プロローグ
「……近隣洞窟に、オークが出る?」
冒険者ギルドの一角。
いつもの仲間と休息を得ていたところへ、困り果てた業者たちの声が聞こえてきた。
「ああ。というか、あの湿気た洞窟自体に魔物が棲み付いてる、って話だ。最奥には2~3Mくらいの比較的小さめなオークが居て、そいつらを統括してるとかしてないとか」
「へえ。あんた達には肝の冷える話だねぇ」
「まったくだよ。あそこは隣町との流通経路を結ぶ拠点のひとつでもあるんだ。早くなんとかしてほしいねぇ」
腕っ節に自信のある、冒険者さんたちにでもさ。
業者の男はぐるりとギルド内を見回して、思わせぶりに視線を投げかける。
一人の冒険者が、少しの興味本位で話を詳しく聞く運びとなった。
「いつだったか、夜明けに洞窟の外を闊歩する魔物を見た、なんて言い始めたヤツが居たんだよ。その時は半信半疑だったが……俺が見たのは、でかいカエルのモンスターだった」
旅業者の持ちうる情報をまとめたところ、遭遇する可能性のあるモンスターはざっと三種類ほど。
『フロッグ』や『トード』などとも呼ばれることのある、1~2メートルほどにも大きく成長し巨大化したカエルのモンスター。
常にお腹を空かしているトカゲ人間がたのモンスター、『リザードマン』と呼ばれるモンスター。
最後が、洞窟の奥を根城にしているのでは、と噂されている『オーク』である。
「俺達よりあんたらの方が詳しいかもしれないが、オークってヤツは豚やイノシシに似た顔と、太った人間みたいな体を持ってる、怪力の魔物だ。行くんだったら、十分気をつけてくれよ。こっちも早いトコ商売に戻りたいんでね」
旅業者の男はギルドの受付に依頼を預け、その場を後にした。
解説
■目的
・洞窟内に棲み付いたモンスターの掃討
エピソード内にも出てきましたが、フロッグ、リザードマン、オーク(三体)の三種類です。
フロッグ(蛙)は、カエルが巨大化したモンスターです。
オークは棍棒を手に、根城を荒らす人間へ襲い掛かってきます。皮膚が硬い代わりに魔法が有効ですが、物理的に殴っても勝てない相手ではありません。
リザードマンとフロッグに関してのみ数は設定していませんが、進むに連れランダムに遭遇しますので、遭遇した際のアクションや対応をプランにください。オークは最奥の三匹のみです。
前者二種類の数については、参加人数に応じて無理のない数値で設定します。
・フィールド
決して広くはなく、また周辺が川と崖なので、非常に湿気て涼しい洞窟です。
足場も綺麗とは言えないので、つづら状に伸びた岩で頭を打ったり滑って転んだり、また派手に戦闘すると崩落する危険もあります。
・プランにほしいもの
リザードマン・フロッグに遭遇した際の対応
オークをどう討伐していくかというアクション
有る程度マスタリングは入りますが難しい敵ではないです。お気軽にどうぞ。
ゲームマスターより
この前洞窟に行ったら15度しかなく、外気温との差がすごくて凍えました。
こちらでもこれからお世話になります。梅都鈴里と申します。
どうぞよろしくおねがいします。
洞窟内での攻防 エピソード情報
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担当 |
梅都鈴里 GM
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相談期間 |
6 日
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ジャンル |
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タイプ |
EX
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出発日 |
2017/7/31
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難易度 |
普通
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報酬 |
通常
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公開日 |
2017/8/10 |
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コウユウ( ヒナ )
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ヒューマン | ナイト | 25 歳 | 男性
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洞窟に入る前に入り口から少し離れた所に落とし穴をいくつか掘る。次は洞窟の入り口が広いようであれば周辺で丸太を調達して入口を人1人が通れるくらいまで狭める。それから洞窟に入るが奥には進まず付近に泥を撒く。最後に少し行った所で中規模の焚き火を行いすぐに洞窟を出て入口を軽く塞いで煙で敵を燻り出そうと試みる。成功すれば入口に陣取って迎撃。敵を地理的に不利な洞窟内に押し止めるようにして戦い、狭い入口を利用し敵が一匹づつしか戦えないようにする。あとは泥に足を取られているを2人がかりで1匹づつ倒していく。 入口を狭められないのであれば狭い通路を探してあとは同様の作戦。燻り出せないのであれば接敵した瞬間逃げて入口まで誘き寄せて同様の作戦。すべて無理ならジーンが一騎討ち出来るよう他の敵を引き付けて一匹づつ撃破。 戦闘が困難になってきたら死にそうなフリをして油断させ落とし穴にモンスターを誘き寄せる。
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●使用武器:グレートソード
洞窟のモンスターの討伐要員が俺含めて二人しかいねえらしい 少数精鋭で飛び込むのも面白そうだが、作戦があるんでそいつを使う
作戦通り煙で洞窟内から敵が出てきたら戦闘開始 敵が出てこないなら一旦洞窟へ侵入して誘導
●フロッグ、リザードマン戦 一対一になるよう立ち回り、確実に仕留めていく フロッグ:攻撃は基本的に回避。その後は接近して武器を胴体か口の中に叩き込んで即座に倒す リザードマン:常に空腹なら好戦的なはず。攻撃を煽るよう挑発して、飛び込んできたところを迎撃して倒す
●オーク戦 入口で一体ずつ相手して各個撃破 攻撃は剣で流すか回避しながら接近。胴体や頭をメインに武器を打ち込む。物理攻撃が効きにくいらしいが、急所へ攻撃を叩き込みまくれば理屈上は倒せる
不利になったら後退して洞窟外へ誘い出し、用意しておいた落とし穴に落とす。落としたら這い上がられる前に倒す
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参加者一覧
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コウユウ( ヒナ )
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ヒューマン | ナイト | 25 歳 | 男性
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リザルト
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「……おっと、ここだな」
依頼にあった洞窟へと無事到着した、二組の冒険者――。
『コウユウ』と、そのスレイブ『ヒナ』。
『ジーン・ズァエール』とスレイブ『オリンジ』である。
「生憎と俺たち二人しかいねぇが、敵の数は多いほど燃えるってもんだぜ」
装備を確認しつつ、勝気に笑ってみせるジーン。
血気の多い台詞に「若いねぇ」とコウユウが肩をすくめた。
「アンタはちょっと老け過ぎ。やる気あるの? 敵の数もわからないっていうのに――」
ヒナがジト目で、ダメ兄貴――否、マスターであるコウユウを見遣り、呆れたように告げる。
「ま、なんとかなるさ。これだけ、事前準備してきたんだからな」
スレイブの言葉を受けて、リュックに抱えてきた罠や道具を、ゴトゴトとその場で広げ始めた。
「作戦はこうだ。まず洞窟の入り口に落とし穴を掘る。次に、洞窟入り口を、人一人分が通れるくらいまで狭めておく」
コウユウの言葉に頷きつつ「狭めるのは、なんのためですか?」と聞いたのはオリンジ。
「地形を利用して有利に戦うためさ。多勢に無勢を、バカ正直に真正面から受け止めるつもりはないんでね」
「俺はそれでも構わねぇんだがな……」
あくまで戦いに身を投じたがるジーンにコウユウは苦笑しつつ。
「せめて有利な条件で戦おうぜってだけの話だ。代わりに、魔物が出てきたらアンタを頼りにしてるぜ?」
「……まあ、悪かねぇな」
納得したのを見て、説明を続ける。
「んじゃ、落とし穴ついでに、掘った泥を入り口付近に撒くのはジーンとオリンジに頼むぜ。丸太調達はヒナに。俺は中で焚き木を積んでくる」
「……焚き木? キャンプでもするつもり?」
ヒナの訝しげな瞳に、コウユウはニッと笑って告げた。
「やっこさんを、あぶり出すためさ」
その後、着々と罠の用意は進んだ。
途中、洞窟内から敵の気配がしてヒヤリとした場面もあったが、その都度こちらも気配を殺すことでやり過ごした。
「結構、深くまで掘るんですね……」
ザクザクと落とし穴を掘り進めながら、疲労を言葉に滲ませるオリンジ。
「じゃなきゃ落とし穴になんねーだろ……っと、この辺でいいか」
程よい深さまで土を取り除いたところで、取り出したのはトラバサミだ。
元々は狩猟に使われる罠だが、魔物にも有効ではないかと、ここへ来る途中の獣道にうち捨てられていたそれを、ついでに持参していた。
トラバサミのない穴の底には、持参した竹槍を仕込む。魔物が大きければ大きいほどこちらは威力が上がる。
落とし穴の上から保護色のシートをかけて、準備は万端だ。
「ふぅ……」
一息ついて額の汗を拭うオリンジに、ジーンがハンドタオルを差し出した。
「ん」
「……あ、ありがとうございます」
「俺の使ったやつだけどな」
「……」
しっとり、汗ばんだタオルを手に、はは、と乾いた笑いを漏らしつつも。
気にかけてもらえたことは、ほんの少し嬉しかった。
「――よっ、とぉ。はぁ、疲れたぁ!」
入り口を狭める為の丸太を運び、一人で設置まで済ませてしまったヒナが、手頃な切り株に腰を下ろした。
「おー、やるじゃねぇか……って」
……雑だな。
小さく漏らされた言葉を聞き逃さず、ヒナがきっ! と緋色の双眸を尖らせた。
「こういう細かい事はそこまで得意じゃないの! っていうかアンタねぇ! 少しは手伝いなさいよっ。いくらスレイブだからって、女の子一人に任せるなんて――」
「いやー俺は洞窟で涼むのにいそがし……いや、焚き木の設置で忙しかったし」
「木の枝集めてただけでしょーっ!?」
ぷりぷりと、本気ではないにしろ、それなりに疲労と怒りを声に滲ませるヒナに、コウユウは兄の顔でけらけらと笑った。
「ははは。ま、サンキューな、おつかれさん」
手伝ってくれて助かったぜ。
優しく礼を言って、わしゃわしゃと金髪をかき乱せば、ふてた様な表情が「仕方ないわね」という風に、顔色ひとつで告げる。
「――さて、そんじゃま、やりますか」
それぞれが役目を果たしたところで、コウユウは再び洞窟内へと足を向けた。
●
ジーン、ヒナ、オリンジが見守る中、洞窟を少し奥行った中腹あたりで、中規模の焚き木を起こしたコウユウが煙と共に慌てて出てきた。
「ゲェホッ、ゴホッ、グェホッ!!」
「お前も吸い込んでんのかよ!」
「いやー思ったより煙の周りが早くて……オエッ!」
ジーンに突っ込まれつつ、無事、木陰に身を潜める仲間達のもとへ戻れたコウユウの背中を、ヒナが呆れた瞳を浮かべて擦っている。
「……はあ。ま、この分なら」
そう待たずに戦えそうだな。
神経を研ぎ澄ませて、敵の出現を待つ――と。
ほどなくして、洞窟の入り口から一体の巨大なカエルが飛び出してきた。
「……待ちくたびれたぜ!」
瞳を爛々と輝かせたジーンがすかさず飛び出す。
住み易い、湿気に満ちた洞窟内を一転、煙の立ち込めるフィールドへと変えられた魔物たちがぞろぞろと現れ始めた。
「やっと来たなウスノロ共! 待たせた分は、命で償いな!」
ズバッ! 先頭のカエルに先制して、ジーンの『グレートソード』が一閃!
「ゲゴォッ!!」
仰け反ったカエルが体勢を整える間にも、狭まった洞窟の入り口から慌てた魔物が更に飛び出してくる。
「あんなに前衛に出ちゃ何の為の誘導なんだか……ま、いいか!」
楽しげに返り血を浴びるジーンの表情コウユウがひとつぼやきつつ、自身もスレイブを連れジーンに続く。
落とし穴ギリギリの所で無防備に敵を待ち構え、獲物に気付いたリザードマンが武器を手に駆けてくるが、目の前で落とし穴に掛かりあっけなく転落した。
「ほら、よく言うだろ?『最終的に勝てば良かろうなのだァァァァ!』ってな!」
ニヤリと笑って、トラバサミに掛かって動けないリザードマンを一瞥し、更に戦闘を継続する。
一方、煙にあぶりだされた魔物たちは清浄な空気を求め外へと飛び出そうとするが、入り口付近に撒かれた泥に足を取られ思うように動けずいた。
黒煙を吸い込みすぎて倒れるフロッグも居たが、リザードマンは空腹に後押しされ、なりふり構わず襲い掛かる。
「予想以上に、効き過ぎたなこりゃ――」
予想を上回るペースで現れる敵の数に、コウユウが頭を掻くと。
「なぁに、一体多数は承知の上。その上で、こいつら全員ぶっ殺すのが滾るんじゃねえか!」
凶悪にも見える笑みを絶やさず強気に告げるジーンは攻撃の手を一切緩めない。
「頼りになるねぇ。俺もちっとは、頑張らないと――なッ!」
コウユウも続けて駆け出し、ジーンの後へ続くようにして、攻撃を加えていく。
「援護するわ、コウユウ!」
「サンキュ!」
コウユウの後衛にはスレイブのヒナ、ジーンの後ろにはオリンジがついている。
バラバラに動かないよう、一体ずつ確実に。全員で徹底的にダメージを蓄積させ、効率よく敵の数を減らしていった。
数匹のフロッグは煙を吸い動けなくなり、攻撃をかいくぐったリザードマンは落とし穴に阻まれる。
やがて順調に数が減り始めた頃になり――洞窟の奥に巣食っていたボスが、ようやっと姿を見せた。
「グオォ……!」
話に聞いていた、オーク三体だ!
「……こりゃあ、想定以上だな……!」
比較的小さめ、とはいえその巨躯は、三体も並べば圧倒的だ。
住処を追われ、彼らは憤っているようである。
もくもくと煙のたちこめる中、棍棒を振り回し雄叫びをあげていた。
「ヘッ、敵はでけぇほど滾るってもんだ、ぜッッ!」
すかさず駆け出したジーンが次々に斬撃をうち込んでいく。
一見無謀にも見えるが、攻撃を加えるポイントを一点に集中させる事で、ダメージを確実に蓄積させる――狙うは、足!
「だりゃあっ!」
スネの部分に渾身の一撃をたたき込むと、悲鳴をあげてオークの一体は片膝をついた。
「次は、脳天ッ!」
――ガァンッ!!!
剣を叩きつけるようにしてオークの頭上に振り下ろすこと数回、初手を突かれたオークは次第に戦意を喪失しぐったりと動かなくなる。
「来いよ豚野郎! 棍棒なんざ捨てて、拳一つで掛かってこい!!」
挑発するような構えで、ニ体目のオークを相手取るコウユウが叫んだ。
「――グオオオォッ!!」
うまく挑発に乗ったオークが一直線にコウユウめがけて駆け出す――が、魔物の腕が届くギリギリ寸での距離で、落とし穴に落下した。
「ガアアッ!?」
中に設置された竹槍がオークの巨躯にドスドスと突き刺さり、大きなダメージを与えた。
「体ばっかりデカくて学習はしないんだな。そこで、ちょっとオネンネしてろっ!」
ヒナの手を借り、這い上がられる前に穴の上から攻撃を繰り出す。
防御特化型であるコウユウでも、優位に立った状態からの畳み掛けるような攻勢に、ニ体目のオークも戦意を失い穴の中で動かなくなった。
「さて、オークも最後の一体だが……」
「ああ、俺にやらせろよ。あんたの作戦も悪くなかったが、やっぱり――」
ジーンが真っ正面から、いきりたつオークに向けて勢い良く駆け出した!
「俺にはタイマンが、性にあってるんでなッ!」
●
――夕刻、洞窟の外で後片付けを済ませた二組の冒険者たち。
結論から言うと、討伐は無事に成功した。
掘った落とし穴なども、その後、業者や一般人に影響が出ないよう埋めて元どおりにし。
洞窟内にも魔物がいなくなった事を確認してから、無事、依頼成功の運びとなった。
「……ったく、後片付けまでスレイブ任せなんだから」
「ははは。勘弁してくれよヒナ、俺ちょっと煙吸っちまってさぁ」
「もうだいぶ経ったでしょ、甘えないっ」
「いって!」
ばし! と背中を叩かれヘラヘラと笑い、帰路に着くコウユウとヒナ。
「……マスター、無茶しないでくださいね。もう……」
擦り傷だらけなんですから。
心配そうな顔で、ジーンの傷を手当てするオリンジ。
任務は成功したが、無謀な戦いを挑みたがる戦闘狂ジーンの体には、三体目のオーク戦で受けた傷跡がそこかしこにあって。
ハラハラしながら見守っていたオリンジが駆け付ける頃には、満身創痍の出で立ちで、声高らかに勝ちを宣言し笑っていた。
「いーだろ別に。勝ったんだから」
「そうですけど……心配するボクの気持ちも」
「あん? なんだって?」
「……なんでもないです」
黙々と傷の手当てにいそしむスレイブに「変なやつ」とぼやき、やがて全ての処置が終わったあとで。
「――怪我しても、お前が手当てしてくれんだろ?」
振り返りざま、なんでもないようにジーンがそう言ってのけるものだから。
「……はいっ、マスター!」
朗らかな笑みをオリンジは取り戻し、先を歩くコウユウとヒナに合わせるよう、足並みを揃えて駆け寄った。
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