毒沼のヌシ(三叉槍 マスター) 【難易度:普通】




プロローグ


 木こりのミゲルはその日もいつも通り明け方に起き、いつもの妻の卵料理を食べ、長年使い慣れた斧を持ち、日課の道を通り彼が作業場としている森へとたどり着いた。
 そして、さっそく数本の木を切り倒した彼は、山の中腹に作ってる休憩用の小屋へと向かった。
 小屋の横には湧き水で出来た泉がある。ある程度作業をしたらそこで水を補給するのがミゲルのいつも通りのルーティーンだった。
 その日がいつも通りでなくなったのはその時からだった。
「なんだぁ?」
 異変に気付いたのはその泉に近づいている途中だった。
 ――いや、少し語弊があるか。正確には彼が近づいて行ったのは泉ではない。
「水が……黒く?」
 いつもは湧き水で澄んだ水が揺蕩っている泉。しかし、その日の泉はまったく見た目を変えていた。
 濁るを通り越して、黒く澱んだ色へと変色した水。泉というよりは沼、という方が相応しい光景だろう。
「一体、何だってんだ。さすがにこんな水飲めねぇぞ」
 沼に近づき、その縁にそっと触る。
 黒い水は気持ち悪さを感じさせるような粘着性があり、おおよそ口にしようと思えるものではなかった。
 飲むどころか、触るのですら躊躇われる。
「こんな事初めてだな。……まいったな」
 ここの泉は仕事をするうえで非常に便利で助けられてきた。
 原因は分からないが、その泉がこの有り様では今後の仕事にも支障が出よう。
「しょうがねぇな、今度来るときに水を溜めとくもん持ってくるか……」
 いくら嘆いてもなってしまったものは仕方ない。そう考えてミゲルがその場を立ち去ろうとした時――
 彼の手首に何かが絡みついた。
「!? な、何だぁ!?」
 急な出来事にミゲルが悲鳴を上げる。
 手首に絡みついた細長いひも状の物体。それは沼の水の中まで伸びていた。
 沼の水は黒く濁り中の様子は全く見えない。一体何が起こっているのか彼には理解できない。
「くそっ! 放しやがれ、この!」
 幸運だったのは彼が木こりだったこと。
 それなりに力があり、そしてなにより彼は武器を持っていた。
 言うまでもない、斧である。
「放せ! 放せ!」
 囚われたのが利き腕ではなかったのも幸運だった。
 桃色の何かに斧を何度も叩きつける。
「やった!」
 無理な体勢での行為だった為、それを断ち切るほどの威力は出なかったが、流石に耐えかねたのかミゲルの腕が解放される。
 彼は急いで体勢を立て直し、一心不乱に沼から離れるように走り出す。
「くそっ! くそっ!」
 自分を奮い立たせるように悪態を吐きながらミゲルは森を走る。
 この森は自分の庭の様なものだ。決して道を間違えたりはしない。
 最後に彼がちらりと後ろを振り返った時、そこには巨大な蛙の姿があった。


解説


〇目的
巨大蛙の群れの討伐

〇敵情報
巨大蛙 ×8
 沼に住み着いた大きな蛙。
 下を伸ばして攻撃を行い、巻き付かせて引き寄せたり、鞭のようにしならせて叩きつけてきたりする。
 攻撃的な性格だがあまり積極的に沼から遠く離れようとはしない。
 肌にはぬめりがあり滑りやすく、そこそこの強度がある。
 攻撃力はそれほど高くないが、その下で沼に獲物を引きずり込んで殺す習性があるようだ。

〇情報
 沼地での戦いになるだろう。
 沼の深さは深い所で大人の腰くらいまで。広さは直径で10mほどの小さめの沼である。


ゲームマスターより


初めまして。三叉槍と申します。
唐突に現れ憩いの泉を汚した蛙を退治してください。
蛙相手に思う存分暴れていただければと思います。
よろしくお願いします。



毒沼のヌシ エピソード情報
担当 三叉槍 GM 相談期間 6 日
ジャンル --- タイプ EX 出発日 2017/8/27
難易度 普通 報酬 通常 公開日 2017/9/6 2

ステラ・ザクセンエノン・ザクセン
 ヒューマン | ウォーリア | 20 歳 | 女性 
目的は巨大蛙の討伐。
持っていく武器は片手剣、防具は革鎧、道具は松明。片手剣と松明をそれぞれの手に持っています。
スレイブのエノンも同様の装備です。
沼に行く前に松明で剣を炙って高熱にして、蛙の滑った皮を貫きやすくします。
柄の部分まで熱くならないようにしつつ、念のため湿った布きれを柄に巻き付けて手を保護。

その後、私は沼に近付き蛙を誘い出し陸地に誘き出します。ある程度沼から引き離しましょう。
エノンは待機させておきます。誘い出す際、舌に巻き付かれたら松明で炙るか剣で切りつけます。
その後はジーンさんやエノンと共同で蛙を剣で攻撃します。舌で巻き付けたり叩付けてきたら
剣で切り飛ばします。一体づつ確実に減らしていきます。沼へ引き返す奴はエノンが妨害して
その間に私も追いつきましょう。もし沼に逃げ込まれたら、また誘い出し倒します。
ジーン・ズァエールルーツ・オリンジ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 
装備:グレートソード

沼から離れた場所で火を起こし、それで刀身を炙って熱しておく。ルーツにも松明を持たせる
準備が終わったら沼へ接近。奴らは舌で腕を絡めてきたというから攻撃方法は間違いなく舌を使ったもの。そして奴らは沼からほぼ離れない
だったらやる事は一つ。舌を切り落として接近戦をせざるを得ない状況に追い込む。そうすれば相手の土俵に立つ事なく戦える

戦闘時はステラの死角をカバーする立ち位置で、舌を伸ばしてきたら片っ端から切っていく。こっちは二人だが攻撃手段が限定されてるなら上手く立ち回れば問題ねえ
刃の熱がなくなってきたらルーツの松明で炙る。その間に手足を舌で絡められても、腕なら噛み付き、足なら踏みつけて対応

ある程度舌を切り落としたらカエルを挑発。接近してきたら沼に入らずにカエルを迎撃。向かってくる奴らを片っ端から叩き斬ったり突いたり蹴り飛ばしたりと、使える手段を全部使って撃退する

参加者一覧

ステラ・ザクセンエノン・ザクセン
 ヒューマン | ウォーリア | 20 歳 | 女性 
ジーン・ズァエールルーツ・オリンジ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 


リザルト


「巨大な蛙、ですか。爬虫類の魔物というのはたまに見かけますが、両生類というのは初めてですね……」
 被害者であるミゲルから教えてもらった現場への道を何気なく歩きながら――無論そうしながらも周囲の警戒は怠っていないが――ステラ・ザクセンがふと呟く。
 別に誰に当てたというわけでもないおおよそ独り言に近い発言だろう。しかし、今回の仕事の相方、ジーン・ズァエールは律儀にも反応した。
「俺もカエル相手は初めてだな。ま、ガキん頃はよく破裂させて遊んだもんだけどよ」
「それ、今言うべき事ですか、マスター?」
 主人の悪辣な言い回しに彼のスレイブであるルーツ・オリンジが苦言を呈する。
「健康な男子はやるもんなんだよ」
「絶対マスターだけだと思いますよ」
「いや、絶対やってるよ。少なくとも7割はやってる」
「随分中途半端な自信ですね……」
 妙に自信満々に言い切るジーンに、ルーツは呆れ気味にため息を漏らす。
「お二人とも、思い出話も結構ですが、どうやら到着したようですよ?」
 昼にも関わらず松明を掲げ歩いていたエノン・ザクセンが二人に声をかける。
 彼女はステラのスレイブだ。
「話には聞いていましたが、想像以上に汚れていますね……」
 視界の先に映る沼の様子にステラが思わず眉を顰める。
 『沼が濁った』と事前には聞いていたが、正直なところ精々藻のようなもので緑色に染まったか、泥水のように茶色く濁ったくらいだろうと思っていた。
 しかし、今見える沼の様子はステラの予想を上回って酷いありさまだった。
 沼はまるで塗装屋が使う塗料のように黒く染まり、透明だった頃など一切思わせない状態だ。
 黒い水が土に若干浸透し、当たりの地面まで黒ずんでしまっている。
「沼と聞いて下水道の時よりかは……と思ってましたが、これはそう変わらないかしら……」
「ご主人様、これも仕事です。ついて早々の弱音はお辞めください」
 出鼻からやる気をくじかれた様子の主人をエノンが窘める。とはいえ
「……まあ、お気持ちはわかりますが」
 と沼の方を改めて見やってそう付け足してしまうほど、沼の状態は酷かった。
「くくっ、まあ、泥遊びも男の子の領分だ。汚れんのが嫌なら後ろで見てな。俺が全部片づけといてやる」
 吊るしていた両手剣を鞘から抜き放ちジーンが構える。ここは既に敵のナワバリの中である。いつ何が起こってもおかしくはない領域だ。
「……いえ、結構です。私も冒険者の端くれ。この程度の事で臆したりは致しません」
 触発されたのか同じく武器である片手剣を抜き、ゆっくりと警戒しながら沼の方へと歩み出すステラ。
「何だやるのかい。まあいいぜ。取り分が減るのは残念だが、乱戦とタイマンじゃまた趣が違う。それはそれで面白いもんよ」
 ステラの背中を見ながらジーンがニヤリと笑う。
「さあ、楽しませてくれよ、蛙ども」
 そう言って、彼もまた沼に向かって歩き出すのだった。

「さて、マジで沼が濁り過ぎてて敵の数も大きさも見えやしねぇな」
「そうですね……」
 ジーンの言葉にステラが頷く。
 戦闘において敵の情報は非常に重要な要素である。しかし、今回はそれが今一つ不足しているのは否めなかった。
 分かるのは大きな蛙が敵だという事。それと、舌を使って攻撃してくるという事くらいだろうか。
「まずはおおよその情報が欲しい所ですね」
「だな。さっきは泥遊びっつったが、あそこに無策で突っ込むのは流石にくたびれそうだ」
 ジーンは戦闘を好むバトルマニアである。
 しかし、わざわざ不利な状況を作ってまで楽しむような狂戦士ではない。戦いの楽しさを知る彼は同時に恐ろしさも知っている。
「敵の姿が見えない以上あえて敵に先手を取らせるのが上策でしょう。ですから……」
 ステラはジーンの持つ獲物に視線を移す。
 ジーンの武器は大きな両手剣。攻撃寄りの武器でどちらかと言えば敵の攻撃よりも先に相手を切り伏せる武器である。
 対してステラの武器は小回りも利く片手剣。
 で、あるならば方針は決まったようなものだ。
「私が敵を誘い出します。ジーンさんは後から詰めてきてください」
「いいぜ、乗った。先方は任せる」
 ステラの提案にジーンが笑みを見せて同意する。
「エノン」
「はい、お気を付けください、ご主人様」
 傍らに寄り添っていたエノンに自身の剣を差し出す。
 エノンはそれをみて意図を掴み、事前にした相談の通りその剣に松明の火を掲げた。
 滑った皮を持つであろう蛙対策に考え出した方法である。
「あなたはここで待機していて下さい」
「仰せの通りに」
 恭しく一礼するエノン。
「お前もだぞ、ルーツ。前線に来たらまずお前から蹴っ飛ばすからな」
「分かってますよ。ボクだって自分の身は惜しいですから。……でも、絶対に無理はしないで下さいね」
「俺に無理な事なんてもんはねぇ」
 ステラたちと同様にルーツに剣を炎で焙らせながらジーンがうそぶく。
「さ、準備はよろしいですね? ……行きます!」
 剣が十分に熱を持ったのを確認してからステラが一足飛びに沼へと向かう。
「さあ、どう出る?」
 油断なく武器を構えながらステラの後ろ姿を見守るジーンが呟く。
「――来た!」
 沼まであと数歩というところまで近付いたところで沼の中からピンク色の棒状のものが突き出してくる。
 間違いない巨大蛙の舌だ。
「はぁ!」
 掛け声と同時に剣を思いっきり振り抜き、その舌を切り返す。
「……!」
 ステラの左手に与えられる衝撃は思ったよりも強い。彼女は両足をしっかり大地に設置し、構えなおした。、
「――!」
 再びステラに迫る鞭のような打撃。今度は横薙ぎに彼女の足元を狙ってきたものだ。
「甘い!」
 これを軽く跳んで回避。
 着地してほどなく迫る三本目の舌。
「そこです!」
 流石に三回目ともなると目も慣れる。ステラは顔面目掛けて迫ってきたそれを、右手に握る剣で叩き落とす。
「断ち切りたかったですが……!」
「ゴボォ!」
 漆黒に染まった沼から大きな水泡が浮かんで弾ける。今切り伏せた蛙のものだろう。
「これで……」
 それ以上の追撃が来ない事を確認してステラが沼を見やる。
 沼の様子は今までとはちょっと変わっていた。今までは澱んでいるものの静かだった水面にポコポコといくつかの水泡が浮かんできている。
 ――来る。
 そう確信したステラが一層緊張感を張り詰める。
「グェェェ……」
 絞り出すような重低音と共に沼から顔を出した巨大蛙の数は全部で八体。
「思ったよりも多いな! おい、退け!」
「くっ!」
 ジーンに言われるまでもなくステラは素早く踵を返し後ろへ下がる。
「ゲォ!」
 駆けるステラの足元を掬おうと伸びる数本の舌。
「オラァ!」
 そこへ駆けつけたジーンが両手剣をフルスイングし、伸びる舌に切りつける。
 全てとはいかないが何本か舌の先が断ち切られ、宙に舞う。
「マスター離れて!」
「分かってるよ、よっと!」
 蛙たちが次の攻撃態勢に入る前にバックステップで距離を取る。
 今ままでの攻防から推察できる敵の舌の射程範囲ではここまでは届くまい。
「グロォォ……」
 蛙たちが一瞬戸惑ったように動きを止める。
 その無感情な表情からは想像できないが、退くか追うかを迷っているのかもしれない。
「ここで臆病風に吹かれちまったら困るんだよなぁ……! おい、カエル共、聞きやがれ!」
 ジーンがそう叫び、己が胸を思い切り叩く。
 小手と鎧がぶつからう激しい金属音が一帯に大きく響いた。
「舌を伸ばす程度しかできねえ引きこもりカエル如きが俺を潰せると思うなよ! 俺を殺したかったら得意の跳躍で俺の元にきやがれやぁ!」 
 そして咆哮のような大声で蛙達に向かって挑発をする。
「言葉なんて分かるわけが……」
「ゲェェ! ゲェェ!」
「え!? 通じた!?」
 ルーツのツッコミをかき消すように蛙達が一斉に大きな鳴き声を上げ始める。
 明らかにジーンの挑発に反応したものだ。その鳴き声からは少なからず敵意を感じる。
「叫び声は威嚇だ。どんな動物でもそれは変わらねぇ。野生である以上それは無視できねぇんだよ」
「来ます! エノン、もう少し下がって下さい!」
「は、はい!」
 蛙達が一斉にこちらに向かってるのを見てステラがスレイブであるエノンに指示を出す。
 スレイブはただ意味もなく近くに立っているわけではない、彼女たちは主人へ力を与えてその動きをサポートしている。
 だが、逆に彼女が倒れると主人であるステラの能力も落ちてしまうのだ。ゆえに戦闘では守る必要がある。
 ただ、それとは別としてステラ自身がエノンが傷つくところなど見たくもないというのもあるのだが。
「さあ、ここからが本番だ! 来やがれ、カエルども!」
 ジーンも両手剣を構えて迎撃態勢を取る。
 敵が一斉に迫ってきたことは危機ではあるが、ここは平地。不可視の沼から突然の不意打ちはないし、足を取られるぬかるみもない。敵の地の利は消失した。
「ならば、先手必勝!」
 向かってきた蛙がもうたやすく沼には戻れないほど距離を取ったと判断したところでジーンが一気に距離を詰める。
「死んでろ!」
 駆ける勢いと両手剣の重量、そしてジーンの筋力と体重の全てが乗ったその一撃はたやすく蛙の一体を両断した。
「まず一つ!」
 倒した感慨にふける暇なく素早く剣を構えなおす。
 一体倒したとはいえジーンが踏み込んだのは敵の群れの中心、たやすく死神が顔を出す最前線である。
「ゲ――」
「させません!」
 いち早くジーンを攻撃しようと口を開けた蛙をステラが横から一突きに串刺しにする。
「やるね」
「軽口を叩いてる場合ではありません!」
 まだ戦いは口火を切ったばかり、先制に成功したとはいえまた減った敵の数は2つだけである。
「グゲェェ!」
 残る6匹が一斉に二人に向かって攻撃を繰り出す。
 まっすぐ舌を伸ばすもの、鞭のようにしならせるもの、自身が跳躍し飛びついてくるもの。その攻撃手段は多彩だ。
「くっ!」
 剣を持ち、群れの外円にいたステラはその攻撃を何とか切り払い防ぎきる。
「ぐぉっ……!」
 しかし、群れの中心にまで踏み込んでいたジーンは途中までは何とか防いでいたが、流石に対応しきれずドテッ腹に一撃を食らう羽目になった。
「ま、マスター!」
 後方でハラハラしながら見守るルーツが悲鳴に近い声をあげる。
「なめんなよ、カエル共……!」
 しかし、その一撃にも少しよろけるだけで何とか踏みとどまりすぐさま体勢を立て直す。
 そこへ少し遅れてきた舌が鞭のようにジーンに迫る。
「せめてこれくらいは貰っていくぜ!」
 切っ先を下げていた剣を思いっきり振り上げ、その舌を両断する。
「グェェェェ!」
 舌を断ち切られた蛙がうめき声のようなものをあげる。
「ゲェェ!」
 しかし、この動きを隙だと感じたらしい蛙の一匹が、そこへさらに追撃の舌を突き出す。
 右から迫るその舌は、たった今剣を振りぬいたばかりのジーンには対応の難しい軌道である。
 そして、さらに悪い事にその逆方向からもジーンに向かって一匹の蛙が飛びついてくる。
 左右からの挟み撃ちである。
「ジーンさん!」
 それを救ったのは自身への攻撃をさばき切り、ジーンの元へ駆けつけたステラ。
 彼女はその身をジーンと蛙の間に挟み込み、その舌を剣で切り流す。
「よっしゃ! 助かったぜ、ステラ!」
 右の安全が確保された事を確認したジーンが飛びついてきた蛙を強烈な回し蹴りで迎撃する。
 蛙が勢いよく後方に吹き飛ぶ。
「これは……」
 さらに蹴り脚を地面につけ、その回し蹴りの遠心力を利用し一気に前に踏み込む。
「おまけだ!」
 そこからさらに一回転。横薙ぎにふるった両手剣が動向を見ていた一匹の蛙の頭を切り落とす。
「戦闘中にぼぅっとしてんじゃねぇぜ!」
「はぁぁ!」
 その後ろでステラが追撃で迫っていた舌を剣で払いながら敵に突進し、上から突き刺し一体敵を屠る。
「4つ!」
 その剣を引き抜きながら辺りを見渡す。
 これで半数減った。のこるは4体。
「ご主人様、沼の方!」
「――!」
 エノンの声に視線を沼へと移すとそちらへと撤退しかけている蛙が1体目に入る。
「逃がすわけには……!」
 沼に逃げ込まれると厄介だ。沼の中は見通しが悪い。そのままどこかへ身を隠される恐れがあるし、そうなればこの場の安全を確保するという目的が果たせなくなる。
「……っ!」
 しかし、ステラのその思いとは裏腹に距離が離れすぎている。このままだと蛙が沼に到達する方が早い。
 ――と、そこで上から落ちてきた『何か』が蛙の頭にごつんと当たる。
「グェ」
「あ、当たりました」
 それは咄嗟にエノンが投げた石だった。スレイブの力でも遠くに投げれる程度の小さな石。
 大したダメージではないだろう。蛙の皮は結構強靭だ。当たったとしてそれで蛙がどうにかなるようなものではない。
「グェ?」
 しかし、当たった事が重要だ。
 突然の衝撃に驚いた蛙が、足を止め後ろを振り返る。
「それは――」
 その隙にステラが蛙に追いつく。
「悪手です!」
 ステラの剣が振り向いた蛙を切り裂く。
「ゲェェ!」
 これに反応したのは先ほどジーンに蹴り飛ばされた蛙だった。
 飛ばされ戦場から少し距離が離れていた蛙は、今の一連の動きで後方に控えているスレイブたちも敵であると認識した。
「グゲェェ!」
「わわっ、こっちに来る!?」
 思いのほか、近くから聞こえた蛙の鳴き声にルーツが横を向くと、そこには猛烈な勢いでこちらに迫る蛙。
「く、くそっ、来るなら来い!」
 ちらりとエノンの方を伺ってから手に持った松明を掲げて迎撃態勢を取る。
 心許ないにもほどがある武器である。しかし、ここは自分が戦うべきときだという意識がルーツにはあった。
「グゲェ!」
「うわぁ!」
 しかし、スレイブは総じて非力である。飛んできた舌を何とか松明で防ぐものの、その一撃で松明は跳ね飛ばされ、さらにルーツ自身も尻もちをついてしまった。
「ルーツさん!」
「離れて!」
「ゲェェ!」
 咄嗟にルーツを助け起こそうとするエノンとルーツの二人に再び蛙の舌が迫る。
「ったくよぉ……」
 しかし、それは横合いから振るわれた一刀により切断された。
 ジーンの両手剣である。
「離れてろっつったろうが」
「離れてましたよぉ! あっちから来たんです!」
「さて……」
 必死に反論するルーツを無視し、スレイブたちを襲撃した蛙に顔を向ける。
「覚悟は……出来てんだろうな、カエル野郎……」
 今までの威嚇のための大声とは違う。殺意が込められたむしろ静かな口調。
 その殺気に蛙の動きが止まる。まさに蛇に睨まれた蛙だ。
「てめぇは死ね」
 振り下ろされた剣が蛙を左右に両断する。
「ふん……」
 剣を肩に担ぎなおし、沼の方へと向ける。
 敵の残りはたったの2体。
 そして、こちらの道にはジーン、沼の方にはステラ。先ほどとは逆にこちらが挟み撃ちである。
「さ、せいぜい足掻いて楽しませろや、カエル共」
 しかし、そんなジーンの期待とは裏腹に、残りの二体はあっさりと討伐されたのだった。



依頼結果

成功


依頼相談掲示板

毒沼のヌシ 依頼相談掲示板 ( 8 )
[ 8 ] ステラ・ザクセン  ヒューマン / ウォーリア  2017-08-28 03:14:43

っと、スレイブの武器も私と同様です。  
 

[ 7 ] ステラ・ザクセン  ヒューマン / ウォーリア  2017-08-28 01:03:52

それがいいですね。確実に数を減らしていきましょう。  
 

[ 6 ] ジーン・ズァエール  ヒューマン / ウォーリア  2017-08-26 21:27:21

俺の武器は両手剣。松明はスレイブに持たせる。防具は……まあ適当かな  
 

[ 5 ] ジーン・ズァエール  ヒューマン / ウォーリア  2017-08-26 21:26:40

あいつらの土俵で殺りあう義理もねえからな。そうするのが妥当か
俺としてはあいつらの攻撃手段である舌を叩き切って接近戦をせざるを得ない状態に持ち込むところから始めたいがどうだろう  
 

[ 4 ] ステラ・ザクセン  ヒューマン / ウォーリア  2017-08-26 21:00:03

相手のぬめつく皮膚ですが……。これについては武器の刃先を少し松明で炙って熱したら
貫きやすくなるのではないかなぁ……と。持っていく武器は片手剣と松明です。防具は革鎧を予定しています。  
 

[ 3 ] ステラ・ザクセン  ヒューマン / ウォーリア  2017-08-26 20:56:33

よろしくお願いします。相手は大蛙ですが、沼(泉)から引き離せば何とかなると思います。
どうも最初は待ち伏せしているようなのであえて近付いて誘い出し、その後対処しようかと思います。  
 

[ 2 ] ジーン・ズァエール  ヒューマン / ウォーリア  2017-08-26 11:33:44

締切間近だが暇だから参戦だ。ヒューマンでウォーリアのジーンだ。よろしくな  
 

[ 1 ] ステラ・ザクセン  ヒューマン / ウォーリア  2017-08-25 08:15:27

ヒューマンでウォーリアのステラ・ザクセンです。よろしくお願いします。