【創造の光】悪魔の影をつけ(鳴海 マスター) 【難易度:難しい】




プロローグ


● 軍勢、その核は?
 センテンタリ軍。地平線を埋め尽くすような大群と、デュオポリス軍はいまや、分けるのが難しいほどに入り乱れての大混戦を繰り広げていた。
 しかし敵軍の指揮は意外に高くない、まず前面を覆う人間兵たちには戦いへの恐怖が滲んでおり戦意が低く、さらにデーモンの指揮官は相手が人間であることから油断しているのだろうか……余裕が垣間見えた。
 人垣の向こうにその巨体と含み笑いの表情が見え隠れしているし、端的に言うとその余裕がむかつく、鼻につく。
 だが油断していられるのも今のうち。君たちはそう笑みをかみ殺す。
 意を決して君たちはある作戦を実行に移した。
 それはある種の特攻…無謀なる行動、しかし仲間を信じれば、活路を味方が開いてくれると信じれば飛べる。
 君たちは足の裏を後ろに向けてジャンプ。
 その背後から風を感じる。
 足が硬い物を捉え、そして仲間の武器を足場にして高く、高く空を舞ったのだ。
 その光景をデーモン司令官は見ていなかった。
 荒野を乾いた風が吹き抜ける……そのせいで目にゴミが入ってそちらを見ていなかったのだ。
「ぐお?」
 人語ではない唸りを上げて、飛び立つ探索者たちに気が付くデーモン指揮官。
 味方の武器で打ち出してもらった君たちは太陽を背にしている。目が眩んだ敵前列の兵を突破、そのまま後列のイービルと刃を合わせた。少数だからできる奇襲である。
「やろぉ」
 デーモンは訛りのひどい君たちと同じ言葉を使って呻くと、武器を手に取る。
 戦闘開始だ。ここでデーモンを倒せれば戦場はかなり楽になる、ただ敵は強大である。
 恐れがないと言えばうそになるだろう。
 だが君たちはきっと帰ってこれる。
 君たちの知恵と勇気が試される大地で、決戦の火ぶたは切って落とされた。

● 状況説明
 現在皆さんは戦場の奥地にいます。数いるデーモン指揮官の中の一人と対峙中です。
 デーモン指揮官は皆さんのレベルですと十人束になって勝てるかどうか程度なので少し分が悪いです。
 さらに、力は弱いとはいえ、イービルが五体程度存在しますし。
 背後には敵兵しかいないわけですから撤退のための余力を残しておかなければなりません。
 そのために必要となるのは状況をこまかく想定しておくことでしょうか。

1 デーモン司令官へはどの程度ダメージを与えるのか。
 撤退まで追い込めれば目的は果たしたと言えるでしょう。ただそううまくいくか分からないですし撤退の条件など決めておいた方がいいかもです。

2 撤退はどうするか。
 イービルと、背後に分厚く展開された人間兵。行きはよいよいではあなた達は死んでしまいます。
 たとえば苦しいですが人員を何人かさいて、イービルや人間兵の相手をさせておく。撤退するためのコンビネーションなど決めておく。
 などでしょう。

 この二つを良く考えて、敵との戦いを優位に進めましょう。


解説


●敵情報
 今回戦っていただく敵は二種類です。
・イービル兵 五体
 機動力が高く小柄で回避性能が高い悪魔です。肉弾戦が得意ですが、前衛の方にはあまり脅威にならない攻撃力です。
 ただしデーモン兵と連携して先を遮ったりしてくるので注意です。

デーモン指揮官 一体。
 強力な個体です。通常駆け出しの探索者では十人束になって互角くらいですが。この戦いでは八人で挑みます。
 攻撃方法は、今油断していたのでメイスです。
 メイスは魔法攻撃力を上げる武器です、近接戦闘では使いにくい。 
 加えて皆さんは奇襲して、デーモン指揮官に対して好きな距離感で戦えるので、皆さん側の前衛職が有利でしょうか。
 隙あれば、肉切り包丁みたいな分厚い剣に持ち替えます。
 鎧を砕きつつ攻撃するためのものなので、命中精度は低いです。
 回避職や、盾役がどれだけ攻撃をひきつけられるかにかかっているでしょう。
 遠距離魔法は。高火力の単発魔法。命中精度は低いです。
 一発あたるのが命取りのひやひやした戦闘になると思いますが、検討をお祈りしてます。
 
 またデーモン司令官はHPが半分以下になると逃げたそうなそぶりを見せます。
 戦意を喪失させたり、強さを見せつけたりすると撤退してくれるかも。

●撤退方法
 PC側が撤退する場合のお話です。
 撤退方法は人ごみをかき分けていただくだけなんですけど、その隙を狙ってイービルやデーモン司令官の攻撃を背中に浴びる可能性があります。 
 他の人にあたる可能性とかガン無視で魔法を放ってきます。
 撤退中に攻撃を受けないようにすれば、一般兵なんて、ちょっとした足止めにすぎません。適当に武器を振るっていれば撤退できると思います。


ゲームマスターより


 今回のテーマは映画のワンシーンです。 
 こう着した状況を打破するために、死地に乗り込むのが皆さまです。
 正直、相談を綿密にしないといけない点。
 後は敵がワンランク上な点から難易度が高くなっております。 
 しかしこのミッションクリアは戦場に大きな影響を及ぼすことでしょう。
 難易度的に戦えなくなるほど痛めつけられることはないと思いますが、撤退のタイミングについてはお気を付けを。



【創造の光】悪魔の影をつけ エピソード情報
担当 鳴海 GM 相談期間 7 日
ジャンル --- タイプ EX 出発日 2017/7/3 0
難易度 難しい 報酬 通常 公開日 2017/7/13

エルヴァイレント・フルテアルフォ
 ドワーフ | ウォーリア | 19 歳 | 女性 
デーモン司令官に対して、両手剣を使って攻撃を行う。
スレイブのアルフォには、サポートを頼む。
倒しきるのではなく、退却させることを念頭に置いて戦闘を行う。
狙うのは主に手足、肉切り包丁に装備を変える暇を与えないように攻撃を続ける。
「悪いけど、全力で行くよ。うちらにも守るべき物があるんよ…覚悟しいや。」
退却のタイミングは、敵が戦意を失い、撤退を始めた時。
もしくは、こちら側の戦力が半分を切った時。
「ここらが引き時やね…アルフォ、退却の補助、お願いな。」
被害を受けにくい退却ルートをアルフォに探させ、迅速に退却を行う。
星野秀忠みくり
 エルフ | メイジ | 36 歳 | 男性 
秀忠は物陰に隠れ、みくりの補助を受けながらイービル兵を狙撃していった。
「騒がしいと読書も音楽制作もできなくて困るんですよね……。」
イービル討伐担当以外の味方には指揮官の討伐に専念してもらい、自分は撤退する時の為にイービルを少しでも削っていくことにした。

撤退する場合、指揮官討伐担当の味方を先頭に撤退するが、イービル担当は後方から敵を排除していく。もちろん、指揮官討伐担当は前方からの敵を討伐していく。
「しつこいヤツは嫌いです。」

攻撃時も撤退時も、近接戦闘は一子相伝の蹴り技「タイキック」と魔導書を利用した打撃。遠距離は魔法等を利用した遠距離射撃。

撤退時にスレイブのみくりが転倒してしまい、秀忠がみくりをおんぶしていく。
ただし、秀忠は攻撃の呪文等は暗記しているので、攻撃は可能。
撤退のタイミングは基本的には最後まで残るが、秀忠一人になるようであれば仲間とともに撤退。
神崎 紫紅リゼ
 ケモモ | ナイト | 17 歳 | 女性 
味方がデーモン指揮官との戦闘に集中出来るようにイービル兵と一般兵相手に戦う
リディと共に行動
相手の攻撃を引き付け味方の被害を減らす
イービル兵が攻撃してきた時可能なら盾で押さえて動きを止めてそこを味方に攻撃してもらう
ある程度敵が減ってきたらもしくはデーモン指揮官と戦ってる味方が押され始めたらデーモン指揮官との戦いに加勢する
撤退時は殿を務める。デーモンが魔法攻撃を放ってきたときは身を呈してでも味方を守る
絶対にこの場の全員で戻るために
撤退タイミングはデーモン指揮官が撤退もしくはこちらの戦力が半分になったとき
リディ・フート河村のどか
 ヒューマン | ウォーリア | 17 歳 | 女性 
デーモン指揮官の相手をしてる味方の邪魔をさせないように、神崎紫紅と連携してイービル兵の相手をする。デーモン指揮官と連携させないために、イービル兵に奇襲して、飛び込んでいく形で戦う
「さっさと帰っちまえ!」
って、罵倒するみたいに言いながら、イービル兵をすべて倒した時には、デーモン指揮官との戦いに加わり、それがダメならなんとかイービル兵を押し止めておく
他の人たちが撤退し始めた時に、一緒に撤退する
「もう、撤退するって時に邪魔しないで!」
って風に、相手が追いかけてくるようなら、しんがりとして時間稼ぎをしてから逃げる
アドリブ大歓迎
クロード・メイスカルディナ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 
装備は大剣を使用。奇襲後は近距離で指揮官狙いで戦闘。
初撃は指揮官の頭を狙って全力の一撃をぶつける。防がれるだろうが、頭をかち割るつもりで全力で。
初撃の後は腕を狙って攻撃を重ねる。出来れば利き腕を狙いたいが、どちらが分からない場合は狙いやすい方の腕を狙う。
指揮官がイービル相手に戦っている方に目を向けそうなら挑発してこちらに集中させる。
戦力半分で撤退開始。
ジーン・ズァエールルーツ・オリンジ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 
*目的
敵指揮官を追い込む

*動機
状況は苦しいが、せっかくここまで来たんだ。思い切りやらせてもらう

*手段
●武器
グレートソード

●心情
敵陣で孤立した状況で強大な敵と戦う。血が滾るシチュエーションだ
勝てる見込みは薄いが、せっかくの修羅場だ。殺す気で行かせてもらう

●戦闘
狙いは指揮官
武器の持ち替えさせないよう接近戦を仕掛ける
狙う部位は腕。そこを負傷させれば、武器を持ち替えても脅威は半減させられる
攻撃時はグレートソードの特性を生かし、ある程度離れた距離から武器の重みを使って横薙ぎの斬撃を放つ。これなら回避されても遠心力を利用してさらに踏み込んで再攻撃が可能かつ他の部位を狙うことだってできる

敵の攻撃は回避か仲間の力を利用。無理なら武器を盾にして受け流す
相手を撤退させたら、声高に雄叫びを上げてさらに追い立てる

●撤退時
戦力半分で撤退。可能なら殿を務めて最後まで抵抗
しっこくくらやみ
 ヒューマン | メイド | 16 歳 | 女性 
Emmaルチア
 エルフ | メイド | 17 歳 | 女性 

参加者一覧

エルヴァイレント・フルテアルフォ
 ドワーフ | ウォーリア | 19 歳 | 女性 
星野秀忠みくり
 エルフ | メイジ | 36 歳 | 男性 
神崎 紫紅リゼ
 ケモモ | ナイト | 17 歳 | 女性 
リディ・フート河村のどか
 ヒューマン | ウォーリア | 17 歳 | 女性 
クロード・メイスカルディナ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 
ジーン・ズァエールルーツ・オリンジ
 ヒューマン | ウォーリア | 18 歳 | 男性 
しっこくくらやみ
 ヒューマン | メイド | 16 歳 | 女性 
Emmaルチア
 エルフ | メイド | 17 歳 | 女性 


リザルト


プロローグ
 戦場とは単なる殺し合いの場に過ぎない。
 相手も自分も血を流す。立っていられなくなれば即座に命を失い。朝日を拝むことはないのだろう。
 普通はその事実に恐怖を抱くものだが、敵にその気配はない。
 魔物と正気を失った人間の軍勢。
 『Emma』は敵の列を目の前に圧倒されていた。
 分厚い人の壁、その向こうからは悪魔が飛来し、こちらの様子を眺めて笑っている。
 『しっこく』はその惨状を忌々しく思った。倒しても倒しても敵が湧いてくるようだ。見えない終戦に向けて、しっこくは歯噛みしながらも剣を振るう。
 そんな中『リディ・フート』は群がる敵を切り倒し。果敢に敵を押しのけていった。その刃こそ勇気の証、その刃こそ未来を掴みとる希望。
「邪魔! うっざいなぁ!」
 その双振りのぎらつく刃は、片方で槍を弾き、片方で槍を切り落とし。片方で盾を切り上げ、続いて踏み出したその歩みで懐へ。
 二ふりの刃を合わせて鋏のようにして。
 敵の頭を切り落とす。
 その頬を刺突が頬をかすめるも、うっすら染み出る血をぬぐって敵を蹴りつけた。
 不敵に微笑むリディ。
 まるで恐怖など感じていないかのように、恐怖を感じていてもそれを無視するかのようにリディは動き、返す刃で敵を切り伏せた。
 そして再度、視線を上げる。まだまだ敵は多い。
 ここでリディは気が付く、これではらちが明かない。戦況は全く好転しない。
 そこでリディは妙案を思いついたのだ。
 一か八かにかけるしかない。そう、背後の大剣使いを見る。
 その大剣使いも同じことを思ったのだろう。その大きく振りかぶった動きに合わせて、リディは飛んだ。
 後はバットにボールの要領である。
 遠くまで飛ばせばいい。
 一斉に戦士が飛んだ。
 一瞬に飛来してデーモン指揮官の目の前へ。
 戦いはここから最終局面を迎える。

第一章 悪魔狩り。

 飛来する影、空を裂いて砲弾のように打ち上げられた一行は、デーモン指揮官が見あげた時にはすで迎撃できないほどの距離にあった。反応するにはすでに遅い。
 デーモン指揮官は見ることに鳴る。風を切り振り上げられた大剣を。
 そしてデーモン指揮官は引きつった表情を向けつつ、半身をひく。
 直後、デーモン指揮官が避ける前に足を置いていた地面を砕いた。
 響く轟音。
 『クロード・メイス』は鈍器のような凶器を、重力加速度にまかせて振りかぶり、思いきり叩きつけたのだ。
 石や土砂を巻き上げて吹き飛ばす。衝撃波は大柄なデーモン指揮官すら吹き飛ばした。
「避けたか……」
 クロードは噛みしめるようにつぶやく。
 そんな奇襲に対応するために杖を向けるデーモン指揮官だったが。
 第二派、第三波がそれを許さない。
『エルヴァイレント・フルテ』はその大剣を横に構えて振りかぶる。広範囲をなぐような一撃、それを間一髪、杖ではじいて『ジーン・ズァエール』の刺突を捌く。
「アルファ、サポートをお願い」
 唐突に吹き荒れる砂塵、腐蝕の風、デーモン指揮官の魔法が完成する前に。エルヴァイレントが動いた。
 倒しきるのではなく、退却させることを念頭に置いて、その四肢にダメージを残すことを優先。
 大ぶりの斬撃と細かいステップで距離を調整しながら、肉切り包丁に装備を変える暇を与えないように攻撃を続ける。
「悪いけど、全力で行くよ。うちらにも守るべき物があるんよ……覚悟しいや」
「血が滾るシチュエーションだ」
 エルヴァイレントの動きにジーンは獰猛に笑って動きに合わせた。
 背後に回り込み、大剣の腹でタックル。敵の動きを崩すとエルヴァイレントの刃がデーモン指揮官の腹をかすめた。
 居合のようにジーンは大剣を構え、その隙を狙って抜き放つと、杖が吹き飛ぶ。
「せっかくの修羅場だ。殺す気で行かせてもらう」
 直後。振りかぶったクロードの兜割。それをデーモン指揮官は籠手で受ける。
 肉に刃が食い込んだが浅くとどまり。かわりに籠手が砕けて地面に転がった。
 デーモン指揮官はその血を見て。
 怒り狂う。
 突如吹き荒れたのは暴風。砂塵。
 目の前の景色が閉ざされる、直後火焔球が放たれた。
 さすがは魔法に適性を持つ種族、高度な魔法を使う。
 そう感心しながらクロードはその火焔を切り裂いて進む。
「お前、強いな。お前との戦いなら楽しめそうだ」
 そのクロードの言葉に挑発されるように、砂塵の向こうからデーモン指揮官が顔見せた。
 距離は近い、ほぼゼロ距離、その右手にはエネルギーの塊。
 まずい。そう思った時には。すでにエルヴァイレントが間に入っていた。
「お前!」
 そして響く雷鳴、稲光。
 クロードはエルヴァイレントの首根っこを捕まえるといったん離脱。
 一応エルヴァイレントは大剣で攻撃を受け流してはいたが、雷撃は全身をつらぬき一瞬のマヒ状態を作り出したようだ。
「無茶をする!」
「全員一緒に、帰るんだ。故郷を守っても、誰かが死んだら意味がない!」
 エルヴァイレントは普段は語尾を伸ばすような、気の抜けた感じの喋り方をするのだが。
 だが、その時は言い切った、戦闘は激しいものとなるため、いつもの自分ではだめだと感じていたから。
 その言葉に鼓舞されて、クロードはデーモン指揮官を見やる。
 奴は肉切り包丁にて。ジーンと切り結んでいた。
「てめぇが指揮官か! ちょっとその首飛ばさせてもらうぜ!」
 高速の斬撃、それを大剣の腹で受けて、反撃の足狩り。それを飛んでデーモン指揮官は回避、振り上げた包丁をジーンは受け流して。距離を稼ぎつつ薙ぐ。
「後方で安心してたか! 戦場でそいつは命を差し出すと同じだと思っとけ!」
 デーモン指揮官はそれを肉切り包丁で軽々と受け止めると、一瞬で肉薄して、蹴りをジーンの懐へ。
 ジーンはその口から血を吐いた。
 次いでジーンの首に迫る肉切り包丁。
 それをエルヴァイレントとクロードが防いでいた。
「へっ」
 ジーンは一つ含み笑いをうかべ、血を吐き捨てて前へ。
 その刃を縦に構えて脇は締める。わが身は一本の杭。
 そのまま最大の脚力を用いて、矢のようにジーンは飛び出した。
 驚きに目を見開くデーモン指揮官。
 その刃をそらすためにバックステップ。だが。
「おおおおおおお!」
 ジーンは足さばきで機動を修正、さらに加速。
 デーモン指揮官の腹部を大きく切り裂いた。
 飛び散る鮮血、転がりつつも素早く立ち上がるデーモン指揮官。息も絶え絶えにその光景を眺めている三人の戦士。
 ここで両陣営の間に大きく距離があいた。
 腹部に手を当ててゆらりと立っているデーモン指揮官。肉切り包丁を握る腕とは反対の腕から大量の血が流れ出ていた。
 対してこちらの消耗は激しい、外傷はほとんどないが。すでに体力がつきかけている。
 その時ふと、デーモン指揮官は燃え上がる火の手に目をやった。
 イービル兵が焼かれているのだ。
 だがそちらに意識をやられるのはうまくない。
 だからクロードは口を開く。
「状況的にどちらかが倒れるまでって訳にいかないのが非常に残念だが、時間一杯までは楽しむとしようか」
 その声へ、はじかれたように視線を向けるデーモン指揮官。
「他の奴に目を逸らすなよ? そんな事してると……その首、切り落とすぞ?」
 その挑発にデーモン指揮官はにたりと笑うと。
 だらりと垂れ下げた腕に杖。もう片方の手に包丁を握りしめて歩み寄る。
 ここからが本当の地獄だ。


第二章 空が赤く染まる。

 『神崎 紫紅』は仲間に打ち出された後、その上空から敵の布陣を見つめていた。
 そして着地するとクロードたちとは逆方向に走る。
 撤退する際の道を開くための行動だ。
 後顧の憂いを断たねばならない。
 眼前にはイービル兵の群。
 その群めがけて刃を構えると、突進力そのままに飛んだ。大きな跳躍。
 その真下をリディが駆け抜けていく。
「さっさと帰っちまえ!」
 神崎が円回転を利用してイービル達の翼を切り裂く、落下していくイービルをリディが刈り取る。
 左方向から襲ってきた敵には神崎が盾で対応。そのまま前に滑り出てリディは地面に転がったイービルを突き刺した。もだえ苦しむイービル兵。だが高い生命力でまだ絶命しない。
 背後で響く騒がしい声。
 仕方なく神崎は剣を引き抜き返す刃でリディに群がるイービル兵を斬撃。
 真横の一閃に対して神崎は縦方向の斬撃、十字に切り裂かれたイービルはむなしく大地に帰る。
 そんな二人が見あげた時、イービルが二人に迫っていた。思わず前に出る神崎。だがそのイービルは小さい悲鳴と共に弾き飛ばされる。
 振り返れば『星野秀忠』が少し離れた地点から魔弾を放つ。
「騒がしいと読書も音楽制作もできなくて困るんですよね……」
 しかし、今犠牲になったイービルなどきにせず飛来するイービル兵たち。
 そのイービル兵たちは飛行能力を持っている。飛行能力を持つ魔物たちは地上を這う者達には移動を妨害されない。
 それ故に二体のイービルが星野へ向かった。
 だがそれは想定済みである。
 星のは立ち上がり走る。ポジションを代えながらイービル兵を迎撃する。
 その魔術は多彩。
 前方にカーテンのような雷撃を。それをすり抜けて飛んできた敵を魔力の風にて押しとどめ追撃。
 弾丸のように直上から迫る敵を回避して。後ずさる。
 イービル兵の爪が閃いて、星野の頬を切り裂いた。
 それでも致命傷となりえない一撃。
 怖くはなかった。
 即座に魔導書を構える星野。魔力にてめくられるページがバタバタとはためいて。最適な呪文を教えてくれる。
 突如燃え広がる爆炎。
 イービル兵が悲鳴を上げて地面に落ちた。
 次いで空中から飛来する敵を見定める。
 集中。敵の動きを予測。半歩下がって距離を調整。左足を軸に。
 右足を引き絞る。
 ばねのように、弾丸を装填するように。
 そして一子相伝のタイキックにて星野は敵を吹き飛ばした。
「ごめん、待たせたね」
 そう告げて躍り出たのはリディ。
 その両手に握られた刃が陽光を受けて煌いた。
 そこからは怒涛の連撃である。
 左の刃で切りつける。それを避けて体制が崩れたイービル兵、その動きを先読みして右の刃で切りつけた。
 次いで右手の剣で切り上げて。左の剣で峰うちを。 
 衝撃で地面を転がったイービル兵をけりあげて、刃を重ねた十字切り。
「まだまだ!」
 リディはさらに一歩踏み込んで重心を右足に乗せる。そのまま刃を二本束ねて手に持ち。その斬撃を叩きつけるようにみまう。
 イービルが真っ二つに千切れて吹き飛んだ。
「大丈夫?」
 返り血をぬぐいながらリディは星野を振り返った。
「大丈夫です」
 その鬼神のような動きに圧倒されつつ、星野はそう答える。
 だが呆けていられる時間は短かった。さらに敵が襲来する。
 数は多い、だが彼らをデーモン指揮官の討伐に専念させるために、ここから先へ通すことはできなかった。
「敵が見えないまま攻撃されるなんて、さぞかしイービルも怖いだろうね。みくり?」
「今の秀忠さんが、よほど怖いです。傍から見ていると」
 そう罰が悪そうに告げるみくり。
「ゴメン」
 星野はそれに対して短く謝って、そして即座に三連射。イービルの翼を、右、左、そして胴体。と打ち抜いていく。
 残る討伐目標は少なくなってきた。
 だがなるべく早くイービル兵を刈り尽くさなくてはいけない状況に代わりはない。
 なぜなら撤退は早めにできるに越したことがないからである。
 だから一行は、必死に敵を刈り続けた。



第三章 悪魔の力。

 ジーンの体が吹き飛ばされて宙を舞った。地面を転がると岩に叩きつけられ動きが止まる。
 意識がもうろうとして、手足がしびれて動かない、だけど。視界の先で必死に戦う二人の姿だけはしっかりと見えた。
 戦わねば、そう体を起こそうとしても力が入らない。
 だが、そんなことは言っていられないのだ。
 ジーンはその体に鞭打ってたちあがる。
「そうだ、この状況こそが俺にさらなる戦意を与えてくれる……!」
 そして乾いた空に響かせるように笑い。いつもよりもまして俊敏に地面を走る。
「あああああああ!」
 その殺気をデーモン指揮官は無視できなかった、最優先でジーンの刃をガード。
 ジーンは一人で苛烈なまでに戦い。デーモン指揮官の殺意を一手に引き受ける。
 エルヴァイレントはそんなジーンの姿を見て、自分を奮い立たせる。
 血を吐きながらも剣を支えに立ち上がり。
 生まれ故郷を守る為の戦いだと自分を強く鼓舞した。
「必ず帰る場所を守ろう」
 そんな主人の想いを汲んでアルフォは最大のさぽーとを見せる。
 主人が冷静さを失った場合、諌めるのは自分の役目だと考えながら。
 その時である。
 満身創痍の三人の目の前へ躍り出る二人の影があった。
 身軽な動きで二人はデーモン指揮官を翻弄。
 その手の刃で斬撃を浴びせ。三人を守るように目の前に立つ。
 神崎とリディである。
「撤退の準備ができたよ」
 息をつきながら神崎が告げる。だが二人のコンビネーションは体力が底を尽きかけながらも発揮される。
 リディは二刀の刃で包丁を受け止め。神崎は盾でイービルを殴り飛ばす。
 神崎の斬撃を左手で受け止めて代わりに灼熱の魔術を放つデーモン指揮官。
 その藍さにリディは側面に回り込んでの連続斬撃。
 右に切り上げ、左に切りおろし。回転力を生かして斬撃、半歩踏み込んで刺突。
 そのまま切り上げて、地面めがけて叩きつけるような斬撃を。
 その斬撃をデーモン指揮官は包丁で受けてリディの軽い体を弾き飛ばす。
 デーモン指揮官は蹴りで追撃、それを神崎は盾で捌いて足を切り上げた。
 包丁を盾で防いで、斬撃。盾の影に隠れて接近し。切りつける。
 重戦車のごとき隙のない動き。
 これにデーモンは対応するため大魔術を放った。
 デーモン周囲に展開される八つの日のたま。それが竜の形を成して神崎へと迫る。
 それを防いだのは。満身創痍だったはずのエルヴァイレント、クロード、ジーンである。
 その分厚い刃を盾のように用いて。側面がとけるのも構わずに火焔を防ぐために使用した。
 そして返す刃で伸びる三連撃。
 たまらずデーモンは奥の手を使う。自身を中心に暴風を発生させ全員を吹き飛ばした。
 着地の体制を取る神崎とリディだったがエルヴァイレント、クロード、ジーンは足腰に力を入れるのも難しい、ゴムまりのように三人は地面を転がる。
「助けに来たけど、少し遅かったかな?」
 神崎はエルヴァイレント、クロード、ジーンをみてそう苦笑いを浮かべた。
 仲間たちが押されていることは感じていたのだが、やっと突破口を開けた。
「ここらが引き時やね……アルフォ、退却の補助、お願いな」
  エルヴァイレントは被害を受けにくい退却ルートをアルフォに探させた。
 もう仲間たちの体は限界だろう。これより直ちに撤退を開始する。
 その意思を剣を振るって見せた。
「紫紅、震えてる?」
 そうリディは神崎に言葉をかける。
 デーモン指揮官は得意な威圧感を放っている。
 だからと言って引くわけにはいかない。
「戦うことは怖いよ。でも……」
 神崎は告げる。
「ここで逃げたらもっと怖い思いをする人がいる。それだけは嫌だ!!」
 その言葉にリディは微笑んだ。そして。
「いくよ」
 そう小さく告げる。
 神崎は、誰かを殺すことが怖い。だが怖くて膝を抱えているだけでは何もできない。
 それを神崎は知っている。
「ここで戦わなかったらその分誰かが死ぬ。それも……嫌だ」
 頭は悪いけど今やらないといけないことはわかる。戦わなきゃ、誰かのために、自分のために。
 そう思えるのは神崎の強さ。
 リディと死角をカバーしながら、右へ左へ体をずらし。
 浅くてもいいからと、デーモン指揮官に斬撃を加えていく。
「幼い頃に教えて貰った恐怖を抑える方法、常に笑っている、笑いながら戦わなきゃ
こんな所で恐怖に屈してる暇なんてないから」
 次いで。デーモン指揮官の顔面に魔弾が突き刺さる。
「撤退してください!」
 そう叫んだのは星野。殿を務める二人は星野の支援を受けながら徐々に撤退していく。
 星野はデーモン指揮官を狙撃しつつ。徐々に徐々に後退する。
「しつこいヤツは嫌いです」
 その星野へ雷撃が降り注ぐ、距離が離れれば魔法を伝うのは当然だろう。
 だがそれも神崎が使わせまいと必死に妨害する。
 星野とデーモン指揮官の間に壁となって入り込み、その火炎弾を防いだ。
 重たい一撃に膝をつく。神崎。
「二人も撤退してください!」
 星野は叫んだ。デーモン指揮官も深追いする気はないように感じたからだ。
 あちらの外傷はこちらよりひどい。
 前身血まみれで、それでも戦えるのはやはり蛮族の力が成せる技なのだろう。
「みくり!」
 叫ぶ星野。殿の二人が追い付くと一緒に撤退を始める星のだったが。だがみくりが転倒してしまう。 
「私を置いて逃げてください!」
 みくりが叫んだ。
「それは出来ません。二度も妻を亡くすのは嫌です」
 そんな彼女を背中に背負い、星野は走る。
 その背をやはりデーモン指揮官は狙い撃つ。だが。
「もう、撤退するって時に邪魔しないで!」
 リディがその火焔を切り落とす。
 背後から迫るのはまた、竜のような火焔の束。
 それを今度は神崎と、そしてリディ切り落としていかないといけない。
 先ずリディが神崎の盾を足場に跳躍。攻撃のターゲットを分散させる。
 そのままリディは回転するように火焔を切り裂き、左手の刃を投げてさらにもう一体を切り裂く。
 地上では神崎が地面を転がって一匹を回避。巻き上がる爆炎の向こうから襲来する一撃を盾で捌いた。
 途中落下してくるリディ斬撃で一つを叩き落とし二人は背中合わせに立つ。
 そして四方から迫る残り全弾を全て。叩き落とした。
 許容量を超える熱量。二人は手が焼けつくのを感じた。
 それでも死ぬよりはましだ。
 そうリディは胸に刻んで敵の攻撃を弾きかける。
 攻撃の射程外に出るまでその押収は続くこととなる。
 いまだ叶わぬほど強大な敵を目の前に戦い続けた戦士たち。その身はぼろぼろの雑巾のようになり果てたが、それは敵も同じである。
 一行の姿が見えなくなるとデーモンは膝を突き。もうろうとした意識に鞭打って自分の体に回復魔法をかけ始める。
 あと一手あれば危なかった。そう久々の肝が冷えた戦場に向けて嘲笑を。
 今まで浮かべていた腹立たしい笑みはもう、浮かべられないようだった。



依頼結果

成功


依頼相談掲示板

【創造の光】悪魔の影をつけ 依頼相談掲示板 ( 9 )
[ 9 ] エルヴァイレント・フルテ  ドワーフ / ウォーリア  2017-06-29 23:48:11

期限まであんまり時間あらへんねー。
一応、プランの方に撤退のタイミングについては明記しといたんよー。
賛同してくれる人は、戦力半分で撤退って書いといてくれればええよ。
あとは各自の判断に任せるんよー。  
 

[ 8 ] ジーン・ズァエール  ヒューマン / ウォーリア  2017-06-29 21:00:42

戦力が圧倒的不利ってのを考えると、大体その辺りが妥当だな。俺もその案に賛成させてもらう  
 

[ 7 ] エルヴァイレント・フルテ  ドワーフ / ウォーリア  2017-06-29 12:15:49

一応、うちは前に言った通り、こっちの戦力半分位を目安に考えてるんよー。  
 

[ 6 ] エルヴァイレント・フルテ  ドワーフ / ウォーリア  2017-06-29 12:14:55

今回は、ある程度痛手を与えれば充分目標達成だし、向こうの撤退まで追い込めなかった時のために退却のタイミングは合わせといた方がいいと思うんよー。
どうするー?  
 

[ 5 ] リディ・フート  ヒューマン / ウォーリア  2017-06-29 00:11:19

ヒューマンでウォーリアのリディだよ。とりあえず突っ込むと思うのでよろしく  
 

[ 4 ] 神崎 紫紅  ケモモ / ナイト  2017-06-29 00:00:03

ケモモでナイトの神崎紫紅だよ。よろしくね
今回は盾役としてデーモン相手に戦うつもりだよ  
 

[ 3 ] 星野秀忠  エルフ / メイジ  2017-06-26 12:07:37

エルフでメイジの星野です。
皆さんが指揮官に集中している間にイービルの方を攻撃しようと思います。
皆さんの攻撃・撤退がスムーズにいく様、全力でサポートいたします故、よろしくお願いします。  
 

[ 2 ] エルヴァイレント・フルテ  ドワーフ / ウォーリア  2017-06-25 23:02:38

こんにちはー。うちはエルヴァイレント・フルテって言うんよー。長いから、エルでもええよー。
ひとまず、接近戦で指揮官狙いのプランを出してきたんよ。
退却タイミングはこちらの戦力が半分切った時って感じー。  
 

[ 1 ] ジーン・ズァエール  ヒューマン / ウォーリア  2017-06-25 20:10:05

ヒューマンでウォーリアーのジーン・ズァエールだ
戦闘スタイルは接近戦。狙うは指揮官のみ
今のところそんな感じだ。よろしく  
 




大規模作戦【祭典】栄光の影に:相談掲示板

[1] フランベルジュ 2017/09/20-00:00

皆さんお久しぶりですっ。
せっかくなので、大規模作戦に向けて相談掲示板を立ててみました!
皆何処で何をするのかな?と思って…良かったら聞かせてください!  
 

[7] 京輪 2017/09/21-05:13

皆様おはようございます。
フランベルジュさんありがとうございます。

京輪と申します。
どうぞよしなに…

私は戦闘には自信がありませんので、
スレイブとパレードを愉しませてもうらおうかしら。  
 

[6] フランベルジュ 2017/09/20-23:37

なるほど~…皆さんは神の手と戦う感じなのですね。
パレードを盛り上げるのも大事ですが、パレードが中止されないためにも
闘わないといけないですよねっ。
私は公園でアルゴーと戦おうかなとは思ってます!  
 

[5] 星野秀忠 2017/09/20-23:08

こんばんは。フランベルジュさん、スレ立てありがとう。
僕も神の手と闘うよ。
いまのところ魔法陣に細工して、敵さんがそれを起動するか踏むなどの物理的攻撃が加わったら爆発するってものにしようと思っている。
皆で敵を誘き寄せてトラップなどで攻撃を加えよう。  
 

[4] 蛇神 御影 2017/09/20-22:30

こんばんは。
フランベルジュは掲示板立てお疲れ様。
どちらに行くかはまだ決めてないけど、私も神の手と戦う方に回る予定ね。
 
 

[3] エルヴァイレント・フルテ 2017/09/20-00:36

こんばんはー。何だか久しぶりやねー。
うちは神の手の連中と戦う側に回る予定なんよー。
街中で信徒を何とかするか、公園で幹部と戦うかは周りの皆の状況を見て考えるんよ。  
 

[2] クロカ=雪羅 2017/09/20-00:09

こんばんは。フランベルジュは気が回るね。
そうだね、良く分からないけど久々だし、思う存分暴れられる場所が良いかな。
勿論、指示には従うよ。