とある廃村。
元々は、農産物を運ぶ中継場所として作られた村だったが、大道の変更に伴い打ち捨てられた小さな村。
多くは無いが、探せば点在するほどにはある。そんな珍しくもない場所を、2人の帝都ディナリウムに属する斥候兵が偵察していた。
「マズいな」
兄のトマスが小さく呟く。いま居るのは、廃村の周囲に点在する木の影だが、そこから視線を向けた先に居るのはイービルだ。
それも1体や2体ではない。見えているだけでも10体はいる。
「どうする? 兄さん」
弟のマルコが、トマスに問い掛ける。
「尋問で得られた情報が正しかったのは、これで確かめられたんだ。ここで引き上げても、文句は言われないと思うけど」
2人がこの場に居るのは、少し前に大進攻を行ったセンテンタリ軍。その遊撃分隊の1つであった、後方撹乱を目的とした一団の生き残りを尋問し、得られた情報を確認するためである。
冒険者たちの活躍により、後方撹乱を未然に防ぐことが出来たのだが、センテンタリ軍のたくらみはそれだけではなかった事が発覚したのだ。
いや、より正確に言うならば違う。センテンタリ軍に手を貸していた、とある1人のデーモンのたくらみが分かったのだ。
いま、トマスとマルコの2人が居る廃村を根城にしていたそのデーモンは、そこで何かしらのたくらみを図っていたらしい。
後方撹乱が失敗したことで、そのたくらみが発動する事は無かったようだが、痕跡を確かめるために2人は派遣されていた。
「帰る、と言いたい所だが、人手が足らないんだ。出来るだけやれることは、やって帰ろう」
「……分かったよ。調べられるだけ調べて帰ろう」
センテンタリ軍による戦いの爪痕は、未だ癒えてはいない。そのせいで人手が足りていないのだ。
(冒険者の助けを、借りることが出来れば良かったな)
マルコは、少し前に助力を頼んだ冒険者たちのことを思い出し残念に思う。
(冒険者たちが、あれだけの力を持っているなら、今回も十分に力になってくれただろうに)
マルコの考えは正しかったが、確定されていない情報に帝都ディナリウムもお金は出せない。
冒険者たちの助力を得るためにも、詳しい情報は不可欠なのだ。
だからこそ、危険を冒して2人は廃村へと侵入する。
イービル達に気付かれないよう慎重に、2人で死角を補いながら調べて回る。
村の形状と配置を確認し、どうにか家屋の中を探れないかと迷っていた時だった。
「ギギッ!」
イービルたちに気付かれる。一斉に襲い掛かってくるイービルたち。10体以上が、一気に襲い掛かってくる。
爪と牙で斬り裂き殺そうと、殺意をみなぎらせていた。
しかし、その攻撃が2人に届くことは無い。
斥候兵として、速さと生き残ることに特化して鍛えた2人は、回避に専念してイービルの群れからの攻撃を避け続ける。
絶え間なく繰り返される攻撃。それを避けながら、2人は情報を集め続けた。
(侵入者を発見すると同時に襲い掛かって来たのか? でも全部じゃない。一部は、村の家屋の入り口を遮るようにして動かない。あの家屋の中に、何かがあるのか?)
(こいつら、一匹一匹は大した事が無いぞ。連携も取れてないし、ハッキリ言って弱い。囲まれさえしなければ、どうにでもなるな)
敵の動きと強さ、そして状況の把握を行い、十二分に情報を得た所で、2人は一目散にその場を逃げ出した。
こうして2人により、イービルのはびこる廃村の情報がもたらされました。
農産物の出荷を目的としていた廃村のため、中央に集荷用の広場があり、それを囲むように10件ほどの家屋が建っています。
イービルの数は、確認できただけでも20体以上。
1体1体の強さは大した事は無く、囲まれでもしない限り、冒険者であれば切り抜けられるでしょう。
イービルは村に侵入する者があれば襲い掛かるようですが、一部のイービルは、とある一軒の家屋の入り口を守るように動くようです。
恐らく、イービルを作ったデーモンの命により、家屋の中にある物を守っていると予想されています。
イービルをすべて排除すれば、家屋を調べることは出来るでしょうが、そこまで追い詰められたイービルが何をするかは分かりません。
場合によっては、家屋の中にある何かを破壊してしまう可能性もあります。
家屋の中にある何かを調べるためには、イービル全体を出来るだけ追い詰めないようにした上で、入口を守るイービルを先んじて倒す必要があるでしょう。
しかしそれは、入口を守るイービルに集中する間に、他のイービル達に囲まれる危険性もはらんでいます。
この難しい状況の中、冒険者たちに協力が求められました。
危険性も考え、イービルの全滅を最優先にして、家屋の中にある何かを調べることは二の次にして良いとの事でした。
ですが、もし調べることが出来たなら、きっとデーモンのたくらみを叩き潰す大きな切っ掛けになるのは確実です。
この状況、貴方達ならばどうしますか?
状況説明
廃村にはびこるイービルを全滅させて下さい。
数は20体以上。1体1体は弱いです。
初期の冒険者でも、巧く立ち回れば1人で数体は倒せます。
村に侵入すると同時に、一斉に襲い掛かってきます。
ただし、廃村で一番大きな家屋の入り口を守る3体は動きませんし多少強いです。
村の周囲は、木が切り倒されて平地になっています。
そこに足を踏み入れると同時に、イービル達は村に侵入したとみなします。
成功条件
イービルの全滅。それ以上は不要です。
成功度の上昇条件
イービルが守る家屋の中を調べて、そこに隠された「何か」を見つけて下さい。
ただし、イービルは自分達が明らかに不利だと判断すると、家屋の中にある「何か」を破壊します。
ですので、自由に動き回るイービル達を倒さずに引き付け、家屋の入り口を守るイービル達を優先して倒す必要があります。
イービルは囮となる人数が多ければ多いほど数を引き付けられます。
ある程度の人数が囮にならなければ、家屋の前の3体以上がその場に残るでしょう。
家屋の中にある「何か」を探す際はINTが影響します。
固定値のみでなく、サイコロによる乱数も加味して判定します。
ですので、すぐに見つかるとは限りません。
探している間は戦闘に参加できません。
ですので、全てのイービルを倒し切ってから探す、といった選択も有り得ます。
その他
NPCとしてエピソードで出た2人が参加します。
基本は、参加者が少なかった場合のお助けキャラです。
囮しか出来ませんが、上手く指示すれば有利になります。
NPCを使う事による、達成度の低下はありません。
PCやスレイブのセリフなどをプランなどで書いて頂けると、描写がされ易くなります。
ただ、リザルトの流れもあり、多少の変更も有り得ますのでご了承ください。
以上です。では、イービルを全滅させて下さい。
おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
幻カタ2本目のエピソードを出させて頂きます。今回のエピソードは、一つ前のエピソード「【創造の光・歪】後方撹乱を防げ!」の結果から発生したエピソードになります。
ただ、そちらを知らなくても問題なくご参加頂ける物になっています。
今後も、今回のように、前回のエピソード結果などから次回以降のエピソードを作っていこうと思います。
みなさんのPC達の活躍や行動が繋がっていく形で、エピソードを出して行きたいと思います。
という訳で、今回のエピソードも結果次第で新たなエピソードが発生する予定です。
それでは、少しでも楽しんで頂けるよう、判定にリザルトノベルに頑張ります。
デーモンのたくらみを調査せよ エピソード情報 | |||||
---|---|---|---|---|---|
担当 | 春夏秋冬 GM | 相談期間 | 7 日 | ||
ジャンル | --- | タイプ | EX | 出発日 | 2017/8/11 |
難易度 | 普通 | 報酬 | 通常 | 公開日 | 2017/8/21 |
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参加者一覧
キミシア・シュー( ビスコ ) | |
ケモモ | シーフ | 21 歳 | 女性 |
ミクシーナ( ミヤコ ) | |
デモニック | メイド | 20 歳 | 女性 |
コウユウ( ヒナ ) | |
ヒューマン | ナイト | 25 歳 | 男性 |
ヴィッキー=ヴィッカー( グリセラ ) | |
デモニック | シャーマン | 20 歳 | 男性 |
リザルト
○まずは突入準備
廃村に蔓延るイービル。その殲滅と、イービルが守る何かの奪取。
それを求められ引き受けた冒険者達は、村の境界ギリギリでイービルの動きを見極めつつ、突入の段取りを組んでいた。
「村の中央広場に誘導するのが、効率が良いんですね?」
事前に廃村を調べていた斥候2人に『ヴィッキー=ヴィッカー』が尋ねていく。
少しでも有利になるために、皆と情報を共有する事が目的だったが、それは効果的だ。
斥候2人も話すつもりではあったが、積極的に聞き出し皆と話し合えば、やった分だけ練度は上がっていく。
実際に戦いが始まれば、それは冒険者たちの優位に働くだろう。
だから、ヴィッキーの質問は有意義ではあったが、最初から延々と真顔のまま質問し続けるので、斥候2人は自分達の応えに何か拙い点でもあったのかと不安を覚える。
それでも真顔で質問し続けるヴィッキーに。
「笑顔で話せとは言わないけど、少しは愛想も良くしなよ。勘違いされるだろ?」
彼のスレイブである『グリセラ』が、ツッコミを入れるように言う。
「勘違いって、なにが?」
真顔のまま、けれどグリセラが相手なので砕けた口調で聞き返すヴィッキー。
それに苦笑するような空気が流れる。そうして和らいだ空気を広げるように、『コウユウ』は明るい声で言った。
「真面目だな、アンタ。うん、良いこったぜ、そりゃ」
これにスレイブの『ヒナ』は、いつものようにツッコミを入れる。
「アンタも、少しは見習いなさい」
「え? どこを?」
「そういう所よ!」
打てば響くような2人の掛け合いに。
「仲が良いですのね。でも、私達も負けていませんわ」
いつものメイド服から、戦闘用のくの一装束に着替えていた『ミクシーナ』が、スレイブの『ミヤコ』をぎゅっと抱きしめる。
メイド服姿のミヤコは。
「はい。仲は、良いです」
恥ずかしそうにしながらも、ぎゅっと抱き返す。そこに、
「私も混ざるー♪」
『キミシア・シュー』も、子猫のような無邪気さで、ミクシーナにぎゅっと抱き着く。そしてスレイブの『ビスコ』に、
「ビスコもー♪ ぎゅーって♪」
おいでおいでをして招き寄せる。
「ぎゅー、ですか?」
真面目なビスコは、ちょっとだけ迷うようなそぶりを見せて、キミシアにぴとっとくっつく。それを見ていたコウユウが。
「女の子同士の美しき友情ってやつだな」
そこにヒナが。
「混ざろうとか、思ってない?」
するとコウユウは真顔で。
「こういうのは男が間に混じったらダメなんだよ」
「なんなの、その拘り。意味分かんないんだけど」
ため息をつくようにツッコミを入れるヒナに、コウユウは笑みを浮かべながら。
「野郎は黙って脇役に徹するべきだぜ? そう思うだろ?」
同じ男のヴィッキーに同意を求める。これにヴィッキーは真顔で。
「はい。戦闘補助は任せて下さい。皆さんが全力で戦えるようにするのが、おれの役割ですから」
誠意を込めて返した。これに。
「助かる。頼りにしてるぜ」
「ええ。お願いしますわ」
「ありがとー♪」
コウユウと、そしてミクシーナやキミシアは力強く礼を返した。
それを真顔のまま、言葉無く受け止めているヴィッキー。そこへ。
「こいつこんな顔だけど、喜んでるから。一応」
グリセラが肩をすくめるようにしてフォローを入れ、更に場の空気は和んだ。
そうして戦闘前に、自然体で力を抜き、準備は万端。話し合いを終らせ、突入の時が近づく。
「まじないを掛けます。戦闘が始まってからも、任せて下さい」
ヴィッキーが全員を強化する事で、戦闘前から冒険者たちの優位性は高まる。
それを活かすように、皆は突入した。
○イービルを殲滅せよ!
最初に踏み込んだのは斥候2人。前回の調査で地形を把握してる事もあり、冒険者たちのガイド役も兼ねて先行する。
即座に反応するイービル達。10体近くが襲い掛かってくる。それを村の広場に誘導する斥候2人。
しかしそれ以外は、異なる動きを見せた。
何かが隠されていると思しき家の入り口前に3体が就き、その周囲を10体近くが徘徊している。
そこへ踏み込んだのはコウユウとヒナ、そしてヴィッキーとグリセラ。
コウユウは踏み込むと同時に、イービルの1体に盾を叩き付けるようにして体当たり。
引き付けた上で挑発する。
「ビビッてんのかオェーイ、ヘイヘイヘイヘイ~」
「ギイッ!」
怒りで突っ込んでくるイービルを避けながら。
「おいおいどうしたんだ? 飛ばねぇ猿はただの猿だぜ?」
わざと余裕を見せて煽っていく。
「バカ! 真面目に戦いなさいよ!」
コウユウを守るように動きながらツッコミを入れるヒナに、
「余裕を持って行こうぜ。そこまでする相手じゃねぇよ」
安心させるような笑みを浮かべ、イービル達を引き付けるべく体当たりを繰り返していく。
一見おちゃらけているように見えるコウユウだが、実際の所は状況を見極め、自分が出来る最善を繰り返していた。
(火薬の持ち込みが出来なかったからな。その分動いて、引き付けねぇと)
爆竹や花火など、火薬を使った物を持ち込めないか頼んだコウユウだが、それは断られていた。
村の周囲の木は切り倒されているが、それでも森の木々に燃え移る可能性があること。
そしてイービルが守っている物が、万が一にも爆発物であったり、なんらかの情報が記された物であれば失われる場合がある。
状況が許せば有効な方法だったが、今回は残念ながらそうでは無かった。
だが、そうでなくとも、コウユウは十二分の奮闘を見せる。
それはコウユウ自身の戦い方の巧さもあったが、ヴィッキーの助力も大きかった。
「持久力を向上させるまじないを、追加で掛けます。これで、更に戦える筈です」
敵を引き付けていくコウユウを、ヴィッキーは更に強化する。
味方の補助に意識を割き続けるヴィッキーの活躍は、確実に効果を上げていた。
だが、あまりにもそれに集中し過ぎ、周囲の状況把握がおろそかになる。
そこに襲い掛かろうとするイービルを、グリセラが抑える。
「ほら! ぼうっとしない! 仲間だけじゃなく自分の身も守れるよう気を付けなきゃダメだろ!」
相棒なグリセラは遠慮なく声を掛け、ヴィッキーはすぐさま彼女の傍に寄る。
「すまない、助かった」
「良いよ、気にしなくたって。それが、あたしの役割なんだから。それより、そろそろチャンスだ。今ならいけるよ」
1つの事に意識が集中しすぎるヴィッキーの補助をするように、周囲の戦況を判断していたグリセラが、家の入り口を守るイービルを見ながら言う。
コウユウの活躍でイービルの大半は引き付けられ、入口に居る3体以外は離れている。
「分かった。のろいを掛ける」
ヴィッキーは、入口を守る3体に近付くと、防御力を下げるのろいを掛ける。
それは成功し、一時的にイービルは弱体化した。
「今です。お願いします」
のろいを掛け終ると同時に、その場を離れたヴィッキーと入れ替わるようにして。
「任せて!」
周囲の状況を見ながら、ミクシーナと共にイービルに忍び寄っていたキミシアが踏み込む。
素晴らしく速い。ヴィッキーに強化されていた事もあり、イービルが反応できる速さを飛び越え、一気に間合いの内に振るわれるは2刃。両足を斬り裂き、動きを封じる。
そこに息の合った連撃を加えたのはミクシーナ。
素早く踏み込むと同時に、連撃で刃を振るう。
両腕を斬り裂き、防御も攻撃も封じた所で、横に跳ぶ。
「ギッ!?」
イービルの意識が、横に跳んだミクシーナに向いた瞬間。
「バイバイ」
キミシアは急所を突き、まずは1体を倒した。
それに気付いた周囲のイービルが襲い掛かろうとするが、2人のスレイブが立ち塞がる。
「絶対に、守りますから」
ミヤコは大事な主を守るために、大きなシールドを持って壁となるように動き。
「いつでも行って下さい。援護します」
ビスコは、キミシアに向かおうとするイービルを追い払うように攻撃的に動く。
そしてミクシーナとキミシアを援護しようとするのは仲間達も同じ。
「今回の主役は嬢ちゃん2人だ。頼んだぜ!」
「こっちは私たちに任せてください!」
イービル達をコウユウとヒナが引き付け。
「まじないの効果が切れても、すぐに追加で掛けます」
「サポートはするから! 安心してやっちゃって!」
ヴィッキーとグリセラはイービル達を遠ざけながら、いつでもキミシアとミクシーナを援護できるように動いていた。
仲間の助けを受け、2人は全力で動く。
「右は、お任せしますわね、キミシアちゃん」
「うん、任せて! 巧くいったら、褒めてね!」
「ふふ、もちろんですわ。その時は、頭も撫でて、あげますわね」
声を掛け合いながら、2人はスレイブと共に、残り2体のイービルにそれぞれ立ち向かう。
ミクシーナは素早さを活かし、撹乱するように踏み込む。
まっすぐに跳び込むと、刃を振るい斬りつけ、横に跳ぶ。
その速さについていけず、メチャクチャに腕を振るうイービルを、ミヤコが盾で受け止めながら抑え込む。
生まれた隙を逃さず、連撃を叩き込むミクシーナ。反撃する余裕すら無く、イービルは倒された。
ほぼ同時に、キミシアもイービルを倒す。
ビスコが牽制に動き注意を引いた所で、死角からの一撃を叩き込む。
力強く背中を斬り裂き、最後のあがきとばかりに振るわれた一撃を、上体を逸らしただけで避け切ると、止めの一撃を急所に突き刺した。
入り口の3体を倒すと同時に。
「中を調べてきます。キミシアちゃん、ミヤコちゃんもビスコちゃんも、後はお任せしますわね」
ミクシーナが家の中を調べに入る。
「任せて下さい。罠が無いか、お気を付けて」
ミヤコは家の入り口を守り、キミシアはビスコと共に、近付いてきた1体の迎撃に動く。
「行かせないから」
まっすぐに踏み込み距離を詰め、両腕を斬り裂く。痛みにイービルが距離を取ろうとした所で、ビスコが退路を塞ぐ。
そこにキミシアは追撃。素早く倒し切った。
「えへへ、お待たせ。さあ一気にやっちゃお」
キミシアは、囮役に就いていたコウユウとヴィッキー達に声を掛ける。
それに、コウユウとヴィッキー達も応えた。
「寄らば斬る! 寄らないなら寄って斬る!」
防御主体の盾から武器に切り替え、近くに居たイービルの1体を斬りつける。
斬り裂かれ、距離を取ろうとしたイービルを追い込むように踏み込んで、更なる追撃を放つ。
そこへ横合いから襲い掛かろうとしたイービルを。
「やらせないっての!」
ヒナが抑える。
「ありがとな! ヒナ!」
即座にヒナの援護に回り、イービルに斬りつけるコウユウ。
そうしてスレイブと共に戦うのは、ヴィッキーも同様だ。
「気を付けな! 右から来るよ!」
周囲を警戒していたグリセラの呼び掛けに、ヴィッキーは反応する。
倒し切ることは出来ないが、牽制するように攻撃。
ダメージを受け距離を取るイービルに、すかさずのろいを掛け動きを遅くする。
周囲に、いきなり襲いかかって来る敵が居なくなった状況で。
「みんなの援護に回りたい。サポートを頼む」
戦況把握が自分より確かなグリセラに頼む。当然のように、
「任せときな!」
グリセラは応えた。
そうして皆が戦っている間に、ミクシーナは家屋の中を探索する。
家屋の中に入ると、中には家具も無く、暖炉があるだけ。
この時点で全体を見渡したミクシーナは、天運も味方に付いたのか、一つのひらめきを得る。
「この暖炉、ちょっとこの家の大きさにしては、立派すぎますわね」
違和感を感じ、暖炉の上部、通常なら煙突に繋がるでっぱりを軽く叩いていく。
なぜか空洞ではなく詰まった音が響き、ある場所で軽くなる。
その周辺を探ると、押すと内側に引っ込む個所が。
グイッと押し込むと、少し離れた場所がせり出し、そこには一冊の小さな手帳が収められていた。
「中身を確認したい所ですけれど、今はそれどころではないですわね」
手帳をしっかり確保した上で、仲間の援護のため、即座に家屋の外に。
「護衛ありがとうですの、ミヤコちゃん。戦況は、どうなってますの?」
入口をずっと守っていたミヤコに礼を言い尋ねると、
「こちらが優勢です。戦いに参加されるなら、防御は任せて下さい。きっと、お守りします」
大切な主を守ろうと、ミヤコは意気込む。
ミクシーナは、くすりと笑うと。
「ええ、お願いしますわね。早く終わらせて、キミシアちゃんやビスコちゃんと一緒に、ご飯でも食べに行きましょう」
やさしく言うと、即座に意識を切り替え、戦いの場へと向かって行く。
向かう先は、キミシアが戦っているイービル。
ミクシーナが近付いてきている事に気付いたキミシアは、積極的にイービルの注意を引く。
その隙にミクシーナが斬りつけ、止めをキミシアが刺す。
「サポート、ありがとうですの、キミシアちゃん」
礼を言われ、キミシアは嬉しそうに笑顔を浮かべると、
「一緒に戦おう。一緒なら、きっとすぐにやっつけちゃうよ」
ミクシーナと共に、戦いを進めていく。
スレイブも合わさり、連携を組んで次々にイービルを倒していく。
それはもちろん、ヴィッキーやコウユウ達の援護があったればこそ。
少数ながらも、巧く役割分担をこなし、人数以上の戦力を見せていった。瞬く間に数を減らしていくイービル達。
そして最後の1体を。
「まじないを掛けました。今なら優位に戦える筈です」
ヴィッキーがコウユウの素早さを上げ、その援護を受けたコウユウはイービルの攻撃を掻い潜り、渾身の一撃を叩き込んで止めを刺す。
「よしっ、これでここのイービルは全部倒した! あとは広場に誘導された奴らだけだ! 引き付けてくれた2人を助けるためにも、早く向かおう!」
コウユウの呼び掛けに、皆は広場へと向かう。
そこでも全力を尽くした冒険者たちは、1体残らず全てのイービルを倒したのだった。
○見つけ出した物は
全てのイービルを倒し切り、冒険者たちは念のため、手帳が見つかった廃屋以外も探索する。
そして何も無いことを確認してから、見つけ出された手帳の中身を確認していた斥候2人の元に。
強張った顔の斥候2人に尋ねると、2人は説明した。
「病毒を感染させる特殊なイービルが、近い内に村々を襲うようです」
それは本来なら、少し前に行われたセンテンタリ軍の侵攻。その時に後方撹乱を目的とした部隊と連動して行われる作戦だったらしい。
後方撹乱部隊は冒険者の活躍で潰されたが、そういった場合に備えて用意された手帳のようだった。
センテンタリ軍の侵攻から時間を置いて、気が緩み始めた時を狙って、センテンタリ軍の残党と連動して動く計画が書かれている。
場所と時を残党に教えるための、いわば伝言として、この廃村に手帳が用意され、場合によっては破棄される手はずが整っていたようだ。
仮に、残党が残っていなかった場合も、イービル達は単独で行動を開始するらしい。
「残党は今のところ見つかっていません。ですが、このままではイービルが活動を始めるでしょう」
今回、冒険者たちの活躍で手帳を見つけられたから良かったものの、見つけられていなければ、何の対策も出来ずに村々が荒らされていたのは確実だった。
「すぐに、上にはこの事を伝え。対応策を取って貰います」
斥候2人は口々に約束した。
どこかの名も知らぬ村。そしてそこに住む住人達。
被害を受ける筈だったそれを、未然に防ぐことが出来たのは、冒険者たちの活躍があったればこそ。
イービル達の全滅のみならず、多くの人々の不幸を撃ち砕いた冒険者たちであった。
その見事な冒険者たちの活躍があってから、数時間後。
冒険者たちが去った廃村に、そのデーモンは訪れていた。
イービル達の残骸を見て、見聞するような沈黙を経て、楽しげに大笑いした。
「あはははっ! すごいすごい! なにこれなにこれ! 傷跡からすると、メインで戦ってたのが2人。もう1人がサブ。あとは、数人足跡が残ってるけど、こっちはサポートかな? その人数で全部倒しちゃったんだ! おまけに手帳まで奪われちゃってるよ! あはははっ! おもしろーい!」
自分が造り出したイービルが全滅された事を楽しみ、喜びの声を上げる。
「勢いでしたとはいえ、約束だったから手伝ってたけど、これなら楽しめそう。あいつらは計画が狂うとか怒りそうだけど、楽しいからしょうがないよね!」
無数の、牙と爪で病毒を広めるイービルを従え、デーモンは言った。
「遊んで貰おうっと。楽しみ~」
それは、新たなる戦いの予兆だった。
依頼結果
大成功
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依頼相談掲示板
デーモンのたくらみを調査せよ 依頼相談掲示板 ( 20 ) | ||
---|---|---|
[ 20 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-08-11 21:25:18
|
||
[ 19 ] キミシア・シュー
ケモモ / シーフ
2017-08-11 20:45:00
|
||
[ 18 ] ミクシーナ
デモニック / メイド
2017-08-11 20:41:01
|
||
[ 17 ] ヴィッキー=ヴィッカー
デモニック / シャーマン
2017-08-11 20:36:49
|
||
[ 16 ] ミクシーナ
デモニック / メイド
2017-08-11 20:33:44
|
||
[ 15 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-08-11 20:18:59
|
||
[ 14 ] キミシア・シュー
ケモモ / シーフ
2017-08-11 20:09:36
|
||
[ 13 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-08-11 19:59:43
|
||
[ 12 ] キミシア・シュー
ケモモ / シーフ
2017-08-11 19:51:38
|
||
[ 11 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-08-11 19:45:37
|
||
[ 10 ] ヴィッキー=ヴィッカー
デモニック / シャーマン
2017-08-11 19:43:01
|
||
[ 9 ] ヴィッキー=ヴィッカー
デモニック / シャーマン
2017-08-11 19:41:28
|
||
[ 8 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-08-11 19:32:51
|
||
[ 7 ] キミシア・シュー
ケモモ / シーフ
2017-08-11 18:52:27
|
||
[ 6 ] キミシア・シュー
ケモモ / シーフ
2017-08-11 18:30:34
|
||
[ 5 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-08-11 17:00:22
|
||
[ 4 ] ヴィッキー=ヴィッカー
デモニック / シャーマン
2017-08-11 15:15:12
|
||
[ 3 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-08-11 09:41:21
|
||
[ 2 ] コウユウ
ヒューマン / ナイト
2017-08-11 00:05:13
|
||
[ 1 ] キミシア・シュー
ケモモ / シーフ
2017-08-10 23:12:22
|