プロローグ
冒険者達の活躍もあり、第二の都市「デュオポリス」は守られ、ディナリウム王国にはしばしの平和が訪れました。
しかし、いつもどこかで弱き人々が自分の差し伸べる手を待っているはず!
貴方は今日もそんな思いを持ちながら、冒険者ギルドで次の依頼を待っているのであります。
そんな折、突如ギルドに嬌声が響きました。
「ふぇぇぁ!? そ、それは……わ、分かりました。承りますねっ!」
それは、このギルドの受付嬢『アンジェリカ』のものでした。
その頬は色濃く紅潮しており、彼女の髪の色にも負けません。
ほてりを覚まそうと、ぶんぶんと首を振るアンジェリカ。首元を往復するツインテールの揺れは、徐々に収まってきました。
一体彼女の元にはどんな依頼が舞い込んだのでしょうか?
興味を持った一人の冒険者は彼女が落ち着くのを待ち、近寄るとそれを訪ねます。
「あ、あの……ちょっと大きな声では言えないので、耳を貸してくださいっ」
彼女はそっと、依頼内容を耳打ちしてきます。
話を聞きながら、冒険者はアンジェリカに依頼をしていた少女を思い出します。
腰まで届くストレートのブロンドヘアー。慎ましい丘陵が2つ。
顔は良く見えなかったが、身長は……150cmくらいだろうか。きっと可愛らしいのだろう。
そういえば頭に頭巾を巻いていたような……家庭的で大人しそうな雰囲気。
そう、そしてなにより目を引いたのは、そんな雰囲気には似つかわしくない白魚のような御御足と、それを優しく包み込む膝上5cmの白いフリルスカート。きっとその中には純白の……
「えっ、パンツが……ない?」
「わわわわ!? バッカでございますかアンタはぁぁ!?」
木の板が冒険者の頭をスコンと打ち抜きます。
もう、こっちにきてくださいっ、と言いながら冒険者はアンジェリカに奥の部屋へと引きずら……連れていかれてゆきました。
さぁ、冒険者ギルドはまさに水を得た魚。
文字にすればたった三文字しかない魔法の言葉にギルドは色めきだっています。
「これ、つまりあの子の……ってことだよな?」
「煩悩退散煩悩退散煩悩退散!」
「いや、おっさん鼻血出てるから。何想像してんのよ」
「でも、女の子のこういう被害っていったらさー」
「多分だけど、十中八九はドーズの仕業でしょうね」
「まぁ、同じ女としては見捨てたくないとこね」
「ま、頼んだわ。俺たちが行っても奴ら姿を見せないだろうし」
「そんなのやり方次第じゃないさ! あんな若い子見捨てちゃ可哀想だよ」
さて、皆様が掴み取るのは少女の純真な心でしょうか。
それとも己の内を満たす邪な純白でしょうか。
※このエピソードは、Re:創造の日終了後にあたる日常のエピソードです。
時空のひずみなどはありませんので、気楽にご参加下さい。
解説
ディナリウムの近くに住む村娘、メイジ―・ブランシェットさんからの依頼です。
目標は、無事に彼女の落とし物を届けることです。
アンジェリカによると、彼女は森でお花を摘んでいる時、突然数匹のドーズに襲われ下着を強奪されたそうです。何とか取り返そうとしたのですが、突然5mを超えるような大きな個体が現れていたため、身の危険を感じた彼女は急いでその場から逃げ出しました。また逃げる際には摘んでいた花を入れたバスケット、赤く光る石、護身用の短剣を森の中で落としてしまったそうです。
ドーズは、この世界においても生体がよくわからない生物です。ただ、個体差はありますが人間にとっては迷惑な存在として広く知られ渡っています。見た目は二頭身の人間と言ったところで、頭が大きくよく転びます。身長は30センチから80センチ程度で身に着けているのはパンツ一丁です。
彼らは下品にしゃべり、顔は不細工。美少女が大好きといった筋金入りの種族です。力は弱いですが群れで行動するので、油断すると囲まれて意外と厄介です。ちなみに男は完全に敵として認識されます。男子即殺・美女舌々(なめなめ)が信条で、美少女のパンツを頭に被ることが彼らの間では神聖視されてます。
この辺りのドーズには、『謎の白糸』、『神風起こし』、『超変身』などのスキルがあります。何故かその技名だけが伝わっていますが、実際の能力は判明していません。気を付けましょう。攻撃すると僅かな煙と共に消えてしまいます。
事件のあった森につく頃には夜になってしまうので、夜目が利く種族の助けを借りたり、何か辺りを見やすくするなど工夫が必要です。
森は広いため、どうにかして彼女が遭遇したドーズの居場所を掴まねばなりません。
ドーズを隠すならドーズの中です。脅すなり交渉するなり、何か方法を考えましょう。
一村娘の依頼ですので報酬は少ないですが、是非助けてあげてください。
ゲームマスターより
ここまで世界を救う過酷な戦いをこなされてきた皆様に何か楽しいエピソードを……と思っていたらこんなものが生まれてしまいました。欲望のまま楽しむも良し、きちんと依頼をこなすも良し、ご自由にお楽しみください。
自分の持ち込む武器や森の中の配置にドーズの生態、NPCの事情に到るまで様々想像してみて下さい。プロローグや解説に無いプランも大歓迎です。ルール上限界はありますが、なるべく採用していきたいと思っています。
一GMとしての考えですが、プランには具体的な作戦や行動内容・セリフを記載し、フレーバーにはPCにどう活躍してほしいか、醸し出す雰囲気や特徴的しぐさ等を記載して頂けると描写を皆様の想像に近いものに出来るかと思います。迷った際にはその辺りを意識してみて下さい。
また一緒に行動しないとしても、掲示板でおおまかな行動予定を共有するとお互いのプランに刺激があると思います。是非挨拶がてら利用してみて下さい。
ズルリもあるの? 膝上5cmの決死戦! エピソード情報
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担当 |
pnkjynp GM
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相談期間 |
6 日
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ジャンル |
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タイプ |
EX
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出発日 |
2017/7/11
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難易度 |
普通
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報酬 |
少し
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公開日 |
2017/7/21 |
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女性のし、下着を奪うなんてなんて破廉恥な!成敗して差し上げますわ! …ちょっと落ち着いたので、きちんと依頼を読んでみましたが…依頼者様は落とし物をなされた様子で…もし見つけられたら回収しておきたいですわね それとドーズは謎の技を扱いますのね…技名からでは何も予想できませんわ…触れられるのも嫌なので、全て焼き払えばよろしいのかしら?あと上手く転ばせるように努めましょう あ、一匹は情報収集のために残さないといけないのでしたね。そこは気を付けないとですわ 今回は知り合いの方もいますし、頑張りますわよー! 「さぁ、きりきり吐きなさい!狼藉者を在り処を!私は気が長い方ではないですわよ!」
トゥルー スカートだと危険そうなので、ズボンを下に履いてね? あんまり力にはなれないけど、石を投げたりして援護する…! 足元危ないから注意してねー!って言った傍からこけかけないで!?
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(準備) ・ランタン、松明等の明かり ・武器は手投矢、短剣、ムチ等 ・一般的な森歩きの装備(用意できるなら、地図、方位磁針等も) ・真っ直ぐ立つとパンツ見えそうなくらいスカートは短く ・薄手のパンティを数枚重ねてはいておく
(主な行動) ・猫のケモモの夜目を活用、パーティーを先導する ・パンティを強調した囮になって、先ずはドーズをおびき寄せたい(一人で歩く、おトイレの演技等) ・捕まえたら、うっかり煙にしてしまわないよう、丁重に扱って情報を聞きたい ・メイジ―のパンツの行方を尋ねる、脅して効果が薄いなら、色仕掛けで 「ふーん、教えてくれたら、このパンツ脱いでプレゼントしちゃうのにな」 「(後で重ねたパンツの1枚だけ脱ぎ)嘘は言ってないさ」 ・情報を基に探索を進めて、メイジーのパンツと荷物を回収して撤収 ・ドーズは攻撃して追い払う、未知の攻撃はなるべく回避する ・スレイブには無理させない
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今回はメイド服を纏い、きちんとパンティを履いての参加です。 持ち出す武器はショートソード×2本で、二刀流ですわね。 その状態で森に入り、ドーズを誘き出すこととしましょう。 森の中では前衛配置で、戦闘では速度を活かした戦闘を展開する予定ですの。 パンティを奪われないように注意しながら戦闘し、集団で現れた場合でも最低1匹だけは殺さない程度に痛めつけます。 その上で、縛り上げて逃げないようにし、メイジーちゃんのパンティを持っているドーズの居場所を聞き出しては探索していく流れですの。 キミシアちゃん、アンネッラちゃん、他参加者さんがいればその方とも、連携は最大限に重視して行動致します。
「キミシアちゃん、アンネちゃん、森の中は障害物も多いですし、気を付けて進みましょうね?」 「ドーズって本当にこう、HENTAI、ですわよね。間近で見て改めて思いましたの。」 「さて、どこから痛めつけようかしら?」
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参加者一覧
リザルト
●闇深き荒い息
森の手前。月明りを背に少女達が到着する。
今回集まった冒険者は3人。
「キミシアちゃん、アンネちゃん、今回は暗い森の中……気をつけて進みましょうね?」
メイド服に身を包み膝上5cmでスカートをなびかせるのは【ミクシーナ】。
松明の炎に、紫に照り返す艶やかな黒髪と物憂げな瞳は正に淑女といったところだ。
「はいミクシーナ様! 女性のパ……下着を奪うなんて破廉恥な魔物、成敗して差し上げますわ!」
顔を赤らめつつも気合充分な様子の【アンネッラ・エレーヒャ】。
彼女は自身のスレイブ【トゥルー】の助言を受けズボンを履いていた。
「ん? アンネ、今パって言わなかった~?」
「え? あ、あの……で、ですからその! あぅ……」
「キミシアちゃん。あんまりアンネちゃんで遊んじゃダメですわよ?」
「にゃははー。ゴメンねアンネ。可愛いからつい、ね」
そう笑うのは【キミシア・シュー】。
彼女達は以前同じ依頼に参加した事があった。
特にエルフのみが住む村に生まれ、最近まで外界を全く知らなかったアンネッラにとっては、現状数少ない知人とも言える。
「もうシア様ったら……!」
「アンネちゃんは初心ですもの。情操教育はゆっくりと、ですわ♪」
「ミクシーナ様!?」
「うん! 今後が楽しみだね♪」
「うふふ。さて、お楽しみの前にアレ……取り戻してしまいましょう?」
「お、お楽しみ……はうぅ」
「オッケー。じゃあまたあたしが先導するね」
キミシアは手に持った松明をスレイブの【ビスコ】に託し仲間の側につかせ、自身はランタンを持ちながら森の奥へと入っていく。
それに続くアンネッラとトゥルー、そしてミクシーナ。
しばらく何も起きぬまま一行は先へ進んでいたのだが、ケダモノの魔の手はすぐそこに迫っていた。
「褐色娘ニ、メイドニメガネッ子……ハァハァ」
「アノメガネエルフ以外ハ生足ダゾ!」
「グヘヘヘェ……ゴッツァンデス!」
妙な悪寒に体を震わせるアンネッラ。
「アンネッラ。そこ木の根っこがあるからね」
「えっ?」
トゥルーの注意も虚しく、悪寒に気を取られていた彼女は躓いてしまう。
しかし転ぶ前にミクシーナに支えられる。
「大丈夫、アンネちゃん?」
「お手を煩わせてしまいすみません! 大丈夫ですわ」
「良いんですのよ。それより、どうかされまして?」
「その、先程から妙な寒気を感じているのです」
「アンネも? あたしも何か気配は感じるんだけど姿が見えないんだよね」
「キミシアちゃんが見つけられないとなると少々面倒ですわね」
立ち止まり周囲を警戒する一行。
「ねぇミクシーナ。ちょっとあたし試してみたい事があるんだけどいいかな?」
「ええ。お任せします」
ミクシーナは、2本のショートソードを構え戦闘準備を整える。
「いざとなれば私が。苦戦するようならアンネちゃんに援護をお願いしますの」
「分かりましたわ!」
「ありがと。じゃあ2人共、見守っててね」
ドーズをおびき出す為、1人一行から距離を取るキミシア。
彼女は手に持っていたランタンを地面に置くと、自分の尻尾で再びそれを持ち上げた。
ケモモらしさ溢れる器用な持ち方ではあったが、そうすることで彼女の腰回りは明るく映し出される。
「シア様! そんな!?」
アンネッラは思わず息をのむ。それもそのはず。
オレンジの淡い光の中で、生足を見せつける彼女のスカート丈は膝上15cmだったのだから。
「あー疲れたー。全然ドーズ見つかんなーい」
わざと大声を出すキミシアは、ふてくされた様に石ころを蹴る動作をする。
健康的な太ももが躍動し、立っているだけで見えてしまいそうな神秘の世界は、その姿をギリギリのところで闇の中へさらけ出してしまう。
それはオレンジと黒のコントラストに彩られた光のチラリズム。
神秘の探究者達の煩悩を刺激するには、芸術的すぎる動きであった。
「アァァー! 見エナイィィーー!?!?」
「ランタン、モット手前ヨッテヨ!」
「黒カ、黒ナノカ?!」
茂みの中から飛び出してくる生命体が複数。
その荒い息は、まるで過呼吸。
この登場、第一印象として最低である事は間違いない。
「あ、ドーズ見っけ」
『アッ』
●Pは剣より強し
つい飛び出してしまったことに驚きを隠せないドーズ達。
彼等が落着きを取り戻すより早く、一気に距離を詰めたミクシーナの双剣が振るわれる。
「ウギャッ!?」
「キミシアちゃん、一匹確保をお願いしますわ」
「了解!」
「カ、掛カレー! ムグッ?!」
キミシアは、指示を出した者に狙いを定めると鞭で優しく絞り上げる。
辺りに散らばる他のドーズ達は、思い思いに襲い掛かるが、大きな頭を支える重い足取りではミクシーナに追いつけない。
彼女に切り刻まれ、敵は次々に煙へと変わっていく。
「お二人の連携は流石ですわね」
アンネッラが手を出すまでもなく、2人は敵を全て沈黙させ、無事に1匹のドーズを捕獲した。
「捕えたは良いけど……どうしようか、これ?」
「当然尋問ですわ! さぁ不埒で助平な悪党、きりきり吐きなさい! メイジー様を襲った狼藉者の居場所を! 私は気が長い方ではないですわよ?!」
「シ、知ラナイゾ! 大王ノ事ナンカ何モ!」
「今大王って言ったじゃありませんの!?」
アンネッラに怒鳴られるも、ぷいとそっぽを向くドーズ。
すると今度はミクシーナがドーズの喉元へ剣を突きつける。
「ではもう用はありませんから、貴方はここでお終いですわね。ですが私達にも慈悲はあります。最後に、自分自身がどう料理されたいか……選ばせて差し上げますわ」
彼女はサディスティックな笑顔をドーズへと向けると、愉快そうに語りかける。
「一思いにグサッと、でも良いのですけど隠し包丁の様に体へばつ……を刻む方が合っているかしら? あ。ちなみに私、最近みじん切りに嵌ってますの♪ 魔物は一体どのくらい細かく斬れるか、試してみましょうか」
「アッ、パンツヲ、フヌゥ!? 守ッテ死ス……グゥ?! ソノ為ナラコノ命惜シクハナイゾ!」
剣先で体をつつかれ、冷や汗を垂らしながらも、謎の男気? を見せるドーズ。
「もう……。私、理解に苦しみますわ」
これにはアンネッラの知的好奇心もさじを投げてしまうようだ。
進展しない状況に最後の手段を使うことにしたキミシアは、ドーズに耳打ちをする。
「残念だな~。教えてくれたら、あたしのパンツ……脱いでプレゼントしちゃうのにな」
「!?!??!」
声にならない叫びをあげるケダモノ。
「ホ、本当ダナ?!」
「嘘は言わないさ」
彼女はドーズの後ろで、ゆっくりと衣擦れの音を立たせると、目の前に一瞬だけ禁断の果実をちらつかせる。
「フォォオオウゥ!!?!」
「どうする? この交渉……乗ってみちゃう?」
「ノルノル!」
「契約成立! それじゃ、道案内宜しくね~」
キミシアの誘いを受け、頭がはちきれんばかりに頷く身長60cm。
そんなあほらしい姿に興が削がれたミクシ―ナは武器をしまう。
「……ドーズって本当にこう、HENTAI……ですわよね。剣ではあまり虐め甲斐がありませんわ」
「HENTAI、ですか? 昆虫の変態の事でしょうか?」
「ふふっ、アンネちゃんはまだそのままで良いんですのよ。まだ、ねっ?」
「は、はぁ……ミクシーナ様がそうおっしゃるのでしたら、詮索は致しませんわ」
「ホラ行くゾ! パンツハ今ノ大王ガ持ッテルンダ! 早ク付イテ来イ!」
「って、やっぱり知ってるんじゃありませんのっ!」
「イデッ!」
ドーズはアンネッラの杖で小突かれながらも、一行を森の最奥へと導いていく。
縛られ嫌悪の眼差しを浴びるその背には、明日の至福を夢見る男のオーラが感じられる……ような気がしないでもなかった。
●恐るべし、ドーズ脅威のフェティシズム
森の茂りが一層と深くなる中、ドーズに案内させた先で一行は不自然に光り輝く空間を見つける。
彼女達は全員で四方を警戒する布陣を組むとそこへと乗り込んでいく。
「ヨクイラッシャイマシタネ」
それを迎え入れるのは、純白のパンティーを頭に被ったドーズだった。
恐らくこれが大王と呼ばれる個体なのであろう。付近には傅くドーズ達が居り、大王には何故か後光がさしている。
(うっわ……何か目に染みる感じ)
その異様な光景に面食らうキミシアだったが、取り敢えず交渉を試みる。
「えっと、大王さん……でいいのかな? そのパンツ返して欲しいんだけど」
「パンツ? アァ、コノ聖衣ノ事デスネ」
「そ、そうそう。タダとは言わないよ。あたしのと交換でどう?」
「フ~ム」
考え込みながら愛おしそうに布を撫でる大王。
仮に無事に取り戻したとしても、これを装備したい女性はまずいないだろう。
「デハ、コウシマショウ」
突如、不敵な笑みを浮かべた大王は太った指をブチンと鳴らす。
その鈍った音と同時に、付近の茂みや木の上から白い糸が飛び出してきた!
『つっ!』
咄嗟の攻撃をそれぞれ回避する一行。
しかし四方からだけでなく上方からも飛び交う糸を避けきることは難しく、最初にビスコが捕まり松明を取り上げられてしまう。
「ビス……ふにゃあん!?」
スレイブを心配したキミシアの注意がそれた隙をついて、今度は木の上にいるドーズ達が彼女の尻尾に糸を巻き付ける。
絡みついた糸がそのまま強い力で尻尾を締め付けると、慣れない刺激に彼女は思わず声をあげながら膝をつく。その拍子に持っていたランタンは割れ火が消えてしまった。
「モット、モットデス!」
大王に応えるように、キミシアを捕まえたドーズ達は尻尾からその体を吊り上げ、更に地上のドーズ達が糸で簀巻きにする。まるで蓑虫の様にされてしまった彼女は身動きを取ることが出来ない。
こうして偶然にも明かりを持つ2人を真っ先に捕えたケダモノ達は、視界の利かない中で尚も糸から逃げ続けるトゥルーとアンネッラ、ミクシーナの3人ににじり寄る。
「コノ少女達ガ惜シケレバ、降参スルノデス」
「ミクシーナ様、シア様が!」
「……仕方ありませんわね」
俗に言う謎の白糸。これ自体は他愛もない物で、いうなれば極太な蜘蛛の糸であった。
しかしそれは、大王の指揮と彼に仕えるドーズ達の圧倒的物量によって、包囲戦術の要へと変貌を遂げていた。
不利を悟ったアンネッラとミクシーナは地面に武器を捨てる。
大王はそれを確認すると、部下達に命じ3人の上半身だけをキミシアと同様に縛り付ける。
「あっ、はぁぁ……ンんッ!」
容赦なく食い込んでくる糸に、ミクシーナの艶やかな吐息が漏れ出した。
「ムフフ。デハ失礼シテ……オ前達!」
『ヌヒッ!』
大王は舌なめずりをすると号令をかける。
具体的な命令がある訳でもなかったが、部下達は妙な奇声をあげるとテキパキ行動に移る。
その内一匹は、短剣を持ってアンネッラへと近づいていく。
「掟第一、美女ノ生足ヲ最モ美シク拝ム事!」
「イヒィ!」
大げさに謎の掟を唱える大王。
それを合図に部下は短剣を使い、ズボンの横にある縫い目を縦に切り裂いていく。悔しそうにそれを見つめるアンネッラ。
「くっ、屈辱ですわっ! ……ん?」
彼女は目の前で起きるふしだらな事態の中に、この冒険の一目的を見つけ出した。
(この短剣の柄、依頼にあった……!)
しかし冷静でいられるのも束の間。
彼女のズボンは一筋の深い切れ間を作られてしまう。
「嫌ぁぁぁぁ!?」
「最モ美シイ時……ソレハスリットカラ覗ク麗シノ肌ッ!」
彼女の悲鳴と部下の迷言を背に、ミクシーナもまた痴漢行為を受けていた。
「間近で見ますと、改めて厭らしい生き物だと実感しますわね。貴方達……」
「掟第二、奇跡ハ自分デ導ク事!」
「フヒィ!」
彼女に近寄っていた一匹は、スカートの中へ潜り込むと足を肩幅に開かせる。
「奇跡ヲ導クノハ己ノ魔法……総員、神風起コシッ!」
『ウオオッ!』
スカートの中から汚い叫びが発せられると、付近のドーズ達は集合し全身全霊を込め魔法を放った!
あふれ出る魔力の本流は、大気の渦を作り出すと彼女の腰布を豪快にはじき飛ばす……訳もなく。
彼等によって生じた謎のそよ風は、彼女のスカートを軽く揺らすのみである。
「ゼェゼェ……見エタカ!?」
「ダメダ! モウ一度!」
(全くこのおバカさんんっ?! 達は!)
内ももを弄る違和感にもがきながら、ミクシーナは冷静に状況を分析する。
彼女の見つめる先には逆さ吊りにされる仲間……キミシアの姿があった。
「ダラシナイ人達デスネ。コノ私ノ御業ヲ見テイナサイ」
大王は不思議なポーズを手順に沿って二三決めていく。
「超変身!」
そして最後の掛け声と共に大王の履くパンツが赤く光り出すと、その体は一気に3mを超える巨体へと変貌した。
真上にある木々の枝を折りながら巨大化した彼は、キミシアの腰の位置を超える高さに到達する。
眼下には、月明りに照らされる秘宝が淡い水の色を発していた。
「どこみてるのさ! エッチ!」
必死に抗議するキミシアだったが、現状を端的に言えば丸見え状態である。
確かに大王の覗き方は酷すぎるものの、見上げれば誰の目にも映ることだろう。
「掟第三、美女ノ恥ジライヲ愛デル事!」
大王は魂を込めてそう言い放つと、彼女の下着を脱がしにかかる。
いざという時の為の交渉材料として、薄手のものを3枚重ねて履いていた彼女だったが、大王は一気にその全てを奪い去ろうとしていた。
彼の爪が優しく布の両端を掴み、そっと持ち上げようとする。
「ちょっと!? ダメダメ! それだけはダメー?!」
こんなところで、こんな風にされるなんて。
先程まで余裕があった彼女も、その羞恥に思わず涙ぐむ。
一行の誰もが目を背け、敵の全てが釘付けになるそんな状況に、好機を見出す者がいた。
「ミヤコちゃん!」
それはミクシーナの声。
彼女は予め武器に同化させておいた自身のスレイブ【ミヤコ】の同化を解除した。
元々は肉体を持つスレイブを恥辱から守る為彼女が考えた予防策ではあったが、その策は逆転への好機を見出すこととなる。
「待ってました~☆」
剣の側に出現したミヤコは、落ちていた武器を拾い上げアンネッラとトゥルーに巻き付いた糸を切ると杖を手渡す。
「私のみならず、私の大切なお知り合いに手をあげるなんて……消し炭にしても収まりつきませんわっ!!」
怒りに震えるアンネッラが杖を構え呪文を唱えると、あちらこちらから火柱が立ち上る。
その火は決して味方を焼かないものの、木々もドーズも見境なしに焼き払っていく。
『ギャァァァ!?』
キミシアに夢中で気づくのが遅れたり、神風起こしで疲れ切った彼等に逃げる術などない。
だが彼女の魔法は苛烈すぎるまでに辺りを燃やし尽くす。
「アンネッラ、ストップ! 森が燃えちゃうからー!?」
あまりの状況にトゥルーが慌てて制止に入る。
全てが終わった時、そこには一行と短剣、赤く光る石だけが残されていた。
●3人だけの……
何とかギルドへと帰還する一行。
既に外はうっすらと明るくなり始めているが、まだギルドは閉まっているため裏口の鐘を鳴らす。
結局メイジ―の落とし物の内2つは取り戻したものの、花の入ったバスケットと下着は、騒動の中で燃えてしまったようであった。
「本当に申し訳ありませんわ……」
状況も相まったとはいえ、自分自身を律しきる事が出来ず悔やむアンネッラ。
それを励ますミクシーナとキミシア。
「あの時アンネちゃんの魔法が無かったら、あれだけの数は処理しきれませんでしたわ」
「あたしの貞操の危機も救ってもらったし! ありがと、アンネ」
「ですが、お二人にも多大なご迷惑を……」
「そんなに自分を責めないでほしいですの。私達は貴女の大切な【お友達】なのですから♪」
「と、友達……」
「うん。持ちつ持たれつ、一緒に楽しい冒険していこうね! これからも♪」
2人はそれぞれアンネッラの手を掴む。
それは彼女にとって、家族以外に初めて触れ合う他人の心。
それはこのちょっと恥ずかしい冒険を経て生まれた、3人だけの秘密の馴れ初め。
「っ……はい!」
花も下着も替えはある。
だが、この笑顔の花はここにしか咲かない友情の大輪であった。
「もぅ、今何時だと……ってどうされたのですかっ!? そんなボロボロで!」
そんな時、眠い目を擦りながらアンジェリカが裏口から顔を出す。
キミシアは、何かすーすーとした感覚に足をもじもじさせつつこう言った。
「しーっ、取り敢えず服。それと……パンツ!」
依頼結果
依頼相談掲示板