう」
 のんびりとした雰囲気を醸し出しているニューだが、機敏に刈り取った草をテキパキと運んでいる。
 それを見て、応援するウィンド。
「頑張って下さいねー」
 応援しつつ、のんびりと草を運ぶウィンドであった。
 そんな2人の一方、すでに担当している分の雑草取りと端寄せを終らせていた厄神とシ・モベは、罠を仕掛けていた。
「餌、もう1枚取ってくれる?」
「色は、どれにする?」
「そやね~、さっきのが白やったから、黒にしとこうか」
 いま2人がやっているのは、釣り竿に女性用下着を付けてドーズを誘き寄せる罠作りである。
 しかも、厄神の父親に穿いて貰った物だ。
 娘のためとはいえ、ある意味父親の尊い犠牲である。
 それを無駄にしない為にも、しっかりと罠を張っていく。
「これで、引っ掛かるのかな?」
 シ・モベの問い掛けに、苦笑するように厄神は返した。
「やれることは、やらへんとね」
 そうして決戦場と罠の準備が進む中、囮役の2組は、それぞれ森の中に入っていた。

「たくみん、忘れ物無い?」
 クローバーは、主人であるたくみと共に森に入りながら問い掛ける。
 今は2人きりという事もあって、外面を気にするクローバーは、注意するようにたくみに言っているのだ。
 これにたくみは、屈託のない笑顔で返す。
「大丈夫。お菓子は一杯、持って来てます」
「そうね。バスケット一杯に作ったのを……って、違うでしょ。そういうのじゃなくて、他にあるでしょ?」
「他にですか? それも大丈夫です。疲れて寝ちゃわないように、ちゃんと昨日は、ぐっすり寝ています。だから今日は、元気一杯です」
「そうね。たくみん、眠気を感じたら1時間以内に眠っちゃうから……って、だから違うでしょ。そういうのじゃなくて、もっと他にあるでしょ?」
「他に、ですか?」
「そうよ。これから魔物を倒すのに、必要な物とか」
「だったら大丈夫です」
「本当に?」
「はい。だって、クロが傍に居てくれますから。準備万端ですよ」
 笑顔で言うたくみに、クローバーがすぐには返せないでいた、その時だった。
 がさりという物音と共に、1体のドーズが。
 思わず身構える2人に、そのドーズは口を開いた。
「小っちゃい子が、お姉さんポジションで心配するのは、アリだと思います」
「……え?」
「……は?」
 ドーズの訳の分からん言葉に、たくみとクローバーが疑問の声を上げる中、そのドーズは更に言った。
「では採点!」
 その言葉と共に、一斉に周囲に湧いて出るドーズ達。
 なぜか手には、10と書かれたプラカードを持って掲げている。
 そして次々に言った。
「10点!」
「10点!」
「10点!」
「10点!」
「満点!」
「おめでとーございまーす!」
「なにがよ!」
 思わずツッコミを入れるクローバー。
 そこに平然と返すドーズ達。
「愛でる美少女が2人なので、テンション高めなのです」
「愛でたい」
「という訳で愛でるー!」
 そう言うなり、わらわらと更に湧いて出るドーズ達。
 遠巻きに、朗らかな表情で2人を見詰めていた。
「これ、どうしましょう、クロ」
 訳の分からん状況に悩むたくみに、クローバーは手を引いてその場を走り出す。
「予定通りにするだけよ。行きましょう」
「うん。自分の役目を、ちゃんとこなさないといけませんよね」
 たくみはクローバーの手をぎゅっと握り返すと、一緒になって仲間の元へとドーズ達を誘導するべく走り出した。

 そうして彼女達がドーズ達を誘導するように、コーディアスもルゥラーンと共に誘導するべく森を移動していた。

「中々出てこないな?」
 囮役としてルゥラーンに先行して進んで貰いながら、その後方で周囲を警戒していたコーディアスは、進行ルートを変えるべきかを話し合うためにルゥラーンに近付いた。
「私が囮だと、引っ掛からないという事でしょうか?」
「どうだろう? 美少女に引き寄せられるみたいだから、そうなのかもしれないね。ルゥは美少女タイプじゃないから、引っ掛らないのかな?」
「なら、色気で頑張ってみます。下着だって勝負下着つけてきたんですよ? スレイブの身なりにも気を掛けるマスターだと知って欲しいじゃないですか」
 そう言うルゥラーンの今日の姿は、長めのスカートに深めのスリットが入った物。
 ルゥラーンが着ていると良く似合っており、艶やかな色気がある。
「いやいや、見せる前提になってるから」
 苦笑しながら言うコーディアスに、ルゥラーンは氷の花のように美しい、どこか見る者が冷や汗をかくような笑みを浮かべ返した。
「見られても平気です。抹殺してくださるのでしょう?」
 これにコーディアスは、無言で頷きながら誓うように思う。
(仲間には見せない様にせねば)
 そんな時だった。
 がさりという音と共に、1体のドーズが現れる。
 即座に薙刀を構え距離を取るコーディアス。
 しかしそちらには全く興味を示さず、ドーズはルゥラーンに視線を向ける。
 そして、ポツリと言った。
「……好い」
 その一言が合図であったかのように、わらわらと出て来るドーズ達。
 出て来るなり、口々に勝手なことを言う。
「良い。好いよね!」
「美少女じゃないけど美女だー!」
「美女祭り開始かー?」
「とりあえず美女だから愛でるんじゃなくてー」
 ドーズ達は一斉に手を前に差し出すと言った。
「とりあえずパンツ下さい!」
「お前らにくれてやるパンツはねぇ!」
「ぎゃーっ!」
 コーディアスに薙刀でぶった切られ、煙になって消えるドーズその1。
「ルゥ!」
 コーディアスの呼び掛けに、即座にジョブレゾナンスしマテリアルチェインをするルゥラーン。
「美女が消えた!」
「酷い!」
「謝罪とパンツを要求する!」
「とにかく男は殺ーす!」
 わらわらと襲い掛かって来るドーズ達。
 森の中なので木々が邪魔で薙刀を振るい辛いが、その中でもコーディアスは巧みに操り、木々を躱し薙刀の刃をドーズに届かせる。
 次々に煙になって消えるドーズ達。
 だが多勢に無勢な上に、場所が不利だ。
 それを解消するためにも、コーディアスは仲間の元に走り出した。

 そうして囮役がドーズ達を連れてくる中、決戦予定地では、すでにドーズ達が湧いていた。

「思いっきり、引っ掛かってるね」
「そやね」
 目の前の、釣り竿の先に付けられた女性下着の下でわらわらと集まって来たドーズ達に、呆れるような口調で厄神はシ・モベに返した。
「やけど、なんか迷ってる気がせぇへん?」
 下着の下でうろうろと集まっているドーズ達に、厄神が疑問の声を上げていると、ドーズ達が一斉に集まって、なにやら話し合いを始める。
「協議ー!」
「どうするー?」
「これアリかー?」
「パンツに罪は無い」
「でも穿いたの男だぞ」
「被るなら許した」
「なら妥協案だー」
 どうやら話し合いが終わったらしいドーズ達は、厄神達の前に来て言った。
「精神的苦痛の慰謝料として、パンツ下さい」
「とりあえず、あそこにあるパンツ穿いて下さい」
「やらへんよ、そんなん」
 ツッコミを入れる厄神。
 ついでに薙刀で物理的なツッコミも入れる。
「ぎゃー!」
 槍のように突かれて、次々に煙になって消えるドーズ達。
 なのではあるが、まったく怯んだ様子もなく更にわらわら寄って来るので、シ・モベにジョブレゾナンスして貰いマテリアルチェインで次々に倒していく厄神。
 その一方で、この場に居たウィンドの元にも、わらわらとドーズ達は集まっていた。
「美ー少女! 美ー少女!」
「かわいいー!」
「パンツ! パンツ!」
 遠巻きに見つめ歓声を上げながら、時折パンツを要求してくる。
「品性の欠片もない魔物ですねー」
 ウィンドは呆れたように言いながら、依頼を果たすべくドーズ達に挑んでいく。
「まー、見られて減るものでもないですがー、キモいので駆除しましょうかー」
 ニューにジョブレゾナンスして貰い、一気に踏み込む。
 繰り出すのは足技。
 ふわりふわりとスカートを優美に舞い上がらせながらも、決してその下は覗かせない。
「見えないー!」
 嘆くドーズ達に、ウィンドは返す。
「スカートの中が見えない足技『絶対領域』ですよー。スカートをめくる魔法を使うそうですけど、勝負してみますかー?」
 挑発するように言うウィンドに、ドーズ達はやる気を出す。
「ここは俺が!」
「やるのかジョン!」
 ドーズの1体が前に出ると、全身に力を漲らせる。
 そしてほとばしる魔力と共に魔法を使った。
「風さん風さんめくっとくれー!」
 そんな頼みをされる風もたまったものではなかっただろうが、ドーズの放った魔法は発動し、風がウィンドの元に。
 その風の流れに逆らわないように、舞うかのような動きで、スカートをふわりと舞い上がらせるだけに留めるウィンド。
「絶対領域の勝ちですねー」
 優雅に勝ち名乗りを上げるウィンドに対し、力尽きるドーズ。
「がふっ……ここまでのようだな」
「無茶しやがって」
「ジョーン!」
「スカートめくりしたいだけの一生だった」
 スカートめくりの魔法を使っただけで煙になって消えていく、ジョンなドーズ。
 そんな小芝居が繰り広げられている中、囮役として他のドーズ達を誘導したコーディアス達とたくみ達。
 開けた場所で、次々に冒険者たちはドーズを倒していく。
 すると突然、空から声が響く。
「そこまでだ!」
 声の主は太陽の逆行を背に、錐揉みしながら空から落ちて来ると、地響きをさせながら降り立った。
 それは筋肉マッチョなドーズ、パンツ魔王だった。

○パンツ魔王をやっつけよう
「おのれ冒険者! よくも我が同胞をやってくれたな!」
 突如、現れたパンツ魔王に、ドーズ達は歓声を上げる。
「パンツ! パンツ!」
「魔王! 魔王!」
 ドーズ達の歓声にパンツ魔王は手を上げて応える。
 それはそれとして、隙だらけなので攻撃する冒険者たち。
「ぐあーっ!」
 コーディアスと厄神に甲種言霊を掛けられ、パンツ魔王はマッチョから細マッチョへと変化する。
「おのれ、貧弱なボーヤになってしまったではないか!」
「どういう原理なん?」
 思わずツッコミをいれる厄神。
「ノリと勢いだ!」
 ツッコミに返すパンツ魔王。
 そしてツッコミに返すと、勢い良くパンツ魔王が突っ込んでくる。
 コーディアスに向かって。
「ぐはははははっ! 男は殺ーす!」
 そして女性陣には、ドーズ達が向かう。
「とりあえず女性陣は愛でておけ!」
 パンツ魔王がドーズ達に言えば、ドーズ達は問い掛ける。
「スカートめくりは?」
「許す!」
「わーい!」
 諸手を上げて喜びながら女性陣に向かうドーズ達。
 それを防ごうとコーディアスは動こうとするが、パンツ魔王が進路をふさぐ。
「来い」
 パンツ魔王を避けて進むのは無理と判断したコーディアスは、薙刀を振るい攻撃を重ねていく。
 それを避け、あるいは拳で弾き、一進一退の攻防を重ねるパンツ魔王。
 そんな中、ドーズ達が魔法を使って風を起こし、女性陣のスカートをめくろうとする。
 風が舞い、スカートがめくれる景色を、コーディアスが目の当たりにしそうになる、まさにその時だった。
「ぐはははははっ!」
 パンツ魔王がブロックするように跳び込んでくる。
 コーディアスに見えたのは、パンツ魔王のたくましい大胸筋だけであった。
「てい!」
「ぐはっ!」
 渾身の力でパンツ魔王を斬りつけるコーディアス。
 その一方で、女性陣はドーズ達と対峙していた。
「……ひゃんっ!?」
 風でスカートがめくれそうになり、押さえながら恥ずかしそうに声を上げるたくみ。
 そして、クローバーは怒って声を上げる。
「あっ、だめっ!!」
 自分のスカートを押さえながら、たくみのスカートをめくろうと魔法を使っているドーズ達に言う。
「なんでこんなことするの!」
 これに返すドーズ達。
「本能?」
「天からの声が」
「そういう物です」
 これにクローバーはキッパリ言った。
「どんな理由があったとしても、人に嫌がらせするなら、めっなんだからね」
 たくみを守るように前に立ちながら言うクローバーに、何故かダメージを受けたように倒れるドーズ達。
「漂白される」
「尊い」
「萌える」
 自分達のイロモノっぷりにもだえるドーズ達だった。
 そんなある意味平和な状況の一方で、ウィンドはサクサクドーズ達を倒していた。
「パンツー!」
「本当に品性の無い魔物ですねー」
 次々に風を吹かせスカートをめくろうとするドーズ達を、ウィンドは舞うかのような動きで翻弄しながら蹴り飛ばしていく。
「見えないー!」
 ドーズ達は嘆くが、ウィンドはスカートがめくれそうになる度に蹴りをしならせ、その動きでスカートの舞い上がりを抑えつつ攻撃を重ねる。
「絶対領域を破るには、勢いが足らないみたいですねー」
 囲まれることが無いように動き続けながら、ウィンドは挑発するように言う。
「早く終わらせたいので、掛かって来て下さいー。こっちから行くのは面倒なのでー」
 それに次々にドーズ達は襲い掛かろとするかのように近づくが、全員足技で叩きのめされる。
「これはこれで良いかも」
「なんか新しい扉が開きそうな気が」
 あさっての方向に進む一部のドーズ達。
「本当にキモいですねー」
 ため息をつくように言うウィンドは、次々にドーズ達を駆除していくのだった。
 そんな中、厄神のスカートをめくろうと渾身の力で魔法を使うドーズ達が。
「いけー!」
「あと少し! あと少し!」
 ドーズ達を薙刀で倒していた厄神は、スカートがめくれそうになるのも構わず刃を振るい続ける。
 少しずつ少しずつ舞い上がり、あと少しで一気にめくれる。
 その直前で、一気に元に戻った。
「めくれへんよ? 芯地の入った形状記憶スカートな『鉄壁スカート』やからね」
「酷い!」
「絶望した!」
 厄神の言葉に、何故かしなびるドーズ達。
 そんなドーズ達を次々に倒していく厄神だった。
 そうしてドーズ達の数が減った所で、パンツ魔王を倒すべく、女性陣も一気に攻撃を重ねる。
「ぎゃー!」
 思いっきり攻撃を食らうパンツ魔王。
 気のせいか、男であるコーディアスに攻撃を受けた時よりも、女性陣に受けた方が嬉しそうだった。
 そして、重ねられた攻撃で動きが鈍った所で、コーディアスが小咒を放つ。
 狙いはパンツ魔王が被っているパンツ。
 弱体化しないかと思い、蛇の形をした炎を射出する。
「させん!」
 パンツを燃やされたくないパンツ魔王は、被っていたパンツを脱いで安全地帯に放り投げる。
 でも本人は思いっきり焼けた。
「ぐわー!」
 燃えたあと、ぷすぷすと煙を出しながらその場に倒れるパンツ魔王。
 いや、既に他のドーズ達と同じ大きさになっていたので、元パンツ魔王だったが。
 元パンツ魔王は、微妙に煤だらけになってるだけで他は平気そうだったが、少しずつ煙を上げながら消えていく。
 それは、他のドーズ達も同様だった。
 その消える中で、元パンツ魔王は言った。
「これで、これで終わりだと思うな。この世にパンツがある限り、我らはきっと蘇り、第2第3のパンツ魔王が――」
 これに突っ込む冒険者たち。
「そういう根性は出さんでもええんよ」
「面倒臭いですねー」
「殺人は、良くないですよ。蘇っても、しないで下さいね」
「出た所で、きっと誰かが倒すよ」
 厄神とウィンド、そしてたくみとコーディアスの言葉を聞きながら元パンツ魔王は不敵に笑うと、他のドーズ達と共に煙になって消えていった。

 そうして戦いは終わり、冒険者たちは一息つく。
「お疲れさまやね。よぅ頑張ってくれたわ。ありがとうね」
 戦い終わり、厄神はシ・モベの頭を撫でまわす。されるがままに、けれどまんざらでもない様子で、撫でられるシ・モベだった。
 そしてたくみは、持って来ていたお菓子を、クローバーから渡され食べる。
「美味しそうに、食べるわね」
 自分の作ったお菓子を美味しそうに食べるたくみに、クローバーが嬉しそうに言う。
 それにたくみは返した。
「女の子は、お菓子が好きなんですから! クロが作ってくれたお菓子なら、なおさらです!」
 たくみの言葉に、照れたように笑みを浮かべるクローバーだった。
 そしてウィンドといえば、ため息をつくように息を抜きながら言った。
「いい加減、日雇い仕事の冒険者じゃなく、新しいご主人さまを見つけたいですねー」
 これにニューが返した。
「そうですね。でもそれまでは、冒険者のお仕事、頑張りましょうね」
 前向きなニューに、面倒そうに頷くウィンドであった。
 そんな中、コーディアスは念のために提案する。
「これでドーズは全部倒したと思うけど、最後に残っていないか確かめておこう」
 これに皆は頷き周囲を調べると、ドーズ達に簀巻きにされたと思しき、ことの発端の下着泥棒が多少衰弱した状態で見つかり、それをついでにギルドに引渡し依頼を終らせる冒険者たちだった。

 かくして、冒険者たちの活躍によりドーズ達は駆除された。
 少なくともこれでしばらくは、ドーズがこの森で出て来る事は無いだろう。
 ちなみに、パンツ魔王が被っていたパンツは、ギルド経由で持ち主が見つかり渡されたが、微妙な笑顔でそれを受け取ったという。
 アフターケアもこなした冒険者たちであった。



依頼結果

大成功

MVP
 コーディアス
 デモニック / シャーマン


依頼相談掲示板

[1] ソルト・ニャン 2017/11/02-00:00

やっほにゃ~ぁ
挨拶や相談は、ここでお願いにゃ~!
みんなふぁいとにゃにゃ~  
 

[6] ウィンド 2017/11/11-23:42

メイドのウィンドですよー
デパフが二人なら、私は殴りに行く感じですかねー?
それなりに頑張りますよー  
 

[5] 厄神 2017/11/11-22:46

遅ぉなったけどシャーマンの厄神。こっちはシ・モベ
よろしう。

森の外に誘き出しての戦闘はうちも賛成。戦いやすくなるんはええことよ。いっそのことドーズの巣の見える位置に森の木ぃ倒して開けた所作んのもアリなんかな?
うちも囮に加わるよ。
小っちゃいオッサンから、マッチョなオッサンに変わっても強さは変われへんみたいやし大きぃ的やね。

コーディアスはんとは同じ種族でシャーマンやしね。しょうがないしょうがない。
   
 

[4] コーディアス 2017/11/11-19:34

囮やってくれる人はよろしく、気をつけて。(万が一には僕も見ない様に気をつける)

戦う場所については
森の外か、開けた所があればそこで戦闘したいってプランに入れておこうと思う。

ボス戦は
ボスの物理防御下げとくよ。
ご同業の厄神さんと被るかもしれないけどどっちか成功すればどのみち有利だ。  
 

[3] たくみ 2017/11/10-22:12

あの……
被ってしまうと強くなりそうですね。

スレイブのクロとシーフのたくみです。
よろしくおねがいします。それじゃ、わたしが囮を…!
 
 

[2] コーディアス 2017/11/10-05:28

僕はシャーマンのコーディアス、パートナーはルゥラーンです。
どうぞよろしく。

戦う場所についてだけど、
シャーマンの武器は薙刀だから森の中は木が邪魔で戦いにくいかもしれない。
だから、ドーズの巣の前でスレイブに囮になって貰って、森の外に誘き出しての戦闘を僕は希望するよ。いいだろうか?

で、
ドーズは各組で倒して、パンツ魔王は協力戦かな? て思ってるけど、作戦があれば協力します。

よければ意見よろしく。