プロローグ
● 海にきた!
リゾート地ボーモン。
帝都ディナリウムから一か月ほど進むと見えてくる海沿いのリゾート地である。
本来ここは裕福層が夏にこぞって訪れる避暑地である。
しかし今年の夏は事情が違う、ディナリウムのゲート技術完成によってついに。ボーモンとディナリウムのいききが一瞬で行われるようになったのだ。
結果どうなったのかというと、夏をテーマにした街にあふれかえる冒険者たち。
君たちはそんなボーモンの町の酒場を訪れていた。
帝都ディナリウムの専門施設ほどではないが、ここにも依頼が集まる。
職業病とも言えるこの行いに我ながらため息が出たが、ただそのおかげで面白い依頼が見つかった。
『もにょもにょを十個取ってきてくれませんか?』
もにょもにょ?
首をひねりつつも興味があったので話を聞いてみることにした。
● モニョモニョ探しに海へ。
レジャーに特化したビーチというものは見ているだけでも楽しいものだ。湧き上がる笑い声、肌をさらした老若男女。
子供たちが砂の家を建てている。
それを遠くに追いやって君たちは人が入り込まないような岩場に放置されていた。
もにょもにょを探すためである。
依頼者は言った。
モニョモニョはここらへんに生息しているはずなんだ。だから探しておいてくれ。
そう言ったっきり、依頼者は姿を消してしまいます。
皆さんはもにょもにょを探すため行動を開始するのでした。
『与えられた道具』
・釣竿
初心者にも使いやすい釣竿です、ここら辺は魚が沢山つれます。
・ダイビングスーツ。
水に長く潜っているためのスーツです、泳ぎやすいし、潜りやすい。酸素ボンベもありますよ。
・炭と網。
ようはバーベキューセットですね。火を起こしておいていただければもにょもにょと間違って釣ってしまった魚など焼いて食べることができます。
『場所について(どこかにもにょもにょがいるかもしれません)』
・入り江
ちょっと探すと入り江がある。ここでなら休めるだろうし遊べると思います。
・海の中。
色鮮やかな魚たちが沢山いてすごくきれいです。
・洞窟
近くに洞窟を見つけられます、奥には短く、光が届く程度の長さですが、ちょっとホラー気分を楽しめますし、涼しいです。
● モニョモニョについて
実はこのモニョモニョ、何の事だか皆さんわかってません。
たぶんシナリオが終わっても分からないと思います。
そもそも存在するのかも分かりません。
そんなモニョモニョ収穫に、なぜ皆さんが乗り出したのかというと……。
何ででしょうね。
うーん。
ちなみに、このモニョモニョの特徴として示されたものは。
・刺すらしい
・食べられるのは身ではなく卵らしい。
・主食は海藻らしい。
・大きさは手のひら大から、両手で持てる程度。
・泳げないので海の底に転がってるらしい。
なので取りに行くにはダイビングするしかないのですが。
今回は器具が全て貸し出されてます。
そしてこれが一番大事なことなんですけど、本当にモニョモニョがいるかも怪しいので、取るふりして遊んでてもいいですよ?
そして最後に注意事項ですが、定期的にモニョモニョを探してるか依頼主が皆さんを身に来ます。遊んでるつもりなら言い訳も考えておかないとですね。
解説
目標『モニョモニョを捕獲する!(ふりをする)』
これね、みなさんお気づきかと思いますけども。
依頼という名のデートシナリオですね。
仕事をしながらいちゃつくっていうのは。
休日とは違ういちゃつき方ができていいですよね。楽しいと思います。
さらに今回は参加者の皆さんは同じ場所にいらっしゃいますので。
ボールとか持参して、ビーチバレーとか、楽しく遊んでもいいかなって思います。
それではよろしくお願いします。
ゲームマスターより
こんにちは、鳴海です。
こちらはデートシナリオ……の要素強め……な感じです。
これから沢山夏にふさわしいシナリオが出ていくと思うのでよろしくお願いします!
もにょもにょをとるよ。海で エピソード情報
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担当 |
鳴海 GM
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相談期間 |
6 日
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ジャンル |
---
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タイプ |
EX
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出発日 |
2017/8/9 0
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難易度 |
簡単
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報酬 |
ほんの少し
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公開日 |
2017/8/19 |
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取り敢えず、仕事……という事で、モニョモニョ(不明)を獲ろうとはする……とは思いますけれど、先ずは譲り合い……からかな? 方や、冒険者……とは言っても、明らかに肉体派ではない者と、方やスレイブ……ですからね。どちらが潜る?みたいな事で。 仮に、穫れた……として、そのモニョモニョをどうするか?という問題もありますしね。いや、依頼主の買取りなら……無問題 ですけれど。まぁ……プライベートなら兎も角、仕事でまで……無益な殺生はしたくない、とか……駄々もこねないでしょうけれど、 それでも……出来れば穏健に済ませたい派……ではある、でしょうしね。 潜らないと穫れないのかな?釣り糸とかを垂らしていても捕まえられるなら……釣り糸を垂らしていそうな気もしますけれど、 エサも付けずに、真っ直ぐな針を(重しも兼ねて)つけて
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仕事帰りで暇だから受けてみたが……受けて後悔した。この依頼者はやる気あんのか? ちなみに俺はぶっちゃけ帰りてぇってぐらいやる気はねえ まあ仕事は仕事。受けちまったからにはやるさ
ルーツは陸に残し、ダイビングスーツを着て海の底を目指す 俺の予想だともにょもにょはウニ。もしくはそれに擬態したブツ。少なくとも特徴は似てるから、片っ端から回収して陸に上げる
陸に上がったらルーツが律儀に並べてたウニを依頼者に見せて確認。これがもにょもにょじゃないならもう一度特徴を教えてもらう 全然わからねえなら……依頼者がいなくなってから食えるウニを集めてウニパーティーだ ルーツ、お前も服なんて脱いで楽にしろ。こんな仕事やってられねえ 恥ずかしい? お前は『男』なんだろ? ……冗談だ。とりあえずお前も食え。食事しなくてもいいとは言え、別に食ったって支障はねえんだろ? だったら、せっかくの海だ。楽しもうじゃねえか
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参加者一覧
リザルト
プロローグ
海だ。一行はその感想以外を頭から排除した。
そこは最近ディナリウムとつながったリゾート地ボーモン。
ゲート開通のおかげで一瞬でアクセスできるようになり、今年は同業者でも賑わっている、避暑地。
本日はそのリゾート地に住まう、裕福層からの依頼を受けるためにここに集まったのだが。さっそく『アザートゥルース』は放心してしまった。
とって来いと言われた物『もにょもにょ』これが何なのかいまいち解らないし、詳しい形も知らされていない。
だがそれでもとって来いと言う。
お金持ちはわがままでいけない。そう『ナイトエッジ』は溜息をついた。
だが、一度受けてしまったからには途中で投げ出すこともできない。
幸いにしてとって来れなくても最低限の料金を払うと言っている。
であれば、適当に遊んでこの場を切り抜けるが価値か。
そんな風に思い直し、一行は思い思いの場所へと散った。
もにょもにょ探しの始まりである。
●男は黙って海へ
『ジーン・ズァエール』は暇だった。仕事が終わり、このままボーモンから去るのも気が引けた、何せ夏だし。水際には青春が溢れかえっているし、でも自分は依頼で殺伐とした心境のままその光景を眺めている。
これではいかん。ジーンは思った。
だから依頼を受けるために酒場に走った。
それが運のつき。
「なんですかこの依頼……」
さすがの『ルーツ・オリンジ』も唖然と言葉失う、とんでもない依頼がそこにあった。
もにょもにょとりである。もにょもにょとはなにか。それは誰も知らないのである。
漠然とした特徴だけが伝わっている幻の生命体なのである。
そう熱弁された時、ジーンは思った。
この依頼者はやる気あんのか? と。
ちなみにジーンは最初から最後まで、徹頭徹尾帰りたいオーラを放っている。
「ちなみに俺はぶっちゃけ帰りてぇって」
ルーツにも言ってしまうしまつ。
「まぁまぁ、仕事は仕事ですから」
ルーツは告げた。やんわりとなだめるように。
「受けちまったからにはやるさ……けどよ」
ジーンの目がルーツに向けられ、びたっと止まった。
「な、なにか……」
どぎまぎと目をぱちくりさせるルーツである。
そんなルーツにジーンが言い放った言葉がこちら。
「見た目が暑苦しい」
ルーツは常に執事服を身に纏っているのだが、その執事服がお気に召さなかったらしい。
「え?」
「脱げ!」
「いやです!!」
渚の端っこで、服を脱がせるおとこと、脱がせられそうになるスレイブ。
何とも嫌な光景だ。
「絶対いやです」
「だったらよ、半分でいい、それでだいぶ変わる。だから脱げ!」
「何が変わるんですか!」
「体感温度だよ」
執事服の上部分だけはぎ取られ。あられもない姿になったルーツ。
恥ずかしそうに上半身を腕で隠してその場にへたり込んでしまう。シャツは着ているのに。
「お前、そこにいろよ、俺がとってくるからよ」
そんな悲しげなルーツをおいてジーンはダイバースーツに身を包み。揚々と海の中に潜って行ってしまった。
「マスター」
その後ろ姿をルーツは、熱のこもった視線とうわ言のような溜息で見送る。
さて、そんなルーツの想いを知らないジーンだが……。
実はジーン、もにょもにょが何なのかだいたい見当がついていた。
(俺の予想だともにょもにょはウニ)
うにとはあれである。黒くて、イガイガで、わって卵を食べる。
おお、なるほどもにょもにょと特徴が一致している。
だからジーンは大量のうにを袋の中にストックしていった。
(もしくはそれに擬態したブツ)
似たような存在の確保も忘れない。
そしてあっさり袋を満杯まで貯め終るとジーンは、ザーッともにょもにょ候補たちを広げて見せる。
「うわー、たくさんとってきましたね。マスター」
そういくらか機嫌の直ったルーツがジーンに視線を向けた矢先だ。
ダイビングスーツを脱いだのか岩場の影から短パン姿で現れるジーン。
「あ、ます……たー」
言葉に詰まるルーツ。心拍が上がる。
ジーンの上半身を見ただけでなぜか。
(僕は男なのにどうしてマスターの裸を見てこんなドキドキしてるんだろう。まさか……何かの不具合!?)
そう、ルーツは自身を男と認識しているスレイブだ。であれば恋愛対象は女性のはず……。
いや、ちがうか、今の状態が恋愛感情を抱いていると一概には言えないはず。
単なる憧れ。もしくは別の感情。
そうルーツは首を振り感情を振り払った、依頼主が歩いてくるのが見えたからだ。
ルーツはそれを見て一個一個収穫物を律儀に並べる。
「どうでしょうか」
その自信なさ気な問いかけに、依頼主は首を振った。
「これではない」
「ではもう少し詳細な特徴を」
そうルーツが紙とペンを取り出すルーツ。
依頼者の話を聞き、メモに取っていく。
その隣でジーンはもにょもにょ候補生たちをつまみあげて尋ねる。
「これ、食っちまっていいのか?」
いいとのことだ。
「ちっ。だったらあと一回くらい潜ってきてやるか……」
そうスーツを着直すジーンである。その宣言通りジーンは再び海に潜り、ほどなくして戻ってきた。
「どうでしたマスター?」
「だめだ、おんなじようなのしかとれねぇ」
そう告げると、並べられたうにたちも回収し再びジーンはダイバースーツを脱ぎ始める。
「どうされるのです?」
「せっかくとったんだ、くわねぇと損だろ」
幸いバーベキューセットは全て借りてある。
であれば……。
うにの殻を割って調味料を垂らして焼くだけ!
ジューッと香ばしい香りが辺りに漂い、ジーンは不敵に笑う。
「唯一依頼を受けてよかったって思える点だな」
「ええ、美味しそうです」
そうわくわくと告げるルーツ、そんなルーツを眺めて再びジーンは言った。
「やっぱ暑苦しいな、それも」
「へ?」
突然ルーツの服を引っ張り始めるジーン。
「ルーツ、お前も服なんて脱いで楽にしろ。こんな仕事やってられねえ」
「だから言ってるでしょ! 恥ずかしいんです!」
「恥ずかしい? お前は『男』なんだろ?」
「そ! そうですけど」
顔を真っ赤にして抵抗するルーツ。その様子に首をひねり、ジーンは裾から手を離した。
「……冗談だ。とりあえずお前も食え。食事しなくてもいいとはいえ、別に食ったって支障はねえんだろ? だったら、せっかくの海だ。楽しもうじゃねえか」
そう、うにを皿にとって渡すジーン。それをルーツは釈然としないながら受け取った。
●渚のもにょもにょ釣り
そんな中『Shades=Dawn』は悩んでいた。もにょもにょが何か? いやそんな些末事に囚われているわけではない。
「取り敢えず、仕事……という事で、もにょもにょ(不明)を獲ろう、とは思うんですけど……」
何やら不服そうなShadesである。そんなShadesに『tonalite=douceur』が答える。
「ずいぶん乗り気ではないのですね、帰りましょうか?」
「いや、さすがに帰りはしないけど。先ずは譲り合い……からかな?」
ハテナマークをうかべるtonalite。
「つまり、どっちが行くかって問題です」
「そこはShadesからではないのですか?」
「いや……」
「煮え切らないですね」
「だってさ。かたや、冒険者……とは言っても、明らかに肉体派ではない者」
そうShadesは自分の体を指して言う。諦めたように笑い海を見てそして隣のtonaliteを見た。
「かたやスレイブ……ですからね。どちらが潜る? どちらも適任ではないでしょう」
そうShadesが告げると確かにとtonaliteも考え込んだ。
「そして第二の問題点がありまして」
「ふむ、それは……」
「仮に、穫れた……として、そのもにょもにょをどうするか? という問題もありますしね」
「それは依頼主が買い取ってくれるのではないですか?」
tonaliteが問いかけた、するとShadesは首を振って海風を力いっぱい吸った。そしてゆっくり吐きだしながらShadesは言葉を続ける。
「いや、依頼主の買取りなら……無問題」
そのはずだ、掲示板にもそう書いていた。
何か問題があったのだろうか。
「ただ、命を取るという事は、それは命が失われるというわけで」
そこでtonaliteは納得したような表情をした。少し笑ってShadesに向き直るtonalite。
「私を気遣って気遣ってくれたのですね」
そうtonaliteが笑うとShadesは視線を逸らして遥か海の果てを見る。
丸い地平線。遥か彼方に見えるあの場所は、その実四キロほどしか離れていないそうだ。
四キロなどすぐに走り抜けられてしまう距離だというのに、決してたどり着けなさそうに思うのはなぜだろうか。
そうShadesはぼんやり考える。
「ですけれど。まぁ……プライベートなら兎も角、仕事でまで……無益な殺生はしたくない、とか……」
「駄々もこねはしませんよ」
Shadesの言いかけた言葉をtonaliteが拾った。
「正体も分からないですし、そもそもとれるか分からないですしね」
tonaliteはそう浜辺に降りて貝殻を集め始める。
「もしかしたらこの中にもにょもにょの残骸があったりするのでしょうか」
そう歩き回るtonalite、海岸を歩きながら綺麗な貝殻を拾い集めた。
彼女自身ああは言っているが。Shadesはわかっている。
(それでも……出来れば穏健に済ませたい派……ではある、でしょうしね)
何かを殺して平気でいられるほど冷めてもいないし醒めてもいない。そんなtonaliteをShadesは気に入っていた。
「潜らないと穫れないのかな?」
そう一緒に海岸に降りるShades。Shadesは座り込むtonaliteの隣に立ち海の深い部分をじっと眺める。
「釣竿でもいけるのではないですか?」
Shadesが先ほど立てかけた釣竿。それを指さしてtonaliteは告げる。
「ふーむ、tonalite」
「はい、何でしょう」
「釣りをしたことは…………」
「もちろんありません」
がっくり肩を落とすShades。
「釣り糸とかを垂らしていても捕まえられるなら……苦労はないんですけどね。でも、そちらを狙った方が良いように思います」
tonaliteの言葉にShadesは頷いて。餌もつけずに岩盤の上で糸を垂らす。ただ真っ直ぐに糸を垂らして、そして二人で日が暮れるまでずっと話をしていた。
にしても、とShadesは仕事を請けたから来た……的な感じで、Shadesは超が付くくらい極消極的になっている。
それこそ…………まるっきりヤル気を感じさせない仕事っぷりである。
ならばこの依頼はいったい誰が持ってきたものなのだろうか。
考えるに……仕事を取って来たのはtonaliteの方だろうか。
だとしたら何に引かれてこの仕事を取ってきたのだろう。
法主は決して多いわけではない。だとすればだ報酬につられてこの仕事を持ってきたという事も無さそうである。
であれば本当にこの仕事を取った理由が分からない。
(……どうして請けたんだろうな?)
そう首をかしげるShades。
(依頼人が、心底困り顔で募集でもしていたなら……凄く判るんだけれど)
だが先ほど出会った依頼主は横暴な態度だった。
だが案外。
そう、Shadesは思い立ちtonaliteを見つめる。
ただただこうしたかっただけなのかもしれない。
そう思ってShadesは瞳を閉じる。
穏やかな日々は確かに心地よかった。
エピローグ
『アザートゥルース』は夕陽に染まる海を眺めていた。
いったん遊ぶと決めてしまえば時間が立つのは早く、気が付いたら海が金色に染まっている。
海には沢山の生命が住んでいるという。なんと億とも、十億とも、百億ともいわれる未発見の生物がいると。
そんな風に言われている。
であればもにょもにょなる存在も、きっとどこかにいるのではないか。
そう思って探し回った四組の探索者。
そんな彼ら全員が、この夕陽を眺めていた。
なんのためにここに来たのか。そんな自問自答を重ねる『ナイトエッジ』。
だが。その美しい景色を目の当たりにしてしまえばもう何も言えなくなる。
何も考えなくていいかな、と言った気分になる。
きっと違うのだ、自分たちは任務のために集められたのではない。
この景色を見るために。
そう、この夕陽を見るためにここに集まったのだ。
そんな夕陽もやがて沈む。
夕陽が沈めば夜が来る。
夜が来たなら何をしよう。
そう頭を悩ませながら一行は帰路についた。
もにょもにょは……当然発見されなかった。
結局もにょもにょとはなんだったのだろう。その正体が解明されるのは。
来年の夏の話かもしれない。
依頼結果
依頼相談掲示板